「女川原発再稼動」
同意差止め仮処分申請
女川原発2号機を再稼動させようとする動きが加速している。再稼動にとって重要な案件である「避難」をめぐって、11月12日、石巻市民が県と市を相手に仮処分の申立てを行った(写真)。その経緯と内容についてmさんからの報告を掲載する。
県、市と東北電力は、具体的内容を把握していないとの理由で態度表明を避けている。一方、弁護団は早期決定も予想されるなかで全力を尽くしたいと述べた。
原子力規制委員会は13日の定例記者会見で、審査書案の議論が12月初めまでに行われる見通しを明らかにした。更田委員長は「技術的な細部に入って検討してみると、思ったよりも時間がかからなかった」と審査が「順調に進んだという感触」を語ったという。
12、13日には「原子力防災訓練」が県、県内全市町村、防災関係機関によってに実施された(台風被害が影響して訓練は計画より縮小された)。新聞やテレビは「避難計画の実効性を不安視」など、とくに石巻市をはじめ「関係7市町」住民の声を報じた。
●女川原発2号機再稼働〜
宮城県知事と石巻市長は、同意するな!
石巻市民、同意差し止め仮処分の申立て
11月12日、石巻市民17名が「宮城県知事と石巻市長は、女川原発2号機が運転を再開するのに際して、同意をしてはならない」と仙台地裁に同意差し止めの仮処分申立を行った。
女川原発2号機をめぐって動きが急展開しようとしている。原子力規制委員会での174回にわたる「適合性審査」が9月28日に実質的審査を終了し、今後は「適合審査書案」を作成・公表、審査案に対するパブリックコメントを募集。その後、パブリック・コメントへの意見に回答を付した「適合審査書」が公表され、原子力規制委員会から経済産業大臣に「適合審査書」を提出され、経済産業省・資源エネルギー庁長官が事業者に設置変更を許可が出される。その後、資源エネルギー庁長官が知事を訪問、設置変更許可を報告、地元同意の手続き要請へと進む手はずだとされている。
そのように再稼動をめぐる動きが強まる中で、石巻市民による仮処分の申立てがなされた。
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人格権に基づき、避難計画の実効性を問う
申立ての主旨は、「女川原発2号機の30q圏内の住民が、人格権に基づき避難計画に実効性が欠けているにもかかわらず住民に知らせないままで再稼働に同意しようとしている宮城県と石巻市に、同意の差し止めを求める」というものだ。電力会社ではなく、自治体を相手取り、避難計画の実効性を争う全国初の訴訟となっている。
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14万市民を振り分けただけの避難計画!
申立てを行った石巻市民は、女川原発の避難計画に関心や多くの疑問を抱き「女川原発の避難計画を考える会」を立ち上げ、宮城県が作成した原子力防災のガイドラインとそれに基づく石巻市の広域避難計画について、昨年の4月より、その検証のため毎月1回の検討会・学習会を重ねてきた。
それぞれの居住地から、市の広域避難計画で示された避難経路に従い、実際に避難してみた結果、交通渋滞で30q圏内から脱出できない恐れや、避難退域時検査所や受付ステーションを経て避難所までたどり着けない恐れがあること、また風向きで避難先を変更する場合はどうするのか、指定された避難先で拒否されたら二次避難所はどうなるのかなど様々な疑問が生じた。このように避難計画は、14万市民を県内に限定した他自治体に、いかにして振り分けるか苦心した机上のプランであると言わざるを得ない(*注)。
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「避難計画の実効性」は、同意の必須条件だ!
「考える会」は、自家用車がなく移動が困難な住民のためのバスが確実に確保できるのか、入院患者や高齢者施設、障がい者施設の入所者の「要支援者」など社会的弱者の避難問題、複合災害時における対応などを指摘し、宮城県や石巻市に4次にわたる公開質問や「合同説明会」の開催要求、情報公開請求を行ってきた。
宮城県と石巻市は、合同説明会については「避難計画は策定途上で、住民の不安を煽る」として「現段階ではできない」と開催は拒否、「避難計画の実効性確保は、再稼働同意の必須の条件ではないのか」という質問については、「(同意を求められたら)国の原子力防災会議の状況なども踏まえて判断する」と国の指針で判断する姿勢で住民の意見など無視する構えだ。
こうした県や市の姿勢を放置するなら、避難計画の実効性について、市民への説明がないままに再稼働が同意されてしまうことを危惧し、「市と県の避難計画に実効性があるのかないのか」「実効性がないとすれば,それでも再稼働に同意してよいのか」を法廷の場で明らかにし、市民や県民に伝えるための手段として「女川原発の再稼働に同意しないこと」を求める仮処分を申し立てた。
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県と市の避難計画は実効性がない!
避難計画に実効性が欠けていることとして7点が指摘されている。
〇交通渋滞で避難所にたどり着けない。
〇複合災害時に受け入れ自治体から受け入れを拒否され、二次避難先が確保できない。
〇バスの確保、手配ができない。
〇病院、高齢者施設・障がい者施設などで、入院、入居者など「要介護者」の避難が困難である。
〇市の行政移転先が確保されていない。
〇オフサイトセンターが機能しない。
〇安定ヨウ素剤の緊急配布ができない。
このようなことがなぜ起きているのか。
その理由は、第一に避難者の視点を欠き、避難させる側の視点のみで計画が作成したこと。第二に現場調査を欠いたこと(机上のみの計画)。第三に設計のミスの放置(30q圏内からの脱出と指定した避難所への避難を同時に達成しようとした設計ミス)。第四は宮城県が現場責任を果たそうとしていないこと(バス確保をバス協会に丸投げ)。第五に福島事故の教訓を全く反映させていないこと。これらの点が指摘されている。
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「事前防止義務」違反状態での同意は人格権侵害
人格権は、個人の生命、身体、精神及び生活の平穏等の人格的利益を保護する権利である。将来違法な侵害が発生する恐れがある場合、その侵害の原因となる行為の差し止めを請求することができる。
宮城県と石巻市は、実効性を確保することが求められている。現状の避難計画は実効性を欠き、東日本大震災の津波で児童と教職員が犠牲となった大川小学校の控訴審判決で、実効性の高い避難計画の事前の整備を怠った学校側の責任を厳しく指摘されたいわゆる「事前防災義務」に違反していることは明らかである。
実効性に欠ける避難計画=事前防止義務違反状態の同意は、人格権を侵害するものであり、宮城県知事と石巻市長は女川原発再稼働に同意してはならないことは明らかである。
同意差し止め裁判に支援と注目を!(m記)
(注)石巻市民の避難先市町村(括弧内は避難者数、計149,677人分)
〜石巻市原子力防災計画より
大崎市(39,000)、仙台市(40,605)、塩竃市(1,103)、気仙沼市(4,410)、白石市(2,340)、角田(2,000)、多賀城市(6,480)、登米市(11,003)、栗原市(10,300)、冨谷市(2,620)
蔵王町(1,730)、七ヶ宿町(450)、大河原町(1,300)、村田町(850)、柴田町(1,930)、川崎町(800)、丸森町(1,800)、松島町(433)、七ヶ浜町(911)、利府町(1,548)、大和町(4,065)、大郷町(1,200)、大衡村(2,324)、色麻町(2,200)、加美町(3,980)、涌谷町(800)、美里町(3,495)
■以上/宮城全労協ニュース335号(2019年11月16日)