宮城全労協ニュース/第211号(電子版)/2011年12月13日

被災9か月、県に申し入れ
   (資料/申し入れ書)



 12月13日、宮城全労協は宮城県に対する申し入れを行った(申し入れ書は資料参照)。


 とくに秋以降、宮城県は遅れている、「復興事業の達成率は被災3県の中で最も低い」と問題にされてきた。厚生労働省もその点を指摘し、大臣みずからが仮設住宅を視察、居住者の要望を聞いた。村井知事を先頭とする県との微妙な「さや当て」だった。

 岩手、福島と宮城の3県は状況が異なるから「達成率」などの数値は吟味する必要がある。しかし、多くの現場で遅れが指摘されてきたことは事実だ。だから知事は、いわゆる「宮城県方式」を考え直すべきだったのだ。知事に反省の姿勢は見られない。

 
 一方、党内外で防戦に追いやられた野田政府は、これ以上の失点を防ぐため会期を延長せずに国会を閉じた。自民党は政権を打倒する手立てを見いだせないままだ。国会閉幕直後、全国紙各紙はこぞって、内閣不支持率が支持率を上回ったと報じた。「(TPP、消費税、安全保障問題など)自分の代で国難をしっかりと受け止め、不退転の覚悟でやりたい。捨て石になってけりをつける」。野田首相は若手経営者たちとの会合に出席、そのように強調したという。

 その会期末に震災関連の重要法案がいくつか成立した。主に民・自・公3党による修正協議の末に可決されたものだが、被災から9か月が経過してのことだ。

 その一つ特区法案は全会一致で成立した(共産党とみんなの党は各々修正案を提出、否決された上で)。宮城県が強く主張した「水産業特区」には附帯決議がつけられた。村井知事の強硬姿勢を案じてのことだろうが、政治の側の「アリバイ証明」にならないとは限らない。マスコミも附帯決議についてほとんど報じていない。宮城県が漁港の集約方針を具体的に示したは、その数日後のことだ。

「震災便乗型」の上からの復興事業が、なし崩し的に進んでいる。行政による排除・切り捨てを許さないために、民衆の連帯がますます求められている。






<震災対応に関する宮城県への申し入れ>

宮城全労協/2011年12月13日



 宮城県は8月17日、復興計画最終案をとりまとめ、県議会は10月19日、10年間342事業に及ぶ復興方針を賛成多数で可決しました。この間、宮城県の取り組みや知事の姿勢、いわゆる「宮城県方式」に対して様々な要望や批判が提起されてきました。

村井知事は政府の対応の遅れ、とくに「復興財源」が不明確であるために県段階での施策の具体化に踏み切れないと弁明してきました。被災から9か月、知事のそのような言い訳は通用しません。

 被災県民は復旧・復興が進まず、また政策が矛盾をきたすなかで、生活不安に直面しつづけてきました。とくに仮設住宅では冬への不安が増しています。県と国は、被災県民の声に向き合い、被災市町村を支援し、復旧・復興事業に全力をつくさねばなりません。

 宮城県の復興議論は、委員の人選や会議の東京開催など、当初から「中央志向」だと指摘されてきました。知事は、「地球規模で物事を考えているような方たち」に「大所高所からまず見て」ほしいから、あえてそのようにしたと反論しました。

 しかし、基礎自治体からも、地元の第一次産業からも、住民諸組織からも、労働団体は言うに及ばす中小零細の商工会議所や地元金融機関からも委員が選出されないまま、「復興議論」が進められてきました。「地域主権」「地方分権」ならぬ中央志向の弊害は、県議会与党会派でさえ問題ありとした「水産業特区」の一方的な押し付けが象徴しています。

 宮城県の復興計画は野村総合研究所、三菱総合研究所、日本総合研究所など、特定の財界系大手研究機関と密接な関係にあります。議長の小宮山宏氏は昨秋、「プラチナ構想ネットワーク」という団体の設立を呼びかけ、村井知事は発起人に名を連ねています。復興会議の議論内容と関連があるにもかかわらず、このような経緯は県民に説明されていません。

 大震災をショック療法のごとくに利用して社会を上から変えようとする動きへの批判が広がっており、「宮城県方式」への懸念や批判が表明されてきました。「惨事便乗型復興」は住民を二重の意味で排除します。被災地(故郷)からの排除であり、復旧・復興方針づくりからの排除です。そのような「復興」は破綻するに違いありません。

