「コムスン不正」の原点に労働組合弾圧
宮城全労協/2007年6月16日

●2000年、コムスン労働組合の闘い
●厚労省の政策破綻が問われている
●資料/コムスン労働組合の闘い


●2000年、コムスン労働組合の闘い
「安心して介護サービスを提供できる労働条件を!」


厚生労働省は6月6日、コムスンに行政処分を下した。厚生労働省の対応は遅きに失した。コムスンをめぐってはトラブルが多発していたし、とくに2006年に介護保険制度が改定されて以降、コムスンに限らず介護現場は抜き差しならない事態に陥っているからだ。

行政処分以降、連日、コムスン不正の実態が暴かれている。たとえば、現場にかせられた顧客獲得のノルマ、介護報酬の架空請求、未払いサービス利用料の取り立て等々。「コムスンでは、滞納している利用者への通知などの業務を債権回収業者に代行させていたが、こうした実態を、『まるで消費者金融のようだった』という関係者は多い」。「都内にあるグループ傘下の有料老人ホームで施設長をしていた男性は、『人を金を払わせる相手としか見ていないから、利用者にも従業員にも受け入れられなかった。人を軽視する会社に介護ができるはずない』と苦々しそうに話した」。(読売オンライン6月16日/「コムスン強引商法、ケア責任者やヘルパーらの証言続々」)

コムスンの強引な経営姿勢は当初から問題になっていた。しかも、経営陣はそのスタート時点で労働組合への徹底弾圧に乗り出し、現場の声を封じ込めようと策動した。労働省も当時、解雇や賃金不払いなどの相談に対応して、コムスンを「労働基準法に基づく監督指導」しているほどだ(*資料)。


2000年、コムスンは転機を迎える。この年の4月、右往左往の混乱のなかで介護保険制度がスタートした。「国が介護保険制度というハードを敷いた。これはビジネスチャンスだと直感した」と、折口会長はインタビューに答えている。折口はそれまでの強引な拡大経営の破綻をリストラ解雇によって清算し、介護保険制度にシフトしようとした。

これに対してコムスンの労働者たちのなかからリストラ反対、労働条件の改善を求める声が高まり、コムスンの拠点であった福岡を中心に労働組合が組織された。組合は全国一般労働組合全国協議会に加盟し、闘いが関東などにも広がろうとした。


当時、組合加入を訴えるリーフレットには次のように職場実態が書かれている。

コムスンで介護労働。
深夜の一人勤務。夜勤明けから連続する日勤。
休めず、身体を酷使する。先の見えない日々。不安定な雇用。安すぎる賃金。
クライアントへの気持ちだけがよりどころの私。
なのに献身という言葉が空回る。
燃え尽きて職場に絶望するまえに、
安心して介護サービスを提供できる労働条件を手に入れたい。

「安心して介護サービスを提供できる労働条件」は、コムスン労働者の共通の願いであった。折口会長ら経営陣は不当で徹底的な弾圧をこの組合に加えた。まさにコムスン不正の原点に労働組合への破壊攻撃があったのだ。


宮城全労協は2000年9月、コムスン労働組合と全国一般全国協議会の要請を受けて、東北事業部への抗議申し入れを行っている。ここに当時の資料(*資料)を掲載する。

なお、コムスン労働組合の闘いは、現在、介護労働者組合として引き継がれている。

介護労働者組合は「コムスン問題に関する声明」を発表し、コムスン、グッドウィルグループの介護事業からの撤退、利用者のサービス保障とコムスン労働者の雇用・労働条件の保障、介護保険制度の大幅な改善などを求めている。レイバーネット・ジャパンに掲載されているので同サイトを参照していただきたい。(続報)


●厚労省の政策破綻が問われている

折口会長は厚生労働省にとって「救世主」だったはずだ。彼はまたベンチャーの代表的存在であり、「六本木ヒルズ族」の一員であり、豪奢な生活ぶりが成功者の証として持てはやされた。あいつぐ買収による経営拡大が推奨され、2004年には日本経団連の理事に就任した。2005年には「紺綬褒章」を得ている。安倍首相(03年、当時官房副長官)との対談(*注)が誇らしげに自社ホームページを飾っていた。時代の風に乗って、まさに順風満帆であった。それが一転、厚生労働省に切られるや、「介護を食い物にした悪徳経営者」に転落した。

折口会長が社会的な指弾を受けることは当然だ。だが折口やグッドウィル・グループを担ぎ上げた人々の責任と、このような経営を可能にした政策が問われなければならない。

介護事業の「民間開放」は規制緩和・公的部門の「民営化」路線のもとに行われた。介護保険という公的な制度にともなう介護事業が、見切り発車の形で企業に一斉に開放された。「介護産業」は急成長したが、厳しい市場競争のなかで不正は常態化していった。「2000年度から2005年度までに、不正請求で自治体から指定取り消しを受けた事業者は約450に上る。自治体は、計約55億円の返還を求めたものの、回収率は6割に満たない」(日経新聞6月7日)。市場競争は、同時に、多くの中小事業所を閉鎖に追い込んだ。犠牲は利用者と介護労働者に集中した。低賃金と苛酷な労働によって、労働者の離職率はきわめて高い。宮城合同労組の介護労働者の仲間たちは、「これでは結婚できない、子どもを持てない」と指摘してきた。

