| 2005年3月18日/05春闘第1回学習会/仙台 報告/遠藤一郎・宮城合同労組書記長 |
| 宮城全労協パンフレット/「05春闘をいかに闘うか」 |
(1)新自由主義グローバリゼーションの世界 ・・貧困、格差拡大、資源浪費、環境破壊、そして戦争 1.グローバリゼーションの進行 2.グローバリゼーションの結果 3.新自由主義グローバリゼーションとの国際的な対決へ (2)日本での階層分化と労働者の状況 1.賃金下落のメカニズム 2.「年収200万〜300万世帯の時代」 3.階層分化の急激な進行は社会の分裂を生む (3)05春闘の動きと私たちの取り組み 1.大手回答の特徴 2.われわれの春闘を! (1)新自由主義グローバリゼーションの世界 ・・貧困、格差拡大、資源浪費、環境破壊、そして戦争 昨日、大手の回答日でした。トヨタが満額で244万円。年収ではありません。一時金です。一方、「年収300万円」時代、いや200万円時代です。どうしてこんなに落差があるのでしょうか。世界の動きと日本の動きは重なっています。05春闘の具体的な問題に入る前に、世界でいま起きている事態について考えてみます。 1.グローバリゼーションの進行 グローバリゼーションとは面倒な言葉ですが、いろんな所で語られていますから、そのポイントをまず押さえておきましょう。「国境を越えた資本の自由な移動と最大利潤の追求」によって「一人勝ちの世界」になっている。それがグローバリゼーションの大きな特徴です。 経済は基本的に国ごとに行われてきました。「国民国家による国民経済」です。その枠が取り払われてしまった。多国籍企業が国境の枠を越えて、安い労働力を求めて世界を走り回わり、そうして最大の利潤を追求する。いわゆるIT革命とか、東西冷戦の終わりとか、様々な要因が加わって、国境なき資本の自由活動の時代になりました。このグローバリゼーション、あるいはグローバル経済は「一人勝ちの世界」で、もう片方に「負け組」が生み出される。「底辺に向かう競争」という言葉がありますが、負けていく方は底辺に向かって際限なく追いやられていきます。 国民国家・国民経済にはルールがあり、経済を統制する国家の規制があります。たとえば日本には労働基準法があります。独占禁止法などの商取引の基準があり、環境基準もあります。日本という国のなかで経済活動を統制する法律や仕組みがあって、従来はそのルールにしたがって国民経済が行われてきました。また、労働者の長い闘いの歴史のなかで、労働組合法や労働基準法が成立し、労働者の権利が確立してきました。ところがこのような国民国家・国民経済とは異なって、多国籍企業を規制する全世界の統一的な枠組みは存在していません。 たとえば労働時間で考えてみましょう。フランスでは年間1370時間くらい。日本には1800時間という政府目標があります。アメリカは約1780時間。国によって実態は異なっているとしても、このように各国の労働時間は違います。しかし、それは先進諸国の話であって、低開発国では長時間労働をしなければ生活ができないので、このような規制がない国がたくさんあります。国の規制は国境を越えることができませんが、企業は国境を越えて、いちばん自由に企業が活動しやすい場所に行ってものを作り、それをさらに他の国に売り、利益を上げていく。単一の世界市場のなかで、企業が好き勝手に動きはじめ、価格が国際的に平準化していきます。 もっとも安い生産費の所に多国籍企業が飛んで行く。資本を持っていって、そこで工場を作り、労働者を雇い、収益を上げる。労働力費用、つまり賃金がいちばん安い所。工場立地、つまり土地がいちばん安い所。さらに間接経費がいちばん安い所を追い求めていく。たとえば東京都内で製造工場を作ろうとすると、環境基準を満たすための規制など、たくさんの規制がある。騒音、排ガス、工場廃水など、公害防止や資源の有効活用のための規制をクリアするために、間接的な経費が非常にかかる。そのような経費が要らない所に行って、もっとも安い生産費でものを作る。土地、賃金、間接経費の高低によって価格に差がでます。これらが対等に競争すると、当然、高いものは淘汰されていきます。 このような事態がこの20年間、1985年くらいから急速に、全世界に広まっていきました。とくに1990年、ソ連邦が崩壊し、いわゆる東欧「社会主義」体制が崩壊した後に、一貫して進んでいきました。