宮城全労協ニュース/第203号(電子版)/2011年9月10日

最賃答申(宮城)への異議




 宮城地方最賃審議会は8月31日、地域最賃額の「1円」引き上げと、宮城における生活保護水準との乖離解消の繰り延べを答申した。「1円」は中央の目安と同額である。

 宮城全労協は、宮城労働局長に対して、以下のように異議を申し立てた。

 なお、審議会への意見書は宮城全労協ニュース200号を参照のこと。





「宮城県最低賃金の改正決定」(答申)への異議申出書

 宮城全労協(2011年9月10日)



「宮城県最低賃金の改正決定」の答申(宮城地方最低賃金審議会、8月31日)に対して、最低賃金法11条2項および同法施行規則8条の規定にもとづき、宮城全労協は以下のとおり異議申出を行います。

 なお、宮城全労協の意見は7月23日に提出しており、重複は極力、避けています。



<異議の内容>

異議の内容は次のとおりです。


1.「675円」(前年から1円の増)はあまりにも低額です。「格差是正」「働く貧困層の生活改善」には遠く及ばす、改正最賃法の趣旨にも反します。

2.「生活保護水準との乖離」が解消されていません。

3.「大震災の甚大な影響」が、以上の答申の大きな根拠とされています。この議論は逆転しています。<大幅引き上げが被災地・被災民衆を励ます>。これが、被災地での最賃審議の基軸ではありませんか。

4.「中央目安」より、「せめて1円でも多い」引き上げを答申し、東北被災県の労働者・民衆に応えるべきです。


 以上の観点から、再審議を求めます。



<異議の理由>

1.宮城全労協は「全国一律で時給1千円以上」を求めてきました(宮城地方最低賃金審議会への意見書/2011年7月23日提出)。「675円(前年からの増1円)」は、あまりにかけ離れており、認めることはできません。

 地場の中小・零細企業で働く労働者、非正規雇用労働者など、低賃金を強いられている労働者の生活維持・改善にとって、この額ではまったく不十分です。

「格差是正」「働く貧困層の労働条件の改善」「セーティネットの再構築」。これらが政治的・社会的な問題となりました。最賃法は改正され、最低賃金を引き上げるべきだとの要求が「政労使合意」となり、不十分であるとはいえ、政権交代を踏まえた昨年の改定結果となりました。今年度の「目安」や各地の答申内容は、そのような流れから逸脱しています。

 厚生労働省は8月末、契約社員やパート、出向社員など「正社員以外の労働者」が占める割合が2007年調査から0.9ポイント増の38.7%となり、過去最高を記録したと発表しました。日経新聞のタイトルは「非正社員『不本意』が増加」というものでした。

 最低賃金の大幅引き上げの必要性は、ますます高まっています。今年度の最賃審議は、そのブレーキとなっています。



2.宮城における最低賃金は、昨年の改定(引き上げ額12円)によっても「生活保護水準」から「8円」下回っていました。一昨年の答申によって「解消年数」とされた2年目にあたる今年、引き上げ額は「1円」との答申です。現状で「7円」の乖離額について、「平成21年度に当地方最低賃金審議会で定めた解消期間を更に1年間延長」が「適当」であると引き延ばしています。

 しかも、来年について、「最新のデータに基づき最低賃金と生活保護水準との比較を行い、本県の経済・企業・雇用動向等も踏まえるものとする」との表現によって、いわば<付帯条件>をつけ、乖離解消の再延長あるいは不履行に道をひらく可能性を示唆しているといえます。

 経緯の過去にさかのぼる再審議を求めます。



3.大震災は宮城の零細・中小企業に大打撃を与えました。沿岸部では水産関連会社などが壊滅的な被害を受けました。私たちは、地元経営者が、「涙を流して従業員の解雇」に踏み切らざるを得なかったことを知っています。多くの地元経営者たちは、国の方針が定まらない中にあって、会社の再建と再雇用のために、地元金融機関や行政に何度も足を運んで支援を訴えたのでした。石巻をはじめ、地元の商工会議所の努力も特筆されるべきです。

