宮城全労協ニュース/第351号(電子版)/2020年11月19日

これは県民の総意ではない!
女川原発再稼働の「地元合意」




 村井宮城県知事は11月11日、石巻市長、女川町長と石巻市内で三者協議を行い、たった30分で協議を終え、女川原発2号機再稼働に同意することを表明した。この決定に怒りを持って抗議する。知事は18日にも経済産業大臣に「理解の表明」(地元同意)をするとしている(11月15日記)


(注)宮城県知事は18日、「地元合意」を経済産業大臣に正式に伝えた。「政府の同意要請から8カ月半で、一連の地元手続きが終了した」と地元新聞は報じた。「東北電は安全対策工事が完成する2022年度以降の再稼働を目指す」(河北新報19日「女川原発再稼働/宮城県知事、地元合意を経産相に正式伝達」)。

 mさんからの続報を掲載する(参考:ニュース349号/県議会「賛成」請願を採択)



<賛否双方の意見で同意確認を断念>

 11月9日、村井知事は、県内すべての35首長から意見を聞くとして「市町村長会議」を開催した。賛成反対を問わず、多くの首長から安全性確保への懸念が表明された。

 賛成意見は、「立地自治体の議会と県議会での容認を尊重すべきだ」とか「新規制基準に適合し安全性が確認された」「エネルギーの安定確保が必要」など「国策」を踏襲したもので、再稼働に対する住民の不安など無視したものであった。一方の反対意見は、「避難計画の実効性が担保されていないこと」「福島原発事故が今も続いていること」「核のゴミの最終処分場がないこと」「民意をないがしろにするのは地方自治の否定だ」など、再稼働はすべきではないという内容であった。

 この場で再稼働同意を取り付けようとした村井知事は、この状況では判断が出来ないとして、石巻市長、女川町長との三者協議で判断したいと一任を求め、拍手で「総意」を取り付けたとして、二日後の11日の三者協議で結論を出すことを決めた。賛否双方の意見があるのであれば、もっと熟議してから結論を出すべきであり、何故「三者協議」になるのか、何故拙速に進めるのか、同意ありきでしかないことは明らかだ。

 会場のホテル前では、「女川原発の再稼働を許さない!みやぎアクション」に結集する市民や「女川原発再稼働ストップ!みやぎ女性議員有志の会」の議員など40名が、再稼働反対の横断幕を掲げて、会場に入っていく首長に「知事は同意しないでと伝えてください」と声がけしながらスタンディング行動を行った。結集した市民は、宮城県庁前で11月4日から毎日昼休みの時間に、再稼働を止めようと横断幕を掲げてスタンディングで訴えてきた。


<避難道路整備にすり替え>

 女川町長は、三者協議まで同意の賛否は表明せず、宮城県の姿勢を聞いてから判断するとしてきた。その内実は、「避難道路の整備」への県、国の本気度を確認するというだけのものだった。

 女川町議会、石巻市議会、宮城県議会と再稼働容認を示してきた議会での議論は、広域避難計画が実効性に欠けていることを認めながらも、継続して実効性を高めていくとし、そのためには「避難道路の整備が必要」というものであった。屋内退避の被ばく問題、自家用車での避難時における渋滞問題や食料、ガソリン確保、受け入れ先の問題、避難所のコロナ対策などが全く未整理のままで、避難道路が整備されれば全てが解決するかのような「議論のすり替え」で論議は終始していた。

 三者協議のなかで、石巻市長と女川町長は、村井知事から「国への(道路整備の)働きかけを着実に実行する」という約束をもらったとして再稼働を容認したと会見で話していたが、ここでも、市・町は県へ、県は国へその責任を丸投げして責任を上へ上へと押し上げて、最後は「国策」だからといって容認していく構図である。


<県民の意向を前提に判断したと詭弁>

 村井知事は、再稼働同意表明の記者会見(11月11日)で「三者合同コメント」を読み上げ、原発の「必要性」について、「エネルギーの安定供給、エネルギーミックスに必要なベースロード電源」だとし、「安全性」については、「規制委員会が世界で最も厳しい基準で審査したもの」で、三人も現地視察して安全性を確認できたとし、「防災対策」については、「原子力防災会議で了承されたので実効性は確保された」と述べた。国の言ってきたことの踏襲でしかない内容であった。

 さらに、国策として再稼働ありきで、知事主導で進めてきたのにも関わらず、「『県民のみなさまのご意向』を前提に判断すると考えて、様々な取り組みを行ってきた」と言いきった。地元同意までの過程のなかで、アリバイ的な住民説明会、二度にわたる住民投票条例への消極的、否定的姿勢であり、またUPZ圏内に留まらず全県的な説明会開催の要求などの「県民の意向」をことごとく拒んできたのである。「県民のみなさまの意向」を前提としてやってきたと「中立性」を装い、住民説明会や立地自治体議会、県議会、市町村長会議に責任を転嫁しての同意表明にはあきれるしかない。「最後まで悩んだが、苦渋の選択だった」と最後に語ったが、再稼働ありきなのに「苦渋の選択」など白々しく聞くに堪えない。