経済や価格の仕組み、国ごとにあった労働基準法や独占禁止法、商取引の基準などをかなぐり捨てて競争が起きる。積み上げられてきた規制の緩和・撤廃も進んだ。たとえば、いままで賃金には一定の基準がありました。それをもっと安い賃金で働けるはずだ、と。「官」がやっているから高い、「民」に転換しろ、と。そのような「民営化」と規制緩和の攻撃が先進国の中でも起こってきました。 2.グローバリゼーションの結果 このようなグローバリゼーションが進んだ結果、どうなったでしょうか。 第1、貧困が地球規模で拡大していきました。 極貧国という言葉を聞いたことがあるでしょう。債務の返済のための費用が国家予算の30%以上を占める国のことです。それらの国では、教育など国としての独自の計画を立てられない。この極貧国の債務を帳消しにしようという運動が2000年に起こりました。当時、世界の40ヵ国ほどが極貧国と呼ばれていました。5年たって、いま50ヵ国くらいに増えています。全世界の富が偏在し、その偏りはさらに進み、そうして飢餓やエイズの蔓延などが改善されずに悪化していっています。 第2、格差が拡大しています。貧しい国はいっそう貧しくなり、国家間の格差が拡大しています。同時に、先進国の国内での格差が急速に広がっています。 第3、資源が浪費されています。自動車学校の組合支部の仲間たちが学習会に参加していますので関心が高いと思いますが、アメリカの石油価格が1バレル57ドルになりました。イラク戦争の前までは42ドルだったでしょうか。資源が浪費され、石油価格が急騰し、新エネルギー源を求めて国家間の紛争が拡大しています。 第4、環境はいっそう破壊されています。地球温暖化の京都議定書は実現困難ですし、何よりも最大のアメリカが離脱しています。モルジブなど、国の最大標高が20メートルとか30メートルという海洋国家がいくつかありますが、そのような国は温暖化がこのまま進むと2020年から25年には国が無くなってしまうと言われていますね。 第5、そして戦争です。かつては国民国家のなかに巨大な企業があった。日本という国家のなかにトヨタがありNTTがあり、東芝やNECがあった。そこから海外進出へと向かい、たとえばトヨタがフィリピンに工場進出する。その工場が壊されたり接収されたりする危険性があれば、フィリピンでのトヨタの権益をどのように守るかという日本の政治的、軍事的な関心が生まれる。それが「経済権益の擁護」ということでした。 現在のグローバリゼーションでは、多国籍企業の行動はもはやそういうレベルではありません。昨年度、トヨタの自動車の45%が海外で生産されています。多国籍企業は経済権益を守るために、それらすべてを守らなければなりません。多国籍企業の利害にもっとも忠実なのはアメリカで、ほとんどアメリカの一人勝ち状態です。アメリカを中心とする多国籍企業にとって、全世界の安定を手に入れることが必要です。イラクで実行したように、第一に軍事的に、第二にアメリカの容認する「民主主義」体制作りを通じて、全世界の「安定」をはかろうとしています。 20世紀が戦争の世紀だとすれば、21世紀は平和の世紀にしなければいけないと言われてきました。しかしこの間、逆に、アフガンからイラク侵攻へと戦争が拡大してきました。また様々な紛争も拡大しています。日韓、日中、インドネシアと周辺国など多くの地域で、資源やエネルギーをめぐる紛争が拡大しています。 もう一つの特徴として、貧困からの脱出の道が閉ざされているなかで、宗教や民族的な結集をよりどころにして国が運営され、その宗教や民族的な対立が戦争に要因になっていることがあげられます。 3.新自由主義グローバリゼーションとの国際的な対決へ このように、新自由主義グローバリゼーションが進み、その結果として戦争が拡大してきました。イラク戦争をめぐってアメリカへの批判がまき起こりましたが、再選されたブッシュのアメリカは露骨な動きをしています。多国籍企業が自由に活動するために、国際通貨基金(IMF)とならんで世界銀行という機構が作られています。ブッシュ大統領は世界銀行の新総裁にウォルフォウィッツという国防副長官だった人物を送り出しました。アフガンやイラク侵攻を推進した「ネオコン」勢力の中心メンバーです。この単独行動主義の中心的人物を総裁に就任させようとしています。