宮城全労協ニュース/第88号(電子版)/2007年2月8日

米軍のイラク増派を糾弾する!
米アフリカ軍の創設反対!
日本政府は航空自衛隊を戻せ!

安倍首相は厚生労働大臣を罷免せよ!
政治資金疑惑を解明せよ!
「労働ビッグバン」を止めよ!



<本号の内容>
★安倍政権を追いつめる07春闘へ!
★労働関連6法案=労働法制の改悪を許すな!


●混迷深める安倍政権

内閣支持率は低下し続けている。一部の世論調査では不支持率が上回った。巻返しをはかる政府・自民党は「安倍らしさ」をかかげて通常国会にのぞんだが、施政方針演説は空回りに終わった。代表質問への答弁はさらにひどかった。官僚文書の羅列を読み上げるのに精一杯という印象だった。これでは支持率の続落はとまらないだろうという予感が与党陣営に走ったのではないか(政権成立直後は逆に、小沢民主党代表の精彩を欠く演説が新政権を助けた)。このような状況のなかでの柳沢厚労相発言であった。

安倍首相の指導力を求める声が強まっている。しかし一連の政治資金疑惑は不明のままであり、閣僚らのあいつぐ「不適切発言」もとまらない。中川自民党幹事長は塩崎官房長官と下村副官房長官を呼びつけ、閣僚らの発言は「時と立場をわきまえるように」と政府に異例の注文をつけた。官邸機能も分散状況にあり、政府の塩崎官房長官と自民党の中川幹事長の連携もギクシャクしたままだ。

久間<防衛大臣>の「反米的発言」の余波が広がっている。イラク開戦に関する久間発言は「国際社会の常識」を追認するものだが、しかし、安倍政権の立場とは絶対に相容れないはずだ。「個人的見解」ですまされるものではない。そうこうしているうちに、麻生外務大臣も同様の発言を行なった。日米間に険悪な空気が流れ、日米防衛首脳会談の打診を米側が断っていたと報道されている。大臣発言問題だけにとどまらない。首相が訪米の前にヨーロッパを歴訪したことについても、その真意が問題視されたが、首相サイドからは説明がない。まさに異常事態が放置されたままの状況にある。


●厚労相罷免を拒否して居直った安倍首相

安倍首相は柳沢厚労相発言に関して大臣を罷免しないと言明した。野党はただちに罷免、辞任を求めた。女性たち、市民団体などが連日、抗議に立ち上がった。「女性は産む機械」という柳沢発言は決して許されるものではない。わけても厚生労働大臣として政治的な責任をとるべきであり、辞任は当然である。自民党、公明党からも反発の声があがり、大臣発言の背景には女性蔑視の「男政治」があると糾弾する議員もいた。安倍首相はこれらの批判に対して、不適切発言だとして謝罪したが、にもかかわらず罷免を拒絶し辞任も封じた。「柳沢大臣を守る」ことを最優先させ、居直ることによって政権を維持・防衛しようとした。

政府・与党はこのまま通り過ぎれば国民の同情も得られ、いずれ風向きが変わると思っているのだろうか。だが野党議員が代表質問で指摘したように、安倍首相の対応は国際的にも通用しないものである。安倍首相と安倍政権の失墜は不可避だ。

中川幹事長は首相の罷免拒否を貫徹させるべく、正当化に乗り出した。自身の公式サイトで、「人口統計の説明についての不適切な比喩は謝った」「政策の基本的方向に誤りはない」「柳沢大臣の「正体」は女性蔑視論者ではない。女性の自立の理解者だ」と「問題点を整理」し、野党は選挙のために柳沢発言を利用していると批判して事の本質をそらした。中川は「安倍総理はこのような野党の不義と闘う覚悟を固めた。与党は結束しなければならない。これは正義と不義の闘いだ」と呼びかけ、「安倍総理を先頭に、党利党略の野党の不義とは断固として闘う。不義の野党には絶対に譲歩しない」と宣言した(2月1日)。

与党と内閣はこうして「柳沢大臣を守る」態度を貫いている。たしかに柳沢大臣の辞任によって政局を打開させるという可能性は残されている。また内閣改造をちらつかせて目先を変えようという動きもある。しかし中川幹事長の<闘争宣言>は、本間政府税調会長、佐田行革担当大臣についで柳沢大臣を更迭すればこの内閣は持たない、野党との正面対決を貫徹し、安倍内閣を守りぬいて参議院選挙での与野党逆転を阻止するという意味であろう。それこそ党利党略ではないか。

北九州市と愛知県の二つの選挙は、そのような態度が民意に反していることを示した。世論に敏感な与党議員たちの不満は高まっている。「安倍首相は裸の王様」という辛辣な言葉も飛び出した。毎日新聞の調査(2月3日)によれば、自民党47都道府県連役員の7割が「厚労相の発言は許されない」と答え、「辞職すべき」が47人中13人、「辞職すべきでない」が12人、「出処進退は自ら判断すべき」が11人だった。


●07春闘−参議院選挙に向かって闘いを組織しよう!

