宮城全労協ニュース/第245号(電子版)/2013年6月30日

「悔しさをこえて、がんばろう!」
〜山城博治さん、沖縄から来仙


 山城博治さん(やましろ・ひろじ/沖縄平和運動センター事務局長)は6月27日、東北全労協が主催した集会の場で、「政治の流れを変えよう、そのために全力を尽くして闘う」と決意を述べました。
 
 山城さんは昨年秋、米軍機オスプレイの配備強行に抗して普天間基地包囲の闘いの先頭に立ちました。この闘いの直後、宮城全労協が予定していた仙台集会に出席し、包囲闘争の生々しい報告をしていただきました。そこで山城さんは「沖縄反基地の闘いは新しい局面に入っている」「姿勢を変えるべきは政府である」と力説しました(宮城全労協ニュース233号/2012年10月23日号)。

 その後、総選挙によって政治状況は大きく転換し、いわゆる「アベノミクス」と「憲法96条改正」「価値観外交」を掲げた安倍政権の攻勢が続いています。

 山城さんは「理不尽で不条理な状況」に立ちふさがって声を上げなければ、参議院選挙後に右傾化と軍国主義化が一挙に加速するだろうと指摘し、広範な反撃の戦線を作り出すべく沖縄から全国にむかって訴えていく決意だと熱く語りかけました。

 集会を主催した東北全労協は、大田昌秀さん、山内徳信さんと続く政治の流れに東北の地から連帯してきた経緯と、大震災直後に被災地支援にかけつけた糸数慶子さんや沖縄県会議員の方々との交流を振り返りながら、「沖縄と東北の共通の課題」に向けて挑戦を続けたいと述べ、山城さんの闘いへの共感と連帯を明らかにしました。

 山城さんは講演のなかで「遠い沖縄からアテルイを思うことがある」と「東北への親近感」を表明する一幕もありました。

 一時間という限られた時間の中で、山城さんは多くの問題にふれました。以下、講演の中からいくつか紹介します。



言葉を失った震災被災地の惨状


 山城さんは今年、全労協の組合員とともに被災地を訪れた。また自治労の派遣団の一員として一週間、被災地を巡ったこともあったという。

「言葉を失い、茫然として見つめるだけだった。そうして惨事の現実を受け入れるしかなかった。その衝撃を思い返しながら、復旧・復興の道を考えてきた。被災地・東北の皆さんたちと議論したいと思ってきた」。

「沖縄は140万人、日本国民の1%だ。99%が知らないと言えば、それですむというのが沖縄に対する扱いだ。私たちは「沖縄を解放するのが先だ」と言いたいが、しかし99%を背景に国は攻めてくる。逆に言えば、沖縄の問題が全国に飛び火することを国家権力は恐れている。だから、いろんな手を使って防ごうとしている」。

 福島原発も同じなのではないか。そこに封じ込めて、原発再稼動をねらう。国内で立ち往生しているのに、世界一安全だと輸出セールスする。原発は安定もしていないし、安全も確保されていない。使用済み核燃料どころか、汚染水すら処理の見通しがたっていないのに、そういうことがまかりとおっている。

 「原発事故によって死亡者が出ている状況ではない」と言い放った政調会長が、そのまま与党の政策責任者の位置にいる。怒りの声をあげなければならない。



憲法改悪の動きに反撃を!


 安倍首相は改憲のために「96条」から変えると言ってきた。憲法のどこを変えるのかを言わないで、手続き論に持っていこうとしている。国民主権をないがしろにして、憲法が想定していない方法で憲法改悪に道を開こうとしている。

 首相は参議院選挙を前にして、世論の動きを見ながら「96条」問題を封印する、3年間は経済に専念すると言い出している。自民党内では地方から異論が噴出している。PTTをめぐる山形、原発をめぐる福島、基地をめぐる沖縄県連などだ。

 中央はそれらの動きを抑えるために「アベノミクスによる景気回復」を一方的に言い立てているが、「三本の矢」などと言っても金融緩和のツケは弱者に回ってくる。その打撃は90年代のバブル崩壊の比ではないだろう。

 なんとしても参議院選挙で大勝し、その勢いに乗って一気呵成に憲法改悪の動きを強めようとしている。非常に卑怯なやり方ではないか。
 
 憲法改悪と軍国主義化に抗するトータルな陣形を一刻も早く作り出していかねばならない。集団的自衛権や国防軍創設、「歴史認識」による近隣諸国との関係悪化をただしていく。弱いものを犠牲にする「アベノミクス」、TPP参加、消費税増税と福祉の切り捨てを許さない闘いを作り出していこう。

