宮城全労協ニュース/第96号(電子版)/2007年9月28日

◎10月1日、「郵政私有化」の強行を糾弾しよう!
◎テロ特措法−インド洋上の給油新法に反対しよう!
◎舛添厚労大臣の「家族だんらん法」発言を許すな!


安倍政権の崩壊から自公政権を倒す闘いへ!

●自民党による「政治空白」を糾弾する

唐突な辞意の表明だった。開始寸前だった野党の代表質問は中止され、その後の委員会審議もとまった。自民党は総裁選挙を実施して福田康夫元官房長官を新総裁に選出した。自民党はこの政治スキャンダルを「世論ロンダリング(洗浄)」のために利用し、総裁選を国民的行事であるかのように演出した。

自民党がこの異常事態に独占的に進めた政治過程に、私たちは抗議する。これは無責任な政権の投げ出しである。その安倍首相の続投を決めたのは自民党であり追認したのは公明党だ。まさに「政権を返上すべき不祥事」(日経新聞コラム)である。解散・総選挙を早期実施するために与野党合意の「選挙管理内閣」を組織するか、そうでなければ野党に政権を委ねるべき事態なのだ。

続投宣言から1か月、安倍首相は8月27日に改造内閣を発足させ、9月8日、9日にはAPEC首脳会議に出席して「テロ特措法延長は国際公約」だと記者会見し、10日に臨時国会での所信表明を行った。直後の12日、突然の辞任である。そのタイミングは最初の国会論戦である代表質問から逃げ出したというほかない。

辞任の記者会見はだれもが納得できないものだった。小沢民主党代表に会見を申し入れたが断られた、局面を打開するために辞任するというのだ。「国民への謝罪」は一言もなかった。自民党内からも説明になっていないと批判が噴出した。

翌日、首相は「公務の緊張状態を続ける」ことは無理との理由で入院した。病状説明も釈然としないものだった。政府は臨時代理を置かず、国会は止まった。1日3億円といわれる税金が捨てられた。辞任から新首相指名まで13日間、参院選の大敗から2か月あまりの政治空白である。

24日、病院での記者会見では一転して「体調の変化が辞任を決意した最大の要因」だとなった。「戦後生まれのプリンス」「改憲のホープ」と持ち上げられて政権の座についた安倍は、けっきょく自分の政治的敗北を最後まで認めることはなかった。


●安倍首相の敗北と残された「遺産」

安倍首相は敗北した。参議院選挙で示された民衆の意思が安倍政治を倒した。

「このままでは衆議院選挙を闘えない」。与党内に危機感が高まっていた。衝撃の政変劇だったが、安倍の辞任は自民、公明に「局面打開」のチャンスを与えた。政権の交替によって、安倍時代の「清算」が進んでいる。安倍が自民党総裁に選出されたのは「参議院選挙の顔」としてであった。参院選大敗によって安倍が「使い捨て」となるのは当然のことだろう。

「理念に走りすぎ、国民生活を軽視した」。安倍を押し上げた人々からも批判が高まっている。「そもそも資質がなかった」という発言すら飛び出している。にもかかわらず、そのような身内の批判が「安倍の1年間」を否定しているわけではない。敗北したが、安倍が大きな功績をあげたことは明らかだ。

改正教育基本法と教育関連3法、防衛庁省昇格法、国民投票法、社会保険庁改革法。旧来の常識によれば1内閣1法案の重みを持つものばかりだ。衆議院で圧倒的な議席を確保した小泉後継政権でなければ、わずか1年でこれほどの重要対決法案を通すことはできなかっただろう。安倍は右派勢力(民主党内を含めて)の攻撃の橋頭堡をこれらの法律の形で残した。中途に終わったが労働法制改悪もこれに加わる。

福田首相は安倍とは異なった政治手法をとるだろう。米政権でネオコン勢力がそがれていったように、安倍を支えた右派の影響力は福田政権のもとでは排除されていくだろう。しかし、自民党はあくまで「安倍の遺産」を保持しており、安倍政治を本当に清算するための闘いが問われている。


