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与党を過半数割れに追い込もう!
一人でも多くの改憲反対派を送り出そう!
<本号の記事>
◆規制改革会議、労働分野を見送る(第1次答申)
◆内閣支持率の急落と松岡大臣の死
◆社保庁「民営化」−労働組合攻撃を許すな!
★規制改革会議、労働分野の答申を見送る
5月30日、安倍政権下で新たにスタートした規制改革会議は第1次答申を公表した。注目の「労働分野」は見送られた。答申の目次には、4章の「再チャレンジ」が「雇用・就労分野」の1項のみの記述となっている。本来、ここには2項目として「労働分野」が入るはずだったという。
作業部会が21日に発表した「意見書」(*注)に政府内からも批判が出ていた。意見書は徹底した新自由主義に貫かれており、労働法制の抜本的な見直しを要求している。
「柳沢厚労相は22日の参院厚労委で『政府の一部門の末端の組織といえども、方向性において(政府方針と)まったく違うような意見表明をするのは適切さを欠いている』と批判。また、最低賃金の中長期的な引き上げを議論する政府の成長力底上げ戦略推進円卓会議に参加する連合からも『これでは円卓会議につき合えない』という反発も出たことで、政府内からも見送りを求める声が出ていた」(朝日新聞5月29日)
意見書には、解雇規制の見直し、派遣労働規制の緩和、最低賃金水準の現状維持などが具体的に盛られている。
最低賃金引き上げ問題に関して、「塩崎官房長官は21日の会見で、(意見書は)『引き上げ自体に反対をしているわけではないと思う」と述べ、政府方針との間に食い違いはないとの認識を示した」(朝日新聞5月22日)
けっきょく安倍政権はこれを見送ったが、参議院選挙への影響を危惧してのことである。この意見書は労働法制をめぐる攻防のこれからの焦点となっていくだろう。
(以下、続報)
(*注)「脱格差と活力をもたらす労働市場へ〜労働法制の抜本的見直しを〜」(5月21日)。規制改革会議の再チャレンジワーキンググループである労働タスクフォースが提出。福井秀夫・政策研究大学院大学教授らが中心となって作成したもの。
★内閣支持率の急落と松岡大臣の死
5月28日昼、松岡農水相が変死し、所轄署は自殺と断定した。詳細は公表されていないが、松岡大臣は事務所費問題と官製談合問題の双方で疑惑の渦中にあった。大臣をかばいつづけてきた安倍首相が、政治的にも道義的にも責任を負わねばならないことは明白だ。くしくもこの日の朝、毎日新聞と日経新聞は「内閣支持率の急落」を報じており、政界に激震が走るなかでの「自殺」であった。
安倍内閣と自民党は松岡大臣の事務所費問題を封印し、抜け道だらけの法案を通してお茶をにごし、「政治とカネ」をそれで切り抜けるはずだった。しかし一転して政局は流動化した。まさに「土・日曜をはさんで政界の風景が一変した」(毎日新聞29日)。
自民党議員はこの週末、地元に帰り、懸命の巻返しをはかっている。政府・与党を追撃し、参議院選挙の勝利めざして闘おう。
●松岡農林水産大臣の「自殺」
とかく疑惑の絶えなかった松岡の入閣は、首相の独断人事のなかでも驚きをもって受けとめられ、当初から行く末を案じる声が多かった。周囲の危惧は「事務所費問題」という形で現実のものとなった。安倍首相は松岡大臣をかばいつづけたが、「法律に従って説明を果たしている」という論法には説得力がなく、党内からも辞任を求める声は止まなかった。
本人は「適切に報告した」と何度も繰り返し、首相はそれを擁護する。野党もそれ以上の踏み込みはできない。そうした膠着した状況が続いていた。これで逃げ切れると安倍首相らは思っていただろう。だから、この問題だけでの「自殺」は不自然であり、「緑資源機構」の談合問題が追いつめたという理解がもっぱらだ。毎日新聞は法務・検察幹部の取材を通して、「松岡農相を『ターゲット』に据えていたことは確かだった」と報じている(5月29日)。
松岡大臣の周辺には官製談合の捜査が迫っていた。24日には緑資源機構の理事ら6人が逮捕され、松岡大臣はその責任をとって給与の3か月分を自主的に返納すると表明した。25日には地元の機構事務所や献金企業の関係先が家宅捜索を受けた。この日、記者会見で絶句する松岡大臣の異様な姿がテレビに映し出された。
松岡大臣に続いて29日、緑資源機構の前身である「森林開発公団」の元理事が変死した。松岡大臣の地元関係者を含めて、これで3人が相次いで死亡したことになる。
