宮城全労協ニュース/第349号(電子版)/2020年10月28日

県議会「賛成」請願を採択
「再稼働同意」に反対しよう




 女川原発再稼働をめぐって議会の動きが急展開した。県議会は10月22日「再稼働賛成」の請願を採択した。県知事は11月、各市町村長から意見を聴取し、再稼働への同意に踏み切ろうとしている。

 翌日の河北新報社説は「安全への懸念残し なぜ急ぐ」と警鐘を鳴らした。「再稼働に向け、大きく前進したことになる。しかし県議会や世論調査で、原発の重大事故を想定した広域避難計画の実効性などへの疑問や懸念が指摘されている。それらを積み残したまま、なぜ結論を急ぐのかが理解できない。」

 小泉環境大臣は19日、県知事らと会談、再稼働の動きをバックアップした。大臣は避難バイパスの実現など、関連事業の支援要請を受けたが、進展は何もなく「地元に失望感」「実質的にゼロ回答」などと報じられた。

 なお河北新報は10月27日、SNSによるアンケート結果を報じている(「女川原発を容認の県議会「不支持」72%」)。県議会採択以降の23日から25日、記事読者145名からの回答内容が賛否の主な意見とともに紹介されている。


 県議会採択と仙台高裁の抗告棄却など、この間の動きについて「m」さんからの続報を掲載する。




■「女川原発2号機」再稼働反対請願を不採択/宮城県議会
「再稼働同意」に反対しよう!



<再稼働をしないよう求める請願と署名提出>

 9月23日、宮城県内の53市民団体は共同で「原発ゼロの希望ある未来のため、女川原発の再稼働をしないように求める請願」(以下、再稼働反対請願)を署名29,193筆(累計157,634筆)とともに宮城県議会議長に提出した。

 女川町からは3,100筆の集約で、町の人口の半数の署名数であった。請願提出の際、議長に対して女川、石巻、岩沼など各地、各団体から発言があり、女川原発再稼働をめぐる住民投票を拒否した県議会の責任と民意をしっかり受け止めるよう慎重審議を求めた。


<女川町議会、石巻市議会が再稼働容認を採択>

 女川町議会は9月7日、石巻市議会は9月24日、再稼働反対請願を不採択とし、再稼働推進請願を採択して、女川原発2号機の再稼働を容認した。

 石巻市議会の再稼働推進請願への賛成討論は、「人口交流や地域経済に寄与し、原発と共生、共存してきた」「二酸化炭素削減のためには、再稼働は必要」「避難計画の阻害要因調査を踏まえて、実効性を高めていくことが必要」「避難道路(県道)の確保と整備」、さらに「東電は津波対策を立てていなかったが、東北電力はしっかり津波対策を立てていた」と東北電力への忖度発言まで飛び出す始末で、市民の避難計画に対する不安を避難道路整備などにすり替える誤魔化しの内容になっている。

 再稼働反対請願に賛成する討論は、「石巻市民85%が再稼働に不安を持っている」「福島原発事故を経験して、命と経済のどちらを選択するのか問われている」「地域経済への貢献の実態は明らかではなく、効果も限定的で一時的である」「放射能被ばくの分析が不十分」「避難計画に実効性がなく、二段階避難や屋内退避による被ばくリスクが高まる」など民意を表明する内容であった。

 再稼働容認を受け、石巻市議会が宮城県知事に宛てた「意見書」提出時に、石巻市議会議長は「再稼働して早く地元にお金を回してほしい」と市民の再稼働への不安をよそに「金目」発言。その本性に市民からは憤りの声が上がった。石巻市議会に再稼働反対請願を提出した15の住民団体は直ちに「抗議声明」を発して糾弾した。


<「9.26女川原発再稼働を止めよう! 宮城県民大集会」に800名>

 宮城県議会の開催真ただ中の9月26日、仙台市で「女川原発再稼働を止めよう!宮城県大集会」が開催され、800名の県民が参加して再稼働を許さない声を上げた。

 主催者代表は「福島の避難者を見て見ぬふりをして、再稼働を強引に進めようとしている。皆さんの力で止めていこう!」と挨拶。立地自治体の女川町と石巻市の住民からは、それぞれ議会が再稼働を容認したことが報告され、「ふるさとを捨てて逃げなければならない原発こそ要らない」「9月県議会で脱原発県議の会とともに再稼働を止めていこう」と決意を表明した。

