宮城全労協ニュース/第200号(電子版)/2011年7月28日

最賃審議会(宮城)への意見書




 地域最賃の審議が始まっている。

 宮城全労協は7月23日、宮城地方最低賃金審議会に対して意見書を提出した(資料)。



 一年前、中央審議会では労使の緊迫した対立が続いていた。

 最低賃金の引き上げは、非正規雇用労働者にとって切実な要求である。この最賃水準では貧困を脱却できない。政治はどうするのか。

 自民党政権末期にも修正や調整がなされた。まして新しい政治は「貧困と格差」に対して、自民党政権末期以上に重きを置くのは当然であり、制度・政策的転換にも挑戦することになった。

 そのような期待が「最賃引き上げ」に寄せられた。「脱・構造改革」の主張が展開され、マスコミも報道を重ねた。引き上げ額は不十分だったとはいえ、政権 交代による成果だった。一年後のいま、政府・与党の最賃への関心は極度に低下している。マスコミの扱いも同様だ。

 大震災を経て、経営側は今年度の最賃抑制のみならず「政労使合意」そのものを「なし」にしようとしている。

 また、厚生労働省の生活保護基準部会は生活保護費の給付削減をねらい「最低賃金より高い生活保護費」という逆転した議論を復活させようとしている。



(付記)

 7月26日、中央審議会は「引き上げ額の目安」を示した。「6円決着」とマスコミは報じた。6円(「全国加重平均」)という数字に何の意味があるのか。圧倒的多数は「1円」だったのだ。

 被災3県も、青森から群馬までも「1円」だ。「特区」が流行語になっているが、おかしなことに最賃に「特区」はないということなのだろう。


◎1円以外は次の7都道府県。

 北海道13円、埼玉5円、東京16円、神奈川18円、大阪4円、兵庫2円、広島6円。

◎「生活保護費との逆転」は9都道府県。厚労省の新データによれば、北海道31円、神奈川23円、東京16円、埼玉9円、宮城8円、大阪7円、広島6円、兵庫3円、京都1円。

 宮城で1円(逆転額8円で1円)だった。ちなみに京都も1円である。





<資料>


宮城地方最低賃金審議会への意見書
(2011年7月23日)


 2011年度の審議にあたり、宮城全労協は宮城地方最低賃金審査会に対して以下の意見を述べます。


 1.最低賃金を全国一律で時給1,000円以上とすること。
 2.「生活保護水準との逆転」を解消すること。
 3.雇用戦略対話等の経緯を踏まえ、政府と大企業に最賃引き上げの対策を求めること。
 4.全審議を公開すること。審議のあり方を中小零細企業労働者、非正規雇用労働者の声を十分に反映させるものとすること。


 大震災からの「復旧・復興」はあまりにも遅く不十分であり、地震・津波・原発事故の被災地では怒りと絶望が渦巻いています。「自殺・孤独死・関連死」に より、連日、多くの人々の命が奪われています。このような現実に踏まえて審議がなされ、被災地と被災民衆が希望を見出しうる最低賃金の大幅な引き上げを答 申されるよう要請し、意見とします。


 以上の意見に関連して、その理由を述べます。

(1) 大震災による生活困窮を救うためにも、最低賃金の引き上げが必要です。
(2)「生活保護水準との逆転」はさらに拡大しています。
(3)貧困化が進んでおり、政労使合意の流れを逆転させてはなりません。
(4)政府と大企業に、制度的・政策的な最賃引き上げ対策を求めます。



(1) 大震災による生活困窮を救うためにも、最低賃金の引き上げが必要です。


 経営者側からは改定目安審議にあたって「(大震災による深刻な影響が拡がるなかで)経営の立て直しと雇用の維持に全力で取り組んでいる」ことに配慮を求める意見が出されています(6月16日、全国37経営者協会の要望)。

 これが大震災を理由とした最低賃金の抑制を意味するなら、私たちは認めることはできません。

 大震災により宮城県でも被災地をはじめ各地で解雇、離職が相次いでいます。多数の労働者や漁業従事者たちなどが、緊急雇用対策による低賃金の臨時採用で かろうじて生活費をつないでいます。また厳しい雇用情勢の中で再就職できたとしても、非正規雇用が中心です。低すぎる最低賃金水準が重くのしかかり、大震 災によって被災地の賃金をさらに押し下げる構造にあります。

 避難所生活を余儀なくされている人々、破壊された自宅に住み続ける人々、介護等に心身ともに疲労困憊の日々を送っている人々。仮設住宅に入ることができても、明日の展望がもてない人々。「健康で文化的な最低限度の生活」はどこにあるというのでしょうか。

 今年度の最賃引き上げが、とくに被災地に対して果たす役割はきわめて大きなものがあります。被災地を「励ます」意味においても、今年度最賃審議が特別な位置にあることを十分に認識され、大幅引き上げの実現に向けて審議を尽くすことを強く要請します。


 また大震災は、最低賃金が全国一律の制度であるべきことの意味を示しています。被災県の最低賃金引き上げが大震災のゆえに困難とされることは、被災地の 民衆生活に対する二重の打撃となるからです。とくに被災地での審議においては「全国一律」の立場が強調されるべきです。



