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NTT現場からの震災報告
8月21日、「大震災復旧・復興の現場を問う」市民集会が都内で開かれました。「郵政民営化を監視する市民ネットワーク」と郵政ユニオン共催によるものです。
「3.11以降すでに6ヶ月近くになろうとしているにもかかわらず、被災地には未だ大量の瓦礫が野積みされ、復旧・復興の足取りは遅々として進んでいない。私たち郵政事業を含む各公共サービスは現場でどのような苦闘を強いられているのか。今回の集会は様々な現場の具体的な状況を出し合って復旧・復興の状況を一度俯瞰的に総括してみようという試みである」(「伝送便」ホームページより)。
集会では自治体、水道、郵政とともに、電通労組の仲間によるNTT現場報告がなされました。その報告内容を紹介します。
なお自治体、水道、郵政からの現場報告は「伝送便」ホームページに掲載されています(http://densobin.ubin-net.jp/)。
報告でも触れられていますが、電通労組の組合員たちは、NTTの震災対応にいらだち、強い憤りを感じていました。自宅が被害にあい、自家用車が使えず、交通手段もない。そのような状況のなかで、かろうじて職場にかけつけ復旧作業にあたろうとしても、全労働者・職員を緊急作業に配置する態勢にはなかったからです。
電電民営化とその後の組織再編(NTT構造改革)が何をもたらしたのか、そのことを痛感しながら、組合員たちは苦闘していました。当時、ようやく復旧した情報網を駆使して、ある組合員が仲間に送ったメールを紹介します。
<(3月27日発)3月25日に役場が臨時バスを運行しましたので、会社に行ってみました。会社に着いたのは午前11時30分過ぎでした。地震発生後、職場の周りはそのままにしておりましたので、後片付けの意味もありました。出勤者が半数ぐらいで、JR通勤(者)はバス代替の2、3人でした。
・・午後2時ころまで後片付けをしてから、「災害対策室」へ行ってみました。一言でいうと、雑然として体系化されていないようでした。上司に顔を見せて、こちらの状況を簡単に報告し、午後3時に退社することを告げて職場に戻りました。
たまたま災対設備を石巻方面に搬入してきた専任契約社員と話ができました。わたしが感じたことが現実のようで、「指揮命令系統」がバラバラで被災地の通信手段が思うように回復していないことがわかりました。
とても悲しく残念でなんか腹が立ってきました。
「災害対策室」は、NTT宮城支店(をはじめ)グループ会社などで構成されています。会社分割の弊害・・このような大災害にはまったく機能しないことがはっきりしました。
「あまねく公平に」を投げ捨て市場競争原理にひた走った結果がこの状況なのです。
しかし、多くの被災者の方々が、この寒さの中で肉親、親戚、友人知人に切実な思いで
連絡を取ろうとしています。
・・わたしは明日28日(月)も出社します。設備復旧、サービス回復などの情報を報告いたします。>
<NTT現場からの報告(8月21日)>
私は仙台市内で電信設備の保守・故障修理の仕事をしている。震災当日はちょうど顧客からの修理依頼があり、車で移動中に激しい揺れにあった。屋根瓦が落ち電線がショートする様を横目で見ながら仕事先のマンションに着いたが、そこの窓ガラスも目の前で割れたりし、かなり危険を感じた。顧客とは会えたが修理どころではなかった。一旦職場に戻ろうにも携帯は通じず、交通信号も消えて車は大渋滞し、通常は30分で済むところを2時間かかって会社に戻った。津波被害にあった所では、この渋滞中に車ごと流され犠牲になった方が多かったと後から知った。
職場に戻り同僚の安否確認をするにも電話が通じない。NTT職場で働いているだけに、情けなかった。
●被災当時の被害状況
NTT関係の主な被害状況(3月13日付)については次のように発表されている。
* 東北3県(岩手、宮城、福島)で385ビルが機能停止。41局所の流出、倒壊。
* 65000本の電柱が倒壊し6300Kmのケーブルが引きちぎられる。
* 固定電話サービス150万回線が不通。
* 携帯電話基地局100局が倒壊、流出、6720局がサービス停止。
* 東北では5割の通信が不通に。
主要施設の機能停止の原因の多くは電源喪失である。本来バックアップ用電源があり、1日ほどもったところもあるのだが、その後、燃料確保の困難なども重なって電話の復旧が遅れた。
