「大震災2周年」が終わった
「2周年」の大々的な報道が繰り返された。
著名人たちの過度な演出や効果音を安易に多用する番組も目立った。「3・11」を国民統合のイベントとして政治利用するばかりか、絶好の「消費対象」にしようとする商業主義の仕掛けも見えた。
集中報道の喧騒には違和感も表明された。地元のある番組が視聴者からの投書を報じていた。当日、子供は「どのチャンネルも震災で、いやだ」と遊びに出た。夕方、戻ってきて「2時46分に友だちと手をあわせたよ」と母親に告げた。
被災地から中継された番組の多くは、「東北の人たちは我慢強い」という枕詞に続いて、復興は進んでいない、格差が広がっている、風化が懸念されると報じた。取材ラッシュのなか、被災者たちはそれぞれの境遇を、一人ひとりの言葉と表情で語っていた。
●「進んでいない震災復興」
復旧・復興格差は深刻だ。自治体、産業・業種、被災者一人ひとりの生活環境まで、格差は影響しあい、広がっている。「一人勝ち」と言われる仙台市と、「人口流出」が続く沿岸部自治体とでは、様相がまったく異なる。同じ市や町の中でも、場所によって事情は様々だ。
災害公営住宅の建設など、住まいの再建が遅れている。仮設住宅の高齢者たちは健康を崩し、孤独の日々を送っている。子供たちへの影響も大きい。
津波被災地の主力産業である水産業は、漁港や関連施設など、多くの分野でいまだ復旧していない。
作業現場では労働者も資材も不足している。その結果、予算は確保されても執行されず、繰り越されている。
医療、介護、福祉、教育など「民生」部門の復旧が遅れており、支援を訴える現場の声はやまない。
一方、被災地を支えてきたボランティア活動が転機を迎えている。政府支援も縮小し、撤退を余儀なくされているケースが続出している。
なぜ事態は改善されないのか。報道の多くが、そこで止まった。いまさら民主党批判でもない、とりあえずは新政権の取り組みを見守ろう。それが基本的な姿勢だった。自民党の責任を不問とする、空白状況がそこにあった。
端的に現れたのが、福島に関する報道だ。
安倍政権は「早期帰還」を重点施策に掲げている。「除染基準」と「帰還基準」の関係がとりざたされている。福島県知事も国に、あらたな安全基準を示すよう求めた。放射能汚染は憂慮すべきレベルではない、住民の帰還を阻んでいるのは「非科学的な数値だ」とする論調が政権交替に乗って強まっている。
「帰還ありき」ではないか、「分断と選択」を原発被災者に強要するのかと、疑念と抗議の声があがっている。しかし、帰還が困難な状況を報じ、「除染」の問題点を指摘しているにもかかわらず、「2周年報道」の多くは、国の除染事業の進捗を期待するにとどまった。
規制委員会が「独善」と批判されている状況がある(たとえば読売新聞社説、2月28日「規制委の独善に注文がついた」)。2周年直後の衆議院予算委員会で「セシウム強制避難を全面解除すべきだ」という維新の会議員の発言が飛び出したのも、偶然ではないだろう。大きな流れの転換が進んでいる。
●原発事故責任をタブー化した政府式典
首相は安保・防衛問題で「いま、そこにある危機」という表現を好んで使っているが、福島第一原発が危機でありつづけているという認識は、ない。野田首相の「事故収束」宣言を撤回するのか、踏襲するのかについても、あいまいなままだ。
そのような政府の「大震災2周年式典」は原発事故の責任にはふれず、自民党が推進してきた原発政策への反省さえ見られなかった。
「原発事故のためにいまだふるさとに戻れない方々も多くおられます」。これが、唯一の首相発言だ。首相はそのような表現で「帰還」促進が「福島再生」の最優先課題だと印象づけた。
福島県遺族代表は、「山積する課題」のなかで一言「放射能不安」にふれた。その心中は計り知れない。
「首相式辞」はきわめて政治的だった。「(わが国の先人たちにならい)前を向いて歩んでいく」という表現には、原発推進政策の復活にかける首相の決意がこめられている。公明党が再考を求めている「強靭」という言葉(「わが国全土にわたって災害に強い強靭な国づくり」)をあえて使ってもいた。
海外からの大震災支援への感謝がうたわれているにもかかわらず、そして環太平洋地域での地震・津波災害への協調対応が問われているにもかかわらず、前月にソロモン諸島を襲った大津波への関心は払われなかった。
テレビは淡々と式典を中継した。中国と韓国の政府代表が不在であったことは、事後、わずかに報じられただけだ。
政府式典の直後、首相は記者会見を開き「福島再生」をはじめとする復興方針を説明した。内容に新しさはない。現場主義、実績づくり、工程表作成等の繰り返しだ。
質疑には3人の記者から質問があった。首相は質問の主要な点に応えず、一方的に話し、読み続けた。
具体的にと質問された福島振興策では、洋上風力発電(漁場を奪われる地元漁業者たちは反対している)と医療拠点化をあげたが、前政権時代から提唱され進行中のことだ。第一次産業については、触れることさえなかった。記者会見はそこで打ち切られた。こうして首相会見もまた、淡々と進んだ。
●復興推進委員会の新人事と自公の緊急提言