アメリカの利益を守り、新自由主義グローバリゼーションをいっそう露骨に推し進めるために、世界銀行をもっと活用しようとしているのではないでしょうか。 貧困の地球規模での拡大、格差の拡大、資源浪費、環境破壊、戦争。このような流れに対抗する運動が求められています。ここでは内容は省きますが、世界社会フォーラムや反WTO、反FTAの闘い、IMFや世界銀行との闘い、国際的な反戦行動、アジアでの労働者・民衆の国際連帯などが取り組まれてきました。宮城全労協はこれらの課題に取り組んできていますが、さらに発展させていくことが問われています。 明日は反戦の全世界同時行動です。これまでアメリカやヨーロッパからの呼びかけがほとんどでした。いまや世界を貫いて、アジアもアフリカも南アメリカからも参加して全世界的な反戦運動が起こっています。また世界社会フォーラムは、多国籍企業による経済のグローバリゼーションに対抗して、違う道があるはずだと運動しています。その合い言葉は「もう一つの世界は可能だ」というものです。 21世紀、アメリカを中心にした多国籍企業の最大利潤追求のために、地球が滅ぼされてしまう危険性があります。こうした流れときちんと対決できるもう一つの流れをどのように作り出していくか。世界的な視野からますます重要な課題になっていくでしょう。次に、このような大きな世界的な枠組みのなかで、いま日本で起こっていることについて考えてみたいと思います。 (2)日本での階層分化と労働者の状況 さきほど宮城全労協から「年収300万円時代」の話がありました。200万円、さらにそれを切っている現実があります。労働者はどのような状況に追いやられているのか。それはなぜか。次に、日本の現状について考えてみます。 1.賃金下落のメカニズム 賃金相場はいま、どこで形成されているのでしょうか。それは、「若年の単身者賃金」、端的に言えば高校卒業の初任給です。パート、アルバイト、派遣、請負、委託というような非正規雇用労働者の賃金は、この「若年単身者」の9割程度です。いままでは「年功序列型賃金」という仕組みがありました。単身者、独身としての初任給から始まり、長期安定雇用を通して、結婚をして、子供を生んで、育てて、学校に通わせるというような人生設計がなされた。夫婦二人で子供を二人ほど養うために、親から独立して家を買い、そのローンを払っていく。 多くの場合、若年単身者の賃金から始まって定年退職まで、このような生活をまかなっていくために、家族を養えるような賃金に上がっていくという賃金体系の構造がありました。だから、初任給が12万とか13万であっても、退職するときの基本給は30万とかに上がっていった。もちろんもっと高い職場もありますが、そのように上がっていって、退職金をもらい、そうしてリタイアしていく。このような年功序列型賃金が崩壊させられてきました。 しかも、年功序列型の賃上げがなくなっているだけではありません。単身者の初任給がそのまま自動的に上がっていくシステムが壊れているだけではありません。高失業者の時代では求職者よりも求人者の方が有利です。ですから、中途採用をしようとしたとき、企業は年齢の要素を重視しようとはしません。たとえば会社が倒産して、職安に行って一生懸命に職を探します。いまパソコンで「50歳、20万円」を探してもゼロですね。14万や15万に下げて、ようやく何件か見つかる。高失業時代のなかで、中途採用の労働者の賃金が限りなくいちばん下に引き付けられていく。18歳で入社した労働者の初任給と、50歳で中途退職に追いやられた労働者の賃金が同じになる。 さらに、その上に、「民営化」や「規制緩和」の攻撃があって賃金をどんどん押し下げています。労働者間の競争と企業間の競争があいまって、その相乗効果で、賃金が下がっていく。ここに東京の三鷹市の保育園の例を紹介しておきました。いままでは「官営保育園」だった。そこに「民営化」が入ってきて、どのように賃金が変化していったか。 <「公設民営方式」の保育園の例> ◆三鷹市直接運営の経費 1億7000万円 ◆社会福祉法人の見積もり 1億2500万円 ◆ベネッセコーポレーションの落札 7900万円 *労働者(保育士)の賃金の変化 ◆三鷹市職員 年収 830万円(平均年齢38.1歳) ◆ベネッセ 1年目の月収 15〜20万円(一年更新の契約社員) *20名枠の募集に340人が殺到。 