宮城全労協ニュース/第84号(電子版)/2006年9月24日

<本号の内容>
★安倍政権−改憲の野望を打ち砕こう!
★沖縄県知事選、野党統一候補の勝利を!


●安倍政権の誕生−改憲の野望を打ち砕こう!

安倍晋三官房長官が自民党総裁に就任した。派閥バランスを破壊した小泉政治が彼の異例の出世を可能にした。小泉による事実上の政権委譲である。安倍は5年間の小泉政治から最大の利益を引き出し、自民党内の圧倒的支持を勝ちとって最高権力者の座にのぼりつめた。一方、小泉の経済社会政策を取り仕切った竹中総務大臣は議員辞職を表明し、規制改革の権勢をふるったオリックスの宮内も去った。明らかな落差である。小泉時代は過去のものとなり、新しい安倍時代が始まろうとしている。

自民党が安倍にもっとも期待しているのは参議院選挙の「顔」である。小泉にかわる「選挙の顔」は安倍であるという判断が圧勝の最大の理由になった。安倍が参議院選挙用にとどまるのか、それとも政権基盤を強化して教育をはじめ反動政策を実現していくのか。人事に続いて臨時国会での攻防が始まろうとしている。

右翼的な国家主義者である安倍は「自主憲法制定」を公約にかかげ、「5年以内」と期限を切った。5年とは07年参議院選挙と次の総選挙を勝ち抜き、政権を2期重ねるということだ。安倍の野望を許してはならない。


●きわだつ反動的な歴史認識

総裁選レースのなかで安倍は「村山談話」への否定的な態度を表明した。数日後、安倍は発言をトーンダウンさせたが、安倍は、「植民地支配と侵略への反省」という日本政府の公的立場を引き継ごうとは思わないという姿勢を明らかにした。

中曽根元首相は、総裁就任後の安倍に思想的な親近感を伝え激励した。中曽根は、小泉政治はしょせん「変人」の方便だったが、安倍には思想があると言いたいようだ。安倍は「北朝鮮拉致問題」で頭角を現わし、「日本国家としての主張を貫く政治家」として国民的に認められる存在となった。だが安倍の「思想」とはどういうものか。

安倍は「美しい国」をめざすという。アジア・ユーラシア大陸の東岸に近接し、太平洋をはさんで北アメリカ大陸をのぞむ「美しい国」は、アジアへの侵略戦争を行った責任を認めず、「東京裁判」を否定し、GHQ占領軍の押しつけである日本国憲法を廃して「自主憲法」を制定する。そうして戦後日本人を落とし込めた「自虐史観」から自由になる、というものらしい。しかし、その国はなぜ、勝戦国の一つにすぎず原爆まで投下した米国を唯一の同盟国とするのか。「自虐史観」はどうしてアジアとの関係でだけ語られるのか。安倍はその問いに答えない。多くの人が指摘しているように、「美しい国」は復古主義的幻想に包まれている。

一方、安倍は「強い国」とも言っている。「強い国」は日米同盟の強化によって実現される。「日本の真の独立」がどうして日米同盟を意味するのか。安倍は戦後日本の根本問題にふれていない。「美しい国」と「強い国」はどのような関係にあるのか。この点もあいまいなままであり、安倍は両者を都合良く使い分けている。

総裁選レースのなかで安倍は「歴史認識は歴史家にまかせる」と発言した。彼はこのような態度によって挑発を繰り返し、アジア諸国の尊厳を傷つける。こんな態度で国際的な尊敬を集めることなど不可能であり、そもそも外交の場で通用するはずがない。歴史をかえりみない傲慢な大国主義意識は日本を危険な孤立の道に導くものだ。


●日中・日韓関係の改善は日本政府の責務

日中・日韓関係の改善、とくに首脳会談の再開が最大の懸案だ。米国もそのなりゆきを注視している。安倍チームは水面下で事態打開の交渉を続けてきたという。

しかし安倍は中国敵視発言をエスカレートさせてきた。彼は「村山談話」問題に続いて、中国の「戦争責任論」を攻撃した。中国侵略の責任は日本の一部の軍国主義者のものであって、一般の日本人は中国人民と同じく戦争の被害者である。日中国交回復にあたって、当時、周恩来はこのように日本の戦争責任を整理し、国家賠償請求を放棄する論拠とした。安倍はこの立場に敵意を示し、「中国の理解かもしれないが、外交文書は残っていない」「階級史観的だ」と反発した。安倍は中国が対日賠償請求を放棄した重さを理解したうえで発言したのだろうか。

「反省を行動で示してほしい」と中国、韓国政府は表明してきた。「靖国に行くかどうかも、行ったかどうかも明らかにしない」。それが安倍の返答であり、「日本は窓口を開けている」と小泉的な発言を繰り返している。本当に関係改善したいのか、それとも緊張関係を作り出すことが目的なのか、安倍は際どいゲームにひたっている。小泉は「自分は日中友好論者だ、問題は向こうにある」と独特の言い回しを用い、それ以上の論議を閉ざした。中国、韓国政府も日本経済界も小泉はあきらめた。政権が代わり、ボールは日本の側に投げかけられている。安倍の政治信条がどうであれ、関係改善は安倍にかかっているのだ。安倍政府は「靖国問題」を解決し、すみやかに関係改善に進まなければならない。

日本政府・与党の不当な対応によって、日本のなかに中国・韓国敵視のナショナリズムが拡大することを許してはならない。

●臨時国会−反動法案を粉砕しよう!

