宮城全労協ニュース/第276号(電子版)/2011年11月30日

「アベノミクス解散」に反撃し、
安倍退陣への流れを作り出そう!




 衆議院の解散が強行された。12月2日公示、14日投開票の総選挙が実施される。

<首相の自己都合解散だ。多額の国費が浪費され、地方負担も大変だ。あきれはてた人々は投票所に向かわないだろう。投票率は前回を下回るだろう>、そのような予想が大方だ。投票率の低下は自公与党に有利だとみなされている。

 各種の世論調査によれば、現状はこうだ。

<「アベノミクス解散」への不支持が多数だ。一方、自民党への支持は手堅く、比例区への投票先でも群を抜いている。野党の準備は遅れている。しかし「無党派・支持政党なし」が多数であり、動向が注目される>

 月末に実施された共同通信のトレンド調査(第二回)では、内閣不支持が初めて支持を上回った。しかし、「比例代表の投票先政党で自民党は28・0%と前回調査(19、20日)から2・7ポイント増加した。民主党は10・3%で0・9ポイント増にとどまった」。

 昨年の政治資金収支報告(総務省、中央分)が公表された。自民党への献金は大幅に増加した。自動車や証券、原発をはじめ「アベノミクス」の恩恵を受けた企業や業界からの増加が際立つ。これが「好循環」の実態だ。

 自民党は「選挙時期における報道の公平中立ならびに公正の確保」についての「お願い」なるものを在京テレビキー局各社に送付した(11月20日付け、編成局長・報道局長宛)。朝日新聞は社説で自民党に反論した。当然だ。安倍政権にマスコミの「公平中立・公正」を言う資格がないことはNHK経営陣の人事で明白だ。

 首相はあいかわらず手前勝手な数値を羅列している。岩手からはじめた全国遊説の二日目、首相は北海道に飛んだ。地元紙は「TPPや原発など、道民の関心が高いテーマにはほとんど言及しなかった」と報じた(北海道新聞)。
 
 2年間の「安倍政治」を問う選挙だ。長期政権の野望に反撃し、安倍退陣の流れを作り出そう!



「大義」なき「アベノミクス解散」


 10月末から11月上旬、解散・総選挙の情報が飛び交った。読売新聞はスクープ的記事で年内の政治日程を予測した。「半信半疑」の空気は一変し、解散・総選挙への流れが作り出されていった。公明党代表が政局に言及し、首相は外遊先で発言を微妙に変化させ、両党首が内外から局面を誘導した。

 その間、日銀・黒田総裁は煙に巻いてきた追加緩和を実行した。審議委員5対4のきわどい採決による「電撃緩和」だった。同日10月31日、年金積立金運用の大幅見直しが発表された。株価急上昇に政財界や投資家たちは沸いた。さながら「不意打ち」「出し抜き」の共演だ。なんでもありのムードが高まった。期待感をかきたてた上での解散だった。

 10%消費税の延期は税制の大きな変更だから国民に信を問うことにした、という。ならば「消費税増税見直し(あるいは社会保障一体改革見直し)解散」であるべきだ。「アベノミクス解散」は論点のすり替えだ。

 しかも、引き延ばされた10%消費税は、景気がどうであれ実施されることになる。これは「公約」なのか。

 プラス2%の増税を可能にする力をこれからつけるのだ、政府与党はそのための対策を打つと自民党議員たちは支持者を説得する。実際、自民党公約の300近い項目の多くは経済対策の財政支援策だ。

 小泉政権時代、構造改革推進派は、改革が進まないのは抵抗勢力が反対するからであり、政策が間違っているわけではないと主張した。今度は「第三の矢」つまり成長戦略が進まないのは、岩盤規制を守る抵抗勢力が存在しているからであって、「アベノミクス」が間違っているわけではないというわけだ。

「大義」などあるはずがない。「選挙は結果がすべて」であり、「争点は首相が、政府がつくる」のだから。自民党は、いまとなっては「このタイミングしかなかった」と納得せざるをえない。

 高村自民党副総裁は「念のため解散」だと、いささか自嘲気味に解説した。党の戸惑いをにじませたのだろう。「首相の首相による首相のための解散」という長老の発言には、安倍政治への警鐘がこめられているだろう。



「長期政権」「改憲」への野望

 
 2016年の衆参同日選挙が本命だった。早くても来春の統一地方選以降、来年秋の総裁選前後だろうとの予測が政治専門家の見立てだった。

 しかし、この間の報道によれば、首相は早期解散のタイミングをねらっていた。「追い込まれ解散」(麻生政権)になる前に解散・総選挙を断行する。政局をリセットし、4年間の任期を確かなものとして「憲法改正」への道を探る。側近たちとともに検討し始めたのは6月からとも8月からとも報じられている。