松岡大臣は最後まで説明責任を果たさなかった。残された「8通の遺書」の内容は公開されていないが、「私自身の不徳のいたすところで誠に申し訳ない。ご迷惑をかけておわび申し上げます」という記述があるという。真相は何も明らかになっていない。
●責任を回避する安倍首相
読売新聞は松岡大臣が死亡した28日、「安易に幕を引くべきではない」と題する社説を掲載していた。「安倍首相は従来、農相を擁護し続けてきたが、きちんと説明責任を果たすよう指示すべきだ。農相の説明がないままでは、いかに法律を改正しようとも、『政治とカネ』に対する国民の強い不信感を解消することはできない」。
松岡大臣の説明責任は安倍首相みずからが引き継ぎ、果たさなければならない。しかし、この問題から逃げ続けようとする首相の姿勢は、松岡が「自殺」するにいたっても変わらない。28日夕、記者団には次のように答えている。
(現職閣僚が自殺を選んだことについて)
「首相として責任を持って閣僚に任命した。責任の重さを改めてかみしめている」、「任命権者だから、当然首相として、私の内閣の閣僚の取った行動に対して責任を感じている」。
(責任をどのように果たすのか)
「農林水産分野の改革を進めて、農林水産業に携わる人たち、将来この分野に進もうという人たちに夢を与える。また、食の安全をしっかりと確保していくことで果たしていきたいと思っている」。
松岡の資金管理団体は政治資金収支報告書に事務所費として3千万超の多額の金を計上していた。この事実は組閣前に発覚していたことだ。にもかかわらず安倍は松岡を登用した。しかも疑惑が追及されるや、事実究明の声を封じる形で松岡大臣を擁護しつづけた。
首相は任命責任を認めたくない一心で松岡疑惑から逃げ回っているように見える。「それ見たことか」という批判に耐えられないのだろう。そのような政治姿勢は、一国の総理としてあまりにも狭量ではないか。
●真相の徹底究明を!
安倍首相はまた、「政治とカネの問題」について問われ、次のように答えた。
「緑資源機構に関しては、捜査当局から『松岡農相や関係者に対する取り調べを行ったという事実もないし、これから行う予定もない』という発言があったということを承知している。光熱費、事務所費の問題については、松岡さん個人の問題に帰することなく、われわれ政治家が襟を正していかなければいけない。そのためのルール作りをしっかりと行うことで責任を果たしていきたいと思う」。
これでは松岡疑惑の幕引きのみならず、検察への牽制である。総理大臣として許されるべき発言ではない。
石原慎太郎東京都知事は当日、「何が起きたかわからないが、死をもって償ったという意味では、彼もまた侍だったという気がする」と記者団に答えていた。問題は何を償ったのかということではないのか。それは問わないのが日本人だ、というのだろうか。
ジャーナリストの大谷昭宏は「内閣・議会の死を意味」すると述べている。「・・松岡氏の死は、動機を解明するだけですむ問題では断じてない。政治家の問題を政治の場で解決することができなかったのだ。それは、広い意味で言えば、内閣の死、ひいては日本の議会制民主主義の死を意味するはずだ」(河北新報30日)
まさに政治が問われている。事務所費問題と談合問題の双方で、徹底した真相究明を行うことは国会の責務であり、それを果たそうとしない政府・与党は厳しく糾弾されねばならないし、また民主党にも野党第一党としての責任が突きつけられている。
●急落した内閣支持率、「想像を絶する結果」
松岡大臣が「自殺」した当日、28日の毎日新聞と日経新聞はともに「内閣支持率の急落」を報じていた(*注)。この傾向は翌日に公表された朝日新聞の調査でも同様であった。
毎日新聞は「内閣支持率、急落32%、政権発足後最低」「参院選、民主に期待が42%、自民33%で初の逆転」と一面トップで報道し、青木参議院自民党の「想像を絶する結果だ。年金問題以外に理由は考えられない」という発言を掲載した(3紙の調査はそれぞれ「松岡大臣自殺」以前に行われている)。
中川幹事長のホームページは毎日、日経、朝日の調査結果にふれていない。中川サイトはこれまで世論調査の動向を克明に追い、分析を続けてきた。支持率の下げどまりと回復傾向に関して「油断は禁物である」と<余裕>のコメントをしていたほどだ(5月16日、朝日新聞の調査を評して)。それだけに中川の沈黙は衝撃の大きさを物語っている。
