<本号の内容>
●西川日本郵政社長と竹中大臣の責任を問う!
●JR西日本・尼崎の大惨事から1年!
●西川善文日本郵政社長(前三井住友銀行頭取)と
竹中大臣の責任を問う!
金融庁は4月27日、三井住友銀行に一部業務の停止命令を出した。銀行が初めて、独禁法違反で業務停止命令を受けた。金融派生商品を中小企業に強要した、という理由だ。時期は三井と住友の合併直後の01年以降で、西川善文頭取の時代である。
竹中総務大臣は昨年11月、この西川前頭取を「日本郵政」=郵政持ち株会社のトップに据えた。注目のトップ人事に対して、奥田経団連会長らは金融界からの起用に難色を示していた。その意向を無視した形の竹中人事は、驚きをもって迎えられた。当初から、「(個人的つながりの)情実人事」とか「(競争相手から起用する)利益相反」との批判が絶えなかった。さらに、「全国銀行協会会長を二度も務めた大物バンカー」が、銀行時代の強腕手法で郵政の経営を行うなら、「民間とのイコールフィッティング」に反するという「危惧」が、金融界などから表明されていた。その「危惧」は、次々と発表される事業拡大方針によって現実となっていった。
12月2日、三井住友銀行は公正取引委員会から排除勧告を受けた。「当時の経営陣の責任の可能性」(朝日新聞)が持ち上がり、「西川氏は日本郵政会社の社長にふさわしいのか」という疑問はさらに深まり、「西川人事の仕切り直し」を求める声もあがった。これら三井住友銀行問題と関係があるかどうか、明らかにされてはいないが、その後、日本郵政社長人事に続く分社のトップ人事は予定より大幅に遅れていった。
三井住友銀行は6月2日までに業務改善計画を公表することになり、社内処分も含まれると見られている。現頭取は会見で、当時の経営陣には「報酬の自主返上」を要する可能性もあると述べている。
「民営化=郵政私有化」に反対してきた私たちは、もちろん、「日本郵政」の設立に抗議してきた。さらに、このような三井住友銀行の社会的な責任が問われる事態にあって、西川社長人事を認めることはできない。
日本郵政の人事は竹中大臣の責任であり、当然、小泉首相の承認のもとでなされた。彼らは、今回の三井住友銀行の処分は、西川日本郵政社長にとっては過去のことだと言い逃れするのだろうか。竹中大臣は、このようなトップ人事を行った経緯と、大臣としての責任を明らかにしなければならない。
●JR福知山線・尼崎の大惨事から1年!
大惨事から1年が経った。JR西日本の対応は、遺族や負傷者たちの怒りをかきたて、不信・不安をつのらせるものだった。原因究明も、安全対策も、社会を納得させるものではない。4月25日、慰霊式に参列した人々は、重い口を開いて、癒えることのない心情を語った。大惨事はどうして防げなかったのか?そして、JR西日本は何がどう変わったのか?
