宮城全労協ニュース/第252号(電子版)/2013年10月9日

消費税増税反対!
国政と宮城県政の転換を!



 安倍首相は消費税8%増税の実施を表明した。復興法人税の廃止は年末までに検討する。村井宮城県知事は消費税率引き上げに「妥当な判断だ」と賛成し、復興法人税廃止については、25兆円復興予算枠が確保できれば大きな問題はない、「お金に色はついていない」と発言した。首相と県知事の方針、発言を認めることはできない。国政と県政の転換をめざそう。



消費税率引き上げ表明を糾弾する!


 安倍首相は10月1日、消費税8%への引き上げを法律どおり来年4月から実施すると宣言した。

 内閣府は首相発表にあわせて、制度変更にともなう家計負担の試算を公表した(注1)。消費税増税分は6.3兆円だが、実際の家計負担は3兆円にとどまる、という数字合わせだ。

 5兆円規模の経済対策を行い、消費増税が経済に与える影響を抑えるという。さらに「賃上げや設備投資を行った企業」への優遇減税に1兆円だ。

 法人減税(法人税の実効税率の引き下げ)は政府・与党内に異論も強く、今回は踏み込まなかったが、復興法人税廃止の検討が盛り込まれた。その9千億を含めると7兆円に達する。

 企業優遇措置は「好循環」推進のためだと首相は説明した。企業がまず元気になり、収益上昇を賃金上昇につなげて消費拡大をうながし、その「好循環」によってデフレを脱却する。

 増大する社会保障への財源、それが民自公による合意だった。首相はあえて「デフレ脱却」や「経済再生」「賃金上昇」などの言葉を多用した。合意に対する挑戦的態度だ。

「大胆な経済対策を果断に実行し、この景気回復のチャンスをさらに確実なものにすることにより、経済再生と財政健全化は両立しうる」。「熟慮の上での結論」だと自画自賛したが、消費税増税を逆手に取った<トリック>まがいの演説だった。

 オリンピック招致の国際舞台で首相は、福島原発について平気でウソをついた。米国では「積極的平和主義」をアピールする一方、「アベノミクスは買いだ」と高揚感を振りまいてセールスした。帰国して首相は、政教分離に反するとの批判を無視し、伊勢神宮の儀式に出席した。

 国会が開かれないまま、首相の内外活動が続いている。国政選挙でも安保や憲法など安倍首相の政治信念に基づく政策は信任されていない。経済についても「好循環」論が支持されているわけではない。外交の行き詰まりは打開できないままだ。安倍首相の<暴走>は焦燥感の裏返しである。

 安倍政権への異議と抗議を、組織していこう。



復興法人税の廃止反対!


 特別復興法人税の扱いが注目された。12月末までに結論を得るとの表現で政府・与党協議は決着したが、与党内の不満はくすぶっている。「世論」は納得していないからだ。

「本格的な法人減税」をねらう首相サイドに財務省が抵抗した。妥協として「復興法人税の一年前倒し廃止」が浮上した。そのように多くのマスコミが解説している。

 25兆円の復興予算に支障がないよう代替財源は用意する、企業が減税分(9000億円)を賃上げに回せば「好循環」に資すると首相は説明した。反対の声が広がっている。各種の調査がそのことを示している(注2)。復興法人税廃止は「汚染水コントロール」発言と並んで、飛びぬけて異議・反対が強い。

「企業の収益が増加し、投資や給与に反映されることにより消費につながり、企業収益がさらに増えるということを経営者の皆さんにも理解してもらわねばならない。企業側の理解が進み、考え方が変化をしたという確信が得られていく中で判断していきたい」。

 減税分が賃金上昇にあてられるか、政府は企業に報告を求めるなどの方策を検討しているという。これが民主党政権下だったら「社会主義」だと経団連は抗議したはずだ。

 多くの企業が被災地に資金と物資を供給し、ボランティアを組織した。大震災は企業活動と社会との新しい関係を問うている、企業は社会的責任を果たさねばならないと述べた経営者たちは、消費増税が被災地を締め上げる様を横目で見ながら、「復興減税」を得るか。

 法人税をおさめている企業は「黒字大企業」など少数であり、法人減税は大企業に向けられている。大企業は賃金上昇の見返りに、下請け企業を締め上げる。非正規雇用労働者たちの多数は大企業の賃上げ恩恵には浴さない。最低賃金の引き上げは微々たるものだ。低所得労働者の外側で回転する「好循環」のために、「復興」が断片的に切り取られ、好き勝手に利用される。こんな「アベノミクス」を許してはならない。



