「オスプレイ」被災地に飛来
「予告なき飛行変更」相次ぐ
陸上自衛隊東北方面隊による「みちのくアラート2014」は11月6日から四日間、実施された。震災対処訓練と称して、日本国内での初めての「日米豪」合同軍事演習となり、同時に東北地方でのオスプレイ初飛来の場となった(◆ニュース273号/10月26日/参照)。
責任者である陸上自衛隊東北方面総監は初日の記者会見で、「オスプレイについて住民や関係機関には十分に説明してきた」と述べた。しかし、自治体は「説明」を住民に周知してきたわけではないし、自衛隊が住民説明会を開催したわけでもない。
不安は広がり、仙台の着陸地周辺では住民の抗議デモが行われ、気仙沼や仙台では平和団体などによる飛行反対の集会がもたれた。仙台市長は訓練前日になってようやく、「(陸自から)なるべく住宅密集地の飛行は避け、回転翼の角度変更は海上で行うと伝えられている」と説明し、「市民には不安があり、慎重に運用してほしい」と述べた。
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オスプレイ、「予告なき飛行変更」を繰り返す
オスプレイは訓練参加が予定された7、8両日、「予告なき飛行変更」を繰り返した。沖縄でそうであるように、住民や自治体を無視した米軍の一方的な飛行を、被災地での震災対処訓練で実証することとなった。
<写真>予定より遅れて仙台に到着したオスプレイ
(11月7日午前10時、陸自・霞目飛行場/撮影:宮城全労協)
オスプレイ一機が7日午前、予定より遅れて仙台の陸自・霞目駐屯地に着陸した。米軍厚木飛行場を飛び立った二機のうち一機が引き返したことは、その時点では公表されていなかった。
午後、石巻湾での海上自衛隊・輸送艦への離発着訓練のため飛び立ったが、オスプレイは霞目飛行場に引き返し、さらに「霞目駐屯所への駐機を予定していたが、予告なく厚木基地に帰った」(河北新報9日)。陸上自衛隊も宮城県も、予定外の事態を説明することができなかった。
当日午後、石巻湾をのぞむ日和山からオスプレイの飛来を確認しようとしていた仲間たちは、予定を過ぎても現われないことに異変を感じながら監視活動を続けた。石巻湾訓練が中止されたことを報道で知ったのは夕刻になってからだった。
県内メディアは「強風で訓練断念」「情報共有、看板倒れ」など、「飛行変更」に関する日米間の連携不在をいっせいに報じた。
「予告なき飛行変更」は翌日も続いた。不安が高まる気仙沼では、住民の抗議のなかオスプレイの飛行訓練が実施された。この日も石巻湾で待機する輸送艦への離発着訓練は実施されなかった。
気仙沼在住の読者から届けられた演習現場の写真とコメントを紹介する。
◆11月8日午前10時8分オスプレイ到着(気仙沼・大島)
3機の輸送へリの後、気仙沼湾の内湾方向からオスプレイ飛来。ヘリより音は静か。毛布の束を5〜6束輸送してきただけ。肩で担いで軽トラヘ。それが終わったら待機していた救急車から患者役の隊員2名を担架で機内に運び込み、間もなく飛び去った。離陸は10時23分、滞在時間は15分だった。
尚、着陸地点ではエンジンからの排気があたった芝生は焦げていた。事前に消防車が水たまりが出来るほど散水したのに!
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「米国の運用上の問題」(防衛大臣)
気仙沼訓練当日の午後、「突然、別のオスプレイ一機が(霞目)駐屯所に飛来した。(陸自東北)方面隊には直前まで情報が入っていなかった」(河北新報11月9日)。
連日の「飛行変更」について米軍と陸自の実際のやりとりは不明だが、現場では混乱が続いた。予期せざる不備や不都合があったのか、あるいは強風下での通常の対応だったのか、何も公表されていない。
防衛大臣は8日、霞目飛行場でオスプレイに試乗しPRにつとめた。大臣の「体験搭乗」が震災対処訓練に位置づけられていたものか、突発的な事態だったのか、これも明らかではない。
「(オスプレイは)米国の運用上の話だ」「(予告のない飛行変更について)確かにそういうことがあったと聞いている。だが、私がとやかく言うことではない」「(石巻湾での発着艦訓練をできなかった点について)安全性を最優先にした判断だったのだろう。いざという時は、必ず有用な手段になる」。河北新報はそのように大臣発言を報じた。
不安を訴えた住民たち、訓練の無事を願った行政当局、おそらくは翻弄された自衛隊現場。大臣発言は、被災地のそれぞれの当事者たちへの無関心をさらけ出していた。
オスプレイの「本土分散」は「沖縄の負担軽減」だと政府はいう。しかし、被災地の「震災対処訓練」で示されたのは、米軍指揮下のオスプレイの一方的な行動だった。「震災連携」が訓練の重点目標とされていたから、その傲慢さは際立った。
「オスプレイ、本土に浸透」と読売新聞は報じた(11月9日)。河北新報は「日本上空を飛ぶのが当たり前の状況にしていきたい」という防衛省幹部の発言を伝えていた。「沖縄の負担軽減」のための「本土分散」は口実だ。「オスプレイの本土化」は、日本がオスプレイを自衛隊に導入する計画とあいまって拡大している。10月和歌山、11月宮城に続いて12月には熊本、来年1月には岩手での日米合同軍事訓練への参加が予定されている。
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「何も情報がない」(宮城県知事)
