宮城全労協ニュース/第95号(電子版)/2007年9月5日

<本号の内容>
◎安倍改造内閣、1週間で農水大臣が辞任
◎宮城合同労組、全面勝利!
(解雇無効−雇用確認・不払い残業代請求裁判)
◎宮城全労協パンフレットの紹介


<安倍政権を追いつめよう!>

●あきれはてた政治腐敗と軽薄人事

9月3日、遠藤農水大臣が辞任した。一連の「事務所費」問題とは異なり、公的補助金の不正取得だった。遠藤大臣が組合長をつとめる農業共済組合が、水増し請求という違法な手段によって国の補助金を受給していた。あろうことか、3年前に会計検査院から指摘されていたにもかかわらず、不正受給は放置されたままだったというのだ。第2次安倍内閣が「背水の陣」で出発してわずか1週間の出来事だった。

自民党執行部は政治資金の洗い直しを全議員に求めていた。とくに大臣候補には自主的な点検がいわば義務づけられた。その結果、内閣改造直前になって政治資金収支報告書の「駆け込み訂正」が相次いだ。しかし訂正は改造後も続いている。「事務的ミス」という弁明が通用しない事例は遠藤大臣だけにとどまらない可能性がある。第二の遠藤事件がいつ飛び出しても不思議ではない。政府与党さえそう思っているだろう。

安倍の「美しい国づくり」が空々しく響く。国民に「規範」を要求するなら、政権党と内閣が自らを律するのは当然のことだ。政治的特権、不正や利益誘導に対してはとくに厳しくあるべきだ。安倍政権はそうではなかった。昨秋の郵政造反組の復党は、安倍の「仲間内政治」を印象づけた。当初の「清新なイメージ」はいつの間にか失せていった。そして松岡疑惑への対応に人々は疑念と失望をつのらせ、安倍への期待感は急速にしぼんでいった。

安倍首相は<政治とカネ>の問題に真面目に取り組もうとしなかった。そのような指導者が「美しい国」と言ったり、教育改革を叫んだり、「規範」を持ち出すのは、いかにも嘘っぽく滑稽なことでさえある。安倍政権は問題を軽視し、自民党の内向きな対策、政権維持のための小手先の対応に終始した。スキャンダルの許されない内閣改造にあたっても同様であった。けっきょくツケが安倍政権に回った。


●さらけだした安倍首相の無能力

遠藤大臣の辞任劇は安倍首相の無能力を浮き立たせた。改造直後の世論調査は内閣支持率の上昇を示し(*注)、「ご祝儀相場」であれ、政府・与党にとっては期待感をつなぐものであった。その矢先の大失態である。首相の求心力低下はさけられず、政権存続の危機に直結しかねない事態だ。

安倍首相は早々と続投を宣言し、いったんは安倍降ろしを封じた。改造内閣のポストをちらつかせたのは言うまでもない。いっぽう党内外から即断人事を求める声もあがっていた。<テロ特措法の延長が参議院で否決される可能性が高く、十分な審議時間を確保するために国会を早期に開くべきだ>。安倍首相はこのような「国益優先」論に対して政権維持を優先させた。「身体検査」と称される調査に1か月が費やされた。とくに「鬼門」とされた農水大臣候補には万全の調査がなされたはずだった。

しかし組閣後の記者会見で首相は、「政治とカネ」の問題で説明ができなかったら内閣を去る覚悟で引き受けてもらっていると、あくまでも本人責任を強調した。調査に自信が持てない、任命責任は回避したい、という本音が透けていた。遠藤議員は大臣指名を受けた8月27日、「最後に農水だけが残った、ここにだけは来たくなかった」と記者団に露骨に語った。こんな発言が許されるはずはない。テレビでこのシーンを見た人々は、安倍首相の権威が失墜しているだけでなく、この内閣にはデタラメがあると思ったにちがいない。