 住居、医療・福祉・教育、水産業と農業、雇用など、最優先されるべき被災地の生活再建が進んでいません「汚染稲わらの措置」や「震災関連死の審査」などは一向に進まず、湾岸改修や被災学校の復旧、鉄道再建等の交通インフラ、被災家屋の修理など大きな課題に直面しつづけています。

 県の復興計画は「復旧にとどまらない抜本的な再構築」「現代社会の課題を解決する先進的な地域づくり」などを掲げていますが、被災地を「実験場」とし、被災住民を「絵に描いた未来都市案」によって排除することは、あってはなりません。「県民一人ひとりが主体」(宮城県復興計画)となる復旧・復興を進めるよう、知事と宮城県に求めます。


 以上について知事の見解をうかがうとともに、以下の諸点を申し入れます。



(1)国の復興計画(防災集団移転促進等)ならびに防災方針について


1.政府は10月21日、宮城県と関係市町村に対して、第三次補正予算の説明会を行いました。その内容と、とくに交付金にかかわるその後の進展について説明されたい。

2.「住民合意」について

 第三次補正予算案は被災自治体の要望を受け入れ、「防災集団移転促進事業」にかかる費用の全額を国が負担するとしています。交付金取得のためには、住民合意のもとで自治体が計画書を提出することが前提となっています。しかし、被災地では集団移転に賛否両論があり、一つの意見でまとまっているわけではありません。「住民合意」が住民への強制や排除にならないよう、細心の注意をもって対応するよう要請します。

3.基礎自治体の業務への支援について

 実行に移されるとすれば、過去に例のない大規模な事業となり、被災自治体単独の力量では不可能です。県および国の基礎自治体への支援を求めます。

4.路線価の調整ならびに土地価格高騰について

 国税庁は路線価調整(11月1日)を、被災地住民の税金負担の軽減になると説明しています。しかし、資産価値の大幅下落に反発し、価値減少に見合う国や自治体による補償を求める声もあがっています。国税庁の真意は、被災住民の排除を進め、被災地の「流動性」を高めることにあるのではないかとの疑念が広がっています。一方、自宅再建用土地の需要が高まり、価格の急高騰が高台地域のみならず平野部でも指摘されています。

 国と自治体による説明会の実施等、早期の対策を求めます。

5.中央防災会議(専門調査会、9月28日)最終報告では、「歩いて5分程度」を掲げています。このような一律方針は有効でしょうか。

 大震災の検証が部分的ではあれ様々な分野で進んでいます。そこで明らかになりつつあることは、過去の教訓を生かした地域の態勢があり、地震発生から津波到達までの時間との闘いが準備されており、そして沿岸部の浸水地域に複数の強固な高層避難拠点があれば、これほどの人命を失うことはなかったということです。

「人命」が第一であり、地域一体となった防災合意と避難訓練、避難ルートの確保と避難拠点の構築、車椅子での避難のためのスロープの敷設、病院・学校等の公的施設の防災拠点併用化など、地域社会の実情と地形を考慮した「重層的な対策」が必要です。

 また一律な「高台集団移転」は再考すべきです。地域コミュニティの破壊、職と住の分断に加え、必ずしも防災上の唯一の方策ではないからです。実際、住民の意見は多様であり、地域によっては意見の相違も深まっています。県の見解を求めます。



(2)仮設住宅の居住環境改善等について


 仮設住宅では生活苦難に加えて、不眠症、外出ができないなどの生活不活発病、うつ症状などが広がり、孤立・孤独の危機が広がっていると多くの人々が指摘し、行政対応を求めてきました。しかし、居住者はいまなお劣悪な環境を強いられています。

 厚労省プロジェクトチームによる調査(10月1日報道)では、「玄関の風雨よけ」「てすり・スロープ」「砂砂利の舗装」などで宮城県が際立って遅れており、とくに寒さ対策では0%の項目もありました。防寒追加工事は10月24日から順次、県内15市町の全21,520戸を対象に開始されましたが、年内達成が不安視されています。

「批判は受け止める、結果的に被災者に寒い思いをさせているのは事実だ」(知事)。知事の視線と被災地・住民の現実のすれ違いが、この「結果的に」という言葉に現れています。仮設住宅の住環境の改善は行政の急務です。