中川幹事長はこれまで、野党支持率の合計に「支持なし層」のうち実際に投票する有権者を加えても、自民・公明の支持率をこえることはないと主張してきた。実際、内閣支持率が低下しても自民党支持率は維持され、民主党は魅力の欠如のために支持率は一向に上昇してこなかった。だから「与野党逆転は絵に描いた餅」であり、「民主党の惨敗が予想できる」「04参院選ではなく、01参院選の再現となる」と中川は結論づけていた。

だが、自民党は愛知県知事選の大接戦と北九州市長選の敗北によって見直しを迫られ、参議院選挙対策の再検討に乗り出している。宮崎県知事選挙でのタレント候補の勝利は保守分裂による特異な現象だという評価を見直し、自民党支持層の状況や無党派の分析を選挙区ごとに行なうよう党組織に指示した。民主党の力のなさによって助けられてきた自民党の楽観ムードは一挙に消し飛んだ。民衆の怒りと不満の結実のあり様が政局を左右しようとしている。参議院での与野党逆転のための闘いが問われている。

一方、政府・与党は通常国会で国民投票、教育、公務員、共謀罪など懸案諸法案を成立させることによって保守層を結集させ、同時に「再チャレンジ」を選挙対策として打ち出そうとしている。とくに中川幹事長は民主党との対決の焦点として公務員問題を取り上げ、公務員制度改革、社会保険庁解体(再編)、教員免許更新を「3本の矢」と位置づけてきた。自治労や日教組は国民の改革要求に反しており、それら労働組合によって支持された民主党は抵抗勢力であるとフレームアップし、小泉型の選挙を再現しようという策動だ。しかし、たとえば公務員制度改革について、「官僚の天下り規制」はいまだに定まっていないのだ。「公務員攻撃」をはねのけよう。生活や環境を破壊して暴力的に展開されている市場原理・規制緩和政策を糾弾しよう。

安倍反動政権の打倒をめざす闘いを進めよう。
「美しい国」、日本経団連・御手洗の「希望の国」に対抗し、
新しい労働運動、社会運動をめざして07春闘を闘おう。


★労働法制の改悪を阻止しよう!

●「労働時間規制除外」法案を見送り

「労働時間規制除外」の通常国会提出をめざして、厚労省は最後まで抵抗を見せた。厚労省は1月25日、ホイワトカラー・エグゼンプション制度を含めた労基法改正法案の要綱を労働政策審議会に提出した。適用労働者の要件は明示せず、「自己管理型労働制」と名称変更して盛り込んだ。2月2日、審議会はこの要綱を「おおむね妥当」と答申した。

御手洗日本経団連会長も1月22日の記者会見で「法案は提出されるのではないか。経団連の主張が通ることを期待している」、「ホワイトカラー・エグゼンプションは自立的な働き方を促す意味があり、残業代ゼロ制度と訳すのはミスリーディングだ」と述べた(朝日新聞1月23日付)。

だが、選挙への影響を強く懸念する政府・与党は最終的に法案提出を見送った。労働側の激しい反対の一方、昨年末来、自民、公明内部からこれでは選挙は闘えないとの声があがっていた。中川幹事長は、「執行部として法案を国会に出す以上は、それを成立させていかなければならない。説明の不十分な状況の中で責任をもって国会を乗り切るのは、なかなか困難だ」、「そもそも新聞に残業代ゼロ法案と書かれるようでは、この制度の本来の内容、目的は十分に説明、理解がなされているとは思えない」(1月16日/記者会見)と発言し、見送りの道筋をつけた。

伊藤忠の丹羽社長はこのような動きに対して、「残業代は要らないから出社したい、スキルを身につけて仕事をしたいという若い人がたくさんいる。しかし、出社されると残業代を払わなければならないので経営者は困ると言っている。ホワイトカラーエグゼンプションの制度がないからだ」などと怒りをこめて発言したという(第1回経済財政諮問会議/1月18日)。

経営側は誤解だ、誤訳だというが、法案への抵抗と反対の声は大きく広がっている。毎日新聞が1月27日、28日に行なった世論調査では「男女とも7割が反対」「内閣支持層でも6割が反対」であった。反対理由は、「長時間労働への歯止めがなくなる」(39%)、「賃金の抑制につながる」(37%)、「健康管理に不安」(22%)であった。「制度が長時間労働の解消にはつながらないと考えている人が多数を占めた」と報じられている。これが現実だ。

政府・与党の今回の対応はあくまでも<見送り>である。「労働時間規制除外」は経済財政諮問会議の「労働ビッグバン」の根幹をなしている。制度そのものの断念を要求して反対運動をさらに発展させよう。


