最賃宮城に異議を申し出
宮城全労協は宮城地方最低賃金審議会の今年度改定額の答申(8月22日)に対して異議を申し出ていたが、異議に対して9月7日、審議会は「答申どおり決定が適当」とし、時給685円(前年度から10円の引き上げ)が決定した。
これにより、前年度に引き続いて「生活保護水準との乖離」(今年度改定額で9円)が継続することとなった。宮城地方最賃審議会の姿勢が厳しく問われねばならない。
(参照/ニュース229号/8月4日)
全国都道府県での改定額は「平均749円」(平均12円の引き上げ)となった。「雇用戦略対話」が早期に実現と合意した「全国最低800円」を大きく下回っている。改定額749円では上限でも月額12万円程度にとどまり、東北地方などはそれを更に下回る低賃金となる。
生活保護との逆転は宮城、北海道など6都道府県で解消されていない。自民党からの生活保護制度への攻撃が強まっており、野田政府では「見直し」の動きが活発化している。
最低賃金の大幅引き上げの実現を求め、生活保護制度への攻撃を打破するために、今秋からの闘いを進めよう!
●資料/宮城全労協(2012年9月2日)
「宮城県最低賃金の改正決定」(答申)への異議申出書
宮城地方最低賃金審議会の意見(「宮城県最低賃金の改正決定について(答申)平成24年8月22日」)に対して、最低賃金法の関係規定にもとづき、宮城全労協は以下のとおり異議申出を行います。
なお宮城全労協の意見は7月22日、審議会に対して提出しています。
<異議の内容>
異議の内容は次のとおりです。
1.「685円(時間10円引き上げ)」はあまりにも低額です。「格差是正」「働く貧困層の生活改善」には遠く及ばす、改正最賃法の趣旨にも反します。
2.「生活保護水準との乖離」(19円)が今年も解消されていません。
3.昨年に引き続き、「大震災の甚大な影響」が答申の主要な根拠とされています。最低賃金の大幅引き上げが被災地・被災民衆を励まし、地域経済再建につながるのであって、震災ゆえに「生活保護水準との乖離の解消」はできないとする宮城の議論は逆転しています。
4.審議内容が地域労働者に伝わっていません。全審議の公開が必要です。
以上、再審議を求めます。
<異議の理由>
(1) 宮城地方最低賃金審議会は8月22日、今年度の「宮城県最低賃金の改正決定」について「1時間685円」(前年度675円)とする答申を行いました。
最賃大幅引き上げは労働者の切実な要求です。宮城全労協は「全国一律で時給1千円」を求めてきました(審議会への意見書/2012年7月22日提出)。「685円」はあまりにかけ離れています。中小・零細企業で働く労働者、非正規雇用労働者など、低賃金を強いられている労働者の生活改善にとって、この答申額はまったく不十分です。
国際的にみても低すぎる最低賃金が様々な矛盾や悪循環をもたらし、将来不安の大きな要因になっています。親世代への経済的依存の深まり、税や年金等の納付率の低下、なかでも「結婚できない、子どもを産み育てることができない」という若者世代の現状は深刻な社会的危機として認識されてきました。
700円にも満たない最低賃金で、そのような危機を打開することは不可能です。5年ぶりに見直された政府の「自殺総合対策大綱」は「若者層の自殺の深刻化」に焦点をあて、その要因に雇用、労働のあり方をあげています。将来を語ることすらできない低賃金が、多くの若者たちを追いつめていることは明らかです。
「生活保護との整合性に配慮」を盛り込んだ最賃法の改正(2008年)、「全国で早期に800円、2020年までに景気状況に配慮しつつ全国平均1000円」という政労使による引上げ目標の合意(2010年「雇用戦略対話」)は、そのような社会的要請に沿ったものでした。しかし、「全国最低800円」という合意の第一段階が達成されず、しかも昨年度、引き上げ率にブレーキがかかり、今年度の中央審議会による「目安」も平均7円にとどまるものでした。
最賃引き上げの抑制から、引き上げの再加速化に転じなければなりません。
なお、答申の10円引き上げは、大震災以降2年の平均では5.5円という低額であることを付記しておきます。
(2)「生活保護に係る施策との整合性」について、昨年の審議会は「予定解消年数を一年間延長して」「予定解消期間を平成24年度とした」と答申しました。
今年度の答申は「解消期間を更に1年間延長して10円の引き上げとすることが適当である」としています。一年の延長を強いられた宮城県で今年度の「乖離解消」に大きな期待が集まっていましたが、今年もまた、再延長の答申でした。