「脱原発をめざす宮城県議の会」の佐々木功悦会長が「9月県議会で再稼働を止めるために皆さんの力を借りて全力で闘う」と表明、翌日に発足総会を開いた「女川原発再稼働ストップ!みやぎ女性議員有志の会」の仲間が決議文(ニュース前号)を読み上げ、市内アピール行進では「再稼働ストップ」を県民に訴えた。





<代表質問、一般質問で知事を追及/宮城県議会>

 10月1日からの代表質問で「脱原発をめざす県議の会」の佐々木功悦会長は、40分全てを再稼働問題に充て、住民説明会や安全性検討会の問題点、女川原発の安全性、避難計画の実効性などについて知事を追及した。2日からの一般質問でも「県議の会」のそれぞれの議員が、医療機関の入院患者避難問題、「屋内退避」では被ばくを防げないこと、バス避難におけるバスと運転手の確保の問題やガソリン確保など様々な観点から知事を追及した。

 村井知事は、相変わらず「原子力の推進は国の方針」「国策だから国に責任を持って対応するよう求めていく」「県は県民に伝えるだけで、国にものをいう立場にはない」「避難計画は原子力防災会議で了承されたので実効性は担保されている」などと国に責任を転嫁する答弁に終始した。


<論議封じて審議無し/反対請願を不採択>

 宮城県議会環境福祉委員会は10月13日、審議なしのなか、再稼働反対請願を賛成少数で不採択、10月7日に女川商工会から提出されていた「再稼働にかかる早期理解表明に関する請願」(以下、再稼働賛成請願)を賛成多数で採択した。

 当日の午前中は、内閣府、資源エネルギー庁を呼んで補足説明をさせ、若干の質疑を行ったが、特に資源エネルギー庁は、原発の停止で火力発電が増加し国費が海外へ出ていっている、将来にわたるエネルギー安定確保には再稼働が欠かせないと「再稼働弁護論」を展開していた。

 再稼働反対請願を共同提出した県内53の住民団体は10月6日、環境福祉委員会の委員長に、請願書提出団体の代表者による意見陳述の機会を与えること、東北電力と請願者双方の参考人招致を行うこと、多くの県民が傍聴できるように配慮することを求める要望書を手渡し、委員会前日の12日にも口頭で申し入れた。しかし「委員間協議」で、請願者の意見陳述については「請願書を読めばわかる」、参考人質問については「前例がない」、「(再稼働推進請願を出した)女川商工会が参加しないので公平さに欠ける」など、納得性に欠ける理由で全て拒否してきたのである。傍聴への配慮については、委員会室に撮影環境なく、10名の傍聴に制限されているので、会場変更も含めて求めていたものだった(本会議場の170席ある傍聴席は18席に制限)。

 自民党会派など再稼働推進派は「国策」であるという主張のみであった。堂々と原発の安全性や避難計画の実効性問題での論戦に入ると敗北するのが明らかなため、論議の封じ込めや回避に力を注ぎ、県民の民意と議員の意見との乖離を覆い隠してきた。コロナ感染拡大防止を利用して傍聴制限を敷き、県民の傍聴する権利を妨害してきたといっても過言ではない。

 環境福祉委員会の推進側の委員は、自民党会派の会長や議長経験者などを当てて、事前から「再稼働シフト」を敷いてきたようであり、審議なしのなか10分足らずで賛成・反対請願それぞれの採決を強行し、数の力で押し切ったのである。(反対請願:賛成3、反対6で不採択。賛成請願:賛成6、反対3で採択。)

 再稼働反対請願に賛成する委員から「少数意見の留保」の提案がなされた。2名以上の賛成があり、最終日10月22日の本会議で反対の意見表明をすることになった。


<本会議で被災原発の再稼働を容認!>

 こうして10月22日、宮城県議会本会議が開催され、女川原発2号機再稼働に反対する請願を賛成少数で不採択とし、賛成する請願は賛成多数で採択された。委員会審議も含めて、全く熟議もないなかでの採択であり、将来に禍根を残すものであり、弾劾するものである。

 請願に対する討論は「再稼働に反対する請願」に賛成する議員の「少数意見の表明」と、議員4議員によってなされた賛成、反対の討論であった。

「少数意見の意見表明」をした議員は栗原市出身で、現在も福島第一原発事故に由来する放射能汚染廃棄物(稲わらなど)の処分で苦難を強いられている地域であり、そこでの体験を話しながら、請願者の意見陳述や参考人招致も拒否されるような審議のあり方を強く批判した。被災した原発の安全性、避難計画の実効性が確立されていないこと、安全性に関する新知見(コアキャッチャーやフィルター付きベントの実績)にも対応していないこと、特定重要施設(テロ対策)など、まだまだ解決すべき課題が残っており、拙速に再稼働を容認する必要はないと指摘して「再稼働反対の請願」に賛同を訴えた。