●麻生の善戦と福田大連合政権の出発

辞任表明から総裁選の過程は不透明なものだった。「安倍辞任の真相」であるとか「麻生のクーデター説」など様々な憶測が飛びかったが、いずれも真偽は不明だ。自分の選挙利害を丸出しにした議員たちの動きも醜悪を極めた。とくに「小泉チルドレン」たちは、さながら政局の小道具のように右往左往した。

福田政権の誕生はいわゆる「振り子」の作用が働いた結果である。「参院選前から周到準備」(読売新聞)していたかは定かでないが、福田は有力な代替案としてストックされていた。自民党は「安定」と「協調」を旗印にして当面の危機を打開するという緊急避難の安全運転を選択した。

しかし、福田のかつぎ出しは派閥政治によってなされた。総裁派閥の思惑と、小泉によって「抵抗勢力」とされ安倍政権で冷遇された少数派閥の思惑が合致した。先行した麻生に対して、一夜にして福田大連合が成立した。波乱要因であった小泉は福田支持を表明し、安倍政権失態の連帯責任を回避した。清和会は森、小泉、安倍に続いて4代続けて最高権力の座を手にした。福田は党4役に派閥の長を据えて大連合に報いた。

そのような動きは「派閥政治の復活」「古い自民党への逆行」という批判を生み、パフォーマンス能力への期待とあいまって、都道府県票を含めて麻生に予想以上の票を与える結果となった。福田支持8派閥は所属議員と無所属議員291人から確認をとった(毎日新聞)が、実際の票は254にとどまった。各紙の直前予想もみな外れた。大逆転にはいたらなかったが、16人の小派閥である麻生が132人の国会議員票と地方票の46%を得たことは、福田陣営にとって予想外であり、抗争の火種が残った。

ねじれ国会の首相指名選挙では、参議院で野党共同投票により小沢民主党代表が選出され、法律にしたがって福田首相が誕生した。福田は「背水の陣」で危機に立ち向かうこと、年金問題をはじめ「失われた政府への信頼、国家への信頼を取り戻す」ために一つ一つ懸案を解決していくと表明した。こうして安倍内閣の閣僚を引き継いだ緊急事態内閣がスタートした。

参議院多数派を失った政府・与党は、とにもかくにも臨時国会を乗り切り、予算を成立させねばならない。福田は自前の内閣改造を果たすかもしれないし、「あやつられた首相」として権力を行使できずに漂流するかもしれない。いずれにしても解散・総選挙のタイミングをにらんだ政局が臨時国会から始まる。


●福田の「アジア重視外交」

福田と麻生は総裁選で、外交政策に関して違いをぶつけあった。麻生は「自虐史観に基づく歴史観は自分の哲学とはあわない」と福田を批判した。福田は「すぐに自虐史観として切り捨てることは問題だ」と反論し、首相として靖国参拝をすることはないと明言した。「拉致問題」でも「圧力と対話」の関係をめぐって対立した。

福田政権は日本外交の新展開をもたらすだろうか。

安倍政権は「北朝鮮危機」に乗って上昇した。「拉致問題」に加え、就任直後の訪中タイミングにあわせて「ミサイル発射問題」が起きた。核ミサイルが日本列島を襲うという危機意識が意図的に作り出され、安倍はその危機感に依拠した。しかし、小泉の外交負債を背負った安倍は、いっぽうでは中国・韓国との関係であいまい主義をとらざるをえなかった。今年の8月15日、靖国神社に参拝した閣僚は安倍の同志1人だけである。

「仮に私が勝っても、首相の靖国神社参拝を推進している勢力は、参拝反対の私を攻撃し続けるだろう。彼らは執拗だから。負けた場合も非難はやまないだろう。いずれにしても、靖国問題で自民党内を二分するのは良くない」。1年前の総裁選に出馬しなかった理由を福田はこのように語っていたという(朝日新聞編集委員・星浩、9月19日付)。

