宮城全労協ニュース/第315号(電子版)/2018年1月4日

リニア談合と新幹線台車の亀裂
製造大企業の不正続発の最中に




 12月、JRの二つの新幹線をめぐり重大事態が続いた。8日以降、東京地検特捜部と公正取引委員会は「リニア入札疑惑」をめぐって大手ゼネコン各社への捜査を続けている。11日、新幹線「のぞみ」が運行トラブルにより途中で停止した。例を見ないほどの危機に直面していたことが判明した。

 日経新聞社説は12月23日になって「新幹線の安全を守るために」を掲載した。

 「定時運行の圧力に負けて、安全確認がおろそかになるようでは、鉄道会社の資格はない。ましてJR西は12年前に福知山線脱線事故を起こした会社である。運行停止を決断できなかったのはなぜか、詳細な検証と対策が必要だ。」

 この数日前には「リニア談合疑惑の徹底解明を」とする社説が掲載された。「(リニア談合疑惑が事実なら)社会に対する大きな裏切り行為といっていい。」(日経新聞12月19日)

 このような社説の連続は異例だ。さらに異常なのは、安倍政権から国民への説明がないことだ。



リニア工事の中止! 政府は国民に説明せよ!


 リニア建設工事(リニア中央新幹線/JR東海発注)は総工費は9兆円を超えるという巨大プロジェクトだ。安倍政権は3兆円の財政支援(「骨太方針」2016年)をもって「国策」的な位置づけを明確にした。そのリニア工事で大手ゼネコン4社による談合疑惑だと一斉に報じられた。

 その後、疑惑は事実であり、しかもJR東海の社員が何らかの形で関与していた疑いがあると報道されている。

 3兆円の財政投融資を決定するにあたって、安倍政権は国民にどれほどの説明をつくしたか。住民の反対主張はどれほど検討されたか。安全性、南アルプスなど沿線環境の破壊、需要と採算性、「通過駅化」がもたらす地方の衰退など、住民たちは疑問と不安を訴えてきた。

 政府とJR東海は工事を中止し、国民に説明しなければならない。

 最初の報道は特別国会閉幕直後というタイミングだった。だからといって国会審議が不可能なのか。「国策」談合疑惑なのだ。これでは「モリ・カケ」疑惑隠しと同じではないか。



新幹線運行の「最大の危機」


 JR西日本は、新幹線「のぞみ」(博多発・東京行き)で発生したトラブルが深刻な事態であったことを認めた。

 「(車体の総重量を支える)台車」の側面に、下部から亀裂が入っていた。亀裂は上方に伸びていて、台車の上端にわずか3センチで達するほどであり「破断するほどだった」。

 運輸安全委員会は「(重大事故につながりかねない)重大インシデント」だとして調査に入った。新幹線が「重大インシデント」の対象となったのは、記録が残る2001年以降、初めてだという。

 JR西日本社長は「新幹線の安全への信頼性を裏切った」と謝罪した。安全確保と運行停止の決断について、職員の対応を含めて調査、点検を行うと述べた。

 現場の労働者は異常に気付いていた。なぜ、運行は停止されなかったのか。西日本から東海への「引き継ぎ」はどのようになされたのか。東海社長は西日本側の対応に苦言を呈したが、東海側には接続時の問題はなかったのか。

 その後、様々なことが明らかになってきている。

 現場と指令員に認識のずれがあったと、JR西は認めた。「社内に11人いた乗務員や保守担当ら関係者全員が音やにおいなど異常を認識していた」「東京の指令員と認識のずれが生じ、運行を停止させる判断ができなかった」(朝日新聞12月28日)。

 保守部門の人員を減らし、また検査の間隔を広げるなど、JR西の安全対応の縮小が背景にあったとの指摘もある。劣化は継続して進んでいた(が検査で見逃してきた)可能性を指摘する専門家もいる。

 西日本社長は最初の記者会見で「宝塚線」事故に触れていたが、何を言いたかったのか曖昧な口調だった。「運行第一」「ダイヤを乱すな」という「企業風土」が問われた。労働者を大切にしなければ「安全」はない。これが「宝塚線」事故の教訓とされたはずだった。JR西はあの事故に立ち戻り、反省と検証のうえに出直すしかないと何度も指摘され、糾弾されてきた。

 福島第一原発の東京電力と同じように、責任が問われ続ける。台車亀裂と走行継続についての徹底解明がなされねばならない。



問われた経団連会長


 これらの事態が起きたのは、製造大企業の相次ぐトラブルと不正発覚の最中だった。

 原発事業の失敗が発端となった東芝問題。その後、自動車をはじめ日本製造業の名門大企業で品質管理など不正が発覚。国内の納品先(原発や防衛省にも)はもとより、影響は国際的にも広がった。