私は1978年の宮城県沖地震も経験している。そのときはバックアップ用発電設備が機能し、電話機能が維持できた。しかし民営化(85年)以降、コスト削減等を名目に、施設内の発電設備が撤去されてきた経緯がある。
●携帯電話の問題
携帯電話の基地局にもバッテリーが備え付けてあるが、これはだいたい3時間ぐらいしかもたない。本来なら各基地局に発電設備が必要なのだろうが、携帯電話の場合はコストの問題があるとされる。
加えて災害時に携帯回線が集中すると、NTTの場合は自動的に回線を絞り、重要通信(警察、消防、自衛隊等)だけが通るようなプログラムを組んでいる。そのため、実際には携帯電話はほとんど使えなくなる。NTT内でも管理者の携帯は繋がるが、一般社員は繋がらないという状況になった。管理者が職員の安否を確認しようにも、現場の職員の携帯には繋がらなかった。
災害が起こると電話は最初に重要なライフラインとなるものだが、その足下は以上のように非常に心許ない状況になっている。
●復旧過程の矛盾
復旧作業は困難を極めた。まず職場の周りの片付けなどに忙殺され、私もほとんど不眠不休の状態だった。ようやく3日目あたりから職員間の連絡網ができはじめ、被災地の視察・状況確認が始まった。津波被害地の状況は壊滅的で息を飲むしかなかった。特設公衆電話の設置や可搬型の移動無線電話の設置等、緊急設備の設置も一部は4月にずれ込んだ。
私たちのように直接、顧客に対応する修理の仕事も実際は4月になってから開始されたが、1日3千件ほどの修理要請があり、要請件数だけが溜まっていく一方という状況だった。
4月末までに仮復旧ということで、1回線だけでも通信可能であればそこは「孤立」していないと見なし「復旧」と規定した。今回は、全41局のうち5局を除いて復旧とした。5局とは島嶼部の2局と原発緊急避難地域3局。また全壊したビルや交換所などには簡易型の「ボックス交換局」を設置し「復旧」とした。津波被災地は電線網も根こそぎ流され、あらためて山から電線を引き直すなどの急ごしらえの復旧作業が続いた。そのような作業が5月いっぱいぐらいをかけて行われた。
連動して私たちも個別に顧客から修理要請を受けるのだが、上記のように4月末に会社がマスコミに「復旧」したと発表したものだから、現場は混乱してしまった。1回線でも継がれば「復旧」としたが、場現に向かうと実際は継がっていないという状況が多発した。ほぼ地域の回線が継がるようになったのは7月に入ってからというのが実状だった。その間、被災地の方々には電話が繋がらず、本当に厳しい状況ではなかったかと思う。
携帯電話に関しては4月中旬ぐらいまでには復旧していた。各会社の携帯の基地局からアンテナまでの中継はNTTの既存の光ファイバー回線を使っている。その回線自体が切れたのだが、NTTは無線設備や衛星を使ったマイクロ波設備を設置して対応した。ただし、それでもやはり1ヶ月は完全復旧にかかっている。今一番使用頻度が高いと思われる携帯電に関してもこれほど時間がかかったということは課題として残るだろう。私自身、現場の顧客からかなりの苦情をもらった。
今回、NTTは被災地以外からの応援のため、連日1万人規模の動員をして応援態勢を敷いた。これはNTTだけではなく、通信設備会社などの民間関連会社も入れての数字だ。
福島第一原発の事故による放射能被曝が懸念されるところは、管轄のNTT社員だけで復旧作業を行った。ここらあたりは5月9日付の日経ビジネスが詳しくレポートしていた。
●民営化以降の問題が横たわる
今回の復旧作業を顧みても、NTT自体のリストラ施策の問題もさることながら、やはり民営化以降の問題が大きい。各事業所・職種は数多く民間業務委託されているが、さらにその下に多くの子会社が分立していて、それぞれがまた業務委託を行っている。あまりにも複雑に細分化された業務形態が、様々な場面で弊害を生んでいる。システムとしては東西NTT本社が統括責任となっているが、今回のような緊急時にはこれがまったく機能しなかったというのが現状だ。
各県ごとに対策室を設置しても、具体的な仕事の指示をできる人間がいない。バラバラの事業間の連絡網を繋ぐだけでも大変で、いちいち各事業所の指示を仰いで統括的な指令を発するという逆転現象が起きたりしている。2〜3日で終わる復旧作業が1週間以上かかったりする。
民営化によって効率化しコスト削減には寄与したかも知れないが、いざというときには役に立たない。