1.寒さ対策工事の早期完成を求める。

2.毛布、寝具、暖房機器等が必要な居住者には公費支給・敷設を求める。

3.仮設住宅での防火対策の早急な実施を求める。

4.県内仮設入居者の孤独死と自殺は12名にのぼっている(10月、NHK報道)。痛ましい手記も報道された。抽選入居により地域的つながりが解体された、孤立を助長する住宅仕様、「段差や砂利道では歩行が困難」「病院・診療所から遠い」「買い物ができない」「弱者が生活できない住環境」など、仮設の問題点は当初から指摘され、ボランティア等が奮闘してきた。冬を迎えようとしており、行政の抜本的な対応強化が問われている。
 医療・福祉部局との密接な連携、常時訪問・相談態勢、住民自治組織やボランティア等との協力態勢など、種々の改善措置を求める。

5.小宮山厚生労働大臣は11月3日、仙台市内の仮設住宅を視察し、「敷地の舗装や風呂の問題など、県や市と綿密な連携を図り、早急に対応したい」「国と県、市の連携がスムーズにできていない部分がある。各自治体と連携して施策のスピードを上げたい」と発言している。その後、どのような進展が具体的にあったか説明していただきたい。



(3)医療・福祉施設、学校の復旧と再建について


 医療・福祉施設・学校の復旧・再建は、被災地住民の地域への再結集にとって不可欠であり、優先的な復旧方針が必要です。県では「地域医療再生」等、過疎対策の視点を含めた中長期的なプログラム検討がなされていますが、何よりも地域の公的機能の復旧が急がれます。そのスタンスの違いが、対立となって表面化する例もあります。住民の意見、とくに患者や介護施設等の利用者、通学者とその家族の意見を尊重した行政対応が必要です。

 以下、見解もしくは施策の説明を求めます。

1.自治体病院等、地域拠点病院の機能回復の現状と課題について
2.被災地の医師・医療従事者の状況について
3.開業医への支援策について
4.介護施設の復旧現状と支援策について
5.被災学校の再建方針について(宮城県では、他校などに間借り46校のうち、仮設校舎建設の方向が19校、残り27校が方針未定とされる。)
6.就学支援やスクールカウンセリングなど、児童・生徒への支援策について
7.教職員の配置計画と勤務環境の改善について



(4)「人口流出」及び建設制限「解除」等について


1.たとえば石巻市雄勝地区に関して「住民の8割が避難、漁村は存亡の岐路」(5月)、「地域の人口は7割減」(9月)などと報じられました。行政対応の遅れや建築制限が「人口流出」を広げてきました。石巻市については広域合併の弊害も指摘されています。「流出」の実態、地域自治組織の現状、県の対策について説明を求めます。

2.11月10日、被災地の建築制限(乱開発の防止)は特例法による8か月の期限を迎え、解除されました。今回の措置は条件付き解除であり、各自治体の今後の計画によっては再建後に立ち退き要求される事態も想定されます。一方、知事は9月29日の県議会で、「津波で浸水した地域であっても、安全性が確認された場合、市街地の形成は許容できる」と発言しています。被災住民への明確な説明を求めます。

3.内陸部の地震被災家屋、被災マンション、沿岸部での修理家屋などの対策が進まず、行政に支援を求める声が高まっています。県の現状把握と対策の説明を求めます。

4.災害公営住宅(県内1万2千戸、15年完成)建設計画ならびに「仮設以後」の総合的住宅政策について、その説明を求めます。



(5)地元雇用の拡大について


 宮城県の雇用状況は極めて深刻です。「震災復興需要」が内陸部を中心に求人を押し上げており、県内の有効求人数は増加しているなどと報告されてきましたが、11月末に発表された10月の完全失業率は7.5%と群を抜いています。とくに沿岸部の雇用危機は長期化し、失業手当の受給者数は前年同月比で5倍ないし10倍に達しています。

 政府は、失業者への雇用保険の給付がとぎれる「10月問題」を前に、日数を再延長しました(被災自治体全域ではない)が、一時しのぎにすぎません。宮城県は9月末、県内で最大11万人超が震災後に失業・休業していると推計しています。震災前の就業者数の実に1割超に及びます。地元雇用の拡大が決定的に必要なことは明らかです。


1.自治体の時限措置による臨時雇用は期限切れにさしかかっている。石巻市では10月末で200人、さらに11月末と続き、就職先を斡旋しているが状況は厳しい。自治体雇用の継続、拡大、長期雇用の実現を求める。

2.高校卒業予定者の地元雇用へ全力をあげること。

3.水産加工業の一刻も早い再建など、沿岸部での雇用回復に集中的な対策を求める。

4.国の助成要件は非現実的だとの指摘がなされてきた(被災者雇用開発助成金では、震災直後に解雇した従業員の再雇用は助成対象外など)。国に改善を要求すること。

5.「震災便乗解雇」の実態把握と対策を求める。



(6)水産業特区ならびに漁港集約方針について


1.「水産業特区」に関する知事の強硬姿勢は漁協等の強い反対にあい、県議会でも多数派会派を含めて批判や慎重意見が広がりました。知事の「トップダウン方式」が復旧・復興の妨げとなったとの批判について、知事の見解を明らかにしていただきたい。

