宮城全労協ニュース/第91号(電子版)/2007年5月20日

<本号の記事>
●沖縄「辺野古」調査に着手、海上自衛隊を投入
●「国民投票法」を糾弾する!
安倍政権の攻勢はねのけ、参院選を闘おう!


◎沖縄「辺野古」調査に海上自衛隊を投入!

安倍政府は、米軍普天間飛行場の移設先である名護市辺野古の周辺海域で環境現況調査を準備してきたが、那覇防衛施設局は18日未明から調査に着手した。調査には海上自衛隊の掃海母艦「ぶんご」が投入された。新たな基地建設に反対する住民たちはカヌーに乗り込み、海に飛び込むなどして抗議した。辺野古漁港でも座り込みの抗議が続けられた。

以下は緊急事態を伝える《辺野古浜通信》より。

「・・・辺野古に来て下さい!
座り込みに参加してください。
カヌー隊に参加してください。
ダイビング、シュノーケリングできる方、
船舶免許お持ちの方、
船を持っている方、
船に同乗できる方、
辺野古に来られない方、抗議のメール、FAX、電話をお願いします。
どうか力を貸してください。
わたし達は非暴力を貫き、辺野古に座ります。平和を創り出すために是非多くの方に、この現状を伝えてください・・・」

*現地の状況は《辺野古浜通信》など現地のサイトまで。

*また、沖縄タイムスは『「牙」むき海奪う行為だ』、琉球新報は『辺野古に海自艦・「何から何を守る」のか』などと報じている。


◎「国民投票法」を糾弾する!
安倍政権の攻勢はねのけ、参院選挙を闘おう!


●強引な「改憲手続法」の成立

国民投票法案は5月14日、参議院で採決され、自民・公明党の賛成多数により成立した(賛成122、反対99)。国民投票法(=改憲手続法)は安倍政権の浮沈を左右する今国会の最優先法案であると同時に、安倍首相が公言する「任期中の憲法改正」にとって第一の関門であった。安倍政権の暴挙を断じて許さない。

安倍首相は1月、政府与党内の消極意見を押し切り、「憲法問題を参議院選挙の争点にする」と指示した。支持率の低下に直面した安倍政権にとって賭けでもあった。しかし、その後の支持率の下げどまり、沖縄補欠選挙の勝利などが安倍の強硬姿勢を後押しした。

7月参議院選挙までのタイムスケジュールを練り、逆算して審議日程が組まれた。法案は国民の疑念に答えることなく、さらに法律としての様々な問題点を抱えたまま、事実上、両与党によって強行採決された。安倍首相らは「与党が責任を果たした」「国民主権が実現した」と自画自賛した。

中曽根元首相は読売新聞のインタビューに答えて、安倍首相に賛辞を贈っている。

「最近の内閣で憲法改正と教育基本法を正面から言ってきたのは安倍内閣だ。小泉内閣の時には道路や郵政は一生懸命だったが、政治の一番の中心にある国家統治、統治権の本流というものからは逃げた。それを安倍君は、統治権の本流である憲法および教育問題を正面から掲げてきた。自民党結党時の綱領を見れば、自主憲法の制定を内容としている。その本流に戻るのに50年かかった」(15日付)

自民党内にある慎重意見は少数にとどまっている。加藤紘一議員は、改憲の現実性は乏しく論議の方向性は定まっていない、「改憲論議は加速しない」と評したが(河北新報15日)、慎重派は歯止めにはなっていない。慎重派の置かれている厳しさは安倍チームへの対抗勢力づくりが進んでいないことと同じだ。逆に右からの攻勢が続いている。安倍外交を支持する議員連盟が旗上げし、派閥横断的な「新安倍派」の結集と注目されている。中曽根元首相は小泉時代の自民党憲法草案を間に合せだと批判し、見直す必要性を説いている。自民・民主の一部右派議員たちは「憲法全面改悪」のために動いている。そのような右派攻勢によって改憲国民運動が組織され、メディアをさらに締めつけながら「3年後」の基盤づくりを強めている。

18日、集団的自衛権の解釈を変更させるための懇談会が初会合をもち、解釈変更の大合唱を演じた。政府・与党は続いて教育3法やイラク特別措置法改正、公務員制度改革、社会保険庁民営化など反動諸法案の成立に邁進している。強引さは際立つばかりだ。「安倍チーム」はそれらの「実績」をもって、いよいよ参議院選挙への反転攻勢に乗り出している。元テレビ朝日の人気アナウンサーの擁立はその最たるものだ。彼らは参院選の「勝利」をもって安倍政権の強化をはたそうと画策している。


●18項目の付帯決議

自民・民主両党は小泉時代に改憲手続きのあり方について論議を積み重ねてきた。実務を担ったのは次世代議員たち、民主党では前原前代表に連なる改憲派議員たちである。法案は残された懸案事項をクリアし、自・民・公の圧倒的多数で成立するはずであった。安倍はこのような自民・民主の経緯をあえて切断し、「参院選での憲法問題の争点化」を持ち出し、民主党を法案反対に追いやった。

