4周年の国連防災仙台会議〜
成功より「失敗の教訓化」を
東日本大震災の4周年が近づいている。そのタイミングで、第3回国連防災会議が3月14日から5日間、仙台市内で大規模に開催される。5千人以上が参加する「本体会議」のほか各種フォーラム、シンポジウム、セミナー、展示など多種多様なイベントが実施される。
阪神淡路大震災を契機とし、過去2回、いずれも日本で開催されてきた。仙台会議では「兵庫行動枠組」(2005年)を引き継ぐ「指針」が採択される予定だが、減災の数値目標では「各国に温度差があり難航は必至」だという。
●問われる仙台市の役割
東日本大震災は「地震・津波・原発事故」による「初めての複合災害」となった。震災後「防災」から「減災」への転換が議論された。この二点が反映されるべきだ。
ところが、どこでどのような議論がなされているのか。関心も薄く、経緯も明らかではない。釈然としないまま開会を迎えようとしいる。
仙台市は「市民参加」を強調するが、市民と政府や公的部門との関係も定かではない。全国から寄せられた様々な市民企画はどこで、どのように「ふるい」にかけられたのか疑問だという指摘もある。
仙台市は国連防災会議に続いて、2016年サミットを誘致しようとしている。その予行訓練だろうか、各所で警備訓練が続いている。サミット誘致には膨大な「自治体力」が必要となる。そんな余裕があるのなら、沿岸部自治体や福島と岩手に送り出すべきだ。
いったい仙台市は、なんのために国連防災会議を誘致したのだろうか。ちぐはぐでバラバラな状況が広がっているいま、被災自治体としての主張が明確に発信されるべきだ。
●指針をめぐる「難航」
指針案の議論が難航していると地元紙は報じた。
災害に弱い国は経済的な損失も大きい。だから災害にそなえる事前投資が必要だが、支援を求める「途上国」に対する「先進国」の負担をどうするか。「日本のように大災害時の被害想定や、発生後の精緻な被害把握を実施している国は少ないのが実情だ。ノウハウも乏しく、こうしたことが減災の数値目標をめぐる議論を難しくしている」(河北新報2月15日「数値目標にハードルも/各国に温度差、難航必至」)。
日本は「防災先進国」であり、リーダーシップの発揮が必要だと記事は結んでいる。
東南アジアなどから東北・被災地を訪問した人々、政府や地方行政関係者たちは災害に対する日本の高い意識は格別だと印象を語っている。
日本は軍事同盟の観点によらない「人間の安全保障」の立場から、アジア・太平洋を中心とする国際災害対応支援の共同作業を申し出るべきだ。そのための人材を育成し、チームを形成し、安心と信頼の民衆関係を根づかせることが必要だ。
安倍政権は外交政策を大きく転換した。防災に関してもこれまでの延長では語れない。その点でも仙台市の見解が求められている。
「積極的平和主義」やODAの見直しといった安倍政権の外交路線に組み込まれない国際災害対応政策を仙台市は主張し、東北各県被災地の同意を得て「仙台宣言」を発するべきだ。
●国連代表者の「原発事故」発言
国連の代表者(国連事務総長特別代表・防災担当)は、福島第一原発事故は会議で検討される対象だと発言した。
「福島によって(技術的災害が)世界的に注目されることになった。原発事故後にはどう復興すべきか、何を学習し備えるべきか、防災・減災を進めながら学ばなければいけない」「自然災害の潜在的な影響を理解するという観点から、(原発は)新しい枠組み(の議論)に含まれる」(1月19日、日本記者クラブでの発言から)。
原発事故の扱いについて、日本側となんらかの「さやあて」があったのだろうか。仙台市を含めて日本側からのコメントはない。
山谷防災担当大臣は「防災のための事前投資や、被災前よりも災害に強い地域をつくる復興といったわが国の主張が(行動指針に)盛り込まれるだろう」との見通しを示した(河北新報2月21日)。つまり「国土強靭化」であり「創造的復興」論だ。原発について言及はない。
原発事故は当然、仙台会議の最重要テーマであるべきだ。初めての重大な原子力災害をともなった自然災害である以上、日本が消極的である理由はない。
仙台会議は原発事故後の対応の検討にとどまらず、原発が抱えている「自然災害リスク」について世界各地の個別的な検証を行い、運転停止の勧告措置等を議論すべきだ。
東日本大震災には「予感」があった。2004年のスマトラ島沖地震・大津波に直面し、津波と日本の原発リスクを結びつけて警告した人たちがいた。しかし、日本政府も電力会社もスマトラから学ぶことなく、東日本大震災での原発破綻にいたった。
福島第一原発事故への反省こそ、国連防災会議を意味あるものとするために日本が問われていることだ。