社会福祉法人(民営化の一つの形態)の見積もりで、経費は4500億円削減された。さらにベネッセコーポレーションという大手企業が、三鷹市直営の半分以下で落札した。その結果、賃金は激変した。ベネッセは最大で年間240万円、若干の一時金が加わってやっと300万円。しかも、毎年賃金が上がっていく安定した長期雇用ではなくて、1年更新の契約社員だ。ベネッセはこの条件で20人募集した。高失業時代のために、そこに340人が殺到した。 高失業時代のなかで、とにかく仕事に就きたいと労働者同士で競争する。一方、企業は民営化しろ、もっと競争しろ、もっと低価格で入札しろと迫る。この二つの相乗効果によって、年収830万円の保育士の職場が約3分の1の人件費でまかなう職場へ、劇的に変化していきました。こういう事態がいま、急速に、広範囲に進んでいます。規制を緩和して、民営化して、雇用を不安定化(非正規雇用化)させて、そして賃金が際限なく下がっていく。これはちょうど、全世界で富める国はもっと富み、貧しい国はもっと貧しくなることと同じです。富める国のなかでも「勝ち組」と「負け組」がはっきりしていきます。 2.「年収200万〜300万世帯の時代」 このような競争と階層分化のなかで、一部のエリート労働者たちは1千万円を超える年収を得ています。このような層を対象にした雑誌が、新しく発行されました。時計やバッグや、私には名前もわからないブランド商品が紹介されているそうです。買えない人には、こんなものはおもしろくもなんでもありませんが、最初から年収1千万を超える人たちを対象にした雑誌だと銘打って発行されるわけです。 圧倒的多数の労働者は競争に淘汰され、下層に追い込まれていっています。規制撤廃、民営化、雇用の不安定化、この三つの攻撃によっていま、年収200万、300万の労働者がたくさん作り出されていっています。ここでまた、私たちの仲間を中心にして、いくつか例をあげてみました。 【タクシー労働者の場合】 毎日新聞仙台版でタクシー労働者の特集がありましたが、みなさんお読みになったでしょうか。「賃金低下、生活できない、タクシー飽和状態」。要するに、タクシー業界に自由に参入できる、増車もできるという規制緩和がもたらした事態です。かつては規制があって、たとえば一定以上の台数を持つタクシー会社は、その本社のできるだけ近い場所に整備工場をもたなければいけなかった。この規制はいまは撤廃されています。台数も登録制で割り当てをしていましたが、いまでは申請すれば増車できる。それらの結果として、賃金が低下する。 タクシー労働者の圧倒的多数は最低賃金を切っています。賃金は「オール歩合制」で、運賃収入が上がらないと労働者の手取りが下がる。最賃を割った場合はタクシー会社がそれを補填してきた。今月は営収が伸びて、最賃を超えたからよかったと企業が喜ぶ。最賃はいま、宮城では619円ですね。最賃を超える賃金とはどういう賃金でしょうか。年間1800時間働く、これが日本政府の目標です。時給が1千円で年収が180万円ですよ。これから4割マイナスすると108万ですから、619円の最賃とはだいたい年収110万です。タクシー労働者が一生懸命働いても、オール歩合で計算してみたら最賃を下回る。だから、それを企業が補填している。このままでは、それも続かなくなると企業はいう。ひどい話ではないですか。これが規制緩和の犠牲の実態です。 タクシーがどうして、無条件に、どこででも乗れなくてはいけないのですか。並んで乗ってもいいじゃないですか。タクシーはその地域の人口に見合うように一定の台数を決めてきた。長い経験則のなかで、そうやってきたのです。それを「規制緩和」だ、「自由な競争」だ、などと叫んで、全国で新規参入が進められた。 仙台でも第一交通が伸してきていますね。これは北九州のタクシー会社で、いま、全国で最大のタクシー会社になりました。どんなことをやってきたか。労働組合があるところは、これを買って本社から人を送り込む。私たちの組合もやられました。いきなり大きなカバンに札束を入れて持ってきた。いままでの退職金規程をいま清算すると言い出した。これで一度、みんな辞めてもらう。もう一度働きたい者はこっちに並んで、新しい第一交通の基準で働いてもらう。こういうやり方で、全国のタクシー会社を買い進めていった。ちなみに、タクシーが縦列停車をして警察に逮捕されるという事件がありましたが、いちばん最初にやったのがこの第一交通で、小倉駅でのことです。 