宮城全労協ニュース/第261号(電子版)/2014年4月3日

近藤昭雄さんを迎えて春闘集会〜
「反・非正規」は正義かつ不可避!




 宮城全労協は3月27日、「アベノミクスと労働法制大改悪」と題して春闘集会を開催しました。

 講師は近藤昭雄(中央大学名誉教授)さん。

 近藤さんは労働法の専門分野はもちろん、労働者・労働運動とのかかわりを大切にし、現在も非正規労働者支援など現場で活躍しています。宮城の運動とも強いつながりがありました(注)。

 近藤さんの熱弁に会場から何度も拍手が送られました。

 以下、講演のポイントを紹介します。



2時間にわたる熱弁


 冒頭、あいさつの中で近藤さんは、マスコミが「官製」と名づけた春闘のなかで格差と分断が広がっている、「どのような人たちとともに労働組合はあらねばならないのか」と、現在の時代状況と私たちの位置について問題提起しました。


 近藤さんはレポート「アベノミクスと非正規労働法制」を2時間にわたって報告。

 講演の結語は、「安価で不安定な非正規雇用に人間としての労働者の未来はない」、だから「非正規という<悪>を労働現場から排除しようとすることは<正義>であり、不可避だ」というものでした。

「非正規労働は企業の利潤の増大化のもくろみの中で生まれた」、したがって「安価な労働力としての利用」「不安定な雇用」という特性をそもそも持っている。「労働者集団の中に<階層化>を持ち込み、日々の労働生活の中に相互差別という非人間的行いを日常化させていく」。「非正規」に反対するということは、「職場における平等な働き方、人間関係の実現を求める」ことである。

 近藤さんは、<犯罪>を支持するものではないがとことわりながら、非正規雇用労働者が関わったとされる社会的な事件が続発していることにも触れました。

「人間が商品化されている。同じ仕事の繰り返しで、安い賃金。これでは希望は持てない」「相次ぐ事件の中に、日本の将来が見えている」。「すべての労働者が日々の労働の中で<豊かに>生きていく社会を、どのようにめざしていくか。それが重要な課題であるはずだ」。



「アベノミクスと直近の労働法制」


 現在の労働法制改悪の企図について、三点に焦点をあてて状況が説明されました。

 第一に「特区制度」。

 成長戦略の看板政策の一つとされるが、「行政(内閣)の決定を通しての特別制度」であり、「治外法権」(法適用の排除)であって憲法秩序に反すること。

 第二に「解雇法制への挑戦」。

「解雇を容易にし、労働力の流動化を図る」ために、「岩盤規制」の代表格たる解雇規制を破壊するという。しかし「解雇規制はそれほど強い<岩盤>なのか」。近藤さんは違うと主張、逆に解雇規制は不十分であり、だから解雇法理が使用者の「権利濫用」を防ぐものとして組み立てられてきたと具体例をあげて反論。

 こうして「岩盤」たる「正社員」制度に切り込み、雇用の流動化をはかるという「アベノミクス」に連なる視点は「多数の正社員を切り離し、非正規労働化すること」にほかならない。

 第三に「派遣労働の恒常化」。

 派遣法改正案要綱(2014年2月21日)に関して、「派遣事業の区分廃止、一本化して許可制」「いわゆる3年限度」「(派遣先と派遣元の双方における)雇用保障」の三点をそれぞれ検証。

「派遣という労働形態の恒常化」が制度改革のねらいであり、抜本的な「派遣労働の根絶に向けた闘いは不可避」である。

 

非正規労働の「歴史的展開と現実」


「直近の労働法制」に先立って、まず、非正規労働(非正規雇用)の「歴史的展開と現実」に講演の多くの時間が費やされました。


「非正規雇用」とは何か?この問いに的確に答えることは、実はとても難しい。逆にいえば「正規雇用」とは何であったのか?報告はこのような問いかけから始まりました。

 日本の雇用慣行のなかで「正規雇用」とされたものには、新卒採用を前提におおむね三つの特徴があった。「定年までの雇用(つまり期間の定めのない雇用)」「会社の業務体制下での(始業から終業までの)包括的就労(つまりフルタイマー)」「予定された昇進・昇格ルートでの人事管理」。そこから外れるものを「非正規労働」とした。

