宮城全労協ニュース/第344号(電子版)/2020年7月14日

女川原発2号機、仮処分申立
仙台地裁の請求却下に即時抗告




 仙台地裁は7月6日、女川原発2号機の「再稼働同意差止仮処分申立」を却下した。実効性が欠ける避難計画のもとで「宮城県知事と石巻市長は、女川原発2号機が運転を再稼働するのに際して、同意をしてはならない」と石巻市民17名が申し立てていたもので、6月16日に開催された第6回審尋で結審していた。

 仙台地裁は「放射性物質放出事故が発生する具体的危険性について、住民側に説明する責任がある」、「避難計画の不備をいうだけで、人格権侵害の具体的危険性を立証したとはいえない」などと主張している。

 しかし、避難計画の策定が義務づけられたのは、福島第一原発事故を経験して、放射性物質を放出する大事故が起こり得ることを前提に住民の生命・健康を守るためであって、住民側に避難計画の前提事実についてまで立証を求める必要など論外である。また「避難計画の不備」というだけで、実効性の欠如に全く言及していない。

 市民側は却下決定に対して7月10日、仙台高裁に即時抗告を申し立てた。


 却下決定までの経緯を振り返る。なお、以下は却下決定以前に書かれた(m記)

 <参照>

 ■ニュース338号(20年3月6日)
  女川原発2号機(被災原発)/再稼働を許さない!

 ■ニュース335号(19年11月16日)
 「女川原発再稼動」/同意差止め仮処分申請




<被災原発・女川原発の再稼働を止めよう!>


自治体に「避難計画の実効性」を問う


 再稼働同意の差し止めを求める仮処分申請は、30q圏内(UPZ)の住民が人格権に基づき、電力会社ではなく自治体を相手取って避難計画の実効性を問う全国初の訴訟である。

 宮城県と石巻市(債務者)は、石巻市民(債権者)が「避難計画に実効性がないとした主張」を一切「認否」せず、避難計画の実効性論議に踏み込まない法廷戦術で対応してきた。

 債権者は次のような点を主張してきた。

 〇交通渋滞で避難所にたどり着けないこと
 〇複合災害時に受け入れ自治体から受け入れを拒否され、二次避難先が確保できないこと
 〇バスの確保、手配ができないこと
 〇病院、高齢者施設・障がい者施設など入院、入居者など「要介護者」の避難が困難であること
 〇市の行政機能移転先(代替施設)が確保されないこと
 〇オフサイトセンターが機能しないこと、安定ヨウ素剤の緊急配布ができないこと


「地元同意」については、債権者は、東北電力と立地自治体(宮城県、石巻市、女川町)が締結している「女川原発周辺の安全確保に関する協定書」第12条(*)に基づく「事前了解」であることに対し、債務者側は、経済産業相からの「理解確保の要請」(資源エネルギー庁長官が3月2日に宮城県知事へ要請)に県知事が「理解の表明」するものであると主張してきた。(今後、地元同意という言葉は使わないそうである。)そこで、債権者は、県知事の「理解の表明」も差止め対象として追加した。

※12条、「乙は、原子炉施設及びこれと関連する施設等を新増設しようとするとき又は変更しようとするときは、事前に甲に協議し、了解を得るものとする。」


国のお墨付きをもらい同意へ前のめり


 債務者は、「事前了解」は「施設の安全性のみであり、避難計画は含まない」として、同意と避難計画がリンクしないと主張。避難計画は、内閣府が設置した女川地域原子力防災協議会で「確認」し、総理大臣が議長の原子力防災会議で「了承」するもので、実効性は国が判断するものと国に責任を丸投げし、国からお墨付きをもらうという姿勢なのである。同意すれば再稼働されるわけで、生活平穏権(人格権)が侵害されるのは明らかであり、避難計画と切り離すこと自体が失当な主張だ。

 避難計画について、債務者は、策定義務はあるが「再稼働前に避難計画を確定しておく法的義務はない」とまで言い切り、差止め自体が失当であるとし棄却を求めてきた。さらに、本件差止めより、事業者である東北電力を訴えるべきだと答弁してきたのである。