実際、遠藤大臣は30日、補助金を交付された協同組合から自民党支部が不適切な献金を受けていたとして、政治資金収支報告書を訂正した。その2日後には共済組合の不正が発覚した。安倍首相サイドは会計検査院から指摘されて3年間も放置されている事実をつかんでいなかったし、遠藤議員も首相に報告しなかったのだ。こうして1か月をかけた調査は吹き飛んだ。

そもそも農業補助金の受給と選挙での集票は密接にからんでいたはずだ。そこには政治と行政の構造的な癒着の問題があるはずだ。そのような議員を登用すること自体が任命権者として失格なのだ。


●「PTA内閣」の実態

安倍首相はこの辞任問題で明確な態度をとらなかった。与謝野官房長官は、「改造の後になってたまたま見つかった」「閣僚がどうしようと総理の下に駆け込むのはいけない」と安倍首相をかばってみせたが、それは表向きのことだろう。報道各社は一様に、「首相は蚊帳の外」「首相抜きの辞任劇」だったと報じている。大臣を辞職させたのは与謝野と麻生自民党幹事長であった。このままでは国会審議を切り抜けることはできないと判断した与謝野と麻生は、首相に主導権を与えることなく、大臣辞任を取り仕切ったのだろう。首相の役割は辞任を追認して事後処理にあたることだった。

自民党は安倍首相に参院選大敗の「総括文書」をたたきつけ、政権運営と政策双方の修正・転換を迫った。安倍チームの独走を許さず、党内バランスを復活させ、内閣改造による「人心一新」の効果によって党組織を立て直し、目前の国会審議を乗り切ろうということだった。政権維持にしがみつく安倍首相は、人気の高い舛添議員を取り込んだり、安倍人脈を残したり、バランスのなかにも「安倍らしさ」を残そうと腐心した。こうして、基本路線は正しいと強弁する首相のもとに、小泉−竹中路線や安倍の美しい国づくり路線とは政策的に異なった人物が重要閣僚ポストを占めるという内閣改造が行われた。とにもかくにも安倍のほかに適任者がいないという消極的理由であり、権力闘争の火種を抱えながらのスタートだった。

安倍にまかせていては内閣と党の崩壊的危機に対処できない。与謝野たちの言動は、そういう現実判断に基づいている。参議院選挙のなかで、「裸の王様」という言葉が党内から飛び出した。取り巻きたちに囲まれて正しい情報が伝えられていない、あるいは、首相は民意を理解していないという痛烈な批判だった。今回の事態が示したのは、「裸の王様」どころか、もはや首相は「お飾り」になっているということだ。


●浮き足立つ自民党と試される民主党

遠藤大臣が辞任した3日、坂本外務政務官も政治活動費の領収書の二重計上を認めて辞任した。同じく玉沢元農相は五重計上によって離党した。

さらに5日には読売新聞が、鴨下環境相の資金管理団体に説明できない借入金があるとスクープした。1千万の借入金が200万しか記載されておらず、800万円が説明不能となっているというのだ。

政治資金収支報告書の訂正にいたっては、高村防衛大臣をはじめ、もはや珍しくもないほどだ。多くの場合、ミスと不正の境目ははっきりしていない。

大臣辞任のその日、自民党宮城県連の古川支部は安倍首相の早期退陣を求める申し入れ書を提出した。宮城県連は2001年、当時の森首相を批判するテレビCMを流したことで名をはせたことがある。申し入れ書は「閣僚不祥事に対する拙速な対応で指導力不足が露呈した」「自らの戦術で参院選に敗れた事実を受けとめるべきだ」と指摘しているという。「農村部で党への不満が強い。コメの値段は下がる一方で、政府は零細農家を切り捨てて集落営農を強いる。内閣改造による支持率上昇もご祝儀相場にすぎない。反省してもらわなければ地方組織は持たない」という、古川支部長(大崎市議)の談話も伝えられている。自民党の地方組織の悲鳴が噴き出している。