前任者の小泉はブッシュの戦争を支持することで求心力を増した。いまやブッシュの失敗は明らかだ。6か国協議でも米朝関係は変化し、日本の「孤立」が進んだ。日米関係にさえ危うさが漂っている。米国は、麻生の「自由と繁栄の弧」路線がいたずらに中国を刺激しないかと懸念を表明した。ことさら日中関係を悪化させる必要は日本の財界にもないし、この点では麻生より福田が好ましいことになる。

福田は安倍政権が残した装置、安保懇談会や教育再生会議などの軌道修正に乗り出すだろう。とはいえ、福田によって日本外交が大きく変容することになるのだろうか。また福田にそのような余裕があるだろうか。短命であれば政策展開は限定的なものにならざるをえないが、それでも福田は外交でなんらかの得点をあげようとするだろう。ともかく、まずテロ特措法に関して、福田首相が日米同盟にどのようなスタンスをとるのか。そして米国が福田政権に対してどのようなスタンスをとるか。それが最初である。


●問われる「小泉−竹中改革路線」

安倍は小泉のもう一つの負債を背負って出発した。郵政法案を通して以降の1年間、「小泉改革」は大きな成果をあげることはなかった。「改革の影」「格差問題」を放置できないことはもはや明らかだった。

中川幹事長は「安倍は市場原理主義者ではない」と強調したが、実際の政策は中途半端だった。「再チャレンジ」が典型である。安倍の関心は<新自由主義による傷みを国家主義的理念によっていやす>ことにあった。<家長主義>的に国民を「美しい国」に引き連れていくという夢が安倍をとらえていた。

福田は「小泉改革を引き継ぐ」というが、どのように引き継ぐというのか。財界が求める「構造改革路線の継続」と、参院選挙が突きつけた「格差是正」要求にどのように折り合いをつけるのか。麻生と福田の論争もこの点でははっきりしていない。福田内閣の陣容も、福田に投票した議員たちも、「改革」に関して呉越同舟の寄せ集めである。

竹中は「復古政治の跋扈を許すな」と総裁選論争、とくに「地方格差問題」に注文をつけた。新自由主義陣営からの「一層の改革」論である。

「グローバル化の影におびえ、既得権益を擁護する流れが強まっている。新政権はこうした復古政治の跋扈を許さぬように踏張るべきだ。小泉構造改革の「余熱」で何とか支えられている日本経済を活性化するカギは、農業改革や分権推進をテコにした地方が握っている。」

「地方経済の疲弊はあくまで<グローバル化の影>であり、これを解決するためにこそ、一層の構造改革が必要なのだ。地方の疲弊は改革が不十分だからである。・・『優しさとぬくもり』『きずな』などの表現はあくまで政治的スローガンだ。具体的にどんな政策を行うのか、何の説明もなされていない。こうした口当たりのいい表現で、一時しのぎの財政拡大や、かつての既得権益者(強者)を守る政策に回帰してはならない」(日経新聞9月18日)。

「改革なくして成長なし」(小泉)、「成長なくして改革なし」(安倍)に対して、福田が持ち出したのは「信頼なくして改革なし」である。参院選大敗を突きつけられたいま、福田であれ麻生であれ、市場競争万能論は採用できないはずだ。弱肉強食の市場原理、3万人の自殺でさえ改革の成果だといわんばかりの「痛み」を是とするのか。福田政権は「小泉−竹中改革」=新自由主義政策を見直すのか、小手先の修正でお茶を濁すのか。

同じことは民主党にも問われている。不毛な「改革」論議ではなく、経済社会政策の転換が求められている。


テロ特措法、インド洋給油新法と対決しよう

福田内閣の発足を受けて、報道各紙は27日、一斉に緊急世論調査の結果を公表した(注)。「まずは順風、安定感に期待」(読売)、「幅広く好感、路線転換に期待」(毎日)、「無党派の38%支持」(朝日)など、各紙の調査結果には次のような共通の傾向がある。

1.福田内閣支持率は、小泉と安倍の発足時ほどではないが、かなり高い。
2.小泉や安倍と比較して、支持は野党支持層や支持なし層にも広がっている。
3.自民党の支持率は回復基調にあり、逆に民主党支持率は低下傾向。
4.政策課題の優先は、年金など社会保障がトップ、「政治とカネ」が続く。
5.テロ特措法延長、海自の給油活動の継続は、支持が反対を逆転する傾向。

「新内閣誕生のご祝儀相場もあろうが、前政権に対して強い失望感を抱いた国民の新政権に対する期待感の表れだろう」(毎日新聞社説27日)。「安定・協調・実務」の福田効果があらわれている。総裁選効果もプラス点だ。参議院少数派の政府・与党が厳しい国会運営を迫られていることにかわりはないが、出鼻をくじかれた民主党にとって甘い状況ではない。政策と政治の双方で民主党の闘いが問われる。

「テロ特措法」の国会対決が迫っている。日米合作による「国連安保理感謝決議」なるものは、ロシアの棄権によって効果が大きく削減されたが、民主党の「国連中心主義」に焦点を当てた。在日米国大使が呼びかけとなった会合も開催される。海上自衛隊の給油活動も部分的ではあれメディアに公開された。そのメディアを通して「給油は日本の国益」「イラクとは違って国際社会の一致した活動」というキャンペーンが強まっている。論戦の攻勢を自民党側、保守側がとり始めており、世論調査ではこの一か月で継続支持が反対を逆転してきている。

民主党の反対の論拠が問われる。小沢代表は、「国連によってはっきりオーソライズされた(正当と認められた、権限を認められた)ものでない限り」、自衛隊の海外での活動は認められないと主張してきた。我々は、国連決議によってであれ、アメリカの戦争への加担であれ、自衛隊の海外派兵に反対する。その点で小沢民主党とは立場が異なり、民主党が「国連中心主義」を反対の論拠として闘いぬけるか、危惧する。

民主党が反対を貫き、そのことによってこの戦争の不当性をあばき、「ブッシュの戦争」に追随・加担した小泉−安倍政権の誤りを認めさせることができるか。民主党は正念場を迎えようとしている。党内で継続支持派の動揺が拡大し、不協和音も予想される。民主党内の9条改悪に反対する議員たち、反戦・平和派を自認する議員たちにとっての正念場でもある。

仕切り直しの臨時国会が1日、福田首相の所信表明演説からスタートする。解散・総選挙をみすえ、自公政権の打倒をめざして闘おう。


■注。9月27日に公表された福田政権発足直後の緊急世論調査から。

1.内閣支持率(%、四捨五入。カッコ内は前回調査だが調査方法は異なる)

支 持/共同58、朝日53、読売58、毎日57(29)、日経59(41)
不支持/共同26、朝日27、読売27、毎日25(58)、日経27(40)

共同通信では宮沢内閣以降、小泉、細川、安倍、橋本に次ぐ5位。
読売新聞では大平内閣以降、小泉87、細川72、安倍70に次ぐ4位。
日経新聞のトップ5は次の通り(支持%−不支持%、政権成立時)
@小泉 80−08(2001.4)
A安倍 71−17(2006.9)
B細川 70−10(1993.8)
C福田 59−27(2007.9)
D橋本 54−22(1996.1)

2.自民党と民主党の支持率

自民/共同38(35)、朝日33(32)、読売38、毎日32(27)
民主/共同28(30)、朝日25(24)、読売24、毎日26(29)

日経(今回−8月−7月)自民43−35−29/民主31−36−44

3.テロ特措法

◎共同/給油活動を延長すべき50、すべきでない40
(今月中旬の前回調査に比して、延長賛成+1.7ポイント、反対−3.0ポイント)

◎読売/継続賛成47、反対40
(前回調査では、反対が39%で賛成29%を上回っていた)

*読売/国連安保理決議によって、海上自衛隊の給油活動は、国際社会から支持されたと思うか。<思う43、思わない42、答えない15>

*読売/民主党は、この国連決議は、認める根拠にならないとして、給油活動を続けることに反対している。この対応に納得できるか。<納得できる38、納得できない47、答えない15>

◎日経/期限切れ以降も続けるべき47(30)、続けるべきでない37(53)

■以上