宮城全労協ニュース/第339号(電子版)/2020年3月14日

PS石炭火力発電所訴訟
3.31仙台地裁、結審へ!


重要<変更履歴>2020年3月21日

「結審」は「当分延期」!

 

3月31日に予定されていた結審は「当分延期」となりました。

新型コロナウイルスの感染拡大防止のために、裁判長から申し入れがあったとのことです。

新しい日程については、「仙台パワーステーション操業差止訴訟」原告団のホームページをご覧ください。

 

なお、ニュース本文は当初のまま掲載しています。

 
「仙台パワーステーション操業差止訴訟」は3月31日、仙台地裁にて結審を迎えます。石炭火力発電所の新設、しかも東日本大震災被災地での新設は全国的にも注目を集めてきました。朝田さんからの投稿を掲載します。

 なお宮城全労協ニュース312号を参照してください(「石炭火力発電所建設反対!地球温暖化の元凶・二酸化炭素の削減を!」2017年9月18日)。




●気候変動の元凶CO2排出を止めよ!
仙台PS石炭火力発電所の運転差し止めを!



 住民124名が「石炭火力発電所の運転差し止め」を求めて仙台パワーステーション(以下仙台PS)を訴えた裁判(2017年9月27日提訴)は大詰めを迎えている。

 仙台港に建設された出力11.2万kwの石炭火力発電所。環境アセス基準「11.25万kw」から500kw低い出力は、計画当初から「アセス逃れ」ではないかと言われてきた。仙台PSは「アセス対象外」を理由に住民説明を拒んできた事にも明らかだ。

 石炭火力は地球温暖化の元凶CO2を大量に大気中に放出し、PM2.5を始め大気汚染物質を地域社会にまき散らす。発電所周辺5キロ圏内には15万人が生活し、小中学校を含む教育施設や幼稚園・保育園、多数の病院が立地している。発電所から僅か800m先の七北田川河口には、国指定仙台海浜鳥獣保護区蒲生特別保護区、県自然環境保全地域に指定されている「蒲生(がもう)干潟」が拡がる浜辺だ。震災はこの干潟に壊滅的な打撃を与えたが、驚くべき早さで干潟と多種多様な生き物が増えていったそうだ。市民の手によって50年に渡って蒲生干潟の自然環境を守ってきたこの地に、なぜ石炭火力発電所を建設するのか?怒りしかない。

 住民が感じる健康・生活環境への影響や疑問に何も答えない、無視を決め込む企業への怒りがこの裁判の原点だろう。建設区域は大震災で多くの住民が命を落とした所だ。津波浸水域を「災害危険区域」に指定し、半強制的に集団移転させて買い上げた土地を区画整理事業によって「工業・準工業地域」にした。格安で土地を提供し、「国」「県」「市」の補助金で進出企業を優遇する仕組みだ。しかも、この計画は震災から僅か3か月後の2011年6月に出来上がっていたのだ。被災住民の辛苦をしり目に「土地の強奪」計画が練られていたと言える。

 現在、蒲生北部区画整理事業地内に建設中のバイオマス発電所(レノバ社)は、津波の犠牲者を弔う「なかの伝承の丘」に隣接した場所であり、その先には貴重な自然財産である「蒲生干潟」が拡がっている。新自由主義の「災害便乗型」モデルが「電力小売り全面自由化」に乗って被災地を跋扈しているのだ。


裁判の主要な3つの争点


 差し止め訴訟原告団は「@大気汚染による原告らへの健康被害、A温室効果ガスによる気候変動、B蒲生干潟の生物多様性が損なわれること」の三点を争点とし火力発電所の運転差し止めを求めている。

 仙台PSが稼働し年間約67万tのCO2が仙台の空に排出されるが、「CO2排出量は電気を使った方に計算」となり首都圏に換算される。このため健康や生活への影響を直接受ける住民や、自治体のCO2削減計画が骨抜きになる危険性を持ち、発電事業者の責任を免罪する可能性がある。仙台PSの排出量を世帯数に換算すると19.3万世帯分に相当(一般家庭は年間3.49t/世帯)する。仙台市の世帯数50.3万世帯に当てはめれば、各世帯のCO2排出量が一挙に38.3%増える計算だ。これが「小規模石炭火力」と言われるものが住民に及ぼす驚くべき汚染の実態なのだ。「電力は首都圏に!利益は大阪に!汚染は仙台に!」と言う原告団のスローガンは本当に的を得た主張だ。

