新テロ特措法を廃案に!
「大連立」を糾弾し、総選挙に備えよう!
08年春闘の準備を開始しよう!
●大阪市長選挙で自公現職が敗北
注目の大阪市長選挙(11月18日)は自公推薦の現職が敗北、民主・国民新党が推薦した新人候補が当選を果たした。投票率は前回(2年前の出直し選挙)から10ポイントも上昇、44年ぶりに共産党以外のオール与党体制が崩壊した。
各党は衆議院選挙の前哨戦として取り組んだ。選挙期間中、民主党・小沢代表の辞任表明騒動で揺れ、投票結果が大きく注目されていた。そこで5万票の差をつけられて自公が敗北した。とくに大阪市の衆議院6選挙区は与党が独占しており、そのうち3議席は公明党である。与党が受けた衝撃は大きい。
防衛省スキャンダルでの額賀、久間問題につづく大阪市長選挙での敗北。党首会談−「小沢騒動」によって主導権を握ったとされる自民党と福田政権は、ふたたび窮地に立たされている。12月15日の会期末まで給油新法が成立する見通しはたたず、会期の大幅再延長もささやかれている。
●防衛利権、防衛省疑惑の徹底究明を!
東京地検特捜部は、軍需商社「山田洋行」の宮崎元専務(「日本ミライズ」設立者)を業務上横領容疑などで逮捕した。直接の容疑は飲食接待にかかわる裏金づくりだが、日米防衛利権の構図が背景にあることは明らかだ。続いて15日、参議院外交防衛委員会での証人喚問で、守屋元防衛事務次官は防衛庁長官経験者の二人の名前を明らかにした。
名指しされた二人はこれを否定しているが、福田首相の発言は実に淡々としたものだった。「額賀大臣は否定している」としたうえで、「そういう会合に出ることは政治家としてよくあることだ」、と。いずれは否定できなくなるかもしれないという判断があっての福田発言なのだろう。実際、二人の否定発言の内容は、時間が経つにつれてあいまいなものになっている。
守屋証人は、二人の実名以外、便宜供与など肝心な点は答えていない。政治家はなぜ二人だけなのかという疑問も解消されていない。国会はさらに徹底究明にあたらなければならない。沖縄やグアムの日米防衛利権にとどまらず、自衛隊のPK0派兵にかかわる物資調達疑惑もあがっている。当然、イラク派兵に関しても精査が必要だ。
防衛省は犯罪、不祥事、疑惑に包まれてきた。政府は積極的に事態を解明し、防衛庁−防衛省腐敗にメスを入れてこなかった。そればかりか、アフガンとイラクでブッシュ政権の戦争に加担した小泉政権のもとで、防衛庁は念願の省昇格をはたした。守屋が事務次官となって巨大な権限を手にしたのもこの時期だ。
政府・与党は、政治家の実名は出ないと読んでいたといわれる。守屋元事務次官の「変身」は衝撃だった。防衛省問題とインド洋上給油の問題は別であり、野党は新法成立のための国会運営に協力すべきだ。これが政府・与党の主張だ。いまや政府・与党からは、「法案をつぶす気か」との恨み節が聞こえる。
そもそも政府・与党は虫が良すぎるのだ。給油転用疑惑、航海記録改ざん・破棄疑惑をふくめて、まずは政府・与党が事態の解明にあたらなければならない。福田首相は前任者のツケをとらされているのであり、政権の連続性がある以上、政府・与党が疑惑解明と責任究明にあたるべきは歴史的責任である。
●新テロ特措法にも「恒久法」にも反対する
新法案は11月13日、衆議院を通過した。福田首相はこのタイミングで訪米した。ブッシュ大統領とどのような「約束」をしたのか定かではないが、給油再開は「対米公約」となり、福田首相としては新法成立に踏み込まざるをえなくなっている。政府・与党は民主党のなんらかの妥協に期待しつつ、解散がらみの政局を見極めながら、3分の2再議決にかける決断を迫られる。しかし、額賀財務相らの名前が出たために、現時点では見通しはさらに困難になっている。
いっぽう、民主党の対案提出はいまだにはっきりしていない。党の部会は骨子案を了承した(「国際的なテロリズムの防止及び根絶のためのアフガニスタン復興支援等に関する特別措置法案(仮称)」)。しかし、自衛隊のアフガン派遣を盛り込むのかなど、党内の対立は解消していない。旧社会党系議員や新人議員などから反対論と慎重論がある。同時に、海外派遣積極派からすれば、派兵条件が厳しすぎては実効性がない。
さらに、どのような条件であれアフガン派兵を盛り込むことは、派兵の「恒久法」論議に巻き込むチャンスを自民党に与える。石破防衛大臣は8日、来日した米国防長官に、「自衛隊海外派遣のための恒久法(一般法)は必要だと認識しており、野党にもこれに同調する意見がある」と述べている。