こういうやり方で労働者が淘汰されていっている。労働者が怠け者で、働かなかったからではないのですよ。タクシー労働者は必死に働いている。月に230時間から240時間です。正規の40時間労働だったら月の労働時間は180時間を切るのです。月に60時間から80時間の残業をして、それでも最賃にとどかなくて、企業がマイナス分を補填するという事態なんです。 【ハイウエイ料金収集労働者】 このようなことはタクシー労働者だけではありません。次はハイウエイ、首都高速の料金場の労働者の例です。30年前に組合を作り、いま全国一般全国協の東京南部に800名の労働者が組織されています。みな正規雇用労働者です。春闘を闘い、賃上げ闘争を積み上げ、30年かけてやっと年収400万に届くようになった。 そこに猪瀬直樹という人物が登場してきた。自分が民営化をしてやったんだと言わんばかりにテレビでしゃべっているシーンをご覧になった方も多いでしょう。道路公団問題で、たしかに人々は喝采をした。役人が天下り、ファミリー企業が仕事を回し合ってべらぼうな利益を上げていた。その結果、高い高速料金を払わされている。これはなんだと。そしてマスコミは、この道路公団をやっつけた素晴らしい白馬の騎士だと持ち上げた。ところがいま、この道路公団民営化はどうなっていますか。人々が望んだような天下りやファミリー企業はなくなったのでしょうか。まったくそうではありません。 彼は道路公団の経費がかかりすぎるから削減しろと叫んだ。それが回り回ってどうなったでしょうか。首都道路高速公団という立派な建物のなかに年収800万円を超える労働者が何人かいます。その下請けに料金収集場の労働者たちがいる。30年かかってやっと400万まで底上げしてきた。そこにいきなり4割カットが出てきた。3年間で賃金を35%カットすると。400万の4割カットで240万ですよ。それからETCがありますね。あれは無人ですね。東北地方の高速なら、無人の所を車がすーっと通過していくということになるかもしれない。ところが首都高速は2レーンくらいしかない。しかもETCは事故だらけで修理しなければいけない。にもかかわらず、民営化委員会のツルの一声で、ETCを導入したから人員の2割削減となる。 首都高速の組合の労働者はいま、「240万円で食えるか!」と春闘を闘っています。昨日、3月18日、東京で春闘行動とデモがあって、宮城からも参加しました。むしろ旗を担いでデモ行進しました。高齢労働者が怒って、デモに大勢参加していました。 【零細運輸労働者、介護労働者、外国人労働者、縫製労働者、旅館労働者・・】 詳しくは時間がありませんので省きますが、零細運輸労働者たちも同じような状況にあります。 介護労働者の圧倒的多数は登録ヘルパーたちです。登録しておいて、仕事があるときだけ、サービスが入りましたと出かけて行って、その時間だけ働く。東京で組織しているヘルパーさんたちは、「11万円の仕事があった、わー、すごい」と言っています。「今月はひどい、5万だよ」、「私は6万だ」、と。これが介護労働者の圧倒的多数の現実です。 日本に働きに来ている外国人労働者はどうでしょうか。外務省がワーキングビザ、労働ビザを出しますが、その最低基準は月収25万円です。ところが実態はどうか。たとえば英会話の大手でNOVAがあります。先日も東京でNOVAの労働者たちがデモをしました。NOVAは、長く勤めた労働者、外国人の英会話教師をクビにします。そして、海外で募集して、毎日のように羽田と成田に迎えにいって、新しい人を雇ってくる。10年働いていたら、だれだって25万では終わらないですよ。だんだん賃金が上がっていく。それを避けるために、どんどん入れ替えていく。アメリカやイギリス、オーストラリアで募集して、25万で新しく雇う。彼らには一時金という風習はほとんどないので、年間でちょうど300万です。そのなかに、日本的にいうと一時金や保険などが全部含まれていますから、実質的には240万から250万の賃金です。日本で普通に働きたい、普通に生活をしたいと声を上げて、いま闘っています。 宮城合同労組の縫製労働者の話はいつもしていますが、ある職場では、勤続20年を超える人たちがほぼ最低賃金の水準です。旅館の仲間も参加していますが、ここでもひどい賃金が押しつけられています。 