 避難計画の実効性について判断できず、認否すれば避難計画の実効性問題に踏み込むことになるので、「認否」しない戦術をとったのである。ちなみに「女川地域の緊急時対応」(避難計画)が3月25日女川地域原子力防災協議会で「確認」され、6月22日原子力防災会議で「了承」された。これを受けて、宮城県は8月1日から県内7ヵ所で「住民説明会」を開催して住民に説明して意見を聞いたことにして、秋の県議会で審議して年内中にも「地元同意」を取り付ける動きである。

「住民説明会」は宮城県が主催するが、説明者は新規制基準適合審査結果(原子力規制庁)、原子力防災の取り組み(内閣府)、わが国のエネルギー政策(資源エネルギー庁)、女川原発の安全対策(東北電力)と全て国と事業者に丸投げである。これで住民に説明したとして、同意に大きく動きだすつもりのようである。


宮城県の「阻害要因調査」結果が避難計画に反映されていない!


 宮城県は、避難計画が渋滞などを含めてどのような阻害があるのか検証するために、阻害要因調査を4880万円で外注し、3月19日にその結果が宮城県に示された。

「女川地域の緊急時対応」は、自家用車による避難を基本に「二段階避難」を採用し、原発事故時にPAZ住民(原発から5q地域)と準PAZ住民(島しょう部、避難のため原発に向かう地域)は、放射能が放出前に避難し、UPZ(30q地域)住民は屋内退避し、プルームが通過した後に避難することにしている。PAZ住民は、一時集合場所に集まり、各地域の指定された受付ステーションへ行き、県内27市町村に指定された「避難所」へ直接向かう。UPZ住民は、放射能放出後に自宅から避難するので、「退域時検査場所」で被ばく検査を受け、ヨウ素剤を受け取り受付スターションへ向かい、そこで「避難場所」が指定される。

「阻害要因調査」では、PAZ住民の避難に要する時間は、基本シナリオは6時間であるが、「指示に基づかないUPZ避難」が100%の場合、135時間10分要するとして、UPZ住民の「自主的避難」が阻害要因となっていると報告している。原発事故が発生すれば、いち早く遠くへ逃げるのは当たり前のことであるが、PAZ住民とUPZ住民の分断と対立を助長しているのである。

 一方、UPZ住民の避難時間は、渋滞が予想される「退域時検査場所」で車両一台につき3分の検査時間(昨年の原子力防災訓練検査時間では、6分5秒【開示請求】)でシミュレーションした結果、「3日〜5.3日」という結果を報告した。対策については避難経路の変更、代替経路の指定、交差点付近の交通整理、UPZ住民の啓もう(自主避難をするな!)としている。

「3日〜5.3日」かかるということは、避難途中のトイレ、食料、水、燃料補給の問題、運転手(バスも含め)の睡眠問題、体調不良者の救出など、整理されなければならない課題が山積している。阻害要因調査結果は、避難所までたどり着けず被ばくするだけで、机上の空論であることがますます明らかになっている。

 この調査結果は、3月19日に宮城県に報告されたが、これを宮城県は3月25日に開催された女川地域原子力防災会議に副知事が参加していたにも関わらず報告せず、当然にも6月22日に開催された原子力防災会議で「了承」された「女川地域の緊急時対応」にも反映されていないのである。

 この点について6月23日、脱原発県議の会の議員が県議会の一般質問で宮城県に質すに、知事は「阻害要因調査は、避難計画に負荷をかけ、時間と問題的を抽出したもので、今後検証して見直しに活用する。」「原子力防災会議の『了承』は、具体的、合理的な確認と認識している。訓練を重ね改善していく。」と、また副知事は「阻害要因調査は、避難計画の実効性を上げていくことが目的で女川地域原子力防災協議会の『確認』とはリンクしない。」と答弁している。

 再稼働に反対する県内の25の市民団体は6月23日、「阻害要因調査と避難計画の現状」について前述した問題点について公開質問書を提出し、宮城県知事に回答を求めている。


石巻市長は、再稼働に同意するな!
石巻市長に要請書、石巻市議会に請願書提出


 石巻市内の14の住民団体や市民団体は5月15日、「女川原発二号機の再稼働に同意しないように求める要請書」を石巻市長に提出した。

 菅原副市長は、「緊急時対応など現時点では、女川地域原子力防災協議会で避難計画が確認されているが、原子力防災会議で了承されていない。また、宮城県が設置した安全性検討会でもまだ結論は出ていない。同意差止め訴訟も争われていることから、これらの状況を見た上で市民の意見を聞き判断する。」と回答した。

