最低賃金「目安」を答申
前年実績から1円増にとどまる
厚生労働省は7月29日、中央最低賃金審議会で今年度改定の目安が取りまとめられたとして、その内容を公表した。主な点は次のとおり。
○引き上げ目安額(時給)は東京、神奈川など「Aランク」19円、埼玉など「Bランク」15円、宮城など「Cランク」14円、宮城を除く東北5県など「Dランク」13円。
○全国平均で16円(昨年度答申は14円、地域審議会での審議を経た実績で15円)、時給780円(昨年度の中央審議会による答申は749円から763円への引き上げだった)。
○「生活保護費との乖離」については、新たなデータによって乖離しているとされた北海道(乖離額11円)、宮城、東京、兵庫(それぞれ1円)、広島(4円)のすべてで解消されることになる。
●後退した安倍政権の姿勢
「好循環だ」「アベノミクスの果実」をあらゆる所得層に行き渡らせる、「ローカル・アベノミクス」で地域に波及させるなどと安倍首相はアピールする。しかし、引き上げ目安は昨年度実績をかろうじて1円、上回っただけだ。また最低賃金の地域間格差はいっそう広がることになる。
安倍政権の姿勢は昨年度改定に比して、また春季賃上げに対する言動と比しても大きく後退した。「骨太方針2014年」には「中小企業・小規模事業者への支援を図りつつ最低賃金の引上げに努める」とわずかに触れられているだけであり、それも実効性があるとはとてもいえない。
日経新聞は目安報道の30日、「都道府県は無理のない最低賃金の決定を」と題する社説を発表した。「・・企業の生産性の伸び以上に賃金を上げることになれば、企業の競争力を低下させ雇用や地域経済に悪影響を及ぼしかねない。実際の最低賃金の引き上げ額を決める都道府県の地方最低賃金審議会は、地域の景気や企業収益の現状を精査し、それを踏まえて慎重に上げ幅を判断すべきだ」。再賃引き上げの「コスト負担」の増大を考慮すべきだという主張は、労働者に対してではなく、大企業と政府にぶつけるべきものだ。
河北新報は「格差是正へ底上げの道筋を」と主張している。「増税分を含め物価は3%も上がった。増税分を考慮し最低賃金(全国平均)を3%上げれば、23円の増となる」「そうなって、やっと増税前の生活水準に戻れる格好だ。前年度の15円を上回る引き上げは決して無理な注文ではあるまい」(社説7月15日)
東京新聞は30日、「増税、物価高に追いつかず」とする記事を掲載した。「・・目安は、全国平均16円の上げ幅で決着した。だが消費税増税や物価高による実質賃金の目減りを補うにはほど遠く、低所得者層の生活は依然として苦しい」。記事では被災地・仙台のタクシー労働者の声を紹介している。同僚の半数が最低賃金分の給料か「必死で頑張っても最低賃金ぎりぎり上回る程度の収入」だ。消費税増税の後は売上高が落ち込み、最低賃金ラインの人が増えたという。
目安を受けて地域審議会の審議がこれから始まる。宮城では8月1日、今年度の第二回審議会で目安が報告される。しかし、それ以降の実質審議は非公開となる。最賃大幅引き上げの声を上げていこう。
(なお、昨年度は中央審議会による目安が8月6日、宮城地方審議会の答申が9月3日)
●資料/宮城最低賃金審議会への要請
(宮城全労協/7月25日)
<2014年度最低賃金改定審議にあたっての要請>
2014年度の最低賃金改定をめぐって中央審議会による1ヶ月の議論が終わり、今月末、改定答申が出されようとしています。宮城最低賃金審議会での議論に向けて、宮城全労協は以下を要請します。
1.最低賃金の1000円超への引き上げを求めます。
安倍首相も田村厚生労働大臣も、2010年6月「雇用戦略対話」での政労使合意を否定していません。現政権によって設置されている政労使会議でも同様です。したがってその合意内容(2020年までに1千円をめざす、早期に800円を確保、中小企業への支援や「公契約」での配慮など)は、現政権においても実現すべき責任があります。
しかも、安倍政権が日銀とともに採用している「デフレ脱却」政策からすれば、これらの目標は前倒しされてしかるべきです。
外食産業などで時給を引き上げても労働者不足が顕著であると社会的な問題になっていますが、これらは低すぎる最低賃金水準が生活や経済の実態を反映していないことを示しています。最低賃金の大幅引き上げは喫緊の課題となっています
2.政府の後退姿勢に地方から異議を唱えるべきです。
安倍首相の姿勢は一年前と比べて明らかに後退しています。春季賃上げをめぐる首相の言動に比しても、今年度最低賃金改定への「熱意」は感じられません。田村大臣は「昨年並みかそれ以上の成果が出ればありがたい」と述べていますが、きわめて受動的な発言だといわざるをえません。
一部大企業の賃上げでよしとする、それが政府の本音であるなら労働者の格差拡大を政策として実行していることになり、決して許されるものではありません。
地域の最低賃金改定の審議がそのような政府の後退姿勢に明確に反論し、また零細企業への支援をはじめ大幅引き上げのための諸施策を政府に要求するよう求めます。
3.貧困労働者の救済、生活改善のための最低賃金大幅引き上げを求めます。
各種世論調査では「アベノミクスの恩恵は受けていない」との回答が多数です。政府・与党が来春の統一地方選挙を前にするタイミングで、「ローカル・アベノミクス」なる造語をもって地方重視を強調しはじめていますが、そのような声を意識したものだと言えます。
春闘賃上げも中小企業ではまったく不十分でした。しかも「異次元」のインフレ政策が大手を振っています。「賃金なき物価上昇」が貧困労働者層を直撃することは明らかです。
最低賃金引上げで影響を受ける人が増えている、その割合が年々上昇していると報じられています(日経新聞7月24日/「最低賃金ぎりぎりで働く人の割合が増えた」「賃金水準の低い非正規労働者が雇用者全体に占める割合が高まったことも一因だ」)。
「好循環」のための最低賃金引き上げだという政府の説明は二重の意味で不当です。第一に、貧困労働者層は「好循環の果実」を与えられていないし、第二に、それだけではなく物価上昇や社会保障削減によって直接的な打撃をこうむっています。
最低賃金の大幅引き上げは「健康で文化的な生活」のためにこそ、早急に実現されねばなりません。まして宮城県のように、生活保護費との乖離が毎年のように繰り返されるようなことがあってはなりません。
4.「被災地を励ます最低賃金の大幅引き上げ」が必要です。
宮城全労協は2011年度改定以降、最低賃金の大幅引き上げには大震災被災地を励ますという意味があると主張してきました。残念なことに、とくに宮城の場合、甚大な被害ゆえに最低賃金を上げられないという逆転した理屈が多数となりました。
それから三年、仙台圏の「復興特需」と沿岸部との格差は広がる一方です。仮設住宅での長期間生活や「雇用のミスマッチ」あるいは集中復興期間の延長が物語っているように、震災復興は困難に直面しています。
宮城最低賃金審議会が三年間の経緯をみずから振り返り、被災地での積極的な役割を自覚され、大幅引き上げ改定を行うよう要請するものです。(2014年7月25日)
■以上/宮城全労協ニュース268号(2014年7月30日)