 そのような意図をこめた内閣改造と党人事再編だったが、重大な誤算が生じた。小渕経産、松島法務の二大臣が辞任に追い込まれ、国会審議が一挙に緊迫化した。

 自民党にプラスの材料はない。経済失政の声は高まっている。安倍政治への評判もかんばしくはない。綱渡りが続く外交案件では、打開のために投入されたのは福田元首相はじめ安倍人脈とは異なる人々だった。福島県知事選挙では敗北を避けるために県連を差し置いて相乗りし、沖縄では苦戦していた(実際、完敗だった)。

 だから、解散・総選挙のタイミングは引き延ばされたと見られていた。しかし、首相はマイナス材料を「リセット」に転用した。

 安倍政権のかかえる「もろさ」も関係しているだろう。派閥の合従連衡による逆転劇が安倍総裁を誕生させた。二年前、民主党への「懲罰的」な拒否と「第三極」への票の分散が、過半数ではない自民党の圧倒的な勝利をもたらした。当初の内閣支持率は決して高くはなかった。上昇をもたらしたのは「アベノミクス」への期待感だった。

 高支持率が続いても、総理・総裁としての尊敬や信頼が高まったわけではない。逆に首相の政治姿勢への疑念は膨らんでいる。「汚染水コントロール」発言を真に受ける政治家や支持者はいるのか。

 首相には、そういう意味でも現状打破が必要だったのだろう。



GDP速報値を逆手にとった首相の解散強行


 不可思議な解散劇だったが、いまとなってみれば「年内解散」をすべてに優先させたということか。

 消費税再増税をめぐって対立は激化していた。自民党内では予定通り10%実施が大勢と見られており、法人税減税を求める財界も増税を支持していた。

 消費回復の遅れは明らかで、消費不況に陥る可能性もある。一方、大企業収益や雇用など「景気の回復基調」を主張する統計数値もある。統計数値のまだら模様が何を意味しているのか、専門家たちの解釈はわかれていた。

 首相に近い議員や学者たちは「予定通りの再増税反対」の主張を強め、行動を起こしていた。菅官房長官も消費・経済動向に注目べきだと増税派をけん制した。同時進行していた「有識者会議」では賛否は二分されていた。

 こうしてGDP値(7〜9月期)とその首相判断が注目された。「民間予測」は成長率1.9%のプラスだった。11月17日、内閣府が公表した「マイナス1.6%(年率換算)」にエコノミストも政治家も驚愕した。しかし、首相は間髪を入れず衆議院解散を表明した。

 仮にプラスだったら、10%消費税を延期しての解散にはより大きな抵抗があっただろう。首相は「予想外のマイナス」を逆用したことになる。

 公表されたのは速報値であり、しかも問題点が指摘された。マイナス要因は「在庫」と「設備投資」にあるという。統計上の扱いや実体経済上の評価が定まっていないと専門家たちが指摘した。「在庫調整」は生身の経済にとってプラスなのか、マイナスなのか、その解釈が違う可能性もあるというのだ。経団連会長は「在庫の取り崩しが(マイナス数値に)大きく影響した」と述べた。在庫調整によって生産の回復が期待されるから、10月以降の次期はプラス成長の見込みが高い(日経新聞11月18日)という意味が込められていた。

 首相はなぜ、予想外のマイナス値を議論せず、しかも速報値の段階で解散したのか。改定値の公表は12月8日、公示の後だ。疑念が強く残る。



被災地から安倍政治への異議を


 首相は公示を前に、全国遊説を被災地であり激戦地である岩手から開始した。

 4回目の冬だ。プレハブ仮設は傷みもひどく、心もなえる。消費税増税に加え、円安による輸入物価高騰が被災地を苦しめている。その場で首相は復興の前進をアピールした。

「岩手の復興なくして日本の再生はない。2年前に何もなかった所に住宅を作り、仕事ができ始め、笑顔が戻って来た。復興を加速させていくためにも、経済をさらに強くしなければならない」。

 この二年間、生活物資も建築資材も上昇し続けている。地元の建設業界でさえ「アベノミクス」の恩恵はないといっている。「デフレマインドの払拭」という首相や黒田総裁の言葉は、被災地の実情とあまりにもかけ離れており、被災者を鞭打つものだ。

 被災地から安倍政治に異議をぶつけよう!


○「大義なき、抜き打ち解散」に対抗し、安倍退陣の流れを!
○「改憲3分の2勢力」に反撃を!
○「アベノミクス反対・脱原発・改憲阻止」の政党と候補者へ!
○統一地方選と参議院選挙につなげよう!

(2014年11月30日)


■以上/宮城全労協ニュース276号(2014年11月30日)