新型コロナ、危険な「第三波」
政府は拡大防止に集中せよ!
「第二波」が後退して以降、秋になっても感染確認者は増減を繰り返し、専門家や自治体が警戒を呼びかけてきた。11月になって再拡大の傾向が顕著となり、各地で一日当たり過去最大の感染者が確認され、12日には全国集計で過去最大の1661人になったと報じられた。前回のピーク、1605人(8月7日)を超えたことになる。宮城ではこの間、人口比の感染確認者数が全国上位にランクされる状況が続いてきた。
「経路未確認」が過半数を大きく上回るケースが常態化している。中高年齢層への拡大が増え、死亡者も増加している。「医療のひっ迫」が懸念され、拡大を抑えなければ事態は深刻化するという専門家たちの見解が報じられてきた。医療や保健、介護など現場からは労働条件や生活への不安を訴える声が続いている。
厚労省に助言する専門家会合は12日、「新規感染者数の増加傾向が今月に入って強まっている」「入院者数や重症者数が先月末から上昇に転じ、一部地域では病床の占有率が高まっている」と指摘した。日本医師会会長は「第三波」の到来である可能性に言及した。政府分科会の尾身会長は「医療ひっ迫のシナリオ」も予測されると危機感を訴えた。
こうした動きの中で、首相や閣僚らがようやく事態の厳しさに言及し始めた。しかし、政府には「第三波」という認識はないという。国民に要請するには、政府の意識がまず感染防止に向かっていなければならない。菅首相は「感染防止と経済の両立」といいながら「経済を回す」ことを強調してきた。これまでの基本姿勢を早急に点検し、見直すべきだ。
課題解決型が特徴だと言われるが、新政権には「コロナ対策担当大臣」は置かれていない。経済担当大臣、厚労大臣、国交大臣などが自分たちの立場から発言している。内閣の統一した方針と体制があるのかさえ、疑わしい。
(注)11月13日夜、NHKによれば「12人死亡。1695人感染(昨日を上回り)過去最多」(午後9時)。なお「11日には速報値で1日に2万4700件のPCR検査」が行われた。
●「安心・安全」の強調、「感染リスク」の軽視と「分断」
春の「第一波」が抑制されるや、政府は「経済と社会活動の再開」を最優先にかかげ、感染防止対策は希薄になった。「第一波」直後の「安定」は一過性にすぎず、「第二波」の到来が共通認識となり、人々の警戒感も強まっていった。「第二波」は8月上旬をピークとして後退し始めたが、「第一波」とは異なって感染状況は持続し、10月に入ってからは増加局面の再来を疑わせる状況が各地で続発していった。その時間的な推移は政府が「GoToキャンペーン」を開始し、全国展開していった時期と重なる。
「分科会のメンバーで国立感染症研究所の脇田隆字所長は、現在広がっている感染は、多くの場合、すでに国内に存在したウイルスによるものだとする認識を示した」(11月10日、分科会後の会見/NHKニュースweb)。このような見解も「第二波」での対策不徹底が現在の再拡大につながっていることを示唆しているだろう。
このキャンペーンの制度設計と運用には当初から懸念や批判が噴出した。感染リスクに加え、不透明で巨額な業務委託費が問題となった。地方の中小零細事業者を本当に救済する政策なのか、高額旅行商品の購入者がその分だけ割引を受ける仕組みは正しいのか、そのような疑問も投げかけられた。「GoTo」という発想そのものへの違和感を訴える声もあがった。この政策は人々の分断を広げるものだという抗議であった。
当時の菅官房長官は9月1日、「これまでに少なくとも延べ556万人が利用、利用した人の中で新型コロナウイルスへの感染が確認されたのは6人だ」と述べた。信ぴょう性もない「6人」という数字(直後に正しくないと指摘された)まで持ち出して「安心・安全」を強調し、効果をアピールしようとした。
「GoToキャンペーン」は地域も対象項目も拡大していった。それは政府によって、企業活動など社会全般の「正常化」の象徴とされた。地方の打撃は大きく、旅館業や飲食業をはじめ期待が表明されていた。しかし、だからこそ、感染リスクの拡大に対する準備と対策が求められていた。政府対応は不十分であり、後手に回ったことは明らかだ。
観光地などの人出の増大がテレビなどでキャンペーンされただけではない。「無症状感染者が多数であり、死亡者は春に比べて減少した」「コロナを恐れるより経済の収縮を恐れるべきだ」といった主張が取り上げられていった。政権は歓迎するかもしれないが、誤った認識につながる可能性がある。専門家の知見を含めた国民的な議論に政治が責任をもつことが必要であった。