安倍政権は国会審議の当初、「5千万件の年金記録の不明」について深刻にはとらえていなかった。政府・与党の関心は社会保険庁の解体−「民営化」を強行することである。彼らの方針からすれば、年金業務の再構築は新たに設置される非公務員組織で、選別・再雇用された職員によって担われることになるからだ。首相は実際、衆議院本会議では、不明な年金記録のすべてを再調査することは現実的ではないと答弁していた。
それが一転したのは5月22日の参考人発言からだった。ここで「消えた年金」がリアルな問題としてクローズアップされた。守勢に回った安倍首相は、民主党議員の追及に対して、「年金制度への不安をあおってはいけない」と声を荒げた。その場面はテレビで集中的に放映された。政府・与党はここにいたって方針の急転換に追い込まれた。年金記録の5年時効を撤廃し、5千万件を1年以内に照合して名寄せを完了するという実効性も定かでない法案が、まさに「突貫工事」で準備された。
3紙の世論調査が「内閣支持率急落」を示したのは、まさにこのタイミングであった。教育3法に続いて改憲手続法案を通した安倍政権への強硬姿勢や絶対多数のおごりに対する反発も背景にあっただろう。毎日、日経の調査結果は報道の前日には政界をかけめぐっていたという。「27日夕、首相は日曜日にもかかわらず中川幹事長に電話を入れ、年金支給漏れ救済のための議員立法を今国会に提出するよう指示した。会期末は6月23日。与党の当初方針では、この法案は次期国会に提出されることになっていた」(毎日新聞29日)。
民衆の年金不信は底深い。3年前、参議院選挙は小泉首相の「人生いろいろ」発言に抗議を突きつけた。安倍は自民党幹事長として敗北の責任をとらされたのだった。安倍首相には3年前の「悪夢」がよみがえっていたに違いない。
(*注)
■毎日新聞(5月26、27日調査)
<内閣支持率( )内は前回4月調査>
・支持する 32%(43%)
・支持しない 44%(33%)
・関心がない 22%(23%)
<参院選挙の投票の際、最も重視するもの>
@年金28% A教育19 B憲法14 C格差13 D政治とカネ12
■日経新聞(5月25〜27日調査)
<内閣支持率>
4月から12ポイント急落し、最低を記録。2か月ぶりに不支持が上回る。
・支持する 41%(53%)
・支持しない 44%(37%)
・わからない 15%(11%)
<内閣の仕事ぶりを評価するか>
・評価する 33%(42%)
・評価しない 49%(42%)
<参議院選挙の争点は>
@社会保障56% A政治とカネ30 B教育改革29 以下、格差、外交・安全保障等が続き、憲法はFで15%
<どのような政権がのぞましいか>
自民・公明19% 自民単独10 自民・民主の一部による連立30 民主中心の非自民連立24
■朝日新聞(参議院選挙に向けた連続世論調査の第3回結果/26、27日電話/前回は5月19、20日)
<内閣支持率>
・支持する 36%(44%)
・支持しない 42%(36%)
●「社保庁は国鉄と同じ」−労働組合攻撃を許すな!
5月30日、党首討論の場で巻返しをはかった安倍総裁は、「年金問題の背景には社保庁の労使慣行がある」と言明した。かつての「親方日の丸の国鉄」と同様、社保庁の問題は労働組合(*注)にある、という断定である。
事態の急変を受けて、自民党本部は急きょチラシを作成し、週末の土曜、日曜に地元に帰り、全国で労働組合と民主党を攻撃せよと議員に指示した。そのチラシには「基礎年金番号を設計・導入した平成8年3月〜10月の大臣は菅直人」であるという主張とならんで、労働組合への全面的な攻撃がなされている。
「与党は、社会保険庁を解体し、「日本年金機構」として非公務員化する。旧社会保険庁の職員をいったん退職させて、まじめに仕事をする人だけを再雇用する。主な業務は民間委託するので、税金はぐっとかからなくなる」。
「民間ではありえない常識はずれの労働慣行を当局に認めさせた社保庁の労働組合=自治労国費評議会は、民主党の最大の支持母体です。政府・与党はどこに責任があるのか過去にさかのぼって徹底的な検証を行っていきます。民主党は公務員の労働組合を守るため、社保庁改革に反対しています」。
この主張は中川自民党幹事長が社保庁解体の核心として昨年から繰り返し述べてきたことだ。安倍首相と自民党はいま、このような労働組合攻撃を全面化させ、「年金不信」への民衆の怒りをそらそうと躍起になっている。
