労働者派遣法、修正案反対!
民主党は自民・公明との間で労働者派遣法の修正・改悪協議を進め、12月7日、衆議院厚生労働委員会で3党による修正改正案を可決した。
今国会での強行採決に、共産党、社民党などが強く反対した。反対を押し切って会期の残り2日間で成立させることは「日程上、困難と判断」、民主党の平野国対委員長は8日、来年1月召集の通常国会への継続方針を表明した。
修正協議が表面化したのは11月に入ってからだった。11月16日、民主党の厚生労働部門会議は政府案の修正を了承した。「製造業派遣」「登録型派遣」の原則禁止など、政府案(民主・社民・国民新の3党合意案)の主要な部分は削除された。法案提出から1年半、政権交代によって踏み出した派遣労働の見直しは野田政権によって「骨抜き」にされた。
派遣法抜本改正を主張してきた日本弁護士連合会(日弁連)は12月5日、「真に労働者保護に資する労働者派遣法の早期抜本改正を引き続き求める会長声明」を明らかにしている。「修正案は、改正としてなお不十分である改正法案からも大きく後退したものであり、現行法と比較すれば、派遣労働者保護の目的の明記、「みなし雇用制度」の導入、マージン率の情報公開の義務付けなど改善点はあるものの、次の点で大きな問題があるといわざるを得ない」として、以下の諸点を指摘した。
「第1に、登録型派遣は、仕事がある時だけ派遣労働契約を締結するというものであり、派遣先と派遣元との契約に派遣労働者の雇用が左右される不安定雇用を生み出すものであるから、本来禁止されるべきである。
第2に、製造業務への派遣は、2008年に職と住居を失った労働者が派遣村に身を寄せる事態となったことからも明らかなように、景気後退期に大量の失業者を生み出すものであるから、直ちに禁止されるべきである。
第3に、究極の不安定雇用として社会問題となった日雇い派遣の禁止対象を改正法案以上に限定することは、雇用の安定化策としてなお不十分である。
第4に、「みなし雇用制度」は、違法派遣を規制する上で極めて重要であり、この施行を3年間延期することは、施行までの間の違法派遣を容認することにつながりかねず、直ちに施行すべきものである。」
声明は「早期抜本改正」を重ねて求め、次のように述べた。
「東日本大震災によって被災地では雇用の場が大きく失われたが、そこでも真っ先に犠牲にされたのは派遣労働者をはじめとする非正規労働者であった。また、被災地以外においても、企業の生産調整や生産拠点の移転等によって、派遣労働者をはじめとする非正規労働者が職を奪われる事態が相次いでいる。東日本大震災からの復興を含め、今、我が国において真に求められていることは、誰もが安心して人間らしく働くことができる社会を築くための労働者保護法の確立であり、雇用保険制度をはじめとする社会保障制度の充実である。
労働者派遣法の改正はこのような法制度改正の出発点となるべきものである。今回の修正案は、現行法と比較すれば改善点はあるものの、労働者保護の視点からすれば、改正法案からも大きく後退するものであり、極めて遺憾である」。
「派遣法共同行動」は12月7日、緊急院内集会を開催、社民党、共産党、民主党の議員たちが出席した。民・自・公3党は来年1月からの通常国会で修正法案を通す方針だ。派遣法修正法案阻止は2012年春闘の大きな課題となる。
民主党は鳩山首相の退陣と菅政権による参議院選挙の敗北によって「迷走」を深め、激しい党内闘争が広がった。対立の一つが「マニフェスト」の扱いだった。民主党がいま行っていることは「ねじれ国会」を乗り切るための戦術的な妥協なのか、「2009年マニフェスト」の誤りを認めた政策的な転向なのか。マニフェストの「なしくずし的な変更」が連綿と続き、その都度、党内対立が繰り返されたが、肝心な点は明らかにならないままだった。菅首相は切り捨てられ、3代目の野田政権は「党内融和」を演出する一方、「新自由主義への舞い戻り」と評されるほどの政策的な改変の道を突き進んでいる。「中間層」を強調する野田政権から「格差是正」や「非正規雇用の見直し」などの文言は消えている。
「民主党が現実から遊離した政権公約(マニフェスト)を撤回すれば、政治は前進する。これ(派遣法修正)も、その具体例だろう」「労働者保護は重要だが、派遣労働を過剰に規制すれば、雇用そのものが失われかねない。民主党のマニフェストに盛り込まれた多くの施策と同様、(民主、社民、国民新による)労働者派遣法改正案も現実的とは言えなかった」(読売新聞社説11月25日「現実路線に舵切れば前進する」)。
民主党議員はこのような主張に組みするのか。「ねじれ国会への対応」と政権公約の放棄・改悪は、次元の異なる話である。労働者派遣法でも、個々の議員の政治姿勢が明確に問われる。
以下は電通労組の声明と全労協の報告の抜粋、ならびに修正案「付帯決議案」。
<電通労組の声明(11月25日)>
労働者派遣法の骨抜き修正案反対!
政府、民主党は、派遣労働を規制する抜本改正を目指せ!