「大連立」騒動がさめやらぬ民主党にとって、「恒久法」の政策協議になりかねない対案提出は避けたい。額賀・久間の名前が出たために防衛省疑惑の追及に拍車がかかり、民主党としてはあえて対案を出さなくても乗り切れるという判断も働いているだろう。
こうして民主党は、政府案反対の態度を崩していないが、その論拠に窮している。「小沢騒動」が結果として民主党の現状を浮き立たせることになった。そもそも、小沢代表はどうして、テロ特措法反対を参議院選挙直後に打ち出したのか。「民主党は反対で一貫している。選挙で勝ったからといって変更するわけがない」。これが小沢の主張だったが、「一貫して反対している」という点には最初から疑義があった。だから、制限や条件を厳しくしたうえで、給油活動を継続する道を選択することもありえたはずだ。だが小沢は、「国連主義による自衛隊派遣」という持論を、党内の異論を押し切って前面に押し出した。そのことが大連立騒動の伏線になっている。
民主党は政局の流れに乗って問題をすり抜けていこうとしているように見えるが、ごまかしつづけることはできないだろう。
●「テロとの戦い」そのものが問われている
ブッシュのアフガン・イラク戦争をいち早く支持した小泉政府は、それが日米同盟であり「対テロ」国際協調であると関与を正当化した。日本はブッシュの戦争に参加した。米英日3国は際立った同盟であった。(それでも日本が参加条件を制限したのは憲法の制約があったからだ。)
インド洋上での給油活動が期限切れとなったいま、日本政府はアフガニスタンとイラクのブッシュ政権による二つの戦争への支持を全面的に見直すときである。ブッシュ政権が主張してきた「テロの脅威」や「テロとの戦い」を前提にせず、白紙に戻して日本の対応を考え直すべきときだ(*注)。
「国際社会」はこの戦争の性格と参加の是非をめぐって鋭く対立した。この戦争の直接の根拠であった「アルカイダとの関係」や「大量破壊兵器の存在」は実証されなかった。「アメリカ対国際テロ」という戦争の「大義」も、いまや米国自身の内部で否定されている。さらに、イラクでもアフガンでも、ブッシュ政権が描いた新しい政治体制や国造りは成功していないし、「テロとの戦い」も成功していない。それどころか、イスラエルやパキスタンを典型として、ブッシュの二重基準が世界に不安定に拡大させてきた。
福田政府は小泉政府の戦争加担政策を引き継ぐのか。あるいは修正するのか。破棄して新たな政策を立てるのか。「テロとの戦い」について、日本はこれまでの政策を引き継ぐのかどうか。まずはこれが根本問題であるが、政府・与党は、給油活動の継続以上ではない。福田首相は「どうして理解してくれないのか、けっきょく反対なんだろう」と共産党議員の質問にいらだちをぶつけたが、それは逆である。「けっきょく同じ」なのは政府の側だ。実際には「テロとの戦い」の見直しが迫られているにもかかわらず、日本政府として新機軸を打ち出そうとはしない、できないことが根本的な問題なのだ。
それは民主党にも問われている。小沢流の自衛隊派遣に踏み込むきっかけとするのか、「非軍事による国際貢献」や米国の大国主義から距離を置く新しい地域的な安全保障のために挑戦するのか。視点を換えて言えば、民主党は次の政界再編の波にどのような立場で向かうのか。
●失敗した大連立工作
水面下で進行した「大連立」謀議は失敗に終わった。小沢代表は直前まで「大連立」話を否定していた。参議院選挙以降、自民党も民主党も公式にふれたことはない。さらに「政権交替可能な二大政党制」は両党だけでなく、マスコミも推進した1990年代の「政治改革」の旗であった。「大連立」はこれらの経緯を無視するものだ。
小沢代表は記者会見で「経緯」を述べた。当事者たちはこれを否定していないので、読売新聞の渡辺恒雄主筆が仕掛け、森元首相が「福田総理の代理人」として仲介したことは事実なのだろう。どこまで誰が関与したか明らかにされていないが、自分たちの出番だとうごめいた「フィクサー」たちや政治家たちが水面下で工作したことは間違いない。
「党首会談」がそのように準備され、しかも両党の役員たちが疑心暗鬼で見守るなか、党首が密室に消えていく。このような政治のあり方を容認することはできない。福田首相は「こういうことを考えないのはプロの政治家ではない」と言ったが、思い上りもはなはだしい。まさに国民不在の密室政治だ。
党首会談で何が話されたのか。小沢代表はどうして役員会に持ち帰ったのか。(これは「自分で決断し、自分で責任をとる」という「リーダー像」にみずから反している。)さらに小沢は党の分裂を工作したのか。当事者たちは党首会談と小沢騒動の真相を明らかにしなければならない。