制度のスタートにあたって、厚生労働省はコムスンを利用した。厚生労働省はコムスンの経営展開とタイアップして介護事業所を全国に急増させた。その厚生労働省がコムスンを切った。「量の拡大」から「質の確保」への方針転換であり、「事後規制」原則の確立だという。しかし、政策破綻の責任をコムスンに負わせようとする厚生労働省の意図が見え見えだ。

グッドウィル・グループの本体である人材派遣業でも、「日雇い派遣の天引き」で不正が糾弾されている。人材派遣と介護事業は規制緩和政策が作り出したビジネスチャンスの代表的分野だ。コムスン−グッドウィル事件は、この間の経済社会政策の中心部でなされた不正であり企業犯罪であり、その全容が解明されねばならない。「介護事業からの撤退」「市場原理による事業の売買」によってコムスン事件が一件落着とされてはならない。

タクシー、ツアーバス、外国語学校など同様の問題がいたるところで噴出しており、行政も放置はできないほどだ。安倍政権は再チャレンジがそうであるように、政策そのものがごまかしになっている。だが「格差問題」として表面化している事態は、政策の転換が必要であり、応急処置では解決できないことを示している。


●資料1
組合結成(2000年9月)当時のチラシより抜粋


<コムスン・グッドウィルは組合つぶしをやめろ>

全国一般労働組合全国協議会・コムスン労働組合

全国最大手の介護企業コムスンは、無計画な経営計画が破綻し、6月に大リストラを行いました。しかし状況は好転せず、コムスンで働く労働者は再びリストラの危機にさらされています。そんな中、よい介護と安心して働くことのできる職場づくりを目指して、9月9日、九州を中心とするコムスン労働組合が結成されました。

ところが、介護企業コムスンに労働組合ができたとたん、会社はひどい組合つぶし!人権侵害!組合員への懲戒解雇、監視労働、「暴力事件」でっち上げ。こんなこと社会的に許されない。

会社は危機的な状況。労働組合の結成で、労使双方が努力してこのピンチを乗り切らなければならないというのに、コムスンは組合に敵対的態度を取り、露骨な組合つぶしに明け暮れている。

コムスンは介護企業のはず。しかし人権にはほど遠い。

◎団体交渉の引き伸ばし
◎組合員への不当解雇
◎暴力事件をでっち上げ、委員長ら3名に自宅待機命令

これがコムスン・グッドウィルがしていることだ。


●資料2
全国一般全国協 コムスン労働組合に加入しよう!
(組合加入を訴えるリーフレットより抜粋)


<またリストラ?ご心配なく!会社との交渉で変えます。ご期待を!>

コムスンで働くすべてのみなさん!
コムスンに労働組合ができたよ!

それはコムスン労働組合といいます。「この会社どうなんだろう」「雇用は大丈夫」「仕事が長時間できつい」「拠点が統廃合らしい。また、東京へ転勤しろっていわれるの」という会社に対する不安、不満を私たちは労働組合を結成することで、会社と対等に話し合い、改革し、こんな皆さんの不安を少しでも解消しようと思っています。

私たちは、会社の計画性の欠落した経営方針を糾すために、なしくずしのリストラを繰り返し、雇用責任をとろうとしない経営陣に対して組合を結成することで自らの手で雇用と労働条件を守るために立ち上がりました。私たちが求めるものは、労使が対等に話し合い、労働条件、待遇を決定するあたりまえの労使関係です。


<コムスン労働組合が会社に要求していること>

1.会社の経営状態の現状について、具体的資料に基づいて組合に説明し、現時点で考えている対策を具体的に明示すること。
2.ハートフル・サポート室に所属する組合員の明確な雇用保証。
3.不可能な達成目標を強いた成果主義的処遇制度の撤回。
4.ケアスタッフ、入浴スタッフ、ケアマネージャーなどの専門職組合員の長期出張について組合と話し合い決定すること。
5.ケアリーダー、ケアスタッフの長時間拘束の労働条件を改善し、必要な人員の確保
6.全国の労働基準監督署から是正勧告が出されている「主任」への時間外割増賃金の支払い。
7.非常勤職員組合員の雇用保証。
8.専門職スタッフの現場での諸個人間の労働強度、勤務条件の不均衡を是正。その他。

<ほんとうに必要なことは介護労働の労働条件改善です。>

1.厳しい介護の労働現場

介護の労働現場を整理すると、○多様な雇用形態、○不規則勤務、○上司・同僚とほとんど顔を合わせることのない非常勤、登録の人たちの直行・直帰業務体制、○女性の職場、○高い転職率、再入職率、○従業員の幅広い年齢層、多様な資格、○身体的負担の多い重労働、○恒常的な緊張感、ストレスが集積する労働、があげられます。

2.介護サービスの社会的公共的性格と営利追求は矛盾する!