私たちは昨年、次のように危惧を表明しました。
「来年について、「最新のデータに基づき最低賃金と生活保護水準との比較を行い、本県の経済・企業・雇用動向等も踏まえるものとする」との表現によって、いわば<付帯条件>をつけ、乖離解消の再延長あるいは不履行に道をひらく可能性を示唆しているといえます。」(異議申出書、2011年9月11日)
宮城地方審議会の度重なる「繰り延べ」に、最賃引き上げを生活改善への起点にしようと期待する労働者たちは、怒り、幻滅しています。
最低賃金と生活保護費の逆転の解消は緊急に求められていることであり、このようにして引き延ばしていく審議会の姿勢と答申内容を容認することはできません。
(3) 宮城全労協は昨年の審議に対して、大震災被災地での最低賃金審議会の役割は格別に重要であると指摘しました(以下、意見書ならびに異議申出書から抜粋)。
「大震災からの『復旧・復興』はあまりにも遅く不十分であり、地震・津波・原発事故の被災地では怒りと絶望が渦巻いています。『自殺・孤独死・関連死』により、連日、多くの人々の命が奪われています。このような現実に踏まえて審議がなされ、被災地と被災民衆が希望を見出しうる最低賃金の大幅な引き上げを答申されるよう要請し、意見とします」。
「被災地の最賃審議会は、このような「社会の分裂」に対して、どのように対処するのでしょうか。大企業が徹底的に求める「経済整合性・効率性」の観点で進むのでしょうか。それとも被災労働者・民衆とともに、再建への道を歩もうとするのでしょうか。軋轢や矛盾をかかえざるをえない地域最賃審議の、真価がまさに、問われているはずです。」
一年たったいま、被災地での最賃審議への注目が高まっています。たとえば地元紙は中央審議会の目安を受けて、「震災の影響について、労使の見解は分かれている」と述べたうえで、次のように主張しています。
「被災企業への「配慮」とは、賃金引き上げを猶予する配慮ではなく、賃金向上に向けた努力を促す措置であるべきだ。」(河北新報社説「本質は地方の苦しさにある」8月3日)。
さらに社説は、「逆転現象は、解消されれば事足りる種類の問題ではない。逆転現象の背景にある地方の苦境が、問題の核心だ」と続けています。
東日本大震災が襲ったのは最低賃金が相対的に低い地域でした。「大震災による地域への甚大な影響」を主要な理由として「逆転現象」を解消しないという結論は、地震・津波・原発事故によって未曽有の打撃を受けた被災地の苦境を放置し、東北地方が歴史的に担わされてきた「中央への従属的な位置」を固定化することにつながるものです。
被災地東北地方では今年度、青森などで一歩前進と評価されています。青森は「4〜5円」の目安に対して7円の引き上げによって「逆転」解消の答申がなされました。
岩手では「4円」の目安に対して8円の引き上げが答申されました。岩手労働局長は「今後の震災復興の礎にもなる。速やかな施行に向け努力したい」と述べています(岩手日日新聞、8月24日)。地元紙の文面からは、8円が十分であるかは別として、今年度の最賃引き上げは震災復興に資するだろうという手応えをうかがい知ることができます。
そのような対比においても、宮城の審議会答申はきわめて残念なものです。大震災被災地を励ますという意思を感じることのできない、後ろ向きな姿勢だと言わざるをえません。
さらに「大震災の甚大な影響」を「逆転解消」の不履行の理由とすることは、「被災地の最低賃金の規制緩和」という最賃制度をふみにじる主張(たとえば日経新聞2月21日社説)の、いわば呼び水となっていると考えます。
(4) 地域の労働者たち、とくに最低賃金の対象となる労働者たちが、審議内容を知り、意見を表明することが十分に保障されていなければなりません。現状はそのようになってはいません。また、審議会の答申内容はきわめて限定的にしか報道されていません。
最低賃金審議は当該地域、当該対象労働者に開かれていなければなりません。どのように「開く」のか、審議会および審議委員各位が改善に向けての施策を検討し、実行することを求めます。
そのような改善のためにも、全審議の公開が必要です。最低賃金という公的な性格上、労働者が審議の内容と成り行きを知ることは、当然の権利です。
(2012年9月2日/宮城全労協)
■以上/宮城全労協ニュース231号(2012年9月12日)