 軍国主義と戦争の道に戻ることは決して許されない。それを阻止するために、沖縄から反戦・平和の旗を上げ続けることが必要だと決意している。反転攻勢の出発を築き、次の局面の広範な反撃につなげていきたい。



「戦争になれば沖縄は海に沈む」


 「尖閣」は一触即発の危機にあり「有事」に立ち至る危険性を強く危惧すると山城さんは述べた。

 今のような政治状況では「尖閣」を通して一気に軍国主義に傾斜する危険性がある。自民党長老から懸念が表明されているほどだ。

 このような現状は一部の人たちによってもたらされたものだ。「意識的な有事」を作り出そうとしたのであり、だから、それは一時的なものだともいえる。日中国交回復からの歴史を意図的に変えようとしても、それは無理がある話だろう。しかし、いまの事態をさらに悪化させようとするのなら、その影響を最も大きく受けるのは沖縄であることは疑いない。

 戦争になったら沖縄は間違いなく海に沈むだろう。沖縄はそれを絶対に受け入れない。沖縄は海域の平和を願う。「尖閣」はもともと平和の海であり、平和な漁場だった。

 山城さんは「戦争か非戦か」という大きな論を立てながら、友好のかけはしを作ることが必要ではないかと提案した。



失ってはならない「沖縄の声」

 
 山城さんは最近のいくつかの事態を紹介し、沖縄に対する「理不尽」「不条理」がどうして許されているのかと迫った。

 沖縄では地上戦の地獄の記憶は残り続けている。九州のある町の集会で「自分たちは戦争を経験していないから、それにこだわる意味が分からなくなっている」と言われて、こんなにも違うものかと驚いた。「風化」が現実であるなら、なおさら「沖縄の声」を全国に発信し続けなければならないと思った。

 1月末、「オスプレイ配備の撤回」と「普天間基地の閉鎖・撤去、県内移設の断念」を求める安倍首相への建白書をもって東京をデモ行進した。「非国民、国賊」「沖縄に帰れ」という差別と排斥の声が浴びせられた。東京行動には沖縄から保守系の人たちも参加していて、彼らは「ヤマトはどうなっているんだ」と、がくぜんとしていた。国会では山内徳信さんの発言に対して、背後から議員たちの野次や挑発や嘲笑が投げつけられていた。

 25日の(ヘリコプター離着陸帯の移設工事をめぐる)高江ヘリパッド訴訟でも高裁(福岡高裁那覇支部)は問答無用とばかりに棄却した。裁かれるべきは政府であり、罰せられるべきは防衛大臣だ。抗議した住民が罰せられることに、私は怒りと悲しみでいっぱいだ。

 沖縄は経済的な困難の中にある。失業率はきわめて高い。そもそも沖縄は歴史的に海洋交易拠点であり、現在では周辺諸地域との空路拠点としても大きな可能性がある。それを封じているのが軍事基地の存在だ。若者たちは職がないとあえいでいる。

 「沖縄はどうして、こんな扱いを受けねばならないのか。この悔しさをこえて、がんばっていかねばならない。私たちがいまここで後退すれば、沖縄は負けた、力がないと政府は襲いかかってくるだろう。少なくともこれ以上の差別、これ以上の痛みの押し付けは絶対に許してはならない。地域に根を張りながら、全国の人々に語りかけていこうと、思いを新たにしている」。



「労働組合の再生」が必要だ


 山城さんは最後に、自治労の組合活動の経験を踏まえ、労働運動にふれた。

 「かつて労働三法には、労働者としての権利は当然だという認識が前提としてあった。それが規制緩和攻撃によって大きく変化させられてきた。非正規雇用の増大と低賃金が押し付けられた。いま安倍政権の復活によって、労働市場の飛躍的な規制緩和の要求が大手を振っている」。

 最賃制度もいらない、解雇自由だなどという主張が強まっている。そういうなかで、労働者は再びメーデーに立ち上がり、闘いのときにはストライキで決起するということが問われているのではないか。

 財界は「失われた20年」と言うがとんでもない、失ったのは労働者の側だ。「労働者は企業の奴隷ではない、資本に尽くすために生まれたのではない。人間としてこの世に生まれ、人間として生活し、そして幸せに人生を送る権利があるのだ」。「労働者は資本にかしずく存在ではないと主張しよう。これ以上の労働法制の改悪や、仲間たちを絞め殺す政策は断固反対だと声をあげていこう」。あらためて「労働組合の再生」をみんなで実現していこう。

 山城さんはそのように述べて講演を終えた。その熱弁に参加者たちは大きな拍手を送った。



■以上/宮城全労協ニュース245号(2013年6月30日)