「水道民営化」反対!
広がる不安、疑問の声
10月5日、『「水道民営化」を問う市民集会』が開催され(写真)、多くの人々が集まった。集会に参加した電通労組組合員からのレポートを掲載する。
(なお、レポートは10月10日に書かれたものですが、台風19号が東北太平洋地域に接近・通過、宮城県内にも大きな被害をもたらしました。その影響のためニュース発行が遅れました。)
「水道民営化」の実現を急ぐ県は、11月県議会を見据え、「みやぎ型管理運営方式」の「素案」を公表した。県議会議員選挙、それに続く11月県議会を前に、県民には不安と疑問が広がっている。
「県政だより」(9・10月号)には県の主張と「今後のスケジュール」が掲載され、「令和3年度中の事業開始を目指す」と明記されている。
河北新報は読者の声を相次いで掲載した。「性急な民営化 疑問」「宮城の水道民営化 慎重に」など、<タイムスケジュールありき>で水道民営化を進めてはいけないという県民の意見が反映されている。
6月29日には「命の水を守る全国のつどい」の第二回会合が仙台で開催され、様々な視点からの議論がなされた。市民運動は県の拙速対応を批判し、各種の集会や署名活動などを通して県民への訴えを重ねてきた。
大震災復復興の過程で、いわゆる「宮城方式」が注目された。「創造的復興」は国の「規制緩和」政策と連動し、「特区」や「民営化」が採用された。宮城県の「水産業特区」や「仙台空港民営化」が象徴的だ。
「水道民営化」はこのような流れの中にある。昨年12月国会の改正水道法成立を受け、県は大きく踏み出している。「宮城方式」の強行を許さず反対の声を広めよう。
(注)宮城全労協ニュース327号「水道民営化反対!」参照。
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水道民営化を問う市民集会(10月5日)に190名が参加
宮城県は、上水道・下水道・工業用水の水道3事業の運営権を一括して民間企業に売却する「みやぎ型管理運営方式」(コンセッション方式)を図ろうとしている。水質の悪化や水道料金の高騰、災害時対応への不安、海外での失敗例など、県民の疑問の声が多く上がっている。
宮城県は、このような声に耳を傾けず、県民への充分な説明もなく拙速に「民営化」を推し進めている。実施方針(素案)を公表し、9月2日から9月30日までパブリック・コメントを受け付けた。パブコメは28日間で640あったという。これまで宮城県が実施したパブコメは100〜150程度だとされ、県民の関心の高さを示している。10月の宮城県議選後の11月には実施方針条例を県議会で採決して、来年度中に事業者を選定し、2021年度中に民営化を開始させようとしている。
このような中、10月5日仙台で、いのちの水を守る市民ネットワーク・みやぎ主催の『宮城県が進める「水道民営化」を問う市民集会』が190名の参加で開催された。
市民ネットの中嶋信共同代表は、「公が大変だから、民に助けてもらうと言っているが、それはない。民は、配当が必要で儲けを求める。民間のダブついている資金の運用先を探していて、それが水道事業だっただけだ。そのような動きを止めなければならない。」と挨拶。
「蛇口の向こう側にある問題の本質は?」〜まちづくりと水道を自分ごとにしよう〜というタイトルで水ジャーナリストの橋本淳司氏の講演。
橋本氏は、2050年の社会、街づくりをどうするのかというところから考えていくべきだと提起、多岐にわたって問題点を指摘した。「みやぎ型」はコンセッションだけで「広域化」に触れられていないこと。コスト削減の根拠、コンセッションの効果、広域化の効果、ダウンサイジングの効果など、民間に20年間預けた後の事業プランが見えないこと。さらに水質点検を県や第三者機関がモニタリングするとしているが、民間事業者が自由裁量で運営するわけで「企業秘密や情報公開の壁」で本当にできるのか。最終責任は県が持つとしているが、20年後の気候変動(災害の増加)や人口減少、IOTやAI化など予想される環境の変化に対応した技術継承はできるのかと、「みやぎ型」について契約とモニタリングの失敗を上げ、柔軟性のない契約であることを批判した。
「自治体と市民で街とインフラを考える」ことが大切だとパリ水道の例をあげて説明。再公営化での市民参画の事例を示しながら、人材育成や市民参加のもと広域連携、過剰設備の縮小、大規模水道と小規模水道の併用や分散型水道に適した技術の促進で持続可能な水道を考えていくこと、「流域という概念」として上流地と下流地との連携など、このままでは取り残されてしまう自治体をそうさせないために、自治体職員と市民の協働ですすめることで2050年の社会と街づくりを考えていくべきだと述べた。
続いて東日本大震災復旧・復興支援みやぎ県民センターの小川静治事務局長が「みやぎ型」実施方針素案について解説した。
素案内容は宮城県の「PFI委員会」で非公開で審議され、県民にはわからないままであること。県と業者が5年間も話し合ってきたことを、県民にはわずか28日間で検討して答えろと言っていること自体、県民無視であること。120億円削減できるとしているが、IT化でコスト削減は無理であり、点検頻度も削減され安全品質は低下すること、モニタリングコストにいくら掛けるか明らかにされていないこと、人材育成コストの無視(職員研修予算10年間で145万円)、県の財政負担リスク(設備改築:県が承認して運営権者が行う)、危機管理のリスク(運営権者が判断して臨機の措置)、情報開示の後退リスク(大きく制限された情報内容に)などの問題点を示した。
水道民営化を宮城県が急ぐ理由は、「みやぎ型」が先駆的なモデルとして他水道事業体に広がることを国が期待しており、これに応えるためであり、その失敗の責任は誰も取らないし、取れないと指摘、止めるしかないと訴えた。
第二部は講師の橋本淳司さん、アクアロードみやぎの鈴木智子さん、命の水を守る市民ネット・みやぎの昆野武裕さんによる「パネルディスカッション」。
鈴木さんは小さな単位での集いや出前講座で反対の声を広げることを話され、昆野さんは宮城県議会選立候補予定者77名へのアンケート報告(集会時点で33名より回答があり、自民3、公明0、社民1、国民1、共産9、立民3など)を行った。
橋本さんからは全国の状況。水道法改正に反対した福井県議会や新潟県議会は反対意見書を採択している。国会での改正後も、神戸市長は議会の一般質問に答えて、コンセッション方式を採用しないと市議会本会議で表明。(市長は、優秀な職員が水道事業を支えており、その経験やノウハウは継承されてきたことを理由にあげたという)また、青森市長も現状維持を表明するなど、自民党を含めて水道民営化については判断ができないでいる。浜松市では無期限凍結になり民営化できない状態であることなどが報告され、今後の取り組みが重要であると話された。
(2019年10月10日記/電通労組M)
■以上/宮城全労協ニュース334号(2019年10月25日)