「労働者保護の派遣法改正を目指そう」
〜10.25国会前行動と院内集会
●菅政府と民主党は公約を果たせ!
10月1日、臨時国会がスタートし、菅首相は所信表明を明らかにした。
強調されたのは経済成長だった。「解決すべき重要政策課題」は、「経済成長」「財政健全化」「社会保障改革」の一体的実現であり、その前提としての「地域主権改革の推進」「主体的な外交の展開」の五つだと、所信表明冒頭に記された。
雇用や労働は「経済成長」に従属させられた。労働者派遣法の改正は最後の「結び」で触れられただけだった。
「郵政改革法案、地球温暖化対策基本法案、労働者派遣法改正法案などの審議もお願いすることとなります」。
首相にとって労働者派遣法の改正は、実現すべき重要政策ではなく、国会対策上の懸案なのか。そのような疑念が強く残る所信表明だった。首相自身が練った演説文だといわれる。そうであれば、なおさら、派遣法改正はもはや首相の念頭にないのではないか。そのように疑われるのも当然だろう。忘れたため「結び」に付け足したのではないかとの憶測も流れたほどだ。
2008年秋、リーマン危機に対して企業は真っ先に派遣労働者の職を奪った。文字通りの「雇用調整弁」である。しかも失職が同時に住居を奪い、食に窮する多くの労働者たちが路頭に迷い、企業の責任からも国の社会保障の枠からも排除されたままに年末・年始を迎えようとしていた。そのような実態を「年越し派遣村」が「可視化」し、政治と行政を動かした。
菅首相も野党議員として日比谷公園の派遣村に駆けつけた一人だった。事態を重視した民主党は「製造現場への派遣を原則禁止するなど、派遣労働者の雇用の安定を図る」ことをマニフェストにかかげた。
衆議院選挙で勝利した民主党は昨年9月9日、社民党、国民新党との連立政権合意に達し、そこで「雇用対策の強化−労働者派遣法の抜本改正−」が明記された(注1)。
菅首相は衆院本会議(10月7日)では、郵政改革法案とならんで、労働者派遣法改正案の「今国会での速やかな成立を目指す」と発言した。
この1年間、新政権の遅滞と混迷をつくように、労働者派遣法改正を阻止しようとする動きは執拗に続けられてきた。菅内閣が「公約」を果たすよう要求し、派遣法抜本改正の闘いをいっそう強めよう。
(注1)雇用対策の強化―労働者派遣法の抜本改正―
「日雇い派遣」「スポット派遣」の禁止のみならず、「登録型派遣」は原則禁止して安定した雇用とする。製造業派遣も原則的に禁止する。違法派遣の場合の「直接雇用みなし制度」の創設、マージン率の情報公開など、「派遣業法」から「派遣労働者保護法」にあらためる。
(2009年9月9日、三党連立政権合意書より)
●「改正」阻止の巻き返しを許すな!
厚労省は10月6日、派遣労働者が昨年、急減したと発表(注2)、「派遣労働者24%減/減少幅最大、契約打ち切り相次ぐ/09年度」(河北新報7日)などと報じられた。このような事態を逆手にとって『厚労省では「放っておいても法案で規制対象となるような派遣労働者はいなくなる」という見方すらある』との指摘もなされている(朝日新聞10月9日、政策ウオッチ)。
これは業界団体の主張と符合する。日本人材派遣協会は、非正規雇用労働者は全雇用者の3人に1人を占めるが「その主力は、一貫してパ−ト・アルバイト」であり、「派遣労働者は急速に拡大」したものの、雇用者の「わずか2.0%」(総務省、労働力調査09年)でしかないと強調している(「労働者派遣法改正に向けての基本的な考え方〜派遣制度の規制強化に反対します」〜2010年9月22日)。
その人材派遣協会は9月、臨時国会審議を前にして、国会議員に対する「緊急アンケート」を実施した。「派遣という働き方を希望し、選択して働いている多くの高齢者や子育てをしながら仕事についている女性の方々の就労機会の喪失につながる恐れ」があり、「約50万人の雇用が失われる可能性」があるとし、与党の改正案に反対する活動を強めている。
10月に入って全国紙が「東大調査」なるものを報じた。日経新聞が9月末に掲載していた調査結果に関するものだが、たとえば朝日新聞は「失業懸念?派遣の半数超『製造業禁止に反対』東大調査」(10月12日)という見出しだ。
東京大学の社会科学研究所の、3人の「調査主体」による調査発表である(注3)。報告文には調査対象や方法などに関わる注釈や留意点が記されている。しかし、そのようなことは記事では触れられておらず、その後、調査に関する検証記事もない。
(注2)平成21年度労働者派遣事業報告の集計結果よれば、派遣労働者は前年度から24%減の302万人となった。減少幅は派遣法施行後の1986年以降最大、とくに製造業では半減した(6月1日時点で25万人、前年同期より54.5%減)。
(注3)東京大学社会科学研究所「請負社員・派遣社員の働き方とキャリアに関するアンケート調査」。「労働者派遣法の改正による製造派遣の『禁止』に関する評価や将来のキャリア展望などに限定して」概要が現在、web上で公開されている。調査全体の概要は11月末頃に公開の予定だという。
●10.25国会前行動、院内集会が呼びかけられる