様々な問題が未整理あるいは解決されないままに審議切れとなった。そのため18項目もの付帯決議(*注1)がつけられ、法的な「不備」をさらけだした。付帯決議は参議院憲法調査特別委員会で法案が採決される段階で、両与党と民主党の賛成で可決されたものである。審議があまりにも拙速、ずさんであったことは明白であり、この法律の成立根拠が厳しく追及されねばならない。

付帯決議は民主党への誘い水でもある。「付帯決議で提起された問題を一つ一つ論議し、できるものから解決していくことで、与野党のしこりはおのずから解消していくだろう」(船田元・自民党衆院特別委員会理事)。自民党にとって民主党を再度テーブルに戻すことが必要になる。「しこりをどう解消するか」。読売新聞社説は小沢代表の対応を批判しつつ、両党に早くも<和解>を呼びかけている。

「民主党の小沢代表が、夏の参院選に向けて与党との対決姿勢を打ち出し、国民投票法を与野党対立に巻き込んだのは残念なことだ。・・採決の際、民主党の渡辺秀央元郵政相が・・賛成した。民主党には、本心では同様の立場に立つ議員が、少なくないのではないか。不毛な対立から一刻も早く抜け出すべきである」(5月15日社説)


●守勢に立たされている民主党

一方、小沢民主党は安倍発言に反発し、党の方針を一転させて法案に反対した。法案作業に関わってきた民主党の議員たちは、小沢代表にゲタを預けた。民主党は付帯決議を残しながら、結局、1名の造反を除いて反対に回った。「法案反対は自己保身だ」との批判が浴びせられているし、不満が内部に渦巻いている。とはいえ、参議院選挙を闘うために、小沢民主党は安倍の「挑発」に乗らざるをえなかったということだろう。

鳩山幹事長は法案成立後の記者会見で、「首相は得点を稼ぎたいのだろうが、数年後、憲法を論議する時に、どのような状況になるのか」とし、民主党を反対に追いやった安倍首相の独走を「愚かな選択」と批判した。だが、この言葉は額面どおりに受けとめられてはいない。

守勢に立たされているのは民主党である。「首相が参院選の争点にすることで、国民から憲法改正を遠ざけた」と民主党議員は主張した。改憲派が多数の民主党が改憲手続法に反対したことの「正当性」が問われているのだが、説得力はなかった。党首会談でも小沢代表はこの問題での論争を避けた。


●憲法改悪を阻止する闘いへ!

国会はすでに「憲法改正」派が多数を占める。「護憲派」は圧倒的に少数であり、事実上、政界の関心事は民主党と公明党の動向にある。自民と民主が合意すれば、あるいは民主党の多数の賛成でも、発議のための3分の2条項は突破されている。しかし、改憲をめぐる国民的な状況も同じであるわけでは決してない。

国会状況と民意との間には大きなズレがある。その最大は「憲法改正」と「9条改憲」との間にある(*注2)。改憲派のしかける「憲法改正」の中心問題は9条である。だが民意は9条改憲に反対もしくは慎重だ。また国民の多数は性急な「安倍改憲」を望んでいない。「安倍内閣に憲法改正を期待する声は、国民の間では必ずしも多くない」(読売15日)。ここにもズレがある。

公明党は「9条堅持」の姿勢を崩していない。「安倍改憲」に対しても距離を置いている。さらに国民投票法は項目ごとの賛否を定めている。「一括改憲」はできない。公明党は「加憲」であり、「一括改憲」の立場ではない。少なくても現状はそうだ。

さらに、改憲への議会内作業を進めるにあたって、安倍政府は「諸外国の理解」を得なければならない。衆議院憲法調査特別委員長の中山太郎は翌15日、東南アジア各国の駐日大使を集めて説明会をもった。安倍首相は積極的な働きかけを行ってきており、安倍政権と外務省は「国策」としてあらゆる外交資源を動員しようとするだろう。しかし、集団的自衛権を認め「自衛隊に代わる自衛軍」を持つという9条改憲の具体的な内容が、「戦後レジームからの脱却」と重なるとき、諸国ならびに民衆に様々な警戒と反発が持ち上がるのは当然のことだ。

中国、韓国からは今回、「冷静」ながらも明確な疑念が表明された。中国の国営通信は「日本が改憲へ第一歩を踏み出す」と題する長文記事を配信し、「多くの日本国民が9条改正と自衛軍昇格を憂慮している」と伝えたという。安倍政権との関係改善を築こうとする中国の政府と共産党が、9条改憲にフリーハンドを与えると考えることはできないし、民衆が黙っているはずはない。靖国参拝のように、内閣総理大臣と記帳しながら私人であるというごまかしや、外交問題になるなら明らかにしないという弁明が通用するはずもない。

問題は反対派の闘いにある。その運動の展開においても、主張においても、改憲諸勢力のごまかしや矛盾を突く闘いが求められている。国民の多数の支持を組織し、また諸国の民衆との平和共同戦線を築く努力が必要とされている。


●「郵政総選挙」の再現をねらう自民党−
憲法改悪反対派を1人でも多く送り出そう!