●女川原発と「トモダチ作戦」をめぐる宮城県の企画
宮城県は次の二つを企画している(12月11日「第3回国連防災会議に係る県の取組」)。
1.女川コース「千年に一度の町づくり」〜歴史に学んだ女川原発の安全対策
2.空港周辺コース「トモダチ作戦と奇跡の復旧」〜仙台空港と事業継続マネジメント
「成功体験」の代表例として押し出そうという宮城県の意図が見える。前者からは原発再稼動に、後者は「仙台空港民営化」につながるストーリーだ。二つは「被災地公式視察」、26ヶ所の「スタディツアー」の一環だ(◎注)。
これらの視察は「本体会議参加者に被災地の現状を視察」してもらい「大震災の経験と教訓、復興の状況を力強く発信する」ことが目的だという。
「地震・津波に耐えた女川原発」あるいは住民を施設内に避難させた地元との関係性を讃える人たちがいる。戦後の東北電力の歩みが「女川」と東京電力の「福島第一」の違いに行き着いたという主張もある。県は、そのような意見に依拠して、女川原発の礼賛ツアーを組むのか。だとすれば女川原発再稼動推進のアピールであり、安倍政権の原発政策の正当性を主張する場に仙台会議を利用するものであって大きな問題だ。
宮城県の企画に対して疑問や抗議の声があがっている。市民団体は連名で、女川原発が重大事故を回避できたのは「幸運(国会事故調査報告書)」に過ぎなかった、女川原発を「震災に耐えた」と美化して世界をミスリードすべきでないと東北電力に対して求めている。主催者は抗議を重視して対応すべきだ。
●安倍首相は「汚染水コントロール」を撤回せよ!
安倍首相は会議に出席したいと言っている。「防災の知見や復興状況を世界に示すとともに、被災地の復興に資する会議にしたい」(2月14日、気仙沼にて)。国連が主催する会議が安倍首相のパフォーマンスの場となってはならない。
首相が参加するならば「汚染水」の実情を説明すべきだ。評価と判断は「国際社会」がそれぞれ行うだろう。
汚染水をめぐって東京電力は右往左往を繰り返し、有効な対策を打てていない。福島は今回の外海流出問題に深く傷ついている。どこまで愚弄されるのか。故郷再興のために信頼しようと思っても、裏切られ続ける福島はどうしたらいいのか。
政府は「コントロール」「ブロック」発言は正しいと言い続けている。「科学的知見」など誰も信用していないだろう。政府の「思考停止」の最大の原因は、首相にある。
東京五輪招致のための虚言だった。できもしないことを強要された東京電力にとって負の圧力となっている。その圧力のもとで、無理な作業を強いられ、労働者たちが犠牲になっている。
首相発言がもたらしている悪影響の連鎖をとめねばならない。発言を撤回し、事態は容易でないことを認め、国が責任をもつことを内外に宣言するよう、仙台会議は日本政府に求めるべきだ。
●それでも重要な被災者たち、復興支援者たちの声
2016年サミットを仙台市に誘致すべく東北6県の推進協議会が昨年秋に発足しており、正式決定に向けて官民協力の誘致作戦が最後の局面に入る。「復興した東北の姿を見せる絶好の機会」がサミットであるという。その先には2020年東京五輪への「被災地参加」がある。仙台市は福島の今回の「汚染水」事態を直視し、立ち止まって考え直すべきだ。
疑問や懸念がぬぐえないが、それでも国連防災仙台会議には、被災者たちや復旧・復興支援者たちが登場する多くの場がある。
自分たちの主張やパフォーマンスを世界に披露したい、楽しみたい、そのように発想する多くの若者たちがいる。そのエネルギーが被災地とくに福島と農林水産業など復興の現場に向かうことを願う。
「市民参加」のなかでは、脱原発のアピールがなされるだろう。介護・福祉・医療などの現状を報告し、震災格差の打開を訴える場もある。建設現場のアスベスト飛散や労災多発に対して、防止を求める声にも注目しよう。
「被災者が主人公」「人間らしい復興」を訴える様々な主張、そのような自主・自発の活動はとても貴重だ。せっかくの国連防災会議であるから、被災地の次の胎動につながっていくことを期待し、その場を活用しよう。
◎注/被災地公式視察
「仙台開催実行委員会」による県内被災現場など17の企画、先に触れた宮城県の二つの企画とともに、次の企画がある(かっこ内は企画・運営)。
◇災害リスク軽減を実現する日本の技術
〜防災産業展in仙台(内閣府、宮城県等)
◇福島第一原子力発電所の視察(資源エネルギー庁)
◇福島・浜通りの復興の歩みと、食の安全安心の取組(以下、福島県)
◇福島・中通りの食の安全安心の取組
◇最新技術を用いた復興の加速化と震災の伝承(以下、岩手県)
◇「釜石の奇跡」と自治体水平補完
◇教訓の伝承と三陸鉄道の取組
■以上/宮城全労協ニュース281号(2015年3月1日)