 再稼働反対請願に賛成する2議員は、原発稼働がゼロになっても電気が不足していないこと、未だに福島では4万人近くの原発事故避難者がいること、「核のゴミ」の最終処分場がないこと、避難計画がなければ動かせない原発が本当に必要なのか、地域経済への効果や貢献は一時的、限定的なものであり、逆に廃炉作業では30〜40年の雇用が確保され、再生可能エネルギーなど新しい産業を創出して新たな街づくりをすべきであると訴えた。

 自民党、公明党議員の再稼働推進に賛成する討論は、「再稼働は社会的現実」と訳の分からないことを言い、エネルギーの安定的供給や二酸化炭素を排出させない温暖化対策など政府の主張の繰り返しで、女川町議会や石巻市議会が再稼働容認を決めたことを「尊重」すべきだというものであり、傍聴席から抗議の声が上がった。

 11万筆の県民投票を求める声や世論調査で県民の60%を超える再稼働反対の声を無視し、県内53団体の再稼働反対の請願に対して、女川商工会1か所だけからの「請願」を何故採択できるのか! 再稼働を容認した県議会と民意の乖離は明らかであり、県議会も含め政治の劣化が甚だしく、私たちは、これを「県民の総意」とは言わせない。


<「再稼働同意」に反対しよう!>



 本議会終了後、議会内で「脱原発をめざす宮城県議の会」と傍聴に集まった市民とで議会内抗議集会が開催された。佐々木功悦「県議の会」会長は「皆さんの期待に応えられず申し訳ない。これからも原発をなくしていく取り組みを進めていく。」 と挨拶、市民からは熟議しなかった県議会に対する抗議と脱原発県議の奮闘を称える発言がなされた。

 県議、市民それぞれから意見表明が行われた。二度にわたる県民投票条例案を不採択した際、「県議会で県民の声を聞いて熟議する」といっていたが、県議間の討論も行わず、請願団体の陳述も、参考人招致もさせなかった。さらに170名が定員の傍聴席に18名しか入れなかったのは、県民に聞かせたくないためだ。「これは県民の総意ではない!」と本会議での採決に抗議した。「県議の会」は集会後、村井知事に拙速に再稼働同意しないように申し入れた。

 翌日、県内53の市民団体も村井知事に「要望書」を提出した。県議会の委員会で請願者の意見を聞いていないことや10分足らずで終了したことなどを指摘、県議会のなかで熟議されていないとして「地元同意を拙速にしないように」求めた。

 村井知事は、11月上旬に県内の市町村長会議を開催、「意見聴取」をして総合的に判断するとしている。各首長へ地元住民から、再稼働に反対・慎重の姿勢を示すよう要望、申し入れをして、再稼働に同意しないように求める取り組みを継続していくことにしている。


<「同意差止め仮処分」即時抗告を棄却:仙台高裁>
 
 宮城県議会の女川原発再稼働容認を待っていたかのように、仙台高裁は翌日の10月23日、石巻市民17名が宮城県知事と石巻市長に対し、実効性に欠ける避難計画のもとで女川原発再稼働に同意しないように求めた差止め仮処分の即時抗告を棄却した。「東北電力への事前協議への了解や再稼働への国の方針への理解の表明と、東北電力の再稼働は同一視できるものではない」として「再稼働の直接的原因ではないこれらの行為を差止めるほどの必要性は認められない」というものであった。

 再稼働は東北電力の行為であり、地方公共団体の行為(事前協議への了解、国への理解の表明=地元同意)が、再稼働の直接的原因ではないとして、「地元同意」と再稼働を切り離している。避難計画が不備のなかで、原発事故が生じた場合、生命や身体に危険を及ぼし人権を侵害するのは東北電力だから、そちらと争うべきだということのようだが、「地元同意」は再稼働を容認することである。抗告棄却は納得できるものではない。

 一方で、仙台地裁決定が放射性物質放出事故を発生させる具体的危険性についての立証責任を債権者側に求めていた点について、仙台高裁はそれを取り消した。また仙台高裁は、避難計画には「相当な課題が残されている」として実効性に問題があることも認めている。

「今後、再稼働までの間に実効性が確保されるかどうかチェックして、再稼働に対する次の手段を検討していく」と石巻市民と弁護団は、法的手段を含めて闘いを継続していくことを表明している。(「m」記)


■以上/宮城全労協ニュース349号(2020年10月28日)