女川原発2号機(被災原発)
再稼働を許さない!
(注)原子力規制委員会は2月26日「審査書」を正式決定、女川原発2号機の新規制基準適合を認めた。
宮城県知事は「現時点では白紙」と述べたが、政府は間を置かずに反応した。資源エネルギー庁長官は県知事に政府方針を説明、また経産大臣も28日の会見で「規制委の判断を尊重し、地元理解を得ながら再稼働を進めていく」と発言した。審査の合格は原発再稼働の前提となるもので、「地元合意」をめぐる動きなど状況は緊迫した展開を迎えるだろう。
3月3日には宮城県議会で、野党会派が提出していた住民投票条例案を与党系が即日否決した。提案理由の説明も審議もないままの暴挙だった。
mさんよりの投稿(3月4日)を掲載する。
●被災原発を無理やり動かす規制委員会
東北電力女川原発2号機の設置変更申請を新規制基準に適合するとして、原子力規制委員会は2月26日「審査書」を決定した。
東北電力が2013年12月、原子力規制委員会に適合性審査を申請して以来、176回というこれまでにない審査会合を重ね、昨年の11月27日「審査書案」を公表、12月末まで一か月間のパブコメ募集(979件)を経て、今年2月26日「審査書」を決定した。再稼働に合格したとしているが、今回の設置変更に関わる審査は「基本設計ないし基本的設計方針を確認したこと」に過ぎない。
3.11東日本大震災の地震による女川原発2号機の原発建屋のひびは1130箇所に及び、上部の剛性は7割低下したことが報告されている。「コンクリート強度は建屋の耐震壁から抜きとり試験で強度低下がないことを確認している」としているが、剛性が7割減した建物を補強によって耐震性が本当に保証されるのかはなはだ疑問である。
基準地振動の策定については「最近の知見を踏まえて適切に対応している」としているが、将来の地震を全て予想できるわけがなく、震源から最も近く、被災原発であることへの認識が欠けていると言わざるを得ない。
新規制基準をクリアするために東北電力が投じた対策工事費用は、防潮堤(高さ29m、幅800m)をはじめとして3400憶円といわれており、新設するくらいの費用をかけているが、総括原価方式により電力料金に上乗せされているので東北電力にとっては痛くも痒くもない。
●宮城県設置の「安全性検討会」〜
規制委員会の後追いは許されない!
宮城県が原子力規制委員会から「独立」して、独自に安全性を検討するとして設置された「女川原発2号機の安全性に関する検討会」は、津波工学、原子炉工学、地震工学、耐震工学など専門分野の大学教授で構成されていて、東北電力が説明し構成委員からの質問、意見、要望という形式で進められてきた。今年2月7日まで22回の検討会を開催し、85項目の課題を検討したとして3月23日に「まとめ」の検討会を開催するとしている。
原子力規制委員会が審査書決定を公表した現在、女川原発2号機再稼働に向けた手続きは「地元同意」が重要な位置を占めるものになっているが、村井宮城県知事は「『女川原発2号機の安全性に関する検討会』の検討結果を判断材料にする」と繰り返し述べており、宮城県と立地自治体(石巻市、女川町)が再稼働の是非を判断するいわゆる「事前了解」の参考にするということであり、検討会がどの様な内容の検討結果をどの様な形で出すのかが大変重要な意味を持つものとなる。
2月7日に開催された22回検討会では、「重大事故対策」として「格納容器破損防止」について審議されたが、「水蒸気爆発の危険性」については「その可能性は極めて小さい」という東北電力の説明のみ。「ベントによる放射能放出」については、新規制基準ではセシウムの放出量は最大100Tbq以下としているが、女川原発では放射性物質をろ過して放射能を低減する「フィルター付きベント」の新設置で1.4Tbq程度であり、福島第一原発事故の7千分の1だと東北電力の説明。
しかし「フィルター付きベント」が機能しなかったら、既存の「耐圧強化ベント」を使い環境へ放射能を放出することになるわけで、その時の放射能放出は、東北電力の試算によると360Tbqとしており、新規制基準をはるかに超える量が放出されることになる。このようなことを知りながら規制委員会は「合格」を出したのであれば即時、撤回すべきである。
検討会で納得のいく審議が行われなかったことを受け、「脱原発をめざす宮城県議の会」と県内17の住民団体は、宮城県知事と安全性検討会に十分な審議を尽くすよう求める要望書を提出している。
●二度にわたり、県民投票条例案を否決!