では、自動車学校はどうでしょうか。以前は500万円を超える労働者はかなりいました。いまはどうなっていますか。若い人が自動車学校に入って、最初に指導員資格を取って、15万か16万をもらう。10年間にわたって毎年2千円しか賃上げがなければ、17万か18万です。組合はもっとがんばらなければいけないと思いますが、しかし、現実には教習場の料金は上がらない。経営環境は厳しい。そういうなかで、この間、2400円とか3000円の賃上げです。 冒頭にお話したように、以前は年功序列型賃金で、単身者の初任給から賃金カーブの上昇があった。それが抑えられ、限りなく単身者初任給に引き付けられていく。こうして現実に、「年収300万世帯」が統計で30%を超えた。「世帯」ですよ。単身者が1人で働き生活していて300万ではないのですよ。 3.階層分化の急激な進行は社会の分裂を生む 階層分化がいま急激に進行しています。そのことを取り上げたまともな本も出ていますので、機会があったら読んでください。 階層分化が進み、連帯や共助共生という考え方や社会のあり方が破壊されていきます。社会が分裂していきます。治安が悪くなったり、犯罪などいろんな問題が起こってきます。アメリカではいま、エリートたちの「自衛の町」が増えています。町の入り口はガードされていて、「よそ者」は入れない。そこに帰ってきたら安全で安心する。社会が分断されて、共に生きるとか、共に助け合うとか、連帯して社会を作っていくということが崩壊する。すると、「治安問題」になって、自衛の町が生まれてくるわけです。 さきほどお話した1千万円を超える収入の人々を対象にした雑誌が発行されたり、「六本木ヒルズ族」と呼ばれる人々が「勝ち組」としてもてはやされる風潮が強まっています。そのような世界では「強い個人」、「自己選択」、「自己負担」、「自己責任」が強調されます。つまり、弱い人、自己選択や自己負担ができない人、自己責任をとれない人たちはダメな連中だ。そんな連中のために、どうして国の予算を使わなければいけないのか。弱者のために、我々の税金をどうして使わなければいけないのか。社会保障ではなく自己負担だ、自己責任だ。このような流れが日本の社会のなかにも生まれ始めています。 二極分解が、世界的なグローバリゼーション、新自由主義の時代のなかで起きています。貧困や飢餓が世界中に拡大していても、日本は先進国だからそんな心配はないと言われるかもしれませんが、いままでお話してきたような事態が急速に進んでいます。 それでいいのか。そんな働かされ方でいいのか。200万や250万でどうやって生活していくんだという怒りの声を上げていかねばなりません。 (3)05春闘の動きと私たちの取り組み 1.大手回答の特徴 大手回答が出ましたが、その特徴は、企業の業績は一時金で反映するということです。一時金のほかに「賃金体系維持分」があることに注意が必要です。中小企業労働者にとっては、そもそも定期昇給はないか、あるいは廃止されようとしています。就業規則の改悪で定期昇給が外される事態が私たちの組合でも起きています。新聞は意図的に、「定期昇給」という言葉を使わなくなっていますが、これは問題です。トヨタはこの「賃金体系維持分」が6900円でした。日産以下の自動車各社、電機、鉄鋼、造船重機まですべて、賃金体系維持分の引き上げは7000円です。要するに定期昇給です。その上に、年間一時金がある。トヨタの場合はこれが年間244万円ということです。それをもらえるのは、もちろんトヨタの全従業員ではありません。 このような大手民間の回答に対して、連合は好意的に評価をしました。自動車総連の会長は「優と良の中間で合格点」とコメントしています。また読売新聞は、「主役の座を降りた賃金交渉」、「ベア要求をした組合はあまりない、労使協調が定着して賃金は主要テーマでなくなった」と書きました。ちょっと待ってほしい、ふざけてもらっては困ると言いたい。年収200万、300万の膨大な労働者たちはどうしたらいいのか。その人たちには賃上げ要求はいらないというのでしょうか。 この記事のなかで、非正規雇用労働者が増えて、技術の継承や安全対策などが心配になっているということが少しですが書かれています。しかし、正規雇用から非正規雇用にどんどん置き換えられていっているのです。