 <日本を代表するメーカーで不正が相次いでいる。「メード・イン・ジャパン」への信頼が揺らいでいる>。そのような報道が連日のように続いていた。

 経団連は対策、改善を企業に求めてきた。そのような中で不正の連鎖的な発覚が、ついには経団連会長が関係する企業に及ぶに至った。

 11月28日、東レは、子会社が製品の検査データを改ざんしていたと公表した。東レ社長は「神戸製鋼所の問題が出なければ「公表しなかった」と悪びれるふうもなく言った」と報じられた。さらに事実経過は把握していたが、ネット上で問題が出回ったので公表した、というのだ。

 前日27日、榊原・経団連会長は会見で「三菱マテリアルのグループ企業において、検査データの改ざんが明らかになったことは極めて残念」と言及、企業行動憲章の徹底を呼びかけていくなどと述べていたのだった。

 東レ不正は榊原社長、会長の時代に起きていたというが、発覚後、自分の責任には触れていない。経団連会長としての責任を問う声もない。どうせ会長任期は2018年5月で終わり、経団連新体制が始まるということなのか。

 「(新自由主義)改革派」は既得権益の破壊、岩盤規制の破壊などと称して、労働、農業、行政など社会全般に対して攻撃を拡げてきた。榊原事例が示したのは、日本最大の既得権益団体である経団連において責任問題が明らかにならないし、改革派も経団連に対して要求しないということだ。

 当初は「現場力の衰退」に焦点を当て、「働き方改革」と結びつけて解決を模索するという論じ方も見られた。しかし調査が進むほど、役員の関与があったとか、改ざん指南書が回っていたとか、会社ぐるみの不正の数々が暴露されている。

 「日本の製造業の信頼が音を立てて崩れ落ちていく」。このような事態に「政治」は無関心を装っている。



規制破壊に突き進む安倍政権


 再登場した安倍首相は、「世界で一番、企業が活躍しやすい国」を掲げ、「日本は買いだ」とセールス外交を展開した。資本活動の際限なき自由がもたらす社会のゆがみには、首相は関心を示さない。「モリ・カケ」問題への対応もそうだ。

 規制破壊の中心舞台として「国家戦略特区」が登場した。このような仕組みが不正の温床になりうるという認識はあったのか?首相はこの点を避けている。「モリ・カケ」問題への首相らの対応を、国民は納得していない。

 首相には誤算があったとしても、政策上の反省はない。「規制破壊」派は、「モリ・カケ」疑惑と戦略特区推進を切り離せと主張し、議論をそらそうとした。「岩盤規制破壊のドリルとなる」と叫んできた首相は、法的規制の一時的な停止を可能とする「サンドボックス」制度を成立させると明言している(*注)。

 小泉構造改革では「事後規制」が規制緩和政策の歯止めだと説明された。「サンドボックス」では<「まずはやってみる」という「実証による政策形成」に舵を切る>とされる。失敗はどのように判断され、誰の責任になるのか。企業活動はどこで律せられるのか。これらのことは国民に説明されていない。

 しかも「明治維新」150年の大々的なキャンペーンが始まっている。「サンドボックス」も「チャレンジ精神」として語られる。「企業不正」も成長の波に飲み込まれるかのようだ。


 年末、いくつかの報道が注目された。

 「急増する外国人実習生の失踪」。スーパーコンピューター開発にからむ詐欺事件で逮捕者(国の助成金など公的資金をめぐる疑惑)。NHK特別番組は「東京大学の研究不正」を扱った。「激化する国際競争の中で変容してきた科学研究費の配分を巡って、翻弄される科学者の姿」を追ったと番組は説明している。

 個別企業の不正や事故など、それぞれは別個のものだが、安倍政権の経済社会政策と無縁ではない。それらは「氷山の一角」に過ぎないし、もはや公然化せざるをえないほどマグマがたまっている。



(*注)「第四次産業革命によって、今、世界中で次々と新しいビジネスが生まれています。この時代の潮流を先取りする大胆な規制制度改革も進めていかなければなりません。・・個別分野での規制改革と併せてこれまでにない革新的なアイデアをビジネスにつなげるため、規制のサンドボックスの仕組みを創設します。このため、時期通常国会への法案提出に向けて準備を進めてもらいたいと思います。改革を進めることで、世界からベンチャー精神あふれる人たちが集まるような日本をつくり上げていきたいと思います。/世界に先駆けて我が国で生産性革命を実現する。そのために、税制、予算、規制改革、これまでにない大胆な政策を実行していく考えであります」(「未来投資会議」17年11月17日での首相スピーチから/官邸ホームページより)

 「サンドボックス」は「未来投資戦略2017年」(6月閣議決定)でも盛り込まれており、総選挙をはさんで12月8日、重ねて閣議決定(経済政策パッケージ)された。


■以上/宮城全労協ニュース315号(2018年1月4日)