●「過労死は自己管理の問題」
−八代、奥谷ら推進派の暴論−

政府・与党、経済団体は「生活と仕事の両立」などと称して、制度化をねらってくるだろう。しかし彼らのねらいが別のところにあることは明らかだ。

この間、推進派の二人の発言が波紋を広げた。

八代尚宏(経済財政諮問会議)は12月18日、内閣府の労働市場改革などに関するシンポジウムで自説を述べたという。毎日新聞(12月19日)は次のように八代発言を報じている。「正社員と非正規社員の格差是正のため正社員の待遇を非正規社員の水準に合わせる方向での検討も必要との認識を示した。・・非正規社員の待遇を正社員に合わせるだけでは、「同一労働・同一賃金」の達成は困難と指摘。正規、非正規の待遇を双方からすり寄せることが必要との考えを示した」、「また、八代氏は現在の格差問題が規制緩和の結果生じた、との見方を否定し「既得権を持っている大企業の労働者が、(下請け企業の労働者や非正規社員など)弱者をだしにしている面がかなりある」と述べた」。

八代は「格差問題」は大企業の正規労働者の責任だと話をそらし、実際は正規労働者の労働条件を切り下げる口実に使おうとしている。八代は経済財政諮問会議の専門調査会の会長に就任し、企業の立場から労働ビッグバンを推進しようとしている。


もっと正直に本音を語ったのは奥谷禮子(人材派遣会社ザ・アール代表取締役社長)の「過労死は自己管理の問題」という発言だ。「(ホワイトカラー・エグゼンプションが)さらなる長時間労働、過労死を招くという反発がありますが、だいたい経営者は、過労死するまで働けなんて言いませんからね。・・これは自己管理だと思います。ボクシングの選手と一緒。・・自分でつらいなら、休みたいと自己主張すればいいのに、そんなことは言えない、とヘンな自己規制をしてしまって、周囲に促されないと休みも取れない。揚げ句、会社が悪い、上司が悪いと他人のせい」(週刊東洋経済1月13日号)。

奥谷発言は衆議院予算委員会でも取り上げられ、暴論ではないかとの野党議員の問いつめに柳沢厚労相も「まったく私どもの考え方ではない」と答弁せざるをえなかった。奥谷はこの件で取材され、「発言の一部分だけをとらえた質問は遺憾だ。倒産しても会社は守ってくれない。早くから自律的な意識を持つべきで、労働者への激励のつもりで発言した」と答えている(朝日新聞2月8日)。

「倒産しても会社は守ってくれない」などと平然と語ることに、奥谷は何の疑問も躊躇もないのだろう。奥谷は労働政策審議会の労働条件分科会委員である。著名な経営者であり、日本郵政株式会社・社外取締役をはじめ各種審議会委員など数多くの要職にある。

八代や奥谷の発言は新自由主義を信奉する学者、経営者の本音であり、「労働時間規制除外」のねらいを端的に表すものだ。


●労働法制関連6法案の提出

「労働時間除外制度」の見送りを受けて、労働6法案が提出されることになる。全労協はその反動性、ギマン性を明らかにし、「労働法制の改悪を阻止しよう!」と訴えている。次に全労協の見解を掲載する。07春闘を通して、労働法制改革反対の闘いを進めよう!

●労働法制の改悪を阻止しよう!
−「残業代ゼロ法案」や「労働契約法案」を許してはならない!−
(全労協fax情報/2月8日/抜粋・要約)

労働法制関連6法案の提出が確実となった。
法案は一部「改正」と全面改悪になっている。

@雇用保険法関係は、
雇用保険3事業・労働福祉事業の見直し、縮小と国庫負担の削減等の改悪案

A雇用対策法関係は、
人口減対策の一環として青少年雇用の応募機会の拡大、外国人労働者の雇用管理、地域雇用対策等に関するもの

Bパート労働法関係は、
「均等待遇」化について、「正社員と勤務実態がほとんど同じで期限の定めのないパート労働者」等というゴマカシ法案

C労働契約法関係は、
「就業規則」を「労働契約の内容」とする等の全面改悪の新法制定

D最低賃金法関係は、
「生活保護の施策との整合性に配慮」として引き上げ額の具体的数字を示さず、生活保護の給付水準の引き下げを進める

E労基法関係は、
残業代割増率の引き上げ等、また、ホワイトカラー・エグゼンプションは見送るとしているが定かではない等々である。

このなかでも労働契約法制定、最低賃金法改正案、労基法改正案は一括法案と言われている。労働契約法案については、解雇の「金銭解決」の法案化は断念させたものの、「就業規則」を「労働契約の内容」とすること、出向・転籍・懲戒等の判断基準の設定等が主なものになる。しかし、就業規則は会社側が一方的に作れるものであり、また、就業規則を変更(改悪)する場合も「合理性」があれば合法としている。これは、賃金・労働条件について、会社側にその権限を与えるものであり、「不利益変更」の本人同意原則の権利も侵害され、労働組合・労働者側の権利が大幅に後退するものであり、経営者側の意向に沿ったものである。

労基法改正については、厚労省側は残業代割増率の引き上げと日本版ホワイトカラー・エグゼンプションをセットで進めてきたものである。しかし、この間の闘いで「残業代ゼロ法案」として悪名が宣伝されて、選挙対策上から今回は見送りとされたものである。従って、いつでも復活する恐れのあるものである。残業代割増率の引き上げも日本経団連は反対しており、アップ率も明確にされておらず、中小企業は3年〜5年の猶予期間の設定も検討されている。

■以上