安倍首相のもとでは総選挙は闘えないという強烈な危機感が自民党を覆いはじめている。週明けの10日には国会が召集される。民主党は対決姿勢を強調しており、参議院を中心に社民党、共産党を含めた野党共闘の動きも強まっている。衆参のねじれ状態のなかで、国会の緊迫は必至であり、一触即発の政局が続く。

自民党は民主党に協調を呼びかけ、テロ特措法など法案修正を飲むと公言している。経済界は「責任ある対応」を民主党に求めている。メディアや評論家たちの多くも、大連立や政策的妥協を口々に語っている。水面下では当然、自民・民主をまきこんだ「政界再編」の試みもあるだろう。解散・総選挙のタイミングをにらんで、政権交替の可能性をかけた攻防が続く。それは左派労働運動の真価が問われる局面でもある。


政府・自民党の政治腐敗を糾弾し、安倍改造内閣をさらに追いつめよう!
テロ特措法の延長を阻止しよう!
(9月5日)


(注)8月29日、改造内閣に対する緊急世論調査が各紙で公表された。内閣支持率は一様に上昇したが、読売を除いて、それでも不支持は支持を上回っているか拮抗している。また党派支持率では、逆に朝日を除いて、民主党と自民党は拮抗している。焦点のテロ特措法延長は反対が多数。以下は主な内容。

カッコ内は前回(参院選直後〜8月上旬)調査、小数点以下は四捨五入。

■内閣支持率/支持する−支持しない
◎朝日33(26)−53(60)
◎読売44(32)−36(60)
◎毎日33(22)−52(65)
◎日経41(28)−40(63)
◎共同41(29)−46(32)

■政党支持率(日経は「支持ないし好意を持つ政党」)
自民/朝日25(21) 読売32 毎日26(17) 日経35(29)
民主/朝日32(34) 読売31 毎日26(33) 日経36(44)
公明は各紙で3〜5%、共産2〜3%、社民1〜2%

■各紙の論調
◎朝日 改造内閣、支持33%、不支持なお53%。テロ特延長反対53%
◎読売 改造内閣、支持44%。期待できる55%。小都市・町村で顕著、女性も大幅アップ
◎毎日 内閣支持33%、不支持52%。改造評価は二分。7割、長期政権望まず。
◎日経 改造内閣、一定の評価。続投判断には厳しい見方も。

■その他
<テロ特措法延長に賛成−反対>
◎朝日35−53
◎日経30−53
◎共同39−48

<衆議院の解散・総選挙>
◎読売 できるだけ早く39、急ぐ必要はない53
◎毎日 解散して信を問え53、解散の必要はない43
◎日経 ただちに解散10、年内24、予算成立後21、急ぐ必要なし31
◎共同 年内30、来年前半までに29

◎朝日(安倍は任期切れまで首相を続けて良いか)
続けて良い41、そうは思わない47
◎毎日(安倍はいつまで政権を担当すべきか)
今すぐ辞める23、年内25、1年ぐらい23、できるだけ長く25

◎朝日 舛添厚労相に期待する73% 増田総務相に期待する41%



解雇無効−雇用確認・不払い残業代請求裁判に全面勝利!
(宮城合同労組)

2005年8月、医療機器販売会社・日本メディカルプロダクツ仙台支店の営業員、Aさんが立ち上げ間もない支店の業績不振を理由に不当解雇され、宮城合同労組に加入して闘いが始まりました。仙台地裁に対し地位確認とともに不払い残業代を請求した裁判は今年3月結審し、2度の判決日延期を経て8月3日判決公判が開催されました。

そして、待ちに待った判決。
◆原告と被告会社の雇用関係を確認する。
◆賃金・賞与のバックペイ及び毎月の賃金及び7月と12月の年2回の賞与払い。
◆不払い残業代について請求額全部の支払い。

これらの判決内容は裁判所が原告側の請求を100%認めたもので、文字通りの全面勝訴となりました。

原告側は新設の労基法18条の2(解雇の合理性・相当性)を武器に仮処分決定を引き出し有利に闘いを進めてきました。また、本訴における賞与の請求は「賞与3ヵ月以上」と記載した求人票と前年支給実績を根拠に行いました。さらに不払い残業代については、毎夜支店を撮影し証拠提出して恒常的残業の事実を立証しました。

