組合員が意見陳述/最賃宮城
清掃業は産別最賃の適用外!
前号に続いて宮城最賃審議会での「意見陳述」、ならびに宮城労働局長への「異議申出」を掲載します。
宮城合同労組の組合員が意見陳述を行いました。低すぎる最賃によって、現在も将来も不安であることに加えて、「清掃業」が「産別最賃」において差別されていると訴えました。
宮城審議会は「目安」を追認する結果となりましたが、全国では6県(埼玉、兵庫、鳥取、島根、香川、高知)の審議会が「中央目安」を1円、上回る答申を決めました。このままでは「雇用の流出」は避けられないという地方の危機感が反映されています。
(各地方紙を参照してください。たとえば高知新聞は次のように報じています。「今回は、全体の審議前の専門部会で、22円引き上げが全会一致で決まった。主張に隔たりはあったものの全国最下位の最賃を意識し、『労働人口を増やすためにも高知県のマイナスイメージを払拭(ふっしょく)すべきだ』といった意見が出たという」8月20日)
■宮城地方最低賃金審議会での<意見陳述>2016年8月1日
◇全労協・全国一般全国協議会/宮城合同労働組合・組合員
<意見>(一部略)
(1)
私は(10年ほど前から)ビル管理会社に雇用され、清掃業務に就いてきました。
私と会社との雇用契約は、6ヵ月ごとに契約更新する有期雇用です。
労働時間は、始業午前7時30分、終業午後16時、休憩時間は合計1時間30分で1日7時間労働となっています。そして4週6休のサイクルの労働を繰り返していますから、月の労働日が24日といったところです。
賃金は、日給制で5,500円、時給換算で782円、所定賃金の月額は132,000円です。
家賃10,500円の市営住宅に入居しているので何とか生活できていますが、次の給料日まで財布をもたせることは、けっして容易なことではありません。風邪や打撲程度では医者にかからないで済ませています。消費税が8%になってから生活が一段と苦しくなりました。さらにこの先10%に引き上げられると、より深刻な状況となります。
また今の低賃金は将来の年金の低水準を意味し、老後を考えると不安でなりません。
業務委託契約料が上昇しないことを理由にして、賃金引き上げは働き始めてからほとんど行われてきませんでした。私の職場全体の賃金が低いものですから、生活が成り立たず退職者が後を絶ちません。慢性的に人手不足になっているので、低賃金の反面、1人当たりの業務量は相当多いと思います。
(2)
仙台市では、庁舎の清掃業務や警備業務の入札に際し、価格競争の激化による低価格で入札するケースが生じているとして、業務の品質低下や、労働者の雇用環境を悪化させないために、「低入札防止策」を講じています。仙台市によっても、清掃業務の低賃金問題が取り上げられているのが実情です。
宮城県の最低賃金は現在726円ですが、鉄鋼、電子部品他、自動車小売業には、宮城県特定(産業別)最低賃金が定められています。
鉄鋼業を例にとると最低賃金が827円ですが、「適用除外労働者」の規定があり、「18歳未満又は65歳以上の者」、「雇入れ後3月未満の者であって、技能習得中の者」と「清掃又は片付けの業務に主として従事する者」については、鉄鋼業に直接雇用されていても827円ではなく、101円低い726円が適用されます。業種による適用除外は、清掃業だけです。
電子部品他、自動車小売業においても清掃業だけが産業別最低賃金から適用除外され、見放されています。私は清掃業も最低賃金が決定されているものと考えていました。
清掃労働者は大部分の者が非正規であり、非正規労働者の低賃金構造と相まって、他の業種の労働者と比較しても一段と低賃金が目立つ存在だと言えます。働く現場から改善する努力もしなければなりませんが、それには限度があり、「最低賃金引上げ」、「公契約条例の制定」等に頼らなければ改善できないのが現状です。
(3)
世界的には、日本のように各県ごとに細分化されている最低賃金はマレです。
昨年、東京と沖縄などでは214円もの差がつきました。20年前にはこの差は96円でした。格差が拡大していることにより、最低賃金の低い地方から若年労働者が流出し、地方の疲弊を増幅しています。清掃で働く労働者は、東京でも宮城でも沖縄でも、やる仕事はほぼ同じです。
やる仕事が同じなのに賃金に差がつくのは、最低賃金の格差がそのまま個々の賃金に影響しているからです。政治政策において最低賃金を1,000円に引き上げようとする意向もありますが、全国平均で1,000円以上ではなく、私は、「今すぐ、どこでも1,000円以上の最低賃金」と訴えます。
宮城県の最低賃金が1,000円に引き上げられると、それに伴って私の日給は7,000円になり、月額で168,000円になります。しかし、入院を必要とするような傷病の治療費確保には追いつかず、軽い傷病の治療費に充当させる程度だろうと思います。
私は健康で文化的な生活を送るために、「1,500円以上の最低賃金」を求め続けます。
宮城県の最低賃金の動向が、直接毎日の生活に影響している者の1人として、率直な意見を陳述させていただきました。
■宮城労働局長への異議申出
◇宮城全労協/2016年8月17日
「宮城県最低賃金の改正決定」(答申)への異議申出書