<原発事故を交通事故と対比する愚かな知事>

「原発がある以上、事故の可能性がある。事故があるからダメとなると全ての乗り物も食べ物も事故が起きた経験から否定される」と、原発事故を交通事故に例えて語ったと報道されている。なんと愚かな知事なのか。まともな避難計画のないなかで、県民の命と財産を守る自治体の首長として失格だ。

 9月30日、仙台高裁が「生業訴訟」で国と東電の責任を明確に示してから2か月しかたっていないなかでの再稼働同意に、原発事故で苦しんでいる避難者がいる隣県の知事がこの程度の認識しか持っていないのかと愕然とした。宮城県民として恥ずかしい。発言の撤回と辞任を求める。


<県民投票は、私の力の及ぶところではない?>

「県民投票条例案は、県議会で二回も否決されたが、私の力の及ぶところではない」と、県民投票条例案否決に対しても県議会に責任転嫁している。11万筆の署名とともに条例案を提出した時に付議された「知事の意見」では、下記のように述べている。

「再稼働同意については、住民の多様な意見を反映して判断すべきである。本県の判断にあたっては国策としてエネルギーの在り方、安全性の県の確認、地球温暖化対策など、多様な観点からの議論が必要で県議会での議論が有益である。」「県議会、立地市町、市町村長の意見をしっかり伺い、知事が判断するのが妥当な判断である。」さらに「(県民投票は)県議会で行われる多様な観点からの議論に制約を与える」と、県民投票条例案に消極的、否定的な意見を示していたのだ。県民の多様な意見を反映しようとするならば、積極的な意見を付議できたはずであり、「私の力の及ぶところではない」という責任転嫁の発言は看過できない。


<スケジュールありきの再稼働同意>

 村井知事は、「東北電力の要請『事前了解』から7年間議論してきた。『事前了解』がないとできない工事がある。このタイミングでないと全体のスケジュールに支障が出る。」と言っておいて、「(同意表明は)スケジュールありきではない。」とも。2023年度再稼働を見越しての今回の同意表明であることは明らかであり、支離滅裂な答弁である。ここにも、住民無視、事業者のスケジュール優先の政治姿勢が明確だ。

 三者協議の翌日の地元紙は、知事の地元同意について「安全対策工事が2022年度まで続く中、何故、生煮えのままゴーサインを出すのか」「妥協の産物による拙速な決断は、将来に禍根を残す」と鋭く批判している。まさにその通りである。


<原発マネーという麻薬に浸る立地自治体>

「原発がなければ、町の財政や経済活動は破綻し衰退する。」と女川町議会での再稼働推進派議員の発言があった。石巻市議会議長も「再稼働して地元にお金を回してほしい」と県知事に要望していた。宮城県も立地自治体も「原発マネー」という「麻薬」に浸り、市、町の財政を潤わせ、一時的な経済的効果にしがみ付く旧態依然の政治から今回も抜けさせずに、「国策」を進めるための国の仕掛けに乗った。安易な原発依存の受け入れでは、自立した自治が出来なくなり、地方自治が崩壊してしまうだろう。今回の女川町議会、石巻市議会、宮城県議会の議論を聞いてきて強く感じたことだ。


<再稼働同意は「県民の総意」ではない>

 三者協議の石巻合同庁舎前には、「再稼働に同意するな!」という横断幕を掲げた40名を超える県民、市民が集まり、スタンディングで抗議し、同意するな!と声を上げた。



 村井知事が「地元同意」を表明した後、県内53の住民団体は、会場のロビーで「同意に抗議し撤回を求める声明」を発表した。

 民意を把握するために県民の意見を聴き取り、県民の意向を確認する場がほとんど持たれなかったし、県民投票条例を二度にわたって否決した上、県議会は請願者の意見陳述さえ拒んだ。コロナ禍の中で開催された住民説明会では、住民の疑問や不安はまったく解消されていない。安全性検討会、県議会、そして市町村長会議における「熟議」はまったくなく、県議会環境福祉委員会の請願審査時間はわずか10分足らずだった。市町村長会議は2時間ばかりの意見表明のみで三者協議に「一任」した。声明はこうして、県民からの意見聴取も議論もまったくない中で行われた同意表明が「県民の総意」ではないことを指摘した。

 声明はまた、避難計画の実効性さえ担保されていないこと、渋滞対策としてUPZ住民は「屋内退避」という住民に被曝を強いる内容であること、さらに女川原発が「被災原発」であること、古い沸騰水型原発であり、重大事故時の安全対策上の検討も極めて不十分であることを上げ、同意の撤回を求めた。そして、再稼働に反対する県民は、引き続き「県民の総意」に基づいて女川原発2号機再稼働の是非が決されることを求めて活動していくことを表明した。

 宮城県知事の地元同意表明は、行政手続きが終わっただけであり、再稼働に反対する活動を進めていく。

(m記/11月15日)


■以上/宮城全労協ニュース351号(2020年11月19日)