今回、NTT東日本は、震災に絡む業務損失を200億円ほどと試算している。しかし純利益はそれでも500億。収益に関してはまったく問題がなかったことになる。逆に言えば、もっと資材を投入できる余地があったのではないかといえる。
私たち電通労組はこれらの利益をもっと社会に還元すべきであると要求している。
●通信サービスは公共サービス
今回の災害により、通信事業という公共サービスを担っているという仕事の重要性を、私自身、改めてつくづく感じさせられた。
民営化になる前の電電公社の時代には当たり前のことが、現在ではなおざりにされている。
実は今回も現場の先頭に立ったのは、公社当時のプライドを持ち続けている50代以降の社員が多かったと思うし、今も現場の最先端で苦闘している。ただ、そういう世代もあと10年もするといなくなる。豊富な経験とプライドを持った社員がいなくなるということだ。果たしてまた同様な災害が起こったときに、業務が回るのかという懸念を抱いている。
労働組合の課題としては、老朽化した設備の更新や、そもそも震災にも耐えうる設備・システムの開発などを通して、利益優先ではなく津波や大震災に耐えうる通信インフラの再構築を訴えることが重要だと思っている。何よりも、被災地に対する優先的で迅速即効性を持った復旧システムの再構築を、会社に要求していきたいと思っている。
●福島第一原発事故との関係
先に紹介した日経ビジネスのレポートには、住民の強い要求により復旧作業を急いだとあるが、実際には政府と東京電力からの強い要求によって行われた復旧作業である。労働組合への対応をしている時間がなかったため、管理者が直接復旧に向かったのだが、その際やはり相当の被曝をしたという報告もある。その様子は一般社員向けにも宣伝されていた。
組合との交渉の中で、社員の年間被曝量は20ミリシーベルト以下に抑えるということが会社の方針として明らかになったが、被曝の問題は単に外部被曝線量の過多にとどまるものではないということを今問題にしようとしている。また単純に30qの円の範囲内にとどまらず、いわゆるホットスポットといわれる地域も含めて、きちんとした放射線量の管理を会社として行うよう要求していく予定だ。
●いっそうの闘いをめざして
現場では5月以降、ありえない事に復旧作業をコスト計算するようになり、各県グループ会社間で復旧作業件数を競争させる動きが出てきたりした。それがほとんど作業員への負担となっていた。これは全て東日本本社の指示のもと進められている。
その結果、7月末での全面復旧を顧客に約束していたがその実現が不可能になって慌てて、追加の支援を再度各県グループ会社に依頼し、8月末での全面復旧を目指して再度動きだした。しかし、9月を過ぎても全面復旧には至っていない。
復旧作業は仮の設備での復旧が多くて今後本復旧に向けて業務量が拡大する点についてとりわけ宮城では展望がもてていないのが実態である。
電通労組としては、震災後の会社姿勢、復旧・復興作業での問題点について要求書を提出し、交渉で追求してきた。交渉では多くの点で認識の違いが明らかになった。東京の本社で被災地に来たこともない人間が色々な問題を決定しているし、震災を経てもなお変わらないコスト優先の経営姿勢が問題なのである。危機に対応できる設備、サービスのあり方を求めて行きたいと考えている。
<参考/集会資料>
「被災地における通信施設の復旧、復興の実態」
1.通信施設の被害状況(3月13日現在)
* 東北3県(岩手、宮城、福島)で385ビルが機能停止。41局所の流出、倒壊。
* 6万5千本の電柱が倒壊し、6300Kmのケーブルが引きちぎられる。
* 固定電話サービス150万回線が不通。
* 携帯電話基地局100局が倒壊、流出、6720局がサービス停止。
* 東北では5割の通信が不通に
2.被災地に設置された通信設備
* 特設公衆電話:3500
* 衛星携帯電話と携帯電話:3000
* 可搬型移動無線基地局車:30
* 無料インターネット接続コーナー:約138箇所
3.仮復旧について
● 被災地域が1回線でも使用ができて通信が可能であれば「孤立」していないと見なし【復旧】と規定している。今回は、4月末日をもって41局のうち5局を除いて復旧とした(島嶼部の2局と原発緊急避難地域3局)。
● 流出、倒壊したNTT交換所やビルの周辺に「ボックス交換局」(交換機と伝送装置をセットにした簡易なボックス)を設置して「復旧」とした。