復興庁の2本社体制として福島復興再生総局を発足させて以降、「2周年」を前後して、新政権にいくつかの動きがあった。復興推進委員会の新人事の発表、与党の緊急提言、福島の「帰還・定住プラン」や災害公営住宅整備の工程表の発表などだ。
3月7日、政府の復興推進会議と原子力災害対策本部の合同会合がもたれた。そこで葛尾村、富岡町、浪江町などの区域見直しが決定され、あわせて「早期帰還・定住プラン」「帰還困難区域における除染モデル実証事業」が報告された。強調されているのは、「国は避難指示解除を待つことなく、前面に立って施策を速やかに実行に移す」こと、「これにより、今後1、2年で帰還を目指すことが可能となる区域等において、避難住民の早期帰還・定住を実現する」ことであった。「今年夏ごろを目途に、早期帰還に向けた具体的な道筋を示す工程表を策定し、時間軸を示しながら取組を進める」ことが確認された。
自治体から強く出されていた「使い勝手のある復興交付金を」との要望については、運用の柔軟化が示されたが、具体的にはこれからだ。
また「住まいの工程表」(住宅再建・復興まちづくりの加速化に向けた施策パッケージ)が報告された。工程表といっても、各県と被災自治体がとりまとめたものを一覧にしたものだ。加速化の措置についても、技術者・技能者不足、生コン等の資材不足、自治体の職員不足などは以前から指摘されてきたことだ。
「工程表」の重視は、いわゆる「見える化」によって競争の効果を期待するものだという。しかし、スピードアップを演出するあまり工程表が一人歩きし、現実と離れた成果主義に走らないか、懸念される。
復興推進委員会については3月6日、新しい人事が公表された。委員長はこの間、何かと話題にのぼった伊藤元重東大教授だった。安倍首相の強い思い入れを感じる。
五百旗頭委員長の前委員会は2月6日「平成24年度の審議報告」を了承している。昨年9月の「中間報告」をもとに作成された「2年間の総括及び今後の課題」に関する報告文だ。最後となった委員会はこれを審議、了承したが、人事についてはいっさい触れられていない。新人事のリスト公開にあたっても、両者から何の説明もない。人事刷新、新体制の人選、前委員会の「審議報告の扱いについて、安倍政権はなぜ説明しないのか。
同じく3月6日、自民党と公明党は「復興加速化のための緊急提言」を政府に対して行った。首相が「2周年」に際して述べた「来年は希望の式典に」という言葉は、緊急提言の副題(「震災三年目の冬を希望を持って迎えるために」)を引用したものだ。首相は与党からの要望への配慮をアピールしているわけだ。その関係は民主党政権時代とは大きく異なる。
被災地の自公両党がくみ上げてきた意見が、提言に反映されている。被災地住民の多くが関心を寄せる内容が含まれている。安倍政権がいう「現場主義」には、そのような基盤がある。
提言の第一は「住まいの再建」であり、第二の「暮らしや生業・産業・基幹交通の復興」の第一項が「医療・介護」である。
同時に、寄せ集め的なばらつきも目立つ。たとえば「農地の復旧」と「大区画化」が並列されているが、矛盾なく進むか。
「創造的復興」や「選択と集中」は被災地の実情と衝突し、復旧現場に混乱や対立をもたらしてきた。そのような問題は、緊急提言とすることで棚上げしたということだろうか。たとえば、地元自民党は宮城県議会で村井知事の「水産業特区」に慎重な態度をとってきたが、提言では触れられていない。「東北を新たな食料供給基地として再生する」と言いながら、TPPについての言及もない。
●「新しい東北の創造」(推進委員会)とは?
復興推進委員会は6月を目途に、「新しい東北の創造」をテーマに提言をとりまとめるという。「「最低限の生活再建」にとどまることなく、創造と可能性の地としての「新しい東北」をつくりあげる」。これは2年間、あたかも国民的合意であるかのように押しつけられた「創造的復興論」そのものだ。被災地は復旧してもいないのに、さらに地震・津波・原発事故の大被災から「元にもどる」などということはありえないにもかかわらず、「単なる復旧では将来はない」と言われ続けてきた。
新しい復興推進委員会には、トヨタ自動車東日本や地元経済同友会の肩書きを持つ委員たちが参加している。被災地の与党が問われることになる。
自公緊急提言は「原子力災害」に多くの紙面をさいている。「国と共に政権与党として原子力政策を推進してきたわれわれは、政治の責任としてこの状況(「福島における原子力災害」がもたらした事態)を厳に重く受け止め、復興に向けた責務を、全精力を傾けて果たしていく覚悟である」と述べ、「除染」「中間貯蔵施設」「廃炉」「リスクコミュニケーションの強化」「住民の安心と地域の振興」「風評被害対応」がつづられている。つまり、「原発政策」は緊急提言から外されている。
公明党は3月10日、仙台で会合をもち、決議をあげた。「原発に依存しない社会をめざし、新たなエネルギー供給体制の構築を推進する」(2013 新生東北復興決議より)。この視点は、自公連名の緊急提言には盛られていない。
■以上/宮城全労協ニュース240号(2013年3月28日)