一方、政府・自民党の悪意に満ちたキャンペーンに比して、攻撃にさらされている社会保険庁の労働組合の見解は、残念ながら国民には届いていないのが現状だ。またメディアも労働組合の主張を報道していない。そのような中での一方的な労働組合攻撃が政府・自民党によってなされ、メディアがそのような風潮を増幅しているのである。
労働組合を敵視し、労働組合をつぶせば事は解決するという立場は、問題の本質をそらし、ねじまげ、公共性や公正性を犠牲にする。そのことは2年前のJR西日本の惨事が示したことであった。
もちろん、労働組合は組合員の生活と権利を守ると同時に、社会的サービスや公正に労働組合としての責任をもつ。労働組合はみずからの社会的責務として、ときには当局や経営側と対立しながら安全や公正のために闘わねばならない。労働組合としてのこのような社会的責任もまた、2年前のJR西日本の惨事であらためて問われたことである。
<社会保険庁問題はかつての国鉄と同様、労働組合問題だ><だから国鉄と同じく、民営化が社保庁改革の核心だ>。このような政府・自民党や自称改革派の主張を許してはならない。
社会保険庁解体と同様、教育改革、あるいは過疎地の医師対策など、政府・与党は参議院選挙のための施策を打ち出している。それらの大半は現場を考慮していない場当たり的なものであり、指示・命令をふりかざした「現場いじり」が横行している。
たとえば教育再生会議の担当室事務局長である山谷えり子(首相補佐官)は「徳育」への疑問に対して次のように説明した。「5、4、3、2、1の点数はつけない。教科だが評価はつけない。そこは現場の創意工夫でやってもらいたい」(31日、NHKニュース9のゲストで)。これでは現場の混乱は明らかだ。しかも、点数はつけなくてもなんらかの評価や指導が要求されるなら、現場はどうすればいいのか。対応に悩み、精神的にも追い込まれ、あげくのはてに「ダメ教員」の烙印を押される。これでどんな教育再生が可能なのか。
「地方の医者不足対策」もそうだ。自民党の参議院選挙の目玉として急浮上したものであり、地方の悲鳴が自民党議員をつきあげている。だが、地方の医療崩壊は医療に市場競争を導入した当然の帰結である。都市部の有名病院に医師が集まるのは必然なのだ。その政策を見直すことなしに、「市場競争に反する」派遣を割当てるわけだ。現場はどのような基準で派遣医師を選定するのか、まったくの場当たりだといわざるをえない。
社会保険庁の解体−「民営化」に反対しよう!
労働組合攻撃、差別・選別・再雇用攻撃を許すな!
(*注)
◎自治労国費評議会
「・社会保険庁の職員のうち社会保険事務所等の地方組織に勤務する職員は、地方事務官であったことから、自治労各都道府県本部の下に置かれた都道府県職員労働組合社会保険支部等に加入し、その支部等は、自治労本部の補助機関である国費評議会に参加していた」
「・地方事務官制度は、地方分権推進一括法の施行により、平成12年4月に廃止され、地方事務官は厚生事務官となったが、施行日から7年間に限り、都道府県職員の職員団体に加入することができる等の経過措置が設けられた」
(社会保険庁ホームページ、「職員団体の概要」より抜粋)
◎全国社会保険職員労働組合
「2000年の地方分権一括法施行により、社会保険行政と職員の身分は国に一元化されたが、労働組合に関しては07年3月末までの経過措置で県職労への加入が認められてきた。この経過措置終了により、国費評議会は団結強化のために全国一本の単一労働組合を設立することを決定。3月10日、東京で全国社会保険職員労働組合結成大会を開催した。大会では、新単組としての「運動の基本理念と目的」や「基本的な活動と役割」などについて議案審議を行い、すべての議案について、満場一致で可決・確認された。/・・全国社保労組の上部団体を全日本自治団体労働組合(自治労)とすることが改めて確認された。/社会保険庁改革については、年金運営組織を非公務員型公法人とする法案が閣議決定され、組合員の雇用と生活を守るたたかいはこれからが正念場となる。厳しい情勢に立ち向かうため、全国社保労組は1万1千人組合員の結集で、新たな第一歩を踏み出した」(自治労新聞2007年3月21日号より)
◎全厚生職員労働組合(全厚生)
社会保険庁にはもう一つの労働組合があり、全厚生は国公労連に参加している。その主張が朝日新聞に掲載されたことがある(「社保庁解体/年金の商品化でいいのか」06年12月23日付「私の視点」)。
■以上

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