中川自民党幹事長は、「すべての党と候補者は、憲法改正に賛成か反対かを明らかにして参議院選挙を闘うべきだ」と強調している。小泉の郵政総選挙を想起させる。

民主党は民営化法案に反対した。小泉は巧みに「郵政民営化に賛成か反対か」と二者択一を迫った。民主党(の多数)は郵政民営化に反対ではない。岡田民主党はそこを突かれた。郵貯・簡保の民営化は我々の持論だなどと、途中から、後出しで小泉のしかけた土俵に乗った。ならば民営化(法案)に反対したのは改革つぶしの党利党略ではないか。民主党はこの批判をはねかえすことができず、小泉のしかけた「郵政問題」から敗走した。

自民党は改憲問題で同じ構図を引き出そうとしている。中川幹事長は社保庁をはじめとする公務員攻撃、小沢「党首力」攻撃とともに、憲法問題で連日のように民主党を挑発し、ゆさぶっている。「護憲の皮をかぶった改憲勢力の民主党」、「小沢代表は護憲か改憲か」、「憲法から逃げろという民主党の心の悲鳴」、等々。しかし、民主党はいまだ明快な対応を打ち出せないでいる。

一方、不仲がささやかれる関係ではあるが、安倍首相と中川幹事長は政府と党の両輪となって参院選挙に向かっている。官邸と参院自民党の対立も休戦状況だ。郵政造反議員問題も、政治資金不正も封じ込められようとしている。なにより自民党と公明党は、対立があっても、徹底した選挙ブロックとして機能している。


憲法改悪の発議は形式的には3年後に可能となった。憲法改悪を阻止する闘いはいよいよ正念場を迎えている。改憲手続法の成立後、最初の国政選挙が迫っている。

護憲勢力にも克服しなければならない問題が残されている。全国と地域から1人でも多くの憲法改悪反対派を送り出すことが現実の課題になっている。「憲法を争点とする」という安倍自民党の攻勢を許さず、憲法改悪反対・9条改憲阻止を訴えよう。


(注1)
●18項目のうち、読売新聞は要旨として次の9項目を掲載している。与党が強引に成立させた「国民投票法」が、現実の施行に耐えられないものであることが示されている。

1.成年年齢に関する公職選挙法、民法等の関連法令については、十分に国民の意見を反映させて検討を加えるとともに、法施行までに必要な法制上の措置を完了するように努める。
2.憲法改正原案の発議に当たり、内容に関する関連性の判断は、その判断基準を明らかにするとともに、外部有識者の意見も踏まえ、適切かつ慎重に行う。
3.低投票率により憲法改正の正当性に疑義が生じないように、憲法審査会で法施行までに最低投票率制度の意義・是非について検討を加える。
4.国民投票の結果告示は、棄権の意思が明確に表示されるよう白票の数も明示する。
5.公務員・教育者の地位利用による国民投票運動の規制は、意見表明の自由等を侵害することとならないよう特に慎重な運用を図る。
6.テレビ・ラジオの有料公告規制は、公平性を確保するためのメディア関係者の自主的な努力を尊重するとともに、法施行までに必要な検討を加える。
7.罰則の適用に当たっては、国民の憲法改正に関する意見表明・運動が萎縮し、制約されることのないよう慎重に運用する。
8.憲法審査会の審議に当たっては、少数会派にも十分配慮する。
9.憲法審査会においては、国民への情報提供に努め、国民の意見を反映するよう公聴会の実施、誓願審査の充実に努める。

●「最低投票率」に関して、読売社説は次のように主張している。

「一定の投票率に達しないと、国民投票自体を無効とする最低投票率制度の導入は、従来、共産、社民両党などが主張してきた。憲法改正を阻止するための方策という政治的な最が背景にある」、「衆院で否決された民主党提出の国民投票法案にも、最低投票率の規定はなかった。最低投票率制度の導入にこだわるべきではあるまい。」(15日社説)


(*注2)
堀田力・さわやか福祉財団理事長(元東京地検)は、9条問題の議論に関して次のように指摘している。

「9条問題は、他の問題と異なり、憲法の基本原則にかかわるものであり、また国民の生命にかかわるきわめて深刻な問題であって、国民の意見も激しく分裂している。これを他の問題と同じプロセスで扱うことは、議論を誤導する。憲法審査会は、議題を完全に分別して審議すべき」だ。

「危険なのは、国会議員が国民の意向を正しく反映していない現状にあることである。各種の世論調査を見ても、9条改正反対が国民の多数派であるのに、自民党議員は改正でまとめられており、民主党にも改正派が少なくない。そういう状況の中で、「自衛隊を実態に沿って軍と認めるか」「固有の権利である集団的自衛権を認めるか」という問題提起をすると、答えは形式論でイエスに引きずられやすい。」(河北新報5月15日)

■以上