トヨタの膨大な黒字を支えているのは、日本国内では外国人労働者、とくにペルーとブラジルの日系二世の労働者たちです。トヨタの本拠がある豊田市の周辺に、このような日系二世労働者の町がいくつもあります。彼らは、「賃金体系維持分」が上がったり、年間の244万円の一時金がもらえるわけではありません。ほとんど最低賃金です。 鎌田慧さんが30年ほど前、トヨタの下請けで期間工として働いたご自身の体験から「絶望工場」という本を書かれました。皆さんはいまでも、新聞公告でトヨタの期間工の求人を見かけることがあると思います。期間工から本採用に上げるということがいくつかあるようですが、しかし、期間工は非常に劣悪な使われ方で日本人のほとんどは退職していく。鎌田さんは先日、朝日新聞の書評欄に、いまでも同じ状況だと書いていました。 また、トヨタは生産の45%を国外で行っていますが、たとえばフィリピン・トヨタは労働組合を認めない。組合を作るなら工場は中国に行くぞと、トヨタはフィリピンの商工会議所に圧力をかけてつぶす。そういうことの結果として、一部の労働者が244万円の一時金を手にする。こうしたことが労働運動にとって正しいはずはありません。 2.われわれの春闘を! かつては大手の回答で賃上げ相場が形成され、中小への波及効果がありました。大手がこれだから、中小はその8割や6割はほしい、がんばって勝ち取ろうと中小の春闘が続きました。大手の労使協調春闘はもはや、そのようなことには無関係です。生活できる賃金を私たちがはっきり要求しなければいけない時代です。 ●生活できる賃金を要求して、怒りの春闘へ! 1844年イギリスで、世界の工場と称されたマンチェスターからロンドンに向けて、ブランケット・マーチという行進が行われました。古い毛布を持ち、それにくるまって野宿し、そうしてロンドンまで行進してマンチェスター労働者の窮状を訴えました。「貧者の行進」です。昨日、東京ではむしろ旗行進が行われました。「200万では食えない!」、規制緩和、民営化の犠牲を労働者に押しつけるな!という闘いをもっと大きくしていくことが必要です。 ●非正規雇用労働者の権利と均等待遇の実現を! パート、派遣、契約労働者の権利と均等待遇の実現を要求して闘いましょう。日本の労働者の3割が非正規です。29.8%という統計数字が出ています。正規労働者は減り続けています。雇用状況が回復したといっても圧倒的には非正規雇用で、やっとの思いで就職している状況です。今年、非正規雇用パンフレットを作成したので、活用しながら取り組んでいきましょう。 ●能力・成果主義賃金に反対しよう! 能力主義・成果主義を採用する企業が増え、その対象も労働者全体に広がってきています。電通労組の仲間が第2回学習会で報告することになっていますので、ここでは省きますが、成果主義との闘いはこんにちの労働運動の重要な課題です。 ●最低賃金引き上げの闘いを! 「生活できる賃金」を考えるときに、最低賃金引き上げの闘いが不可欠です。日給で619円でいい、これ以上であればいくら安くてもいい、法的には違反でないという風潮はどう考えても不当です。さきほどのタクシーのような事態が広がってきますから、最賃の底上げの闘いが必要です。最低賃金審議会は公開が原則です。619円で生活できるのかという声をぶつけていくことが必要です。 同時に、各単位組合が企業内最低賃金の要求に取り組んでいくことも必要です。たとえば自動車学校にアルバイト指導員が導入されそうだという問題があります。工場でも、正社員だけではなくて、派遣やパートや臨時の労働者たちが増加します。そのときに、企業内最低賃金、年齢別最低賃金を要求して勝ち取っていくことを通じて、待遇差別ができない仕組みをわれわれの側から作っていく。そのようなことを含め、最低賃金の闘いを強化していきましょう。 ●憲法改悪反対、イラクからの自衛隊の撤退! このような要求とあわせて、この間取り組んできた反戦・平和の闘いを強化し、そして憲法改悪反対の大きなうねりを作り出していきましょう。 最後は駆け足になりました。このような時代ですから、どうしても厳しい話が多くなりますが、やはり労働者が怒らないと職場も社会もよくなりません。 毎年3千円しか上がらなければ、10年たっても3万円しか上がらない。これで労働者の将来は作れるのか。みんなで闘いを組織し、怒りを会社や政府にぶつけていこうでありませんか。 ■以上 |