(2)「生活保護水準との逆転」はさらに拡大しています。


 厚生労働省は7月13日、最新データにもとづき、最低賃金が生活保護費を下回る地域は昨年改定時の5から9都道府県に増えたと発表しました。

 最低賃金が貧困化の進行に追いついていない実態が、ここでも示されています。「逆転」の即時解消が必要です。

(逆転の差額は、北海道31円、神奈川23円、東京16円、埼玉9円、宮城8円、大阪7円、広島6円、兵庫3円、京都1円。)

 日本弁護士連合会は厚生労働大臣と中央最低賃金審議会長に提出した意見書で、「全国各地域における地域別最低賃金金額が、人たるに値する生活を保障する のにふさわしい水準まで大幅に引き上げられるべきであり、生活保護基準の切下げによって『生活保護に係る施策との整合性』が図られるようなことがあっては ならない」と指摘し、さらに「整合性」への配慮にあたっての具体的な提案も行っています(6月16日「最低賃金制度の運用に関する意見書」)。これらの意 見を取り入れるべきです。

 一方、厚生労働省は5年に一度の生活保護水準の見直しを進めています(生活保護基準部会、4月19日初会合)。「1950年の生活保護創設以来初となる 制度の抜本改革に踏み切る意向」「給付総額の削減を目指す」、「社会のセーフティネット水準全体を押し下げる可能性もある」と報道されています(4月20 日、毎日新聞)。

 最低賃金の抑制・引き下げをねらい「生活保護費が年金や最低賃金より高いのはおかしい」という逆転した論法が自民党政権時代に強まりましたが、これは厳 しい批判にさらされました。改正最低賃金法(08年)による「生活保護に係る施策との整合性」も、労働者の「健康で文化的な最低限度の生活」が明記されて います。それらを無視する議論を復活させることは認められません。



(3)貧困化が進んでおり、政労使合意の流れを逆転させてはなりません。


 先にあげた経営者側の「要望」では、「ここ数年の最低賃金の大幅な引き上げによる中小・零細企業等の経営および雇用への影響を大変心配」している、「平 成19年以降の改定はそれ以前とは大きく異なり、大幅な引き上げが続いて」いるなど、この間の最賃引き上げの経緯に反対の姿勢が示されています。

「要望」はさらに、「平成19年7月の第2回成長力底上げ推進円卓会議や昨年6月の雇用戦略会議での政労使の合意内容が、その後の目安審議や地域の審議に 大きく影響を与えている」「昨年のような審議状況は、地域の実情に即した自主性ある最低賃金審議とはいえない状況である」と考えている、と述べています。

 しかし、いわゆる「働く貧困層」の増大が社会的な問題となり、小泉政権下での際立った最賃抑制政策への批判が高まった経緯をあらためて確認すべきです。

「構造改革路線」によって疲弊した労働者の生活改善と、強いては地域経済社会の再構築のために、最低賃金の引き上げが必要だという認識が国民的な支持を得たからこそ「平成19年7月以降」の事態がもたらされたのでした。

 厚生労働省が7月12日に公表した国民生活基礎調査によれば「相対的貧困率」(09年)は16.0%であり、前回調査の06年の数値より0.3ポイント上昇し、最悪となりました。17歳以下では1.5ポイントも上昇しています。

 貧困化の進行には、最低賃金の全般的な低水準および「生活保護水準との逆転」すら解消されていないことが、大きく影響しています。まして大震災によって生活困窮が拡大しており、政労使合意にもとづく最賃引き上げの必要性はますます高まっています。



(4)政府と大企業に制度的・政策的な最賃引き上げ対策を求めます。


 中小零細企業の多くが厳しい経営に直面していることは明らかです。そのことを理由に、最低賃金の引き上げが困難であるというならば、けっきょく犠牲は中 小零細企業で働く労働者に一方的に押し付けられることになり、最賃法の趣旨そのものに反することとなります。

 昨年12月の雇用戦略対話で確認された「雇用戦略・基本方針2011」では、地域最賃700円以下の地域で「最低賃金引き上げ支援対策費」の補助が盛り 込まれています。政府と経営者団体はそれらの支援をさらに充実させるとともに、地域経済を支えているのは中小零細企業とその労働者であるとの観点から、制 度的・政策的な対策を打ち出すべきです。

 特に、いわゆる「官製ワーキング・プア」への対策として、公共工事・事業等での適正な労働条件を確保する「公契約条例」の全国的な制定に政府が取り組むべきです。

 また大震災による「サプライチェーン」の破壊は大企業に深刻な影響を与えました。製品・部材の供給などが地域の中小零細企業によって支えられている現実 を大企業は再認識し、中小零細企業との関係を見直すきっかけとすべきです。調達コストの切り下げに頼るなどの姿勢をあらため、地域の雇用と賃金に対する社 会的責任を果たすよう、経営者団体と大企業に再検討を強く求めるべきです。


(2011年7月23日/宮城全労協)

 
 
<お詫びと注意>
なお、7月28日にアップしたものに(理由の第三章の後半以降)大幅な脱落がありました。脱落は修正されています。
 

■以上/宮城全労協ニュース200号(2011年7月28日)



■以上/宮城全労協ニュース201号(2011年8月5日)