会社が控訴して高裁における闘いが予想されますが、原告を先頭に今後も徹底して闘い抜く決意です。

全国の仲間たちのご支援、よろしくお願いします

(宮城合同労働組合)


(注)
宮城合同労組は労働相談活動を継続している。9月2日に開催された第47回定期大会でも労働相談活動の報告がなされた。その簡単な内容紹介を議案書から引用する。

「・・毎月10〜15件ほどの電話相談が組合本部に寄せられている。相談内容は不当解雇、解雇予告手当、サービス残業、賃金未払いが多い。また、相談を寄せる労働者については、2〜3ケ月目で解雇されたとか、勤務年数の少ない労働者が増えている。この原因は、非正規の不安定雇用労働者の増加にあると思われる。

最近解決したのは歯科技工士の未払い残業代の和解、医院を解雇された労働者の和解、書店を不当解雇された労働者の職場復帰などである。

現在、いくつかの解雇予告手当・未払い残業代、不当解雇・未払い賃金などの事案に取り組んでいる。」(権利センターみやぎ・労働相談報告より)

権利センターみやぎの「労働相談ホットライン」では
◆賃金・雇用ほか労働条件の無料アドバイス
◆組合加入・会社との交渉等、労働者の権利の相談室
の活動に取り組んでいる。



全労協春闘パンフレットの紹介

宮城全労協の07春闘討論集会(2007年3月16日)でなされた講演録を発刊しました。内容は次のとおりです。なお、当ホームページにも近々掲載の予定です。


■テーマ:『希望の国』の正体と新しい労働運動の挑戦     
−日本経団連・御手洗ビジョンを批判する−
■講師:遠藤一郎/宮城合同労組書記長      
                             
<目次>
1.日本経団連の『希望の国、日本』(御手洗ビジョン)を批判する
◎07春闘への経営側の方針
◎『希望の国、日本』(御手洗ビジョン)とは?
◎御手洗・キャノンの「偽装請負」と「労働ビッグバン」

2.労働者はどのような状態に置かれているか
◎史上最長の景気持続、史上空前の企業利益
◎労働者の置かれている状況(いくつかの統計数値から)

3.進行する労働法改悪
◎時間外割増について
◎先送りされたもの
◎御手洗の「一周遅れの新自由主義」

4.労働運動、反撃の視点
◎「死ぬのがいやなら組織せよ!」
◎憲法改悪と関連させた反撃を
◎現場の怒りと結びつけた闘いを構築しよう
◎新自由主義グローバリズム反対の闘いと結合して

<資料>
労働ビッグバンと対決し、労働法制改悪を阻止しよう
(全労協機関紙 2007年2月16日号/全労協常任幹事 遠藤一郎)

◎産別最賃廃止が本質の再賃法改定
◎パート労働者の分断固定化/パート労働法改定
◎時間外割増は80時間を超えて50%プラス
◎これでは過労死労働促進法だ


(注)御手洗ビジョン『希望の国、日本』(07年1月1日)

(はじめに)

第1章 今後10年間に予想される潮流変化
1.グローバル化のさらなる進展
2.人口減少と少子高齢化の進行

第2章 めざす国のかたち
1.精神面を含めより豊かな生活
2.開かれた機会、公正な競争に支えられた社会
3.世界から尊敬され親しみを持たれる国

第3章 「希望の国」の実現に向けた優先課題
1.新しい成長エンジンに点火する
2.アジアとともに世界を支える
3.政府の役割を再定義する
4.道州制、労働市場改革により暮らしを変える
5.教育を再生し、社会の絆を固くする

第4章 今後5年間に重点的に講じるべき方策

第5章 2015年の日本の経済・産業構造

(おわりに)

アクションプログラム2011

■以上