08年秋のリーマン・ショック後、製造業を中心に「派遣切り」などが続発したなか、登録型派遣の原則禁止、製造業派遣の原則禁止、日雇派遣(雇用契約期間が日々または2ヶ月以内)の原則禁止、違法派遣を受入れた場合、派遣先企業が派遣労働者に対して労働契約を申し込んだとみなす、いわゆる「みなし規定」を盛り込んだ民主、社民、国民新3党がまとめた労働者派遣法の改正案が、2010年4月の国会提出から審議が進まず継続審議となっていた。今国会でも、自民党、公明党が「企業の経営が圧迫される」として反発し、審議入りできない状態となっていた。
民主党厚生労働部門会議は、労働者派遣法改正案から、「製造業派遣」と「登録型派遣」の原則禁止などを削除し「製造業派遣、登録型派遣の在り方」を検討事項とするとし、日雇派遣禁止については、2ヶ月以内から30日以内に、違法派遣による「みなし規定」については、法施行から3年後に施行とする修正案を了承した。この「骨抜き」修正案は早ければ今国会で成立する見通しだ。
派遣労働者は約122万人で、うち法案の対象となる製造業は約9万人、登録型は約20万人。この修正案で30万人近い派遣労働者の保護が対象外となってしまうことになる。
連合の古賀会長は、製造業派遣の原則禁止を除外するなどの修正について「残念ではあるが、苦渋の選択として法案を通していくことを受け止める必要がある」と述べ、法案修正を容認する姿勢を示している。2012年春闘で非正規労働者の労働条件向上を目指すとした連合方針はどこにいってしまったのか!
自動車工業会は、製造業派遣が禁止されれば、「期間労働者を雇用しなければならなくなり、コストが高くなる。生産量が減った場合、解雇できないので企業の海外流出になり、雇用確保にならない。」として反対していたが、この修正を歓迎するとし、より一層の労働環境の規制緩和を求めている。自動車工業会の姿勢は、派遣労働者は、調整弁としての捕らえ方でしかないのが歴然としている。
「製造業派遣」禁止は、民主党マニフェスト(政権公約)の目玉であり、「政権交代」を実現できた一つの要因でもある。それを修正するということは、まさに公約違反であり、「企業経営が圧迫される」という自民、公明に擦り寄ることは、それを拒否した労働者や有権者への裏切りでなくてなんだろう。
野田政権は、震災復興を推進するためには自公の協力を欠かせないと、自らの公約を反故にしている。
私たちは、企業の要望に応え、労働者の使い捨てを追認する修正案に断固反対する。
登録型派遣の原則禁止、製造業派遣の原則禁止、日雇派遣の原則禁止、違法派遣を受入れた場合、派遣先企業が直接雇用したとする「みなし規定」を盛り込み、派遣労働を規制する労働者保護法としての労働者派遣法の抜本改正を求めるものである。
2011年11月25日
電気通信産業労働組合本部執行委員会
(電通労組機関紙「真紅の旗」12月5日<346号>より)
<全労協fax情報(12月8日)抜粋>
労働者派遣法の抜本改正を!
民・自・公による「骨抜き修正案」可決糾弾!
★登録型派遣の禁止、製造業派遣の禁止規定を削除
★みなし規定の施行3年繰り延べ、等
附帯決議で「違法」派遣の取締を止めろと要求!!
(略)・・(3党修正案は)文字通り政府案を「換骨奪胎」したものである。到底許されるべきではなく、労働者の声を直接聞く機会を設ける、慎重審議を行い政府案の可決こそ求められているのである。しかし、国会は会期末間近の12月7日に厚生労働委員会を強行開催し、都合3時間の審議で夜には採決を強行し可決した。
この法案には附帯決議が添えられ、「期間制限違反の指導監督については丁寧・適切に必要な限度においてのみ実施するよう」「労働契約申し込みみなし規定の適用に当たっては・・・期間制限違反に該当するかどうか等助言を丁寧に行うこと」・・など、違法派遣、偽装請負の指導に手心を加え、「厳しい取締をするな!」と要求しているのである。前代未聞の付帯決議と言うべきである。
悪質派遣業者を更にはびこらせ、修正案が成立したとしても大きな禍根を残すものとなろうとしている。私たちは引き続き参議院段階においても慎重審議を求め、労働者派遣法の抜本改正を求める国会内外の闘いを強めていこう。(以下、略)。
<資料>
改正案に対する附帯決議(案)
政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。
1 登録型派遣の在り方、製造業派遣の在り方及び特定労働者派遣事業の在り方については、本法施行後一年経過後をめどに、東日本大震災による雇用状況、デフレ・円高等の産業に与える影響及び派遣労働者の就労機会の確保等も勘案して論点を整理し、労働政策審議会での議論を開始すること。
2 いわゆる専門二十六業務に該当するかどうかによって派遣期間の取扱いが大きく変わる現行制度について、派遣労働者や派遣元・派遣先企業に分かりやすい制度となるよう、速やかに見直しの検討を開始すること。検討の結論が出るまでの間、期間制限違反の指導監督については、労働契約申込みみなし制度が創設されること等も踏まえ、丁寧・適切に、必要な限度においてのみ実施するよう改めること。
労働契約申込みみなし規定の適用に当たっては、事業者及び労働者に対し、期間制限違反に該当するかどうか等の助言を丁寧に行うこと。
3 いわゆる偽装請負の指導監督については、労働契約申込みみなし制度が創設されること等も踏まえ、丁寧・適切に実施するよう改めること。
労働契約申込みみなし規定が適用される「偽装する意図を持っているケース」を、具体的に明確化すること。併せて、事業者及び労働者に対し、偽装請負に該当するかどうかの助言を丁寧に行うとともに、労働者派遣と請負の区分基準を更に明確化すること。
4 労働契約申込みみなし制度の創設に当たり、派遣労働者の就業機会が縮小することのないよう、周知と意見聴取を徹底するよう努めること。
(5〜7は略)
■以上/宮城全労協ニュース210号(2011年12月8日)