政府・与党は「ねじれ国会」を解消するためだという。「6年間はねじれが続き、国民生活に不可欠の法案も、国益を左右するような法案も通らない。だから大連立だ」。これは勝手な理屈である。衆参の「ねじれ」は参議院選挙で示された民意にほかならない。自民党にお灸をすえたい、自民党の多数横暴を許さない、小泉・安倍政策の継続を望まない、これが民意の内容である。
問われているのは政治の側の対応力だ。協議が必要ならすればよい。法案の妥協が必要ならそれもよい。妥協の内容をどう評価するか、それは人々の判断だ。妥協できないなら棚上げすればよい。与党は必要なら3分の2再議決を行なえばいい。今回のように、95%の議席を占有するような大連立をもって国会を支配するという手法は、議会制民主主義を否定する暴挙である。
保守派の主導する政治再編のたくらみは続いている。読売新聞が「民主党も「政権責任」を分担せよ」と題する社説を掲載したのは8月16日、それ以降も同様の主張を繰り返してきた。鳩山幹事長は渡辺恒雄から大連立話をもちかけられ、これを断ったと8月下旬に明らかにしている。民主党は工作が現実に進行しているとは考えなかったのだろうか。民主党役員会は小沢代表の報告を即座に拒否し、代表辞任表明につながった。「民主党の未熟さ」が、皮肉にもこの大連立話をつぶしたわけだ。
読売新聞は「それでも大連立を目指すべきだ」と主張している。小泉元首相は「政界再編は不可避」と述べ、中川前幹事長(今回の工作に関わって一人として名前があがっている)は「大連立学習会」を立ち上げた。
この政治再編は、保守派、右派の主導する「政党再編」を含む可能性がある。労働者民衆の側、左派の側からする「政治再編」が問われることになる。
●解散・総選挙に備えよう!
解散がらみの混迷状態がつづいている。与党も民主党も早期解散には及び腰だといわれている。自民党は前回の小泉バブルからの議席減は必至だと予想されていて、与党が過半数を獲得しても定数の3分の2を割り込む可能性が高い。一方、民主党は準備遅れに加えて小沢騒動の影響を計りかねており、これまた早期解散には乗り気でない。実際、小沢代表は獲得議席の3つのケースを示して「勝利」の内容を切り下げた。しかし、「ハプニング解散」はありうるし、世論動向を見極め勝利を確信できるなら福田首相のイニシアチブによる早期解散の可能性も否定できない。
民主党は小沢騒動の後、ようやく衆議院選挙対策本部を設置した。300の選挙区のうち270から280議席での擁立をめざし、残りは社民党、国民新党候補者などとの野党共闘でのぞむ方針だ。
共産党は今回、方針を大きく転換した。全選挙区での立候補をやめ、事実上、比例代表に集中する方針を採用した。選挙区立候補は「直近の国政選挙の比例で得票率が8%以上の選挙区」にしぼるとされ、そうすると300のうち130前後の立候補になるという。共産党の内部事情が反映されているといわれているが、この方針転換には大きな意義がある。
社民党、共産党の議席によっては、衆議院でキャスティングボードを握る可能性もありうる。共産党の方針転換、野党選挙協力の進展状況を見据えながら、与野党逆転をめざして比例と各選挙区での闘いを準備することが必要だ。
(2007年11月19日)
(注)
朝日新聞は法律の期限切れ、海上自衛隊艦船の撤収開始にあたって社説を掲載し、アフガニスタンは正しかったが、イラクは間違っていた、というこの間の主張を繰り返している(「イラク撤収で仕切り直せ/給油と対テロ戦」11月1日)。
社説は、日本政府が「テロとの戦い」の基本的な議論を避け続けてきたと指摘して、次のように述べている。
「同時テロの1カ月後、テロ首謀者のビンラディン容疑者らをかくまったアフガニスタンのタリバーン政権を、米国などが攻撃した。国際社会のほとんどがこれを支持し、戦列に加わった。日本の給油支援はその一環だった。/だからこそ私たちの社説も、憲法の枠内であることなどを条件に海上自衛隊の派遣を容認した。」
「私たちはその後、米国によるイラク攻撃の可能性が強まる中で、もし侵攻すればインド洋での給油活動は間接的にイラク攻撃を助けることになり、性格が変わってしまうと警告した。今回の一連の給油転用疑惑は、まさにその懸念が的中したことを示している。」
「日本の失敗は、米ブッシュ政権への配慮からイラク戦争に協力したことだ。国際社会の広い合意もなく、大義にも欠ける戦いにかかわるべきではなかった。」
■以上
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