女川原発再稼働の是非を問う
県民投票条例案を県議会が否決
宮城県議会は委員会(3月14日)に続き、15日の本会議で女川原発県民投票条例案を否決した。
女川原発県民投票条例は地元紙をはじめ多くの新聞が報道した。「再稼動の民意を問うてほしい」などの投書も取り上げられた。県民投票を求めたのは、野党支持であるか与党支持であるかを問わず、女川原発再稼動の是非の議論に自分たちの意見を反映したいという住民の意思であった。そうして「法定」をはるかに超える賛同署名が集まり、人々はまともな議論を県議会に求めた。
残念ながら、期待は議会多数派の壁に阻まれた。しかし「みんなのことはみんなで決める」という挑戦は、知事や議会に対して「重い責任」を課すこととなった。
署名者たちの想いを胸に、議会傍聴に何度も駆けつけた「m」さんのレポートを前々号に続き掲載する。緊迫した議会での息づかいが記録されている。
写真/街頭でも署名協力の活動が続いた。
(仙台市の中心街で「みんなで決める会」の行動/2018年11月)
<県民投票条例案を否決!/宮城県議会>
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県民投票実施は圧倒的民意
県民投票条例の採択を翌週に控えた3月9日、「みんなで決める会」は仙台市の中心街で県民投票条例への注目を呼びかけ、街頭宣伝・チラシ撒き・シール投票を行った。署名協力への感謝と県議会の状況を報告しながら、女川原発再稼働の是非を問う県民投票の実施に賛成か反対かを道行く人々に呼びかけた。「シール投票」には一時間で276人が参加した。賛成266人、反対10人と圧倒的多数が県民投票の実施に賛成した。住民こそが県民投票を望んでいるという歴然たる結果だった。
県議会がどのような姿勢を示すか。県内外から注がれている期待感を受けながら、県議会に向かった。傍聴に集まった多くの人たちも、同感だっただろう。
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請求代表者の意見陳述
3月14日、県議会の連合審査会(総務企画委員会と環境生活農林水産委員会の合同委員会)が開催され、5時間に渡り審議が行われた。38席に対して二百名を超える県民が傍聴を求めて集まり、溢れた人々は県議会庁舎一階ラウンジのモニターで視聴した。先月21日の県議会開会日と同じ状況で、県民の関心の大きさを示していた。おそらく、県議会の歴史の中でも特筆すべきことであった。
始めに請求代表者の多々良哲氏(みんなで決める会代表)の意見陳述が行われた。
多々良氏は「大事なことはみんなで決めよう、子ども達の未来、私たちが暮らす宮城のことは私たちが決めようというシンプルな訴えが県民の共感を得た」「国策と言うが人権問題でもある。福島第一原発事故の被害者となった宮城県民が自分たちの意思表示の機会を設けることは当然のこと」「県民投票の実施は、議会に対する県民の関心を高め、対話を促進し議会の活性化に寄与する。県民投票(直接民主制)は議会(間接民主制)を補い、地方自治を豊かにする」と述べた。
議論になっている「選択肢」については、「知事の同意は、『了解する』『了解しない』の二択なのだから、県民投票の選択肢も『賛成』『反対』の二択であるべきだ」と明快に陳述した。
最後に「8年前の今日(3月14日)は、11時1分に福島第一原発三号機が水素爆発を起こした日であり、未来の子ども達に対する責任を果たしましょう。未来に向かって、胸を張れるよう『協働』を進めましょう」と陳述を結んだ。
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審査会委員との質疑
立地市町選出の自民党議員からは「賛成か反対とする条例案に違和感をもっている。立地自治体は、原発と共存してきた。全県的な判断に温度差が大きく、なじまない」と発言。多々良氏は、「女川町は二割の町民が署名した。温度差はなく、地元の方が求めている。福島事故は地元も県内もなく全てにその被害を及ぼした」と明確に返答した。
県民投票の実現を求める野党会派で「脱原発県議の会」の議員は、「直接民主制は間接民主制を補完するもので決して議員活動を制約するものではない。県民の意見表明する機会を奪ってはならない」「福島原発事故で今も苦しんでいる人たちの痛み、苦しみを受け止めた議論を」と発言。「国の責任についてどう考えているか」という質問には「誰も責任を取らない。規制委員会は判断を示すだけで安全だとはいわないし、国は規制委員会に安全性を丸投げ、県、市町は国の責任という姿勢である」と批判した。
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住民の声を聞くことになんの損失もない
野党側が推薦した武田真一郎氏(成蹊大学教授)が参考人として意見を述べた。
武田氏は、「住民投票とは、住民が賛否両論に耳を傾け一票を投じ政治に民意を反映させるもの」とし、「間接民主制の機能不全(住民とのギャップ)を埋めるためにも重要」と述べ、新潟県巻町や徳島市の吉野川河口堰建設時の住民投票を紹介しながらその機能を示した。そして「県議会が県民の意見を聞かない理由はなく、聞くことになんの損失もない。聞かないことで政治不信を高めるという損失が生じる。県民の信託に応える判断をして頂きたい」と締めくくった。