会社は(2000年)6月に1400人に上る希望退職を募るリストラを行いました。しかし経営状況は好転せず、さらに拠点の統廃合を計画しています。介護保険初動期の無計画な経営方針の失敗は会社のベンチャー的企業戦略にあります。組合は会社の事業方針の改革を要求します。

3.これ以上のリストラは許せない!

わたしたちは会社の経営が危機にあることはしっかりと認識しています。協力する意思もあります。労働基準法違反を承知の上で、介護保険開始前夜の超人的な激務をこなしてきたのはわたしたちだからです。しかし、このような一方的で自らの経営責任を回避した合理化には協力できません。会社の経営危機状態の説明を求め、責任の所在を明らかにし、必要な改革はなんなのかを話し合って納得いくことであれば協力します。そのために会社と労働組合の間で団体交渉を開催し、すべての職種の労働条件、待遇について問題点の改善をおこなうことを組合は会社に要求します。

4.コムスン労働組合に入りましょう。

樋口会長が加入を呼びかける労働組合の加入用紙が全国の社員宅に会社の封筒で届きました。でもこの労働組合とわたしたちの違いは、会社危機を会社とともに乗り越えるにしても、わたしたちは労働者を犠牲にするリストラを行なう会社の意のままにならないことです。なぜなら、コムスン労働組合がコムスンに働く者の自主的な労働組合だからです。コムスン労働組合は労働者の利益を第一に考えます。


<あなたにお願いしたいこと>

◎労働組合に加入してください。
◎職場の不満、改善してほしいことを組合につたえて。
◎組合に関心を持って、知って。
◎自分の所属する部署の仲間に一人でも多くの参加を呼びかけて。
◎組合費を納め、組織を支えて。


●資料3
コムスン労働組合と宮城全労協の抗議申し入れ抜粋(2000年9月29日)

株式会社コムスン代表取締役会長
同代表取締役社長
同東北事業部殿

<暴力事件でっち上げ謝罪、組合員解雇撤回、団体交渉早期開催の申し入れ>

全国最大手の介護企業コムスンに、九州を中心とする組合が9月9日に結成され、全国一般全国協議会に加盟しました。
無計画な経営計画の破産で6月に大リストラを行ったばかりにもかかわらず、10月に向けて再度のリストラ攻撃が準備される中、安心して働け、よい介護ができる職場づくりを目指して結成した私たちの労働組合に対して、会社は敵対的態度をとり、露骨な組合潰し攻撃をかけてきています。

具体的には、
1.コムスン労働組合の9月14日に申し入れた団交に応ぜず、引き伸ばしを図り、
2.組合員への不当解雇攻撃をかけ、
3.九州事業部で暴力事件をでっち上げ、委員長ら3名の組合員に自宅待機命令を出す、など労働組合法により禁じられている不当労働行為や嫌がらせを繰り返しています。

組合はこれに強く抗議し、下記のとおり申し入れます。

1.全国一般労働組合全国協議会・コムスン労働組合が9月14日付けで申し入れた団体交渉を直ちに行なうこと。
2.9月22日に発生したと言われる事実無根の「暴力事件」でっち上げを謝罪し、組合委員長をはじめとする3名の組合員に対する自宅待機を直ちに撤回すること。
3.組合員に対する不当解雇を撤回すること。
4.介護業務不在の組合潰しを直ちに中止すること。


●資料4(新聞報道より)
コムスンを監督指導、解雇問題で労働省
(2000年10月20日 産経新聞)

労働省は20日、介護保険事業の不振でリストラを進めている介護サービス大手のコムスンに労働基準法に基づく監督指導に入ったことを明らかにした。「解雇された」「賃金未払いがあった」などと従業員からの相談申告が全国で計16件あったことを受けた措置。同省は12月、全国で千以上の介護関係事業所を対象に、介護労働者の雇用管理の実態調査を行う方針。


●(*注)
安倍・折口対談は行政処分直後から話題になったが、現在はグッドウィル社のホームページから削除されている。

毎日新聞(6月18日)によれば、「・・安倍首相は官房副長官時代の03年3月、東京・赤坂の料亭で親会社グッドウィル・グループの折口雅博会長と対談し」、そこでのやりとりはホームページに掲載されていた。(安倍)「民間の方の機動力で『事業として成り立つ』ことが大切。(中略)コムスンは一生懸命やっておられる」、(折口)「来年は高卒者を1千人採ろうと思っています。たぶん(高卒採用が日本で)1位になると思いますよ」、(安倍)「それはすごいですね」。

このことは6月14日の参議院厚労委員会で取り上げられた。小池議員(共産党)らの質問に対して、安倍首相は、「民間活力を生かす」という趣旨で対談した、「高い志」をもって介護事業をやってほしいと話した、と答弁した。逃げの姿勢ありありの安倍首相に対して、委員会での質疑はそれ以上には進まなかった。

■以上