●現実との圧倒的な落差/菅首相の所信表明演説(10月26日)
菅官房長官は千載一隅のチャンスを活かして政治頂点に上りつめた。首相交代をはさんでようやく開かれた国会での所信表明は10月26日だった。
「6月下旬以降の全国的な感染拡大は減少に転じたものの、足元で新規陽性者数の減少は鈍化し、状況は予断を許しません。
爆発的な感染は絶対に防ぎ、国民の命と健康を守り抜きます。そのうえで、社会経済活動を再開して、経済を回復してまいります。」
「バブル崩壊後、最高の経済状態を実現したところで、新型コロナウィルスが発生しました。依然厳しい経済状況の中で、まずは、雇用を守り、事業が継続できるように、最大で二百万円の持続化給付金や四千万円の無利子・無担保融資などの対策を続けてまいります。」
「さらに、GoToキャンペーンにより、旅行、飲食、演劇やコンサート、商店街でのイベントを応援します。これまで、延べ二千五百万人以上の方々が宿泊し、感染が判明したのは数十名です。事業者が感染対策をしっかり講じた上で、利用者の方々にはいわゆる「三密」などに注意していただき、適切に運用してまいります。
今後とも、新型コロナウィルスが経済に与える影響をはじめ、内外の経済動向を注視しながら、躊躇なく、必要な対策を講じていく考えです。」
「状況は予断を許さない」として冬への備えやワクチンなどにふれたが、目前の危険性に対して国民に警戒と対策を呼びかける真摯で切迫した姿勢が必要だった。相変わらずキャンペーンの成果が強調されており、認識の落差がそこにあった。
菅首相はどこを向いているのか。首相はパンデミックの拡大のなかで日本学術会議への攻撃を公然化させた。言語道断である。政府は学術会議に対してコロナ対策の協力を求め、ともに感染防止に全力をあげるよう要請すべきなのだ。
延期された東京五輪については、感染収束の予測が立たないにもかかわらず、開催を公言した。安倍前首相は「コロナを克服し、完全な形で実施したい」と延長を決断した。菅首相は、いわば「ウイズコロナ五輪」の開催に動いている。
感染対策が最優先だというが、新政権の政治は違う方向を向いている。
●分科会の「五つの緊急提言」
「分科会」は11月10日、「社会や経済の活動が徐々に戻る」なかで、「適切な対策が講じられなければ急速な感染拡大に至る可能性が高い」と指摘、五つの緊急提言を行った。
「今までよりも踏み込んだクラスター対応」
「対話のある情報発信」
「店舗や職場などでの感染防止策の確実な実践」
「国際的な人の往来の再開に伴う取り組みの強化」
「感染対策検証のための遺伝子解析の推進」
提言には懸案事項が並んでいる。指摘されてきた課題と対策が状況の後追いになっていることへの危機感が示されている。「対話ある情報発信」をいまあらためて求めざるを得ないことには、専門家たちの苛立ちさえ感じとれる。
「遺伝子解析の推進」があげられている。NHK時論公論が「『第1波』『第2波』の教訓をどう生かすか」と論じたのは8月27日、安倍首相会見の直前だった。
「国立感染症研究所の病原体ゲノム解析研究センターが感染した人、3700人あまりのウイルスの遺伝情報を分析したところ、意外なことが分かってきた」と分析内容が紹介されている。番組は「感染拡大を初期段階でとらえ、いかに抑えるか」が大切であり、その対策を急ぐべきだと政府に問いかけた。
「ウイルスの遺伝情報の分析を、さらに対策に活用することが必要」「現在は、感染者のまわりの濃厚接触者を調べるなどして感染経路を調べていますが、遺伝情報の分析も組み合わせることで、より感染の実態に即した有効な対策が取れるようになると考えます。」これらの問いかけに対する説明は、政府からはない。
科学的なアプローチは重要、不可欠であり、研究結果が政策に活かされるよう情報開示や知見の交流が必要だ。まして「コロナ危機への便乗」ともいえる日本学術会議への攻撃は論外で、社会的な不安をあおる愚行である。
安倍前首相の最後の記者会見は8月28日だった。新型コロナ対策を新しいパッケージとして発表するという触れ込みだった。しかし、本人の健康問題が焦点であり、感染対策の提起と質疑はまったく不十分だった。何が反省点なのか、首相交代を通して何が課題として引き継がれたのか。問題は残ったままだ。
現在の状況に菅首相は大きな責任がある。
首相は国民に説明し、感染拡大防止に全力をあげよ!
(U・J記)
■以上/宮城全労協ニュース350号(2020年11月13日)