宮城労働局長より2016年度の「宮城地方最低賃金審議会の意見に関する公示」がなされました。宮城全労協は「時間額748円」(22円引き上げ)とする改正決定に対して、最低賃金法第12条の規定に基づき、以下のように異議を申し立てます。
なお宮城全労協は2016年度改正に関して、「時給1千円超」への引き上げをはじめとする「要請書」(3月23日)を審議会に提出しています。また審議会では宮城合同労働組合組合員が意見陳述を行っており(8月1日)、それらによって私たちの意見を表明しています。
<異議の内容>
1.「時給748円」は宮城全労協が求めている「1千円超」からかけ離れています。また「中央目安」からの引き上げもなく、地域格差は広がる一方です。以上により、同意できません。
2.首相の意向と審議会の関係が例年になくとりざたされました。だからこそ、地域に開かれた審議のあり方が問われたはずです。しかし、改善の方向性が見られません。
<異議の理由>
(1)「時給748円」では「健康で文化的な生活」を送ることはできません。
全国平均「822円」の目安額でも月額12万から13万程度であり、「748円」はそれを大きく下回ります。
現行2016年度の最賃額では東京(907円)で年収170万、沖縄など(693円)では年収130万円に達しないとされています(月155時間働いた場合)。
このような水準の最低賃金で「健康で文化的な生活」など不可能です。
欧米資本主義諸国で第二の経済力を誇る日本で、この程度の最低賃金がまかりとおっていることが異様なのです。そのひずみが貧困や格差の拡大として、またそのことに起因する諸問題として社会に現れています。
このような事態に歯止めをかけることが、とくに地方最賃審議会の任務であるはずです。
欧米では「時間15ドル」を求める運動が広がり、日本でも「1500円」を求める若者たちの声が注目されてきました。
「時給千円」が政府を含めて意識されているのは、この額でようやく年収200万円が見えてくるからです。1500円の最低賃金をめざし、「誰でも、どこでも、いますぐ1千円」を実現すべきです。
(2)拡大する一方の地方格差
「目安」が地域格差を自動的に拡げる要因になっています。昨年は引上げ額の差は3円、今年度目安では4円に拡大しました(Aランク25円、B24円、C22円、D21円)。
このような考え方や算定方式が容認されているのなら、地方から異議を突きつけ、廃止させるべきです。
中央審議会が地域格差を縮小させる「目安」を示さないのであれば、とくにDランク、Cランクとされている地域で「目安」を上回る引き上げが実施される必要があります。
そうでなければ、格差の拡大は合理的だとして、いつまでも存続することになります。
「第一ランクである首都圏との賃金格差」は地方に大きな影響を与えます。
「これでは、若者の首都圏流出、地方の人口減は止められまい」「最低賃金が果たす役割は格差を強いられてきた地方でより重くなってきたといえる。現行のランク分け決定方式の見直しを含め、地域間格差是正に向けた論議が不可欠だ」(河北新報社説「最低賃金引き上げ/地域間格差の是正も必要だ」8月16日)
このような主張は各地でなされており、地域審議会の対応を求めています。
(3)「3%」「一千円」は政権側の都合のよい数字
安倍政権が打ち出している「3%引き上げ」「2020年に時給1千円」は、都合の良い数字を抜き出し並べたものです。このことは多くの新聞等で指摘されていることです。
毎年3%引上げたとしても、全国加重平均で「1千円」に達するのは2023年度です。民主党政権時代、雇用戦略対話(2010年)で合意した「2020年までの目標」に及びません。
「全国平均1千円」が実現したとき、Dランク県は800円台にとどまっています。3%引上げが続いても、Dランク県が1千円に達するのは「全国平均」からさらに5年後になると試算されています。しかも、前述したように地域格差は拡がる一方です。
そもそも「3%」といっても、政府は日銀とともに「2%物価上昇」を堅持しています。消費税は5%から8%に引上げられ、先送りされた10%の導入は2019年10月です。
(4)「地域最賃」の審議が、地域社会に開かれていない
今年度改定審議は「異例のスピード決着」が話題になりました。「『官製』の最低賃金」と表現した記事もありました。
「審議会の舞台回しを担う厚労省には後味の悪さだけが残った。(中略)首相の「3%」発言に関し厚労省は終始蚊帳の外だった」(日経新聞7月29日「『官製』最低賃金/首相の念願/異例のスピード決着」)。
今回、新聞各紙の多くが、公労使という三者協議の審議会と首相意向の関係について触れています。それほど政治的な圧力が強かったということです。最賃審議会は首相の政策をPRする場ではありません。そのような疑念を払拭するためにも、地域審議会ではこれまでに増して、十分な審議が課題となったはずです。
民主的で地域に開かれた地域審議会のあり方が、近年、これほど問われたことはありません。しかし、結果は従来どおりといわざるを得ません。地域審議会の検証を求め、異議申立てとします。
■以上/宮城全労協ニュース301号(2016年9月12日)