質疑で自民党議員から「住民投票の結果で国策がぐちゃぐちゃになる」という意見に対し、武田さんは徳島市の事例をあげ「建設省は計画を撤回した。意見を示すことで国の方針を変えることができる。民意を示すことは重要」と応えた。
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反対する理由を集めたかのごとき不要論
自民・公明推薦の参考人、河村和徳氏(東北大大学院准教授)は「間接民主制の補完という視点からすれば『しないより、した方がよい』」と言いつつも、二元代表制との整合性の議論(議員不要論を招くことなど)、実施可能性に対する議論(分権時代に県の事務を市町村にやらせることやコスト)、選択肢を巡る議論(二択でいいのか)、投票後に起こるであろう可能性についての議論(燃料税や失業対策などの自治体への影響、国や東北電力との関係、賠償含めた訴訟リスクや失業対策)が不足していると、条例案の不備を指摘した。傍聴したものとしては、反対するための理由を探し出してきたという印象が否めない。
条例案に反対する議員からも、政局リスクや多様な判断ができないことなど、反対ありきの表明で議論を深める機会をなくそうとする姿勢が際立ったと言える。
条例案を県議会に提案した宮城県から県民投票議案の概要説明があり、与野党委員から質疑を受け、43年ぶりに開催された連合審査会は5時間にわたる審議を終えた。同日、別室で開催された「総務企画委員会」で自民党と公明党の反対多数(6対3)により否決された。
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県民の意思表示を奪う県民投票条例案否決
3月15日に開催された本会議で、条例案は自民党、公明党の反対で否決された。
採決を前に条例案に賛成する野党側から、知事が意見書で指摘した「運営上の課題」に沿った形の「修正案」(公務員の意見表明可能とした項目の削除など)を提出した。
与野党それぞれ二名が賛成、反対討論に立ち条例案への意見を表明した。「新たな安全神話を作って過ちを繰り返そうしている。県民の思いは、声を聞いてほしいということだ。その機会を求めるのは当然」と賛成する意見。
反対意見の自民党議員は、「二択では県民の思いをくみ取れない。原子力政策は国策。投票結果の尊重義務規定は議員活動を制約する。原発と共存する地域や事業者への影響、交付金や雇用問題が発生する」として「熟慮して反対することにした」と表明した。そうであれば、修正案を提出して討論をたたき合えばよいのに、それすらしない。県当局においても「知事意見」で「運用上の課題」を指摘しながら、請求者への「訂正」対応すらしてこなかった。
公明党はどうであったか。「ポピュリズムの負の側面も無視できない。安易に住民に委ねることには弊害が多い」とまで言い切った。11万筆の県民の思いを愚弄する発言だと、傍聴者から憤る声が上がった。
採決は、修正案も含めて自民、公明の反対で否決された。反対が35(自民30、公明1、21世紀クラブ1)、賛成は21(みやぎ県民の声9、共産党8、社民党2、無所属の会2)、採決時に自民党の一名(脱原発議員)が退席した。
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県知事と議会の責任は非常に重い!
本議会終了後の意見交換会で多々良氏は、「反対する理屈を探し出してきただけだ。反対した県議と知事は、どう県民に説明責任を果たしていくのか、重い責任を負わされた」「県民の参加を得て民意の力を形にした。運動を引き継ぎ、民意を力に変えていこう」と述べた。
本会議で賛成討論した「みやぎ県民の声」の佐々木功悦議員は、「申し訳ない。議会制民主主義の結果だ。数をしっかりつくることだ。秋から来年が勝負だ」と、今後も再稼働を許さない闘いの決意を語った。共産党の遠藤いく子議員は、「直接民主主義の力強さを感じた。議会で11万人の思いを述べた。四会派はこれからも力を合わせていこう」と語った。社民党の岸田清実議員は、「二択がダメなら何故対案を出さないのか。やってほしくないために理屈をつけただけだ。政治を変える力にしていこう」とまとめた。
県議会が県民投票条例を否決したことについて地元紙河北新報は、「再稼働の地元判断に、県議会は住民投票によらず責任を持つと意思表示したことに等しい」として「議会制民主主義の担い手として責務が重みを増すことを自覚すべきだ」と報じた。
今年の秋には宮城県議会議員選挙が実施される。吉野川河口堰建設に関した住民投票条例案を否決した徳島市で、住民投票賛成派が次の市議選で逆転して住民投票を実現させた(ニュース328号参考)。県民投票条例制定運動の力を統一地方選、参議院選へと繋いでいくことが重要な局面になっている。再稼働を許さない闘いはこれからが本番だ。傍聴席は今日も満席だった。
2019年3月15日(m)記
■以上/宮城全労協ニュース330号(2019年3月30日)