伊波候補、追い上げ及ばず〜
11月28日/沖縄県知事選挙
第11回沖縄県知事選挙が11月28日、実施された。普天間飛行場の国外移設を訴えた伊波洋一候補は、終盤の激しい追い上げも及ばず、当選を果たせなかった。
反戦・反基地の信念を貫き、普天間基地を抱える宜野湾市長として活躍してきた伊波洋一候補と、現職の仲井真知事との対決だった。民主党の内部対立もからんだ候補者擁立の動きがあり、「第三極」とか「第三の候補」などと報道されたが、いずれも失敗に終わった。
伊波候補(共産、社民、国民新、新党日本、沖縄社会大衆党推薦)297,082票、
仲井真候補(公明、みんなの党、自民県連推薦)335,708票。
「残念な思いでいっぱいだ」と語った稲嶺進名護市長は、「名護から始まったうねりが、条件付き容認という現職の立場を変えさせてきた。変えざるを得ないというところまで追い込んできたということは、一つの成果になる」と指摘し、「日米合意を見直す、県外を求めると口に出して県民に約束したからには、まっとうしてもらわないと困る」と仲井真知事に「県外移設の先頭に立つ」よう求めた(沖縄タイムス29日)。
投票率は60.88%だった(注1)。
現職知事が直前になって発言を一転させ「普天間の県外移設」と言い出した。選挙対策上「争点外し」の効果も期待してのことだっただろう。辺野古移設に反対する人々の3割から4割弱が仲井真候補に投票したといわれる。
民主党本部は自主投票を決め、県外議員の特定候補支援を禁じた。菅政権の本音は知事再選であり「暗黙の支援」「間接的支援」などの言葉が飛び交った。少なくても連合の一部組合などが仲井真支持で運動した。各社の出口調査では民主党支持者の3割が仲井真候補に流れた。
自民党は参議院選挙に続いて「辺野古隠し」を決め込んだ。県連は仲井真候補を推薦したが、党本部は「傍観」のスタンスをとった。
「異例の展開」となった選挙の中盤、沖縄タイムスは「この静けさは何だろう」と問題を投げかけた。「普天間問題がもたらした複雑な「ねじれ」が、有権者を戸惑わせ、選挙運動の盛り上がりにブレーキをかけているのは明らかだ」(11月20日)。
結局、投票率は前回を大きく下回り、過去2番目に低いものとなった。
また伊波前市長の知事選立候補にともなう宜野湾市長選挙が同日に投開票された。社民、共産、社会大衆党が推薦した前副市長の無所属候補が、自民・公明推薦の無所属候補に1857票差で勝利した。
●否定された辺野古移設
政府と旧政権勢力は現職勝利に安堵した。メディアも「対話継続」に期待する。
だが選挙戦で選択肢として提示されたのは「県外」と「国外」である。
読売新聞はこの事実をねじまげ、「沖縄県が引き続き政府と連携し、米軍普天間飛行場の県内移設にも含みを残す−それが県民の選択だった」(29日社説「普天間移設の前進を追求せよ」)と書いた。
朝日新聞(「重い問いにどう答えるか」)と毎日新聞(「首相は普天間現実策を」)の同日の社説は、「沖縄の民意」は県内移設を否定していると指摘している。しかし、その両紙も「日米同盟全体を揺るがす」「日米同盟全体に悪影響を及ぼす」事態を避けよと強調する。沖縄が抗議した「日米同盟からの視点」が根深くそこにある(*注2)。
地元紙は政府の姿勢や自民党の対応を厳しく批判している。
『「県外」の公約は重い/まず日米合意の見直しを』
(沖縄タイムス社説11月29日)
「仲井真氏は1期目は条件付きで県内移設を容認していたが、今回は選挙直前になって県外移設にスタンスを大転換した。名護市長選・市議選で辺野古反対の民意はすでに示されている。仲井真氏の課題は公約した県外移設をどう実現するかにある」。
「県内の政治トレンドは、民主党に政権交代した昨夏の衆院選を境に一変した。/県内移設を容認した自民党議員が沖縄の全4区で誰もいなくなった。初めてである。・・/象徴的なのは7月の参院選沖縄選挙区。当選した自民党候補は日米合意を批判し、県外移設を訴えた。党本部の方針と異なる対応をとらざるを得なかったのである」。
「これまで県内移設を容認してきた保守陣営も、沖縄ではもう県内移設を掲げて戦うことはできなくなったということである」。
「政府が説得する相手は仲井真氏ではない。米国に正面から向き合うことこそが求められている。名護市、県いずれからも同意が取れていない辺野古移設を進めようとするならば、民主主義を破壊するものである」。
『「県外移設」公約の実現を/問われる対政府交渉力』
(琉球新報社説11月29日)
「最大の争点「米軍普天間返還・移設問題」では、再選された仲井真氏も今回は「県外移設」を公約に掲げ、県民の再選支持を受けた。/仲井真氏には「普天間基地を事実上閉鎖状態に」との4年前の公約を含め、今後はぶれることなく、しっかりと「県外移設」を政府に求め、公約を実現してほしい」。
「再選された仲井真氏の二つの大きな課題は、普天間問題と国内最悪の高失業・低所得問題の解決だ。いずれも、4年前の知事選で公約にしながら積み残してきた懸案である。/今後は解決に向け、政府と交渉に挑まねばならない。仲井真氏にはぶれ続ける民主政権を見習うことなく、県民世論を追い風に、掲げた県外移設と経済自立の公約を、確実に実現してもらいたい」。
●普天間基地の無条件返還と新基地建設の断念を!
