宮城全労協ニュース/第342号(電子版)/2020年5月24日

「感染と生活」の切実な不安
宮城合同労組「労働相談」から



新型コロナウイルスの感染拡大のなか、「補償なき自粛・休業」要請が中小企業の経営危機を一気に広げてきた。倒産・廃業はこれから本格化するだろうと予測されている。失業率や有効求人倍率など雇用に関する政府統計数値は軒並み、急激な悪化を示している。

 厚労大臣は5月22日、解雇・雇止めは(見込みも含めて)1万8百人と述べた。そのうち5月が21日までの集計で7千人を超えている。日を追って増加していると大臣は認めた。

 フリーランスの失職、派遣切り、学生アルバイトの解雇など生活苦境は深まる一方だ。学校休校のため離職せざるを得なかった労働者たちも多い。政府は反省もなく方策の急転換や後追いを繰り返し、そのたびに現場の対応を混乱させてきた。行政への注文や経営問題を含めて、全国で各種の「労働相談」に多くの声が寄せられている。

 被災地の地場産業は観光業をはじめ極度に落ち込み、回復の兆しは見えていない。農漁業も困難のさなかにあり、地域の生活に大きな影響を与えている。奮闘する宮城合同労働組合からの報告を掲載する。




「感染と生活の不安」訴え相次ぐ

  星野憲太郎(全国一般全国協議会 宮城合同労組委員長)


<この間受けた典型的な相談例>


 コロナ関連の労働相談の共通項は、「感染防止のため休業したい、しかし生活はどうなる」ということであろう。コロナ以降、入電(問い合わせ)件数が平時の二〜三倍に増えた。

 一例を紹介すると、仙台市内のコールセンターに勤務する女性契約社員から、「咳が出て体調が悪い。コロナかもしれない。しかし会社に知らせても、休ませてくれない。休むなら辞めてもらうしかないとさえ言われた。とても悩んでいる。」という電話相談があった。コールセンターは「在宅者が多い今こそ営業のチャンス」と語られる一方、職場環境は「三密の極み」だ。

 詳しい状況を聴き、自己都合にされたとしても休むことが自分のためにも同僚たちのためにも唯一の選択であると話をした。

 さらに生活対策としては、健康保険の傷病手当金を申請して受給する手続きを説明した。療養のため労務に服することができなくなった日から起算して、三日を経過した日から労務に服することができない期間を対象として、標準報酬の三分の二が手当金として受けられる。手当金は退職しても継続される。労働者自身と周りの人々の生命の防衛、生活の防衛を第一に考えなければならない情勢と言える。
 
 今年四月一日から仙台市の会社に採用された五〇歳代の新規採用者から、一度も出社することなく自宅待機を命じられ、賃金がどうなるのかわからないという内容の電話相談があった。詳しく聞くと、休業手当のもととなる平均賃金を計算する基礎になる「過去三カ月の賃金」がないので手当が出せないかもしれないと言われたということである。感染防止のため、使用者の判断で新入社員を休業させたからには休業手当を支払わなければならない。一度も労働日のない労働者の休業手当は特別の計算方法があるので、労基署に問い合わせて確認するように話した。


<電話による団交も開催>


 今の時期は丁度、毎年の契約更新時期に重なる。中にはコロナ不況を予想した雇い止めと思われるものもある。今年一月までは「空前の人手不足」の労働情勢であり、三月から四月に至る有期雇用労働者の契約更新も無難に行われるはずだった。雇い止めの相談に対して団交を申し入れたところ、仙台〜東京間の電話交渉ですぐに撤回にこぎつけた中堅パッキング会社の例もある。
宮城合同労組は今、コロナで団交できないと言うのなら、電話交渉でもいいという立場をとっている。最近東京本社の保険会社の団交申し入れ書に「やむをえない場合に限り、電話団交を申し入れてください。検討して回答します」と添え書きしたばかりである。


<雇用調整助成金の引き上げ不可欠>


 雇用調整助成金のコロナ特例では解雇・雇い止めをしない場合、資本金一億円以上の大企業では支給した休業手当の七五%、一億未満の中小企業では支給した休業手当の九〇%が助成される。いずれも一〇〇%ではなく、しかも上限が一人当たり日額八三三〇円であるため、一〇〇%の賃金保障のためには各企業との交渉がいる。

 労基法による休業手当最低基準は平均賃金の六〇%であり、最低基準のレベルでは休業が長期化すると生活が破壊される事態がやってくる。安倍政権や宮城県は五月六日までの休業要請を該当する企業に行っている。使用者たちは、少なくともその後二週間くらいは、感染者が減らず休業が避けられないと感じているようだ。また、一度沈静化しても半年後、一年後に再びパンデミックが来るかもしれない。休業の長期化に備えて、まず各企業が休業手当を支給する財源となっている政府の雇用調整助成金を一〇〇%とし、上限は撤廃することを要求する。


<社会矛盾露出の中での相談活動>


 安倍政権はコロナ対策の真っ先に「潤沢な資金供給」と称して、日銀を通して行う株価つり上げのためのETF購入予算を年間六兆円から一二兆円に引き上げた。年金財源からの支出金と合わせて連日一〇〇〇億、二〇〇〇億の株買いを行っている。したがって前記助成金の引き上げは資金の方向を変えれば不可能ではない。

 労働者は毎日、感染不安と生活不安のさなかにいる。定員ぎりぎりにされてきた医療、介護の組合員たちは施設自体休業することができず出勤している。ことさら日本株への潤沢な資金供給を宣伝する安倍政権と労働者の環境との落差、格差が目立ちすぎる最中で労働相談活動を今、行っている(5月4日)



■以上/宮城全労協ニュース342号(2020年5月24日)