宮城県議会は、県民の意見を聞く方法を示す責任がある。
2017年9月に河北新報が行ったアンケート調査によると、女川原発の再稼働に反対68%、賛成28%という結果だった。県民の意志は再稼働に慎重であるべきだということが、このアンケートから見てとれる。
2018年10月に呼びかけられた「女川原発2号機再稼働の是非を問う県民投票条例」制定署名運動は、2か月で11万3千筆(有権者の5.8%)を集めた。これは法定投票数の3倍であり、立地自治体である女川町民は2割が署名した。この署名を基に宮城県議会に提案された「県民投票条例案」は、二択(賛成、反対)では多様な意見が反映されないと昨年3月、自公の反対で否決された。
今年に入り2月28日、「脱原発をめざす県議の会」の野党4会派が投票条例案を議員提案した。これに対して自民党が「全会派への事前説明がない」と“イチャモン”を付け、議会運営委員会において本会議での条例案趣旨説明もさせない、委員会での審議を行わせない、3月3日の本会議冒頭で採決することを決めた。こうして多数を持って押し切り、本会議冒頭に採決を強行、満席の傍聴席からの怒りと抗議の声のなか、賛成少数で否決したのである。
議員提案の条例案は、自民党などから前回(2019年3月「女川原発の再稼働を問う県民投票条例案」*注)の二択について反対の意見があったことを踏まえ、「どちらかといえば賛成」「どちらかといえば反対」も含め四択の選択肢とした。自民党の言論封じと「条例案潰し」は、実施すれば反対が過半数を超えることを恐れたものであり、自信のなさがこのような暴挙にでたのであろう。県民の意志表示を二度にわたり阻止した宮城県議会は、どのような方法で県民の意見を集約するのか県民に説明する責任がある。
(*)参照/宮城全労協ニュース330号(2019年3月30日)「女川原発再稼働の是非を問う県民投票条例案を県議会が否決」
●「再稼働」は県民の民意で決める!
知事と立地自治体首長だけでの同意は許さない!
石巻市民17名が宮城県と石巻市を相手取った「女川原発再稼働同意差し止め仮処分申立」は、住民の人格権(生活平穏権)に基づき、避難計画に実効性が欠けているなかでの同意を差し止めるよう求めている。
申立は、宮城県が作成した「ガイドライン」を基に作成された石巻市の「原子力防災避難計画」について検証し、交通渋滞、バスの確保困難、要介護者避難困難、複合災害時の対策(二次避難先)、石巻市の行政機能移転先(代替施設)確保困難など7項目を主張して、避難計画の実効性の欠如を指摘している。さらに、14万人市民を県内27自治体に振り分けただけの机上のプランであり、避難させる側の視点でしか作成されていないこと、実効性に欠ける避難計画は大川小学校判決で示された「事前防災義務」違反であることを強く訴えている。
2月12日に開催された第2回審尋での宮城県と石巻市の反論は、「同意と避難計画は関係ない」と債権者(住民側)の主張への認否を拒否するものであり、「申立は失当である」として却下を求めてきた。認否の拒否は、債権者(住民側)の主張への反論が不可能であること、実効性に欠けていることを債務者(宮城県・石巻市)自ら認めたことになる。さらに、「避難計画の策定を再稼働前に果たしておく法的義務はない」とまで言い切っており、地方公共団体の使命である住民の生命、健康を守る責務を放棄しているのである。その意味でも、この訴訟に負けるわけにはいかない。
3月2日、資源エネルギー庁長官が村井宮城県知事を訪れ、女川原発2号機の「再稼働を進める」政府の方針を伝え、「地元同意」手続きを要請した。今後、地元同意(石巻市、女川町、宮城県)の動きが加速するだろう。
宮城県議会では6月議会で審議される模様で、女川町議会、石巻市議会も6月議会が焦点になるようである。女川商工会は女川町議会に「再稼働推進請願書」を提出しようとしたが、町議から紹介議員要請を断られ「嘆願書」にしたという。反対請願書も女川町議会に提出され6月議会で審議されるという。
再稼働の是非を巡る攻防は、最大の正念場を迎える。県内の仲間とともに「再稼働は県民の民意で決める!」ことを訴え、あらゆる手段と機会を捉えて再稼働阻止の取り組みを進めていこう。
(m記/2020年3月4日)
■以上/宮城全労協ニュース338号(2020年3月6日)