最賃改定(宮城)に異議申出
宮城地方最低賃金審議会は8月4日、「1時間772円」(現行の748円から24円の引上げ)とする意見を提出、宮城労働局長から公示されました。
宮城全労協はこれに対して異議申出(資料掲載)を行っていましたが、8月22日、審議会は答申通りを適当とし、2017年度改正が決定しました。
「中央目安」に対して、この引き上げペースでは政府が掲げる「1千円」目標の達成は厳しいという見解と同時に、地方格差の是正を求める声が上がっていました。地元紙河北新報は<「ひずみ」の是正>を求めました(7月28日社説)
全国的には「中央目安」の追認となりましたが、このような地方の動きを反映して新潟、鳥取、宮崎、沖縄の審議では「目安」を1円上回る引き上げが実現しました。
引き続き最賃大幅引き上げの運動が必要です。
以下、資料として宮城全労協の異議申出を掲載します。
なおニュース300号(2016年8月12日)「最賃宮城「748円」/中央審議会目安を追認」を参照してください。
●「宮城県最低賃金の改正決定」(答申)への異議申出書
(2017年8月18日/宮城全労協)
宮城労働局長より2017年度の「宮城地方最低賃金審議会の意見に関する公示」がなされました。宮城全労協は「時間額772円」とする改正決定(8月4日)に対して、最低賃金法第12条の規定に基づき、以下のように異議を申し立てます。
なお、宮城全労協はこれまで「時間額1千円超」への引上げをはじめとする見解を明らかにしており、また昨年、宮城合同労働組合組合員が意見陳述を行っています。
<異議の内容>
1.「時間額772円」は、今や社会的な要求といえる「一千円」から大きく離れた額であり、容認できません。「どこでも、誰でも一千円」の即時実現を求めます。
2.ランク付けされた「中央目安」からの引上げもなく、「地域格差」が今年も拡大することになります。
3.審議の非公開が今回も続いており、改善もなされていません。
<異議の理由>
(1)「時給772円」では「健康で文化的な生活」を送ることはできません
「中央目安」と同額の「772円」について、宮城労働局は「(2016年度の)748円を24円引上げるもので、過去最高の引上げ額となる」とコメントしています。
この引上げ額では、宮城労働局が算定例として公表している「月給の計算例」を適用しても年額「159万3千円」(一日所定労働時間8時間、年間所定労働日数258日)です。
これは「健康で文化的な生活」が可能な額ではありません。
政府は「1千円」を実現すべき当面の額と設定し、そのために「3%引上げ」を打ち出しました。「貧困ラインに達しない、低すぎる日本の最賃」という批判を意識してのことです。首相は「アベノミクスの成果」を強調してきましたが、「一億総活躍社会」実現を訴える場で最賃引上げを強調したのは、「好循環」が回っていない現実を認めるに等しいものです。
しかも「2016年から毎年3%引上げ」によっても、「時間額1千円(加重平均)」への到達は2023年だという試算があります。これでは前政権枠組みによってなされた「政労使合意」(2010年雇用戦略対話)にも及びません。
そもそも政府にとっての「3%引上げ」は「名目成長率3%引上げ」の方策の一つと位置付けられています。「健康で文化的な生活」を送るために、「貧困ライン」に満たない最賃の大幅引上げが必要だとの認識に立って、ただちに「1千円」を実現すべきです。
(2)地方格差の拡大を止めるため「一律最賃」を求めます
地方格差の解消は今年度もなされませんでした。「中央目安」(全国平均25円引き上げ、時間額848円)は例年同様にランク分けされ、引上げ額はそれぞれ26円、25円、24円、22円と示されました。
宮城全労協は昨年、次のように見直しを求めました。
ランク分けされた「中央目安」が地域格差を自動的に拡げる要因になっている。「地方から異議を突きつけ、廃止させるべき」であり「そうでなければ、格差の拡大は合理的だとして、いつまでも存続すること」になる。
今年も事態は変わっていません。政府もこの点で見解を明らかにすることなく、事実上、地域格差の拡大を容認してきました。
一方、昨年に続いて「地方」から異論が相次ぎました。たとえば福井県知事は「東京一極集中を誘引する一つのファクターにならないよう十分注意を払う必要がある」と述べ、注目を集めました(福井新聞6月30日)。
地元紙は次のように指摘しています。「東京と岩手の賃金差は(12年度の197円から16年度には)216円へと拡大している。これでは若者が大都市に流出し、地方の人手不足に拍車がかかりかねない」(河北新報社説7月28日)。「下位ランクほど手厚い引上げ策が要る。現行制度の見直しを含め、地域間格差の是正に向けた議論は不可欠だ」(同社説)。このような主張は地方に共通したものとなっており、地方審議会は真摯に受けとめるよう求めます。
(なお、新潟、鳥取、宮崎、沖縄の4県では「中央目安より1円高い引上げ」と報じられています。)
(3)政府、大企業の責任
最賃引上げへの抵抗が今なお続いていることも事実であり、政府と大企業の積極的な関わりが必要です。
第一に、中小企業の経営に悪影響を及ぼし、結果として低所得労働者層の雇用が減退するという論です。このような論に実証性がないことは米国などで指摘されてきましたが、とくに中小企業経営に対する政府の施策の必要性は明らかです。大企業が「系列」に対して及ぼす法外な締め付けは、厳格に規制されねばなりません。自治体が地域経済に密着した中小零細企業への支援措置を講ずることは当然であり、また公契約は適正に実施される必要があります。
第二に、最賃引上げが「富裕世帯」からの労働力供給(専業主婦層のパートなどへの就労等)をうながすことにより、「富裕世帯」に所得増大という恩恵をもたらし、一方「最賃レベルの雇用状況」を逼迫させるという議論です。一部学者たちが最賃引上げの問題点として指摘していますが、このような「懸念」が現実であるとするなら、それは税制度等によって是正されるべきものです。
(4)「若者流出」の危機/大震災復興に寄与する最低賃金引上げを
大震災復興の道筋は複雑です。「格差」が地域、産業から個々人にまで広がっています。被災地の最低賃金の上昇には、地域社会を再生させる大きな効果があります。
被災地で共通して話題になるのは「若者たちの流出」です。卒業生の地元離れが地域復興の大きな障壁となっています。
復興のために農林水産業、小売りや流通など多くの人々の関与が必要とされていますが、最賃の大幅引上げは不安定雇用、「非正規」雇用労働者の賃金上昇、ともに復興を担っている外国人労働者の賃金上昇にも寄与するはずです。
大震災復興を励まし地域を支えるために、被災地最賃審議会の役割が問われ続けています。
(5)審議の公開を求めます
宮城全労協は「審議の公開」を求め、「改善」を要請してきました。しかし、今年度改定審議にあたっても実現していません。
審議の公開と民主的な審議会構成は、最低賃金制度が地域社会に根ざし、機能するために必要不可欠の要件です。
以上、宮城全労協の異議申立てとします(2017年8月18日)。
■以上/宮城全労協ニュース311号(2017年9月5日)