政権運営の当面の焦点は二つ、構造改革路線の継承と中国・韓国との関係改善である。それは日本経済界の要求でもある。安倍はどちらもはっきりした方針を示していないが、人事と所信表明、そして臨時国会の法案をとおして明らかにされていくだろう。

臨時国会、2つの補欠選挙、沖縄県知事選挙を経て、通常国会、統一地方選挙に至る一連の闘いの集約は参議院選挙である。その帰趨は昨年9月の総選挙以上の意味を持つだろう。郵政総選挙は「一種のクーデター」(中曽根元首相)であり、劇場マジックであったが、07参院選挙ではその類いの奇策は通用しないだろう。どのような政策、どのような政治なのか。私たちの主張と闘いが問われている。

安倍の作業チームは公明党との政権構想原案、参議院選挙での与党マニフェストのたたき台に合意したと伝えられている。そこでは憲法や集団的自衛権には触れられていないという。新体制の公明党は安倍の「現実主義」を評価し、自公連立の勝利をかちとると宣言している。郵政反乱組の復党問題もふくめて、参議院選挙にむかって大きな政治の流れが動いている。

安倍の野望を許さない闘いを作り出そう!

自主憲法制定=改憲を阻止しよう!
教育基本法改悪など反動諸法案を粉砕しよう!
「再チャレンジ」のごまかしを許すな!
07参議院選挙で自公の敗北を!


★沖縄県知事選、野党統一候補の勝利を!

沖縄で県知事選挙の野党統一候補が成立した。紆余曲折を経た苦悩の末の統一である。まさに沖縄革新の粘り腰であり、私たちはこれを歓迎し、支持し、勝利のために尽力したい。

野党協議の解散(9月1日)の後、社会大衆党は野党の統一候補として糸数慶子参議院議員の擁立に踏み切り、糸数議員(社会大衆党副党首)も受諾の姿勢を示していた。野党各党は統一候補を支持、正式な立候補表明は9月30日に設定されている。

11月19日の投票まで2ヶ月もないし、政策協定などの「不協和音」が残る可能性もある。しかし、いったんは分裂選挙の危険性に直面した沖縄野党は、自民・公明による沖縄県政を打破して8年ぶりの奪還をはたすべく闘いに突入する。

沖縄紙は次のように指摘している。

「やっと野党の態勢が固まったとはいえ、野党側は複数の候補者の名前が浮いては消え、各政党、団体の見解が複雑に入り乱れた経緯が有権者の不信を買ったことを忘れてはならない。ただ、分裂しかけていた野党はこれで共闘態勢を築く環境が整った。・・求められるのは具体策だ。基地問題にどう取り組み、財政問題をどうするか。地方のシャッター通りの解決策も県民にとっては気になる。失業者対策も示さなければなるまい。普天間飛行場の代替施設問題や新興策の手法で六者の考えが微妙に異なるのは言うまでもない。では、最重要課題である普天間飛行場の危険性除去にどう当たっていくのか。さらに言えば、名護市辺野古岬のキャンプ・シュワブ沿岸部へのV字形滑走路建設で合意した日米両政府にどう対峙していく方針なのか。・・」(沖縄タイムス/9月19日/社説「糸数氏に一本化/具体的な政策論争期待」)

「与野党とも候補者選考には難航した。・・野党陣営の人選作業は、それこそ難航に難航を重ねた。4月から始まった人選作業は、途中では2人までに絞り、公開討論会まで開いたが、一本化できなかった。社民党県連、社大党、民主党県連、共産党県委、政党そうぞう、自由連合沖縄の6党による野党協議は解散、最悪の事態になっていた。そこから県政奪還のためには野党陣営の一致協力が最優先との認識から再び、統一候補擁立の動きが広がり、やっと糸数氏擁立が固まった。」(琉球新報/9月22日/社説「知事選2ヵ月・やっと一騎打ちの構図に」)

野党統一候補の成立を受けて安倍自民党新総裁は20日、就任会見で沖縄知事選挙を重視すると表明、在日米軍再編の日米合意を実施するためには与党候補の当選が必要であり、自民党本部の取り組みを強化すると述べた。

日米軍事再編の再前線である沖縄は、同時に小泉政府がもたらした格差拡大列島の象徴でもある。沖縄県知事選挙は安倍新政権との闘いであり、労働者民衆の共同の闘いの成否を問うものだ。連帯・支援を沖縄に寄せよう!

(なお、糸数議員の立候補にともなう参議院補欠選挙は07年4月に実施される。)

■以上