連立与党は参議院で過半数割れであり、また衆議院で再議決に必要な3分の2に足りない。そのような国会情勢の中で法案上程のタイミングと審議展開は不透明だ。闘いの力と大きな声を国会にぶつけよう。
臨時国会での闘いに向けて、10月25日、国会前行動と院内集会が開催される。
日本労働弁護団は10月5日、幹事長名による「臨時国会における労働者派遣法改正法案の成立を求める声明」を発表、10月25日の院内集会を呼びかけている。集会の呼びかけと声明の抜粋を掲載する(*資料1、2)。
全労協は「予断は許されない状況だ」として、次のように二つの行動と集会への結集を呼びかけている。
「97年から積み上げてきた、派遣法抜本改正を要求する運動は、リーマンショック、製造業派遣切りの嵐、年越し派遣村、派遣村からの反撃と社会的に関心を拡げ、派遣労働者を先頭に、要求を運動にし、積み上げ、「派遣法改正」3野党共同提案を実現した。政権交代後、労政審を経ることで、内容は薄められ、多くの不十分さを持ったものとなってしまった。しかし、労働分野の規制緩和の流れにストップをかけ、労働者保護の規制強化に転換させるターニングポイントとしての「派遣法改正案」を成立させることは重要だ。次の闘いの足がかりとしても、現行法のままなどと、後戻りさせてはならない」。
◎労働者派遣法抜本改正を求める国会前行動
10月25日/11時〜12時
〜衆議院第2議員会館前
<主催>派遣法抜本改正を求める共同行動
◎臨時国会における労働者派遣法改正法案の成立を求める院内集会
10月25日/12時30分〜14時30分
〜衆議院第一議員会館
<主催>日本労働弁護団
■資料1/「労働者保護の派遣法改正を目指そう!」
2008年秋からの世界的な不況の中で大量の「派遣切り」が行われました。2008年末の「派遣村」は、派遣労働者が極めて不安定な雇用形態におかれ低賃金に苦しむ実態を社会に明らかにしました。一日も早く、現行労働者派遣法を改正し、派遣労働者の保護をはかることが求められていますが、先の通常国会で派遣法改正法案が上程されたものの、継続審議のままです。現行派遣法が改正されなければ、派遣労働者の不安定雇用と低賃金処遇は一向に改善されないままです。違法派遣も多発しており、全国各地で派遣先に直接雇用を求める裁判が次々に提訴されていますが、現行派遣法の不十分さゆえに、十分な司法的救済につながっていません。
今臨時国会では派遣法改正法案の審議が再開されます。この改正法案は、登録型派遣禁止に幅広い例外規定を置くなど不十分な点を残していますが、「派遣労働者の保護・雇用の安定」を目的規定に明記し、派遣労働者保護法の性格を持たせ、違法派遣の場合の直接雇用申込みなし規定を置くなど、派遣労働者保護の観点から画期的な内容となっています。これに対して、派遣法規制反対派は、派遣規制強化が失業のリスクを高めるなどと誤った情報を流し、派遣法改正反対の動きを強めています。
このたび、当弁護団は、今国会での派遣法改正法案の成立を訴えるため「今臨時国会における労働者派遣法改正法案の成立を求める声明」(2010年10月5日)を発表しました。また、派遣法改正を実現するために、下記集会を企画しました。各界各層からの多数の御参加を得たく、御案内申し上げます。(以下、略)
■資料2/日本労働弁護団の声明より
日本労働弁護団は10月5日、幹事長名による「臨時国会における労働者派遣法改正法案の成立を求める声明」を発表、厚労省で記者会見を行った。以下はその一部(3章)。声明の全文は日本労働弁護団のホームページにて。
(3)派遣の規制強化を前進させ、違法派遣における派遣先との直接雇用を求める労働者救済のために今臨時国会での改正法案の成立を
2010年7月の参議院選挙により与党が参議院で過半数割れとなったが、今臨時国会で派遣規制を強化する内容で労働者派遣法が改正されなければ、相次ぎ規制緩和されてきた現行の労働者派遣法がそのまま維持されてしまい、不安定雇用と低賃金に苦しむ派遣労働者の救済はさらに先延ばしされることになる。
今回の改正法案は、上記のとおり、1985年に労働者派遣法が成立して以来ほぼ一貫して規制緩和の改正が重ねられ不安定な労働者派遣が拡大してきた流れを変えて、問題点は多数あるが、派遣労働者保護のための規制強化に一歩踏み込むものである。
特に、違法派遣の場合に派遣労働者と派遣先とのみなし雇用の成立を可能にする規定が定められているので、これにより派遣労働者が派遣先との直接雇用を実現することが可能となる。現在、日本労働弁護団の弁護士は、違法派遣の派遣先の雇用責任を求める多くの訴訟を全国で取り組んでいるが、裁判所の厚い壁を突破し派遣労働者の派遣先への直接雇用を実現するためにも、この規定を含む法改正を今臨時国会で成立させることは、派遣労働者の救済のために重要な意味がある。
以上の点から、今臨時国会で、改正法案について十分な審議を尽くしたうえで、改正法を早期に成立させるよう強く求める。
■以上/宮城全労協ニュース167号(2010年10月18日)

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