宮城県知事は直後の11月10日、定例記者会見で見解を述べた。持論としてオスプレイの有用性、米軍との協力関係の重要性を強調し、今回の訓練はおおむね成功だったと評価した。その上で「問題点が一つあぶり出されたという意味では訓練の成果があったと捕らえるべきだと思っている」とオスプレイに触れ、次のように指摘した。
「(引き返した)理由は分からない」「われわれには何も連絡がない」「(現状では)県民の不安を払拭するための情報を提供できない」。
安全を大前提としたはずの知事であるから、いらだちの言葉は当然だ。
しかし、そもそも「みちのくアラート2014」は陸上自衛隊東北方面隊の訓練である。そこに、大震災以前の前回2008年をはるかに上回る自治体や関係機関、企業などが参加した。個々の場面では多様な訓練が実施された。その責任体制は明確であったのか。明確ではないからこそ「連携」がテーマとなったのではないか。日米豪の合同軍事訓練は、自治体や企業などの動きとは別系統の指揮が貫徹するからだ。
中国四川省地震、フィリピン台風災害などで、軍事と震災支援の緊迫した関係が繰り返されてきた。しかも、この間、日本政府はオーストラリアとの防衛協力関係を強め、「日米豪」を東アジア・太平洋地域の安全保障の軸にしようとしてきた。「みちのくアラート2014」はその一環だった。
宮城県と市町村は、このような軍事同盟による震災対応に組み込まれるべきではない。震災対応訓練の主体を自治体と住民がいかに築くのか、知事に問われていたのはそのことだ。
宮城全労協は「みちのくアラート2014」の実施にあたって、県とともに東北方面隊に中止を求めた(資料)。
大震災に際して被災地は、自衛隊員の救援活動を支持した。被災者たちは自衛隊員の献身的な利他行動に感謝したのであって、「戦争をするための自衛隊」を支持したのではない。被災地を利用し、予想される大規模災害の対策を口実として進められる「防災軍事演習」に反対していこう。
<資料>
陸上自衛隊東北方面隊への申し入れ
2014年10月22日/宮城全労協
「みちのくALERT2014」および「オスプレイ」参加に抗議し、計画撤回と訓練中止を求める申し入れ
大規模災害訓練と称する合同軍事訓練が迫っています。米軍とオーストラリア軍との合同訓練は11月6〜9日の日程で実施され、東北6県と51市町村が参加するとされています。また訓練には「オスプレイ」が沖縄から参加します。
県や自治体からの説明がまったく不十分であることに加え、「オスプレイ」の飛来が県民の不安を広げています。まして、被災地を踏み台にして「オスプレイの全国化」を企図することは許されません。
東日本大震災でみずから被災し、また救援・支援活動に取り組んできた私たちは、以下のように訓練計画の撤回を求めるものです。
1.「防災訓練」と称する県民不在の合同軍事演習に反対する
東北方面総監部が10月7日に公表した「みちのくALERT2014の概要」は訓練の目的を次のように記している。
「東日本大震災における災害派遣活動の教訓を踏まえ、「みちのくALERT2014」を実動により実施して、自治体及び関係機関との連携要領を演練し、東北方面隊の震災対処能力の向上を図るとともに、自衛隊と米軍及び豪州軍との連携要領確立の資を獲得する。」
自衛隊からは陸・海・空1万3千人、車両1200両、航空機40機、艦艇2隻が参加し、米軍参加部隊のなかには「オスプレイ」2機が含まれる。
マグニチュード9.0の宮城県沖地震と大規模津波、つまり2011年東日本大震災の再来を想定した「震災対処訓練」としているが、これが合同軍事演習であることは明らかである。
震災訓練は自治体と地域住民が中心となってなされるべきである。十分な説明もない県民不在の合同軍事演習に、被災地では疑念と不安が広がっている。
2.「オスプレイ参加」への不安が広がっている
とくに「オスプレイ」は仙台市の東部市街地を飛行すると報じられており、住民の不安が高まっている。
宮城県知事は「オスプレイを使う場合は万全な安全確保対策に加え、十分な情報提供と説明が必要だ」と述べた(河北新報8月1日)。しかし、県民は「オスプレイ」飛行の具体的な内容について知らされておらず、「安全確保対策」などの経緯についても説明はない。
知事はさらに定例記者会見(8月4日)で、「県民はオスプレイ自体の安全性に非常に疑問を感じている」と指摘し、「安全への留意」や「飛行経路等の選定」に言及したが、それらについても説明はなく、一方的な押し付けが強要されようとしている。
3.「オスプレイ」に沖縄県民は反対している
そもそも2012年9月、沖縄で開催された県民大会は「オスプレイ」反対の意思を明らかにし、2013年1月には「建白書」を内閣総理大臣に提出、「オスプレイ配備計画の撤回、米軍普天間基地の閉鎖・撤去と県内移設の断念」を求めた。
「オスプレイ」に対する不安は宮城県民も同様であることは、県知事の発言にも明らかである。「みちのくALERT2014」は沖縄県民、宮城県民を無視して実施されようとしている。それはまた、東日本大震災被災地を利用して「オスプレイ」飛行の全国化を企図しようとするものであり、認めることはできない。
以上、訓練計画を撤回し、中止することを求める(2014年10月22日)。
■以上/宮城全労協ニュース275号(2014年11月21日)