JR西日本は「安全性向上計画」の取り組みを強調してきた。安全投資を増額した。「ゆとりダイヤ」を導入した。未整備だった新型自動列車停止装置の整備も前倒しした。「日勤教育」の見直しも進めた。そのような「対策」がとられたということは、とりもなおさず、安全無視の経営だったことを示している。しかも、新型ATSは多くの場所で設定ミスが発覚した。1月には、保線労働者たちが特急列車にはねられ、死亡した。国土交通省も、取り組み不十分として勧告した。「安全対策」に値するものではない。
91年、信楽高原鉄道で正面衝突の大惨事が起きた。JR西日本は責任を弱小私鉄に負わせた。「謝罪」したのは12年後だった。しかし、反省するどころか、安全投資を逆に減らし、もうけ第一主義を突き進んだ。競争相手に勝つこと、集客、1秒を争うスピード化、過密な列車運行、日常的な「危険信号」の無視、そしてあくどい労務管理。運輸省−国土交通省もそのような経営にメスを入れることはなかった。その果ての尼崎事故だったのだ。
JR西日本事故の直前には、北海道で事故が多発していて、「異常事態」の警告が出されていた。尼崎事故の後のJR東日本でも、事故が多発している。人々は、まさに「暴走列島」の上を動き、危機と隣り合わせて生きている。
<労働者の闘いなくして安全は守れない!>
「運んでいるのは乗客ではなく、命であることを胸に刻んでほしい」。慰霊式で遺族代表はこう訴えた。それはJR西日本への抗議であるが、私たちは同時に、安全や公共性に労働者として責任を持つことの大切さを痛感する。そして、労働をないがしろにし、成果と効率だけで労働者を支配する現在の体制や政策の変革が必要だとあらためて決意する。
昨年末、山形県庄内町で、JR東日本羽越線の脱線事故が起きた。突風対策を怠ったJR東日本の責任が問われている。東京では4月24日、異常振動に気づいた運転士が電車を停止させた。近接する道路拡幅工事によって、レールが盛り上がったという。山手線などで運行をストップさせたJR東日本は、「直線コースであり、ただちに脱線につながることはなかった」とコメントした。しかし、最悪の事態はありえた。しかも、JR東日本は、2月と4月21日に、別の場所で同様のケースがあったにもかかわらず、工事を続行し、通常通りの運行を続けていたのだ。
「国鉄労使の対立の大半は、スト権ストを除いて、安全問題にあった」。1年前、鉄産労はそのように指摘し、「被害者たちの怒りと悲しみを受けとめ、・・安全輸送の誇りをかけ、民営化による営利第一主義の経営に断固反対し、今後とも安全第一の鉄道事業を追求していく」と声明した。労働者の闘いなくして安全はない。私たちはこの歴史的な教訓を確認し、労働運動を通して共有していく。
<20年目のJR。「民営化」「規制緩和」が問われている。>
小泉政府が強引に進めてきた規制緩和、市場競争原理主義が問われている。その政策の出発となった国鉄の分割・民営化が改めて問われている。
政府はかつて、「赤字国鉄」を解決するための「民営化」だと説明した。その国鉄の長期債務は、けっきょく27兆円が国民負担にたらい回しされ、まだ22兆円が残っている。今年4月、JR東海の株式売却が完了し、本州3社は「完全民営化」された。しかし、北海道、九州、四国の各社は、株式上場のメドさえ立っていない。20年前に与えられた基金(持参金と呼ばれた)の運用益によって生き延びている状況だ。
大都市圏を背景に持つ本州3社は、新幹線と通勤線を武器に事業を拡大させた。多角経営に乗り出す一方で、鉄道の安全はおろそかにされた。営業成績こそが評価の第一である。「民営化」は、公共交通を市場競争に放り出し、利益を最優先する経営を強いた。
問題はそれだけではなかった。中曽根首相は民営化法案の成立(86年11月)にあたって、「二百三高地がついに落ちた。国労崩壊の前に社会党はなすすべなく茫然たる日々であった」と日記に記した。労働運動つぶしが、国鉄解体攻撃のもう一つの真実であった。労働者への弾圧、強権支配はJRの安全をおびやかしてきた。「日勤教育」はその象徴であり、その原点は国鉄労働者を差別・選別した「人材活用センター」であった。
朝日新聞は最近、全国の鉄道事業121社に対するアンケートを行った。半数の事業者が「安全投資は負担だ」と答えた。とくに中小鉄道には「安全投資の余力」がない。東北地方のある私鉄は次のように説明している。「マイカー普及や少子化による利用客の減少で収入は減った。給与カットや人員削減の合理化も限界。老朽化設備の改善もままならず、沿線自治体の補助も難しい」(朝日新聞4月24日、鉄道事業者アンケート)。JR、とくに新幹線との競争が経営を圧迫していることも明らかだ。