 なぜ宮城県に次々と発電所が進出するのか!いくつかの大きな理由がある。@補助金付きの安い土地、A石炭や輸入バイオマス(木材等)等の陸揚げに必要な大きな港「仙台港、石巻港」に隣接、B建設用地の一キロ圏内に住宅用地がない? C工業用水の確保も容易、D一大消費地首都圏への送電線の空き、E西日本の事業者が周波数変換無しで発電し首都圏販売できる等が大きな企業メリットで、「低い投資額で大きな利益」(FIT期間20年で短期的な利益)を見込めるからだ。原告が求める事の根底に流れるものは「平穏に生活する」権利を奪うことは許さないと言う事だ。


公害裁判史上初!
被告会社社長が法廷で証人尋問!



 2月5日の裁判では原告側証人3名の本人尋問が行われた。3人の原告側証人は、仙台PS稼働後の健康被害の不安、生活環境の変化について証言した。二人の女性からは、操業前に感じたことの無い匂い(石炭燃焼で発生する独特な臭気)や、ベランダ・窓の煤の汚れ、咳や痰などが多く出る身体の変化について証言があった。もう一人の証人はデーターをもとに「稼働後、周辺地域で大気汚染物質濃度が高くなった」と指摘し「地元にはリスクのみが押し付けられている。命と健康にかかわる問題であり早急に撤退すべき」と訴えた。

 17日には、被告仙台PSの砥山社長の本人尋問が行われた。当日は、法廷に入れきれないほどの傍聴人が駆け付け、被告仙台PS社長の証言に大きな注目が集まるなか開廷した。淡々と自説を主張した被告側主尋問が終わり、原告側質問に入ると姿勢が一変し「敵意」を感じる発言になった。

「石炭火力をやめて別な選択はなかったのか?」には「この会社は石炭火力発電所を設置する目的で作った会社」であり「石炭火力を止める余地は一切ない」と主張。続いて「発電所建設で地域住民のメリットはあるのか?」の質問には「地域住民のメリットがあるか否かは考えたことがない」とし、「仙台に火力発電所を作る目的の会社なので、(会社内部で)そんな議論は起きない」と平然と答えた。この発言に傍聴席は騒めき怒りが法廷内に充満した。

 住民説明を求める声を無視し着工・稼働させたのは傲慢な「企業の論理」が横たわっている。2017年、住民の反発と、仙台市の「石炭火力発電所の立地自粛を強く求める」と言う指針策定の動きに「止む無く」開催した住民説明会は、参加した住民約五百名の怒りの声が支配した。にも拘らず試験から本格操業へ強引に進めた被告企業は、石炭燃焼による「健康被害」への影響と不安の訴えに「具体的な危険性があるとは考えていない」と主張しているのだ。被告会社仙台PSは「石炭火力発電」が地球温暖化の元凶として国際的非難の中にあると言う現状認識を欠如し、「なんで我社だけが訴えられるのだ」との「逆恨み」が原告に対する「敵意」となっているように見える。地域住民が日々煙突からの煙を見、匂いを感じ、健康への不安、環境への影響、変わりゆく自然環境への懸念に応えない被告企業への地域住民の不信と怒りは、被告企業が自ら招いたことだ。


結審裁判(3月31日、仙台地裁)の傍聴を!


 二年有余にわたる裁判も結審の日を迎える。気候変動、海水温上昇による北極・南極の氷河の流失による海面上昇への影響、巨大台風や大雨・洪水大規模災害が頻発している。気候変動・地球温暖化をくい止めるための行動が呼びかけられている。約4万8千筆の署名と市民の声に支えられた「石炭火力発電所の運転差し止め!」は気候変動対策に後ろ向きなこの国の「エネルギー政策の転換」に繋がっていく。

 東京湾岸での市原、蘇我、袖ケ浦の三か所の石炭火力が反対運動で計画中止(予測CO2排出量年約2500万t)に追い込まれ、横須賀では住民訴訟が始まっている。安倍政権が推進する「石炭火力建設計画」は、脱石炭の国際世論を背景にした反対運動と、企業・商社等の推進勢力のせめぎ合いになっている。いよいよ「仙台PSの運転差し止め」請求の裁判も結審を迎える。

 仙台地裁の結審裁判(3月31日午後4時開廷)を傍聴しよう!

(朝田)


■以上/宮城全労協ニュース339号(2019年3月13日)