政治が「震災風化」を進めている

 
 安倍政権は震災を直視しているのだろうか。「アベノミクス」や2020年オリンピックによって、大震災から人々の意識をそらそうとしているのではないか。

 政権に再復帰した安倍首相は民主党色の一掃を進めた。「震災復興」もその対象となった。

「復興という言葉を唱えるだけでは、何も変わりません。まずは、政府の体制を大転換します」。そのように宣言した安倍首相は1月下旬の所信表明で、「行政の縦割りの排除」「復興庁のワンストップ機能化」によって現場主義を貫徹する、「思い切った予算措置」を講ずると約束した。福島をはじめ被災地を矢継ぎばやに訪問し、前政権との対応の違いを印象付けようとした。

 しかし「25兆円」は飛びかうが、復興政策に特筆すべき展開はない。復興予算の流用は続いている。被災地では執行できない予算がつみ上がっている。「国土強靭化」が被災地を不安にさせている。自民党政調会長や復興庁など幹部職員の暴言が相次いでも、撤回や更迭は形式的なものにすぎず、根底にある「構造的な問題」をえぐり出そうとはしない。

 あげくのはてが「汚染水はコントロールされている」であり、復興法人税の廃止検討だ。首相の派手な立ち回りの陰で、現場主義と一元化の責任者である根本復興大臣は苦悩しているように思えるほどだ。

 首相が起用した復興推進委員会の伊藤元重委員長は、この半年間、復興の理念と課題について意見を述べたことがあるか。被災地を訪れ、語り合う姿を見たことがあるか。マスコミを通して紹介される彼の発言は、経済財政諮問会議の民間議員のものであり、大震災と復興についてふれたものはほとんどない。

 その推進委員会や復興庁があげている「新しい東北」の五つのテーマ(「先導モデル」)の一つが「子ども」だ(「元気で健やかな子どもの成長を見守る安心な社会」)。一方、「こども・被災者支援法」が放置されてきた実態が、復興庁幹部の暴言によって明らかにされた。具体化作業がようやく始まっているが、被災地の声はぞんざいに扱われている。政府の対応はおぞましく、ちぐはぐだ。

 首相は消費税引き上げ会見で「長州」に二度、言及した。250年前の藩の経済財政政策を賛美したのは、郷土愛ですまされるかもしれない。二度目の発言では「明治維新」を持ち出し、持論である「戦後体制脱却」や「教育改革」と関連付けようとした。「明治維新の原動力となった若者たちを育む基盤となった」とは内戦勝利者の視点だ。東日本大震災の中心的被災地が東北地方であることの理解が、首相にあったのか。

 

「金に色はついていない」〜宮城県知事は発言を撤回せよ!


 復興法人税の廃止を認めるのか、知事の賛否が注目された。与党内の議論にも影響を与える可能性があったからだ。知事は機先を制するかのように、代替財源が確保されるなら大きな問題ではないと記者たちに語った。消極的な発言は、「論争型」と言われる知事らしからぬものだった。

 前政府の復興会議で「水産業特区」を強く主張して押し通したり、復興庁を「査定庁」と痛罵した村井知事は、今回、安倍政権を支える役に徹した。

 復興増税をめぐって民自公は修正協議を重ね、個人と法人の双方で財源を負担することが確認された。だから復興法人税の廃止は県民の支持を得られず、被災地の知事として受け入れられない。そのように発言することが当然だったはずだ。

 ところが9月24日の定例記者会見で、「非常に違和感を感じる」という記者の質問に対して、知事は次のように弁解した。

「(復興財源の)総枠を確保すると総理はおっしゃっておりますので、被災地としてはお金に色はついておりませんから、どのような形であったとしても必要な財源、まずは25兆円と言われているその財源を確保していただければ、それはもう問題はないと思っております。」

「お金には色はついていない」というのは、使う側の勝手な解釈である。まして震災復興財源だ。拠出する側への配慮はなく、不信が深まる「25兆円」の使途を再考しようとする姿勢もない。

 全国、全世界から「義援金」が寄せられた。事務的な手続きなどの影響で被災者に届くには時間がかかり、そのことを批判するマスコミ論調もあったが、資金は滞りながらも集約され、配分されていった。被災者たちは、銀行に振り込まれた「金額」を見て、会うことのできない人々を想い、感謝した。わずか二年前のことだ。「金には色がついている」のだ。

 大震災は国難であり「挙国一致」で立ち向かうことが必要だと、自民党は民主党政権のふがいなさを批判した。復興増税は負担であるが、復興事業への参加でもある。安倍政権がやろうとしているのは、<復興への共同負担・共同参加>の否定である。復興増税は「絆の増税」だと言ったのは自民党なのだ。

 知事は会見で「民間の活力を使って景気をよくしたい」と政治的な立場を述べ、「カンフル剤として法人税を一部下げようという努力」は正しい方向だと付け加えている。だからといって、復興法人税の廃止が正当化されるか。法人減税のために復興増税を廃止するという手法が、道から外れているのだ。だから知事は「大きな問題ではない」と議論を牽制したのだろう。

 発言の撤回を求める。



宮城県政の転換を!