2.知事は先の県議会終了にあたって「(特区導入は)23年まで」「要望した本県が導入しないことはありえない」と述べています。これは「話し合えば合意点は見い出せる」という自身の発言に反するものです。特区導入の白紙撤回を求めます。

3.12月7日に可決された「復興特区」(一部修正)法には「(水産特区の導入に際し)国は浜全体の資源・漁場の管理に責任を持ち、万全を期した措置を講ずる」等の附帯決議がつけられました。これは行政の独走を懸念するものですが、知事の見解を求めます。

4.県が12月8日、県漁協に伝えた「60拠点漁港への集約」方針に対して、「漁業者の気持ちがくじけてしまうのではないか」「残りは廃港にされ、地域も切り捨てられるのではないか」等の不安の声があがっています。県の再考を求めます。



(7)TPP参加問題について


 宮城県の復興会議では、第一次産業の国際競争力を高めるために、規制緩和による大規模集約が必要であるなどの議論がなされてきました。これはTPP参加を支持・推進する立場です。知事も「集約・大規模化」「競争力ある第一次産業」を主張してきました。

 知事は今回の野田首相の「交渉参加」表明について、「十分な説明責任が果たされたとは言えない」「不安を払拭できるような対策を明確に」と指摘しつつ、「まず走りながら考えることが重要」とも発言しています(日経新聞11月6日等)。

 第一次産業、医療、消費者団体などをはじめ、県内ではTPP参加反対の声が大きくあがっています。県議会選挙でも参加を主張した候補者は、知事が応援した県政与党候補者をふくめて圧倒的少数です。

 知事はTPP参加を支持・推進するのか、反対するのか。明確な見解を求めます。



(8)女川原発問題ならびに放射能汚染対策について


 知事は、原発問題は国のエネルギー政策であるとして、女川原発の再稼働について賛否を明らかにしていません。被災地の知事として無責任です。東北電力は女川原発の「ストレステスト2次評価」に着手、年内にも報告の予定です。知事の方針が問われています。

 女川原発が「綱渡り的」(視察した原子力安全委員会小委員会の委員発言など)であったこと、さらに「やらせ問題」という反社会的実態が浮かび上がったいま、立地県の知事として「脱原発」に舵を切るべきです。原子力防災重点地域30キロ圏への拡大対象となった5市町(南三陸、登米、涌谷、美里、東松島)も当然のことながら「慎重姿勢」です。

 放射能汚染対策では、宮城県は当初から積極的ではなく、汚染対策や「稲わら」問題など後手対応が生産者や住民から批判されてきました。「(放射線量の)詳細な数値を出したところで消費者の皆さんは理解ができない」等、県民が失望する知事の発言もあり、県は放射能・原発問題について、「及び腰だ」と批判を浴びてきました。
 
 見解をうかがうとともに、以下の点について申し入れます。

 
1.東北電力のいわゆる「やらせ」について、県は11月2日、「強制はないが誤解を招き不適切」とする調査結果を公表した。東北電力は過去、釈明や陳謝を繰り返してきたが、その傲慢な態度は一向に改まっていない。東北電力への厳しい責任追及を県に求める。

2.東北電力は「有識者会議」を設置した。県はその内容を住民に公開させること。

3.知事は「原発推進か否かの対立軸は、どうでもいいと思っている。大切なのはエネル ギーの国産化を進めることだ。国産となれば自然エネルギーしかあり得ない。もっと大き な視点で考えるべきだ」(河北新報9月10日)と述べている。再稼働問題は大きな問題ではないということか。真意を疑われる発言であり、説明を求める。

4.居住地、下水道等の公的施設、教育・福祉施設、産品・食品等、住民が求める汚染調査を実施し、その結果を公表すること。

5.「汚染稲わら」の措置は、国と東電の責任を明らかにし、地元了解を得て進めること。

6.県による丸森町2地区での児童の甲状腺検査がようやく実施された。つきそった親たちは継続的検査にこそ意味があると訴えた。県南地域住民は「福島県並みの対応」を求めている。県は積極的な対応方針を住民に示すこと。また高線量検出が問題となってきた女川周辺および県北地域での測定を強化し、公表すること。

 以上



■以上/宮城全労協ニュース211号(2011年12月13日)