 市民団体代表からは、福島原発事故対応と安全対策の不備、避難計画が実効性に欠けていること、事故が起きたら生活できないことが福島事故で証明されたこと、世論調査(河北新報社)で6割の県民が再稼働に反対していることを踏まえ、自治体住民の命の問題として再稼働について判断すべきだという意見が石巻市に投げかけられた。

 5月28日には石巻市議会に「女川原発2号機の再稼働に同意しないように求める請願書」が、石巻市内の15の市民団体名で提出された。

 議長からは、「重要な項目なのでしっかり審査する。総務企画か防災委員会、もしくは合同審査会として審査することになるだろう」「宮城県の安全性検討会の結論も出ていないし、経産省からの説明もない。裁判の決定もないなかで、それらのことを確認しながら審議する。」との答弁。紹介議員からは、東北電力が工事を2年先送りと発表したことが指摘され、「宮城県の阻害要因調査で避難計画に実効性がないことが明らかになっても村井知事は前のめりだ。市議会の審議はそのことも踏まえて審議をお願いしたい。」との要請がなされた。


総務企画委員会では「総合防災特別委員会」との合同審査を提案


 6月10日、石巻市議会の総務企画委員会で、「女川原発2号機の再稼働に同意しないことを求める請願書」と「女川原発2号機の再稼働に関する意見書を求める陳情書」についての審査があった。

 賛同団体の代表が請願書の趣旨説明を行い、女川原発の立地場所は世界でも一番危険なところであること、福島第一原発事故が「広範囲での地域社会を崩壊させたこと」、「一次産業の崩壊、自然の破壊」、「避難することで被ばくを拡大させたこと」、そして事故の責任を未だ誰もとっていないことを強調し、原発からの転換(再生エネ)を求めた。さらに、3月の河北新報の世論調査の結果を示して、多くの県民が原発再稼働に不安を持っていること、同意の判断も住民投票などを通して市民一人一人の意向を確認すべきであることを改めて訴えた。

 趣旨説明を受けて、委員長から石巻市の意見を求められた総務部長は、「国のエネルギー方針もあり、指摘された意見については、認識している。住民の安全、安心を基本に、議員の意見を聞きながら総合的に判断していく。」と、いつもながらの答弁だった。

 委員からの質問では東北電力出身の市議から「再生エネと原発の二者択一か。安定供給やバックアップはどう考えるのか」と質問があり、「再エネに切り替えていくことが必要」である、「バックアップはエリアごとのシェア、融通していけば十分間に合う」と説明した。

 委員間討論に移り、各委員から「国策と危惧すべき問題などじっくり検討すべきだ。」「石巻市の将来を左右する問題であり、住民説明会などを見据えて継続審議とし、市民の安全、安心に関することもあり総合防災対策特別委員会と連合審査会にして審議すべきだ」「陳情書も出ているので、慎重な審議必要である。」「ただ審議するのではなく期限を決めて行っていくべきだ。9月を目途に短期で結論を出していくべきだ。」との意見が出て、全委員一致で「継続審議」、「連合審査会で審議」が確認された。

 その後、休憩を挟んで、陳情書の趣旨説明と審議が行われ、牡鹿稲井商工会の会長が趣旨説明し、「女川商工会と4月に会議を持ち、規制委員会から合格が出たので安全確保と経済状況を鑑み、安全第一で、地元の同意を得て進めてほしい。」と説明した。陳情書も「継続審議」「連合審査会で審議」となった。


 請願書を提出した市民団体は「女川原発再稼働ストップ石巻行動」として、請願の趣旨を石巻市民に伝えるために6月4日から6月19日の市議会閉会まで、「女川原発の再稼働を止めよう!」と書かれた横断幕を掲げ、早朝の辻立ち(スタンディング)とマイク宣伝、宣伝カーを使って市内情宣行動や戸別チラシ入れを行ってきた。また、紹介議員の女川原発再稼働に対する一般質問を傍聴するなど活動を進めてきた。今後も市議会での審議と合わせて活動を進めて行くことにしている。(m記)


■以上/宮城全労協ニュース344号(2020年7月14日)