政府や自治体はこれら地方鉄道を救済しなければならない。そうでなければ、安全の危機はますます深まるだろうし、赤字在来線は地方から消えていくだろう。国鉄解体は、地域の反対を押し切って、地域ローカル線廃止から着手された。それを肯定した民営化論者は、格差肯定論者でもあった。それでいいのかということが、いま再び、小泉改革をめぐって「政治課題」になっている。「民営化」や市場原理主義は常識だとして、疑うことさえない新自由主義の風潮に歯止めをかけよう。「国鉄も電々も民営化で成功した、郵政も民営化だ」という小泉首相の主張を許してはならない。
<深刻な航空危機!>
規制緩和政策は、交通分野の全体で公共性と安全性を破壊してきた。国鉄分割・民営化がその始まりだった。信楽鉄道事故に無反省・無責任を貫き通したJR西日本は、ついに尼崎事故を起こすにいたった。「西日本の体質」ですまされる問題ではない。JR東日本の羽越線事故は、それを実証した。
西日本の井手相談役、東日本の松田会長が事故後、それぞれの職を辞任した。彼らは、国鉄分割・民営化にあたって、当時「改革3人組」と称されていた。国鉄解体を象徴する人物である。痛ましい犠牲がなければ、彼らは公然たる権力を握り続けていただろう。
ところが、会長を退いた松田相談役は、日本航空の監査役に就任するというのだ。日本航空は「松田相談役のリーダーシップや経営手腕に期待した」という。松田相談役は「日航が衰退していくのを見るのは忍びない。安全運航と健全経営のため、日航再生に努力したい」と述べた。旧国鉄官僚と航空業界は、運輸省を介して密接な関係を築いてきた。そのような歴史的な事実に照らしても、事故によって事実上退いた人物が、事故・トラブルまみれの航空会社に招かれるということがどうして許されるのだろうか。どこまで犠牲者の心をふみにじるのか。
航空危機は日本航空にとどまらない。「格安」を売りに新規参入したスカイマーク(SKY)は、最近、徳島線など「不採算線」からの一方的撤退を決めた。整備ミスや整備士の大量退職などで、国交省もSKYへの検査に入っていた。4月11日、羽田−千歳線の就航を目前に、SKY西久保社長が衆議院の委員会に参考人として招致された。社長は、「民間企業として収益確保が重要であり、地方路線を継続して赤字を続けることはできない」「利益の追求は安全とは別次元」と批判をつっぱねた。さすがに北側国交省大臣も、「公共交通機関の役割」を強調し、語気を強めて批判せざるをえなかった。
北側大臣ははっきりさせねばならない。航空自由化・規制緩和が公共性を破壊し、安全をおびやかしているのか、単にSKYという個別企業の問題なのか。国交省が有効な対策をなしえないのは、なぜなのか。
<タクシー、トラックなど、危機はいたる所に!>
02年施行の規制緩和によって新規参入会社が増え、タクシー台数が急増し、乗客の奪い合いが激化した。その結果はタクシー労働者の大幅な賃金ダウンであり、事故の急増だった。政府は、規制緩和によってサービスが多様化し、利用者も増えると説明する。しかし、実態はそうではない。小泉首相は、批判に対して次のように答弁した。「昔が良かったという人もいるが、規制緩和で良かったという人もいる。努力する会社とそうでない会社が同じというのはおかしい。それでは努力が報われない」。これこそ、小泉首相の「新自由主義改革」論だ。まったくのごまかし論法である。
トラック業界では、03年から規制緩和によって、全国どこでも自由な価格で運行可能になった。事業者は1・5倍になった。加えて賃金は歩合制が多い。結果は明白だ。トラック労働者の賃金低下と労働強化、そして事故の多発である。トラック労働者は成果主義賃金でしばられ、過密・高速・長時間の危険な運転に駆り立てられている。まさに暴走列島だ。政府の言う「利用者や消費者の利便性向上」は、このような労働者の犠牲のうえにあることは明白だ。
交通分野だけではない。医療、福祉、農業、食、教育など、いたる所で規制緩和による社会改悪が進んでいる。日本は危機的な「原発列島」でもある。大惨事、事故、トラブル、企業の不祥事が相次いでいるにもかかわらず、小泉首相は「改革路線の継続」をかかげ、総裁選をリードし、権力を維持しようと躍起である。
いまや与党からも小泉改革の「影」が指摘され、「格差問題」が浮上している。労働者民衆に「痛み」を強制し、社会をつぶす小泉路線を、このまま放置しておくことはできない。社会のあり方を変えなければいけない。
構造改革をストップさせよう!
小泉・竹中路線からの転換を!
■以上

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