● 本復旧は、各自治体の復興計画に基づき、沿岸部のビル設置も考慮しながら進めるとしている。
4.復旧体制について
○全国の東日本、西日本からの通信機器の収集と労働者の派遣(連日、1万人)
○宮城:約2900名(固定系)
○岩手:約2400名(固定系)
○福島:「放射能」で津波被災地に入れず、復旧作業には他県から支援なし。
○無線系(携帯電話)は東北全体で約4000名
<復旧、復興体制の問題点>
●NTTリストラによる会社分割、子会社化、業務委託による業務運営の一元的把握が妨げに。
●復旧対策室を各県、グループ会社毎に立ち上げたが連携が悪い。利用者の視点では同じNTTグループなのに、携帯と固定(光とメタル)が別受付のため対応がバラバラな点で苦情が多発。
●急ぎの復旧作業なのに、4月中旬頃から作業コストの話が現場で出されたり、支援に来ている各県会社の修理件数を競わせたりと、作業している労働者を追い込んでいる。
●「東北復興推進室」が本社組織として仙台に設置されるも、子会社からの出向で労働者を集め、労働条件は出向元でという「偽装請負」的対応。
●メタル通信から光通信へのシフトのなかで、停電時対策が施されていないため、通信不能に。メタル通信(黒電話)は、局給電(NTTビルの交換機からDC48Vを供給)のため停電時でも使用可能だが、光通信は、回線終端装置(ONU)に100Vの商用電源が必要のため、使用できない。
●公衆電話:市街地では500m四方に一台、その他は1km四方に1台の設置基準。月4000円収入のない公衆電話の撤去。学校、病院等からの撤去。
2010年3月末時点で公衆電話総数は28万3161台。2000年3月末時点の73万5812台と比べれば38.5%でしかない。大体3分の1までに減少。
公衆電話は、交換機側で「優先接続設定」されている。一般固定電話より接続しやすくなっている。今回の震災では、数が圧倒的に少ないことと、ビルが破壊したので充分な機能を果たせなかった。
●NTTビル自体の老朽化が進行していて、交換局、中継局も震災後の復旧が長時間となった。停電対策についても現在は24時間バックアップシステムのみのところが多くて、商用電源が復旧するまで使用できないエリアが拡大した。
●災害復旧手当(7千円/日)の5月末打ち切りと、原発事故警戒区域での危険手当としての災害復旧手当、倍の1万4千円。
●原発事故緊急避難地域での作業について、NTT富岡ビル(警戒区域内/第1原発から9km)での復旧作業。東電社員(放射線担当者)を立ち合わせて放射線管理をしながら実施。防護服や手袋が作業途中破れても作業を続行。防護服の裾が破れ、足に高濃度の放射性物質を帯びた土が付き、ガイガーカウンターのメーターが振り切れる状態で作業。
●警戒区域内での作業について、30km圏外は「一般作業」として扱う。
●30km圏内は、必要性と政府等からの要請があれば実施。
●作業時被爆線量の年間20msv(月間:2msv、日:0.1msv)としている(会社説明)。
5.組合の要求
・震災からの復興に向け、企業の社会的責任を明確にし、利益を社会的に還元すること。
・NTTが推進してきたひかり電話(停電で全く使用できず)、携帯電話(電池切れや輻輳対策ほかで使用不可)、171(そもそも171にかけられず)が全く役に立たなかった。唯一固定の黒電話のみが役割を果した。以上から通信の災害対策を根本的な見直すこと。
・震災で被害を受けた通信設備などの復興に内部留保を大幅に解除し、工事等には地域の復興支援の為に地元の企業などを積極的に活用し、末端の労働者の生活を保障できるよう入札単価の下限制限などを契約に盛り込むこと。
・震災に伴い、グループ内企業、協力会社の労働者に、解雇、雇い止め、労働条件の切り下げを行わないこと。また早急な通信設備の復旧工事に対しても、大幅な雇用増を行うこと。
・NTTグループのビルなど建造物に被害が出ているので、社員、作業者の安全確保に万全を期し、復旧作業についても必要な休息や、安全措置を行い、業務災害や過労死などを未然に防止すること。
・NTT「構造改革」を撤回し、退職再雇用を強要する雇用選択制度を廃止すること。
・見せしめ遠隔地・異職種強制配転された労働者を直ちに地元に戻し、復旧、復興活動に従事させること。
■以上/宮城全労協ニュース204号(2011年9月21日)

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