「最賃宮城」で意見陳述
〜宮城合同労働組合
7月22日、最賃中央審議会(第57回中央最低賃金審議会)は2020年の引上げ額について「目安」を示さず、事実上、現状維持に据え置くことを答申した。
「新型コロナウイルス感染症拡大による現下の経済・雇用への影響等を踏まえ、引上げ額の目安を示すことは困難であり、現行水準を維持することが適当」であると、中小企業の経営苦境が主要因とされている。
審議会では労使が対立、労働組合側は「感染の不安のなかで働く労働者」に報いるためにも最賃引上げの流れを引き継ぐべきと主張した。公益委員側は引上げ額を示すことは困難であり、現状水準の維持が適当とする見解を示した。
審議に際して当初から「目安を示さない可能性」が報じられていた。NHKは22日夜の報道で「据え置きはリーマンショック後の平成21年度以来」とし、「遺憾と言わざるをえない」(連合総合局長)、「実態反映した適切な結論」(日本商工会議所会頭)とのコメントを流した。
「今は、官民を挙げて雇用を守ることが最優先課題」と安倍首相は指摘した(6月3日、全世代型社会保障検討会議)。この発言以降、最賃への言及を避けてきたが、首相の姿勢が審議の流れに大きな影響を与えたことは明らかだ。しかも首相は6月18日国会閉会にともなう記者会見以降、「雲隠れ」状態が批判されており、全国的な感染再拡大の高まりに国政が対応できていないという異様な状況が続いている。
そのような中で、地域最賃の本格審議が始まっている。中央審議会は「目安」を示さなかったが、それでも「地域間格差の縮小を求める意見も勘案しつつ」とか「最低賃金については更なる引上げを目指すことが社会的に求められていることも踏まえて」との文言が記されている(厚労省の報道資料『答申のポイント』)安倍首相による最賃逆行を許さず、全国で大幅引き上げの声を上げよう。
宮城合同労働組合は第二回宮城地方最低賃金審議会(7月29日)で意見陳述を行った。全文を紹介する。
なお全労協は7月23日、声明を公表した(「最賃引き上げこそ困窮する労働者に必要!引き上げを拒否した中央最賃審議会を糾弾する」)。全労連、連合は各々、事務局長談話を発表しているので参照していただきたい。
<参考:宮城全労協ニュース>
*343号(6月30日)最低賃金の大幅引き上げを/「コロナ」凍結・抑制反対!
*342号(5月24日)「感染と生活」の切実な不安/宮城合同労組「労働相談」から
■資料/意見陳述書(宮城合同労働組合)
2020年7月29日
全国一般全国協議会宮城合同労働組合
執行委員長 星野 憲太郎
宮城県最低賃金の決定に関する意見陳述書
<最低賃金に張り付いている中小企業労働者の賃金実態があります。>
私は宮城県及び近隣県の中小企業労働者が個人加入する労働組合の代表者を務めております。短時間ではありますが以下、コロナ危機と呼ばれる社会状況にあっても最低賃金の引き上げが必要であることを述べさせていただきます。
賃金が最低賃金の引き上げによってしか改善されない組合員が存在しています。数年前、自分の賃金の目安が宮城県の最低賃金になっていた仙台市の清掃業で働く男性組合員が意見陳述を行いましたが、その後改善されたのは最賃が毎年上がった分だけだったことを報告します。
仙台市内で小物の出荷作業を非正規の身分で行ってきた女性組合員について報告すると、労働契約期間が毎年1年間で4月1日から翌年3月31日です。この1年の間に、賃金契約だけ10月に締結し直します。使用者が10月の最低賃金の改正決定を見て、それよりも1〜2円高い時間賃金に契約し直してきたのです。最近では2018年10月から2019年9月まで、当時の最賃798円に対し2円上の800円。2019年10月1日から2020年9月30日まで、昨年10月に改正された後の最賃824円に対し1円上の825円。これが彼女の賃金実態です。最賃の引き上げに生活がかかっている事実が明らかです。
<低賃金は、コロナ休業手当や老齢年金にも大きく影響します。>
コロナ感染拡大防止のために休業を命じられた労働者が5月のピーク時に全国で600万人いました。今でも観光、宿泊をはじめ多くの業種で休業状態の労働者が多くいます。最低賃金すれすれの労働者に休業手当が支給され、それが労基法最低基準である平均賃金の6割であった場合、時給500円にもなりません。
また、現行の824円の水準だと老齢厚生年金の受給はどうなるでしょうか。インターネットで利用できる三井住友銀行の「年金試算シミュレーション」で計算してみました。
(計算条件)
〇勤務年数が40年で40年間厚生年金に加入し、平均時給が824円
〇年労働時間が2080時間(年間賃金は824円×2080=1,713,920円)
試算結果は、老齢基礎年金6.4万円/月、老齢厚生年金2.4万円/月、計8.8万円/月にすぎませんでした。このように、低賃金は今の生活難ばかりではなく、一生の生活難を意味します。したがって毎年の大幅引き上げが必要です。
<新型コロナウイルス感染症/中小企業の経営を支えるのは政府の責任です。>
「新型コロナウイルス感染症による雇用・経済への影響は厳しい状況にあり、今は、官民を挙げて雇用を守ることが最優先課題である。・・・厚労大臣には中小企業・小規模事業者が置かれている厳しい状況を考慮し、検討を進めるようお願いする。」この最賃に関する安倍首相の発言は「最賃上げに陰り」「慎重」「不透明」などと報道されました。最賃抑制ムードを醸成させる効果をねらったのではないか、と疑いたくなる内容でした。中小企業の経営を支えることは政府の責任であり、必要な政策の実施が求められます。
コロナの影響で売り上げが激減した事業に対する「持続化給付金」は、一回限りの支給であり、法人の場合が上限200万円、個人事業者が上限100万円です。給付金は1次と2次の補正予算合計約4兆円を財源としています。予算も支給額も全く少なすぎます。それと比べて政府と日銀が今行っている株価下支えは、政府が「贅沢な資金供給」と自賛し、年間12兆円の予算が3月に組まれました。そして毎日ではありませんが、ことあるごとに1日1000億円から2000億円の規模で株式市場に投入されており、実体経済とかけ離れた株高を維持しています。政府と日銀が株価を下支えする政策を発動し、富裕層や大企業に利益が転がりこむ。その一方、国民、県民はパンデミックの犠牲を経済的にも背負わされるのが実情です。
政府が最賃を引き上げれば中小企業が危なくなると言うのであれば、「持続化給付金」をもっともっと充実させることによって、中小企業をがっちり支えるべきです。
<1,500円達成をめざし1,000円超の実現、全国一律最賃を求めます。>
「新型コロナウイルス」による感染拡大が、低賃金労働者及び最賃水準で雇用されている労働者の生活を追いつめています。失業や生活保護申請の急増が報告されており、影響は拡大し長期化するだろうと予測されています。雇用を守ると同時に、大幅な最賃引き上げが必要です。1,500円達成をめざし、1,000円超の実現を求めます。
パンデミックによる影響が観光産業や農林水産業をはじめ地方に波及しています。ここ数年、最賃の「地域格差」の拡大が大きな問題となってきました。「コロナ危機」のなかにあっても「地域格差」が打開、解消されないとすれば、地方の経済・社会への打撃はさらに深まることになります。全国一律最賃に踏み切るときです。
以 上
■以上/宮城全労協ニュース345号(2020年7月30日)