(注)宮城合同労組は1964年に結成された。労働組合の組織化の一環としての様々な相談活動は当時から日常的になされていたが、個人を対象にしたいわゆる「労働相談」は1990年代に入ってからであり、宮城全労協準備会による労働相談センターの一員として始まった。それ以降今日まで、宮城合同労組の労働相談活動はねばり強く続けられている。その現状、特徴的な例などを紹介してもらった。
(宮城全労協事務局/2006年1月)
現在、宮城合同労組に月15件位の電話相談が寄せられている。大部分電話だけで終了しているが、交渉が必要だったり文書が必要だったりする場合には、なるべく早く面会することにしている。特に解雇の場合は対処が遅れると打つ手が狭まるので夜でも休日でも相談する体制を取っている。相談内容については全国各地のユニオンとあまり変わらないと思うが、全国で急増している外国人労働者からの相談は少ない。1つ接点ができると対処しきれないくらい相談が増えるだろう。相談体制も含めて今後の課題となりそうだ。
次に最近の相談の状況について幾つか述べる。相談は職場の団結が難しい状況から個人単位の闘いとなる。どうしても法律を武器に権利を守ることに力点が置かれる。そこで法律の動向に十分注意しながら闘ってきた。
解雇、雇い止めとの闘い
(1)整理解雇
倒産や夜逃げに対しては労働債権の確保、また支店など事業所閉鎖に対しては可能な限り雇用確保の取り組みを行ってきたし、現在進行中のものもある。前者の倒産や夜逃げではサービス業、製造業、運送業の何件かについて労働福祉事業団の未払い賃金の立替払制度を利用して未払い賃金・退職金を確保した。失業者の支部を結成して先ず団体交渉を申し入れ、未払い賃金を書面で確認することから始めた。夜逃げに対しては賃金台帳、労働者名簿を押さえる行動をとった。給付を待ちこがれる労働者に対し労基署のペースは遅い。何度も足を運び状況を確認しながら認定にこぎつけ、いずれの場合も1年程度かかって給付となり、立替払い金が組合員1人1人の通帳に振込まれた。時間と忍耐が要るが、それでもこの制度は貴重であり、制度廃止の動きに対しては闘う必要がある。後者は、地方支店の廃止や赤字部門の縮小を理由とする退職勧奨や解雇であり、雇用確保の立場から団体交渉を申し入れてきた。団交を繰り返し金銭解決した事例が大部分だが、決裂して仮処分や本訴となることも想定して、裁判所でも通用する中味の不当解雇の主張を行うべきである。また金銭解決の際にはサービス残業があれば未払い賃金として請求し、また残業手当が支払われている場合でも計算基礎に職責手当など当然含めるべき諸手当が含まれてないことが多くあるので必ずチェックする。これに加えて債権とまでは言えないが、1時金・賞与の日割分と年次有給休暇残分の買取りを要求する。これらもほとんどの場合、解決金に加算させた。
(2)勤務成績不良を理由とした解雇
1方、「能力不足」を理由にした解雇がこのところ多くなった。これは個別労働契約の増加と関係が深いと思われる。また民間の就職斡旋事業の伸張とも関係がある。リクルートの求人票をみると、ハローワークのものが労働条件にほぼ限定しているのに対し、労働条件とは別に使用者の事業目標と使用者が労働者に要求する生産能力が具体的に挙げられている。使用者はこれらを労働契約の内容とみることになる。成果を上げないと債務不履行とみなす。その結果、成績不良を理由に簡単に解雇する。請負契約の解除とあまり変わらない。ハローワークの民営化ともなれば、成果目標達成が雇用の前提とされる労働契約が1挙に増大するであろう。勤務成績不良を理由とした解雇を団体交渉で解決できