宮城全労協ニュース/第97号(電子版)/2007年10月24日

新テロ特措法を粉砕しよう!
解散・総選挙に備えよう!



政府は10月17日、「新テロ対策特措法」法案を閣議決定し、国会に提出した。特別委員会での本格審議が始まろうとしている。民主党は「反対」の態度を崩していない。各種世論調査によれば、給油活動への賛否はいわば膠着状況にある。沖縄の闘いは歴史改ざんの不正を天下に示し、「歴史教科書検定問題」に対してついに風穴をあけた。沖縄に続き、日本のアフガン・イラク政策を転換させるために、新法に反対する院内外の闘いが問われている。


防衛省の隠蔽工作と「守屋スキャンダル」

テロ特措法は11月1日に期限切れとなる。政府・与党は海上自衛隊艦船の撤収に追い込まれようとしている。安倍前首相が参議院選挙大敗直後に決断していれば、この事態は避けられたはずだ、という体制側の議論があった。しかし、自公政権は対応力を失っていた。安倍首相は政権存続に固執し、内閣改造に時間を費やしたあげく、「政治とカネ」問題に追撃され、政権投げ出しにいたった。わずか3か月間の出来事である。

提出された法案は、洋上給油活動への疑問や疑惑に答えるものではない。イラク・アフガン問題に対しても、国連や国際政治に対しても、能動的な姿勢はない。インド洋給油を継続しなければブッシュ政権に顔向けができない、給油の継続がすべて、ということなのだ。

さらにここにきて、二つのとんでもない事実が発覚した。給油量をめぐる隠蔽工作であり、守屋前防衛事務次官の業者との癒着問題である。前者は当時の福田官房長官と石破防衛大臣の発言の根拠を否定するものであり、「給油転用疑惑」を隠すために組織ぐるみの工作がなされた疑惑である。内部調査と関係者の処分ですまされる問題ではない。後者は「防衛庁の天皇」と称された人物の行為であり、個人的な付き合いの類だとはとうてい考えられない。政府も、国会も、政財官ぐるみの防衛スキャンダルをあばくために全容の解明にあたらなければならない。

福田首相は、疑惑問題と新法の審議とはわけて考えてほしいと述べた。審議どころではないはずだ。石破大臣が認めているように、防衛省の「構造的問題」が問われているのだ。現在の福田首相と石破防衛大臣は当時の責任者でもある。防衛省の信頼が危機にあり、また国民を説得できていない状況のもとで、政府・与党は法案を成立させようとするのか。「国防」の屋台骨が揺るいでいるときに、ブッシュ政権との関係を最優先させ、この軍事作戦を継続させようというのか。福田政府は、まさに日本政府として、事実を徹底的に解明し、責任の所在を明らかにしなければならない。


給油量の隠蔽と航泊日誌の違法廃棄

海上自衛隊がインド洋上で給油していた燃料が、法律に反して、米軍のイラク作戦に転用されていたのではないか。この「燃料の転用疑惑」の発端は米軍司令官の発言だった。イラク攻撃に参加した米空母部隊の司令官が、「海上自衛隊の補給艦から米軍の補給艦を経由して、80万ガロンの補給を受けた」と述べたのだ(03年5月6日)。防衛庁は即座に反応し、司令官発言の2日後に「80万ではなく20万」だと数値を訂正した。当時の福田官房長官と石破防衛大臣は、訂正された数値を根拠に「転用疑惑」を否定した。「空母キティホークの燃焼消費は1日20万ガロンであり、ほとんど瞬間的に消費されてしまうので、イラク関係に使われることはありえない」という理屈だ。小泉政権はこうして「疑惑」にフタをし、特措法の2年間の延長を強行していった。

特措法は05年と06年に1年ずつ延長されたが、安倍政権は今年9月、「対外公約」にかかげた延長の見通しが立たないことを直接的なきっかけとして崩壊した。福田政権は延長断念を前提とする対応が迫られた。そこにふたたび「転用疑惑」が浮上した。横浜の市民団体「ピースデポ」は9月20日、独自の粘り強い活動によって得た米軍の資料から、給油燃料は80万ガロンであったと指摘したのだ。防衛省は翌日、これを認めて訂正した。福田首相は10月3日、国会で追認したが、あくまで「事務的な誤り」、数値の入力ミスで切り抜けようとした。

さらに防衛省は、当時の経緯をくつがえす内部調査報告を大臣に提出した。海上自衛隊の幹部は、03年5月9日、つまり福田官房長官の発言の当日、石破防衛大臣の国会答弁の6日前に「80万」だと気づいていた、というのだ。それ以降、この事実は隠され、誤った数値が政府見解となり続けた。「単なる数字」ではない。法律違反が否かをめぐる政府答弁を根拠づけた数値なのだ。

この事実を、小泉、安倍、福田の3代にわたる内閣と与党は知らなかったのか。それは不明だ。どちらにしても、転用疑惑を意図的にかわすために組織的な隠蔽がなされたと理解するのが自然である。

転用疑惑とならんで、内規違反の日誌廃棄も明らかになっている。「事務的ミス」ですませたり、「内部調査」による事実確認で乗り切ろうとする政府・与党の態度は、とうてい認められない。テロ特措法違反を隠すための隠蔽工作なのではないか。そうであるなら、これはイラク派兵も含めた情報操作の一環ではないのか。一連の経緯の全面的な検証が必要だと考えるのが自然である。石破防衛大臣は疑惑に答えなければならない。


「転用疑惑」を否定できない米国政府の報告

一方、米国防総相は10月18日、声明を発表し、海上自衛隊から給油された燃料は、アフガニスタンでの作戦以外には使われていないと説明した。日本政府はこの声明をもって、米国政府も転用疑惑を否定したと評価した。だが、この日米両政府のやりとりは精神条項にすぎない。燃料が転用されていないと「信じる」、日本政府も米国を「信頼する」という儀式である。

声明には次のような項目が含まれている(毎日新聞10月20日、国防総省声明の要旨より)。

○米政府は、日本から給油されたすべての米艦艇は「不朽の自由作戦(OEF)」支援のために補給を受けたことを日本政府に確認する。
○供給された燃料を、任務ごとに追跡することは困難だ。
○供給された燃料は個別のタンクに分けて貯蔵されておらず、すべての燃料の一部となっている。
○燃料が補給艦に給油され、そこから他の艦艇に供給された場合、追跡はより困難になる。
○艦艇は複数の任務に参加していることもある。
○海自の補給活動は日本が設定したOEF支援活動区域内で実施された。

つまり、米国政府は「転用疑惑」を否定してはいない。燃料がどうなったか特定できないか、あるいはわかっていても公表しないという、いわば当たり前のことなのだ。「米政府はOEFに従事する艦艇だけに燃料が供給されるという日本政府との合意に忠実に従っていると確信する」。この文言をもって、転用疑惑が否定されたという根拠になるはずがない。

朝日新聞は、米軍艦船の元艦長証言として、05年にインド洋上で直接給油を受けたとの記事を掲載している(9月23日)。「佐世保基地に所属する米軍揚陸艦ジュノーの艦長としてペルシャ湾周辺に展開」。ジュノーは、「イラクの自由作戦の一環として、沖縄に駐留する海兵隊をイラク国内に投入するためペルシャ湾北部の派遣」され、この間、インド洋で「海自の補給艦から3回にわたって燃料、食料の補給を受けたという」。ジュノーはアフガン作戦(OEF)の「海上阻止活動にも組み込まれていた」。ジュノーのこれらの行動は、前掲声明のいくつかの項目に合致している。


小泉−安倍時代のトップに君臨した守屋前事務次官

一連の「ゴルフ接待問題」の報道のなか、読売新聞(10月23日)はスクープ記事として、東京地検が「山田洋行米法人を捜査」していると報じた。疑惑はますます深まっている。

この報道によれば、「航空・防衛分野の専門商社『山田洋行』の米国現地法人などで、不正な経理操作が行われていた疑いがあるとして、東京地検特捜部が米司法当局に捜査共助を要請し、今月上旬、米国に検事を派遣していた」、「特捜部は、同社幹部や、元専務が独立して設立した別の防衛専門商社(日本ミライズ)の幹部らに事情聴取して」いる。「両社を巡る不透明な資金」は数億円にのぼり、一部が接待費に、また1億円は不明になっている疑いがあるともいう。この二つの防衛商社は、「航空自衛隊の次期輸送期の搭載エンジンに内定していた米ゼネラル・エレクトリックの販売代理店契約を巡り熾烈な商権争いを展開」、「今年7月、代理店を従来の山田洋行から日本ミライズに切り替えた」とされる。

隠蔽工作の発覚に続いて、守屋前事務次官の疑惑報道である。最重要法案である給油新法の審議入りを前にしたタイミングたった。どうしてこの時期なのか。真相は明らかでないが、くすぶり続けていた疑惑が時限爆弾のように一気に表面化したということだろう。

この夏、当時の小池防衛大臣が守屋次官と対峙したとき、守屋スキャンダルが抗争の背景にあるとの指摘があった。小池自身も、「事務次官と業者との不明朗な関係」を問われて、それを否定しなかった。だが、小池のパフォーマンスや官邸との対立に関心が集まり、事態は人事問題として処理されていった。安倍首相も小池の辞任を認め、防衛省問題にメスを入れることはなかった。

守屋疑惑は小泉−安倍政権の防衛・外交政策と無関係ではありえない。給油量が隠蔽された03年5月当時、内閣は小泉首相、福田官房長官、石破防衛大臣であり、守屋は防衛庁防衛局長として事務方の最前線を指揮していた。

守屋はその後4年間、官僚トップの事務次官として、防衛庁とそれを取り巻く政・官・財にとっての念願だった防衛省への昇格を取り仕切った。この歴史的な改編は、小泉政権のイラク戦争政策と安倍政権の「戦後レジームからの脱却」路線によって可能になった。

守屋は防衛省の調べに対して、防衛商社幹部との「家族ぐるみのゴルフ交際」が続けられてきたこと、それが自衛隊員倫理規程に違反するものだったことを認めている。政府・与党は証人喚問を受け入れたが、「退職金の自主返納」をうながすなど、疑惑にまっこうから立ち向かおうという姿勢ではない。防衛予算にからんだ「口利き」が特定の受注業者になされていたかどうか。守屋の個人的行為なのか、組織的・構造的な関与があるのか。山田洋行が多くの防衛省OBを天下り採用していたことも明らかになっている。事実と政治責任の徹底的な究明がなされなければならない。

また、小沢民主党代表への600万円の政治献金問題が報じられている。小沢は、山田洋行からの政治献金は適切に処理されているが、誤解を受けるおそれがあるので返金したという。防衛省を舞台とする政・官・財の関係を検証することは、疑惑解明にとって必要不可欠であり、民主党にも説明義務があることは当然である。


問われる民主党

民主党は新法反対の立場を貫いているが、内部論争をかかえたままの綱渡り状況にある。小沢代表の発言(雑誌『世界』11月号/「今こそ国際安全保障の原則確立を」(注1)など)が衝撃を与え、前原前代表らの反発だけではなく、党内に不協和音が広がっている。その結果「反対」の論拠が揺れており、対案の行方も不透明な状況だ。

小沢代表は、国連の平和活動への参加は、それが武力の行使を含むものであっても憲法に抵触しないと主張し、ISAF(アフガニスタンに展開する国際治安支援部隊)への参加を肯定している。しかし、一方で、ISAFの主力である治安維持活動の実態には疑問があり、民生支援への参加が中心になるとも発言している。また「原則論と政治は別問題」として、民主党の対案に盛り込むことにこだわらないという態度だ。「嫌なら党を出ていけばいい」という発言とともに、小沢代表の「真意」がとりざたされており、党執行部は不協和音を打ち消すことに躍起だ。

小沢主張をどのように扱うのか。また党内論争をどのように位置づけるのか。民主党はあいまいにすべきではない。国会論戦上の駆け引きは必要だが、それだけでは政府・与党を追い込むことはできない。

菅代表代行と鳩山幹事長らは17日、都内で、米民主党クリントン政権の国防次官補代理だった人物と会談した。そこでアフガン情勢などを意見交換し、日本の民主党の立場は理解する、日米双方で民主党政権を目指して努力することで一致したという(10月18日、朝日新聞)。民主党は日米安保体制のもとにある。その民主党が政権をめざすうえで、米国政治とどのような関係を結ぼうとするのか。当然、その構想を示さなければならない。ここでも民主党の説明責任が問われている。


解散ぶくみの政治局面へ

閣議決定された新法は「テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法」である。つまり新法は、海上阻止活動にあたる艦船への「給油・給水の補給支援」に任務を限定している。転用疑惑や集団的自衛権の論争をさけるため、よけいなことは書き込まないということだ。

期限も公明党に妥協して1年と区切ったが、国会承認は新法案から削除された。公明党議員は参議院予算委員会で、国会承認条項をはずしても、当初案の2年から1年になったことにより「国会チェックでもっと強い文民統制が働く」と持ち上げたが、詭弁である(*注2)。

高村外務大臣は野党の転用疑惑追及に対して、「アメリカを信頼している」と答弁するのが精一杯だった。石破防衛大臣は「現場で確認し、交換公文を結び、何に使うのか確認している」と踏み込み、「これがどうしてアメリカへの妄信になるのか理解しかねる」と話をそらした。さらに福田首相は共産党議員に対して、「どうして理解する努力をしてくれないのか。いくら議論しても賛成とは言わないんでしょう。結局、そうなんでしょう」といらだちをぶつけた。

政府答弁にはとうてい説得力はなかった。そして、今回の「隠蔽工作」と「守屋スキャンダル」である。自民党も「新テロ特措法」の扱いを決めかねている。法案の扱いによっては解散・総選挙に一気に加速していく可能性があり、政府・与党は政局の手綱を手放すことのないように、薄氷を踏む対応を迫られている。伊吹幹事長らは年内成立を訴えているが、額面通りに受けとめられてはいない。臨時国会は11月10日に期限切れとなる。公明党は衆議院での再議決に反対している。小泉−安倍政権を支えてきた公明党支持者の不満は大きい。

福田政府の支持率は早くも下がりはじめている。年金問題に加え、厚生労働省の情報隠蔽など、福田政権の守勢が続いている。米国、東南アジア、中国と続く歴訪のなかで、「新福田ドクトリン」を打ち出すメドもついていない。消費税増税をめぐり、党内の「改革続行派」が旗上げした。衆議院選挙の公認争いに加え、予算編成をめぐる利害対立がからむ。内政も外交も、福田政権は局面の打開に踏み込み得てはいない。

解散がらみの緊迫した政治局面を闘いぬこう。

新テロ特措法を粉砕しよう!
疑惑の徹底究明と政治責任を!
解散・総選挙に備えよう!



(注1)
「今こそ国際安全保障の原則確立を」小沢一郎(『世界』11月号)より抜粋

「・・個々の国家が行使する自衛権と、国際社会全体で平和、治安を守るための国連の活動とは、全く異質のものであり、次元が異なるのです。国連の平和活動は国家の主権である自衛権を超えたものです。したがって、国連の平和活動は、たとえそれが武力の行使を含むものであっても、日本国憲法に抵触しない、というのが私の憲法解釈です。」

「(私の主張は)国連の決議でオーソライズされた国連の平和活動に日本が参加することは、ISAFであれ何であれ、何ら憲法に抵触しないと言っているのです。もちろん、具体的にどんな分野にどんな形でどれだけ参加するかは、その時の政府が政治判断をして決めることです。しかし、日本政府はこれまで、全て日本国憲法を盾に国連活動への参加を拒否してきました。私は、まずその姿勢を改めるべきだと、繰り返し主張しているのです。」

「繰り返しますが、日本の国際社会への貢献、特に侵略あるいはテロに対する強制力の行使について、日本はこれまで、憲法を盾にとって一貫して消極姿勢をとってきました。私は、それは大きな過ちだと考えています。しかし同時に、日本国憲法の理念と第九条の考え方は、変える必要がない、むしろ忠実に実現すべきだと思っています。したがって、憲法の理念に従って、あらゆる分野で国際貢献を積極的にしていかなければならない、というのが私の結論です。」


(注2)
「もし国会承認条項を残したら、法案が成立しても、承認段階で参院の民主党に反対され、結局は活動の継続が不可能になってしまうというのが、政府の本音だろう。参院で否決された法案は衆院の3分の2の多数で成立させられるが、承認については『3分の2の再決議』規定がないためだ」(毎日新聞社説/10月18日)

■以上