<「県外」に方針転換しつつも「県内」移設への反対は明言していない>という知事のスタンスが様々な憶測を呼んでいる。経済振興策とのバーターがとりざたされている。「北東アジア情勢は不安定になり、地政学上の要衝でもある沖縄の重要度は増している」(日経新聞29日)との一方的な主張がメディアから垂れ流されている。知事への圧力は強まる。
仲井真知事はインタビューで次のように述べている。
「日米共同声明は極めて遺憾だ。納得いく説明がなく、県内は非常に厳しい。県内に(移設先は)事実上ない。県外だ。米軍は沖縄のためだけでなく、日本全体のためにいる」。「日本、東アジア全体の安全保障を守るために米軍はいる。沖縄で移設先を見つけることが非常に難しくなった現在、日本全国でもう一度、きちっと解決策を見いだしてもらいたい」。「(沖縄の経済的自立に関しては)観光や文化芸能、航空貨物など特色ある産業はある。アジアでも通用する」。
翌朝の取材には次のように答えた。
(選挙中に訴えた県外移設について)「可能性ゼロと思っていない。46都道府県が腰を据えて考えるべきだ。沖縄に押し込める話ではない」。(政府が日米合意の理解に期待を寄せていることについて)「極めて遺憾で実行不能に近いと申し上げている状況で、期待しているのであれば、全然話にならない」。
知事は選挙運動中、「北海道から鹿児島までのヤマト」への移設を訴えた。知事は、民主党のみならず、旧政権勢力など普天間問題が辺野古移設をもって収束することを期待している人々に、「ヤマトとして」の決断を要求したのだった。再選を支持した人々は、新政権であれ旧政権であれ、これを不問に付して普天間や県内移設を策動することは許されない。
11月13日に開催された日米首脳会談で、来春、新たな日米共同文書を策定するとの合意がなされた。民主党政権としては、そこまでに何らかの「成果」を得ようとする。
首相の沖縄訪問も検討されている。「移設容認派が多数を占める辺野古周辺住民との対話を突破口にするしかない」「特命全権大使を名護に派遣する計画」(防衛省幹部)などの報道が相次いでいる。防衛大臣は29日、経済振興策と連動させることによって「沖縄との協議を進めていく余地はたくさんある」と述べた。日米政府の策動をはねのける闘いが問われる。
米軍普天間基地の無条件返還、辺野古移設など新たな基地建設の断念を求め、闘いを発展させよう。
(2010年11月29日)
(注1)沖縄県知事選挙の投票率。
1994年、62.54%(大田革新県政2期目)
1998年、76.54%(3期目の選挙、保守が県政奪還)
2002年、57.22%(保守県政2期目、革新分裂で最低の投票率)
2006年、64.54%(仲井真候補と反自公統一候補)
2010年、60.88%
2006年、野党共闘(民主党を含む)の糸数慶子候補と、稲嶺保守県政の後継者である仲井真候補。
仲井真候補347,303票/糸数候補309,985票
(注2)
沖縄タイムスは今夏、「司法よりたちが悪い」と全国紙の「沖縄報道」を批判した(「普天間報道批判/届かぬ声、募る苛立ち」7月31日社説)。
普天間爆音訴訟の控訴審判決(7月29日)での記者会見で、原告団長が大手メディアの「日米同盟危機」の視点からなされる報道姿勢を批判したことに関連した記事だった。
「・・全国知事会ではどの知事も基地負担にそっぽを向き、メディアは米軍普天間飛行場の移設問題をめぐる米側の懸念を伝えながら「同盟危機」を繰り返し報じた。そして普天間問題は「県内移設」で早くけりをつけろ、という切り捨て論が強まった」。
記事は民主党政権下での経緯を振り返り、次のように指摘した。
「鳩山内閣が「県外移転」の可能性を模索していた昨年10月、ゲーツ米国防長官が来日し、普天間の辺野古移設が唯一の実現可能な案だとし、早期の決断を迫った。/その後、沖縄の基地問題が日米同盟の踏み絵であるかのように論じられ、メディアの主張は多様性を失った。」
その例証として各紙が引用されている。
「傷ついた日米当局間の信頼をどう回復するつもりか」(朝日)、「普天間問題を日米同盟全体を揺るがす発火点にしてはならない」(毎日)、「安保にかかわる米軍基地問題に関して、県民の意向だけに委ねるような姿勢は危険である」(読売)。
朝日新聞はこの「全国紙批判」を「実名を挙げて異例のメディア批判を展開した」と取り上げた。「ヤマトよ/偽善だ」、『「沖縄はかわいそうと言いながら・・」「痛み伝えぬ本土メディア」』などの見出しをつけ、「沖縄を裏切るのか。また切り捨てるのか。沖縄から上がる声は、鳩山前首相だけに向けられたものではない」と自省らしき言葉を載せている(朝日9月12日)。
その後、知事選に関する社説では「沖縄対ヤマトの対立構図」という表現が何度か登場している(「沖縄知事選/ヤマトの覚悟が問われる」11月12日など)。
朝日新聞は11月29日の社説で、「一基地の問題が日米同盟全体を揺るがす。そうした事態をなんとかして避ける高度な政治的力量が菅政権には求められる」と主張している。「同盟危機」からの発想では、「一基地」は「一沖縄」に容易に置き換わってしまうだろう。執拗に繰り返される「地政学的位置」論はまさにそれだ。
■以上/宮城全労協ニュース169号(2010年11月30日)

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