 首相会見の三日後、知事は官邸を訪れ、被災地での医学部新設を首相に要請した。首相は文科大臣に伝え、知事と大臣との会見がセットされ、大臣の賛同を得た。知事は時間をかけずに結論を出すべきだと述べた。

 被災地の医療現状は厳しく対策が問われてきたが、医学部新設には異論や反対意見がある。しかも、東北地方全体の課題であって、宮城県が「特区」型で自分の県に誘致すべきものではない(だから知事も「被災地医療」と表現している)。村井知事は一方で、被災者の医療支援を打ち切り、再開を求める声に対しても国の全面的支援が前提だと積極的な措置を講じようとはしていない。

 もとより村井知事の「トップダウン」方式は、当初から問題を巻き起こしてきた。

 水産業特区へのこだわりによって、漁業再建のための貴重な時間と努力が犠牲になった。桃の浦の再スタートのために「特区」以外の方策が考えられたはずだが、あえて強行したのは、漁協との対立を際立たせる意図があったからだ。「単なる復旧には意味がない」という「復興論」が、十分な議論も論証もなく「定理」のごとく持ち出され、桃の浦がその実験場となった。知事は自分の政治的信念を、漁協や漁業者との対話に優先させた。

「防潮堤」では住民対話は後回しにされた。急がなければ国の予算措置が切れるという手続き優先の見切り発車的推進が、事態をいっそう悪化させた。知事はここにきて「歩み寄り」姿勢も見せているが、住民との厳しい関係が続いている。高い堤防は生活や事業の支障となるし、気持ちも圧迫される。「津波には避難」にも反する。そのような住民意見を尊重していれば、もっと早い段階で打開の道はあったはずだ。

「放射能汚染」への県の対応は大きく出遅れ、いまなお不安の訴えは絶えない。知事は認めないが、原発事故の影響への軽視や、国との関係での戸惑いがあった。原発安全神話を反省し、そこから転換して出直すことが求められたが、知事の姿勢は旧来のままだ。女川原発の再稼動については国のエネルギー政策が第一義と繰り返し、「30キロ圏」の緊急防護措置については基礎自治体の計画優先という消極的態度だ。

 住宅再建は圧倒的に遅れている。住民と行政のわだかまりは、多くの自治体で深刻だ。県はどうするのか。「お金に色はない」という発想で進めていくのであれば、多様で切実な住民意見を「救い上げて行く」ことはできない。住民実感とは異なる「事業達成数値」が一人歩きしていくだろう。

 ハード重視、トップダウンでは困難を打開できない。
 県政の転換を求めよう。




(注1)
 2014年度の家計負担増は差し引き3兆円という試算。

 消費税引き上げ分が6.3兆円、物価に連動した年金支給額の引下げが0.8兆円、社会保険料の引き上げが0.5兆円で7.6兆円の負担増。

 これに対して、家計の受け取り増加分は、高齢化による年金支給額の増加が1.9兆円、社会保障給付の増加が2.2兆円、消費増税にともなう低所得者への「簡素な給付措置」(2400万人対象、一人当たり1万円から1万五千円の1回支給)に0.3兆円、住宅ローン減税の拡充などに0.2兆円の計4.6兆円。

 

(注2)
 共同通信が首相会見の直後に行った世論調査では、内閣支持率はオリンピック招致効果があり依然として高く(支持63.3%)、消費税8%引き上げも賛成53.3%、反対42.9%だが、「6兆円規模の経済対策」では評価する36.1%、評価しない48.5%だった。

 復興法人税の廃止は、賛成23.8%、反対65.3%と大きな差がついた。

 東北地方は74.3%が反対だった。公明党支持層では反対が75.0%、賛成は14.9%。自民党支持層でも賛成は31.6%にとどまり、反対が58.5%にのぼった。消費税率引き上げに賛成、経済対策を評価とした人たちでも、復興法人税廃止にはそれぞれ反対が過半数に達した(河北新報10月3日)。



■以上/宮城全労協ニュース252号(2013年10月9日)