 つまり「間接雇用(派遣労働)」「期間の定めのある契約(臨時工・契約社員)」「部分的就労(パートタイマー)」が非正規とされ、実際にはこれら三つが重なりあっている場合も多い。

 このような非正規雇用が、敗戦後、日本経済の発展にともない企業によって採用され、法律が制定され、なし崩し的に拡大し、現在にいたっている。

「直近の労働政策・経済政策(アベノミクス)」の基礎には、企業による収奪の強化がある。そのための労働法制を構築しようとしている。展開はドラスチックに見えても、過去からつながっている。近藤さんは戦前日本の雇用関係から説き起こし、戦後の展開を振り返りました。


 労働者供給事業の禁止と違反への罰則は「戦後民主化政策」の一環としてもたらされた。

 昭和30年代(1950年代後半)以降の技術革新が「間接雇用」を拡大させた。続いて重化学工業分野での「社外工」、ビルメンテや警備業務での間接雇用拡大、事務労働の合理化からコンピュータ化の過程での間接雇用の拡大。

 こうして派遣法が制定され、「労働者供給事業」の合法化が拡大していった(1986年16業種、1996年26業種)。90年代後半の規制緩和によって間接雇用は一般化し、2003年に製造業への解禁にいたった。リーマン危機から派遣村を経て政権交替にいたるが、期待された抜本的対応は実現されずに現在がある。


 そのような歴史的展開を通して、派遣労働はどのように活用されてきたか。近藤さんは「派遣労働の特性と問題性」を次のように指摘しました。

 第一に「人間」の商品化と人格の毀損。

「契約に基づく労働関係という近代的衣をまといつつも、買い入れた労働力=人間を他者に売り渡し、利益を得るという「現代版人身売買」に他ならない。それは、結局、「人間の尊厳」を破壊するものであり、「人間」無視の社会関係の形成でもある」。

 第二に「ことに登録型と日雇い派遣」で顕著な「二重収奪を基礎とする低い労働条件と不安定な雇用」。

「結局、派遣の容認は、労働のありようが経済に従属させられてきた結果である」「そのような制度を放置し、容認する労働政策を展開してきた行政、ことに厚労省(旧労働省)と労働組合の責任は大きい」。



有期雇用とパートタイム労働


 近藤さんは派遣労働と同様に、有期雇用とパートタイム労働について、それぞれ「歴史的展開と現実」を説明しました。ここでは参考として項目のみを掲載します。


「有期雇用労働者の歴史的展開と現実」

1.有期雇用労働の歴史的展開

@常用型有期雇用の登場・定着
  イ)朝鮮特需と「臨時工」
  ロ)合理化・技術革新の展開と、様々な非正規労働
A2000年代不況と非正規雇用の拡大

2.大量の非正規雇用の活用と問題の深刻化

@ILO(158号条約)、EUにおける有期契約規制
A2012年労働契約法改正
B改正労働契約法の問題点


「パートタイム労働の歴史的展開と現実」

1.技術革新・合理化とパートタイマーの登場

2.パート労働の特性

3.パート労働と法的対応

@1960年代
A1970・80年代
B1993年(パート労働法)
C2007年改正(2008年4月1日施行)





(注)近藤昭雄さんと宮城全労協(集会案内より転載)

 近藤昭雄さんは鉄産労の裁判闘争(JR東日本の仙台駅不当配転)に関して、仙台地裁判決を批判する見解を発表(1997年「労働判例」)。その言論活動は原告側を励まし、1999年春、仙台高等裁判所での画期的な逆転勝利にいたった。

 またNTTリストラ裁判では、「賃金奴隷化」を歩むか「労働者の人としての権利」を護っていくのか、そのリトマス試験紙といえると明確な分岐を突きつけた(「高齢者切捨て施策と配転命令の効力/電通労組員配転事件」2008年1・2月/労働法律旬報)。



■宮城全労協ニュース/第261(電子版)/2014年4月3日