 一方、働く場を失った漁民、農民、解雇された労働者たちの多くは、ガレキ撤去作業や自治体臨時雇用で日々の生活をつないできました。その賃金は、地域最賃水準なのです。最賃審議が社会に与える影響は多大であることを、あらためて熟慮していただきたい。

 京都の最賃答申に対する異議申出書において、「ユニオンネットワーク・京都」は、次のように被災地と最賃について訴えていました(9月5日付)。一部を紹介します。

「・・被災地の東北各県は地方切り捨て政策の結果、全国加重平均の730円をはるかに下回る600円台半ばです。目安でも宮城などは厚生労働省の計算でも生活保護是正のためには8円の引き上げが必要とされていますが、目安提示では1円引上げにとどめられています。これは本末転倒というべきことです。/復旧、復興というならば大幅に最低賃金を引き上げることが先決です。そうしなれば震災による雇用状況の悪化のなかで低賃金がはびこり生活ができなくなります。/最低賃金を全国一律とし1000円以上に引き上げれば、被災した多くの人々を勇気づけ復旧・復興に向けた大きな力となります。」

 被災地の最賃はどうなるのか? どうすべきなのか? 全国が注目しています。



4.被災地の最賃審議会が持つ役割について、再考していただきたい。中央の「1円目安」に対して、被災地の視点から抗議し、答申していただきたい。 

「被災地とつながろう」「日本は一つ、東北との絆を」などのキャンペーンが続いています。多くの思いと行動が被災地に注がれていることは確かです。

 一方、冷酷な現実に被災民衆は日々、直面させられています。原発事故による放射性物質の大量放出と拡散が、人々と社会に深刻な影響をもたらしているからです。「京都五山の送り火」問題、「汚染肉牛」問題など、容易ならざる事態が宮城でも岩手でも、広がっています。「東北」は敬遠され、買いたたかれています。それが「市場」だというわけです。

 福島原発は東京電力によって首都圏への電力を供給してきた。それは東北地方の「差別と隷属」の象徴である。そのような議論があります。もっともだと、東北の人々は受けとめているでしょう。

 被災地の最賃審議会は、このような「社会の分裂」に対して、どのように対処するのでしょうか。大企業が徹底的に求める「経済整合性・効率性」の観点で進むのでしょうか。それとも被災労働者・民衆とともに、再建への道を歩もうとするのでしょうか。軋轢や矛盾をかかえざるをえない地域最賃審議の、真価がまさに、問われているはずです。

「中央の目安」は「被災地・1円」でした。大震災による経済的影響が、その最大の理由です。宮城の審議会の答申は、議論が公開されていないので憶測するしかありませんが、中央の理屈を踏襲するものです。

 中央財界も政界も、宮城県も、口を開けば「特区」と言っています。ならば、どうして<最賃特区>の主張がないのですか。被災地の最賃を大幅に引き上げるべきだと、どうして主張しないのですか。

 地元努力では解決できない壁は、その責任と負担を国と大企業に求めるべきです。国の臨時予算には、企業支援と雇用に関する措置が盛り込まれています。最低賃金はどうするのですか。そのような論点を、整理し、中央にぶつけるべきです。

 私たち宮城全労協は、意見書(7月23日付)で次のように主張しました。重複になりますが、再度、掲載します。

「大震災からの『復旧・復興』はあまりにも遅く不十分であり、地震・津波・原発事故の被災地では怒りと絶望が渦巻いています。『自殺・孤独死・関連死』により、連日、多くの人々の命が奪われています。このような現実に踏まえて審議がなされ、被災地と被災民衆が希望を見出しうる最低賃金の大幅な引き上げを答申されるよう要請し、意見とします」。


「中央の目安」より、1円でも多い引き上げを答申すべきである。それが、地元の労働者民衆とともにあるべき被災地・最賃審議会としての、せめてもの責務であると、あえて意見を述べ、宮城全労協の異議申立とします。


 以上(宮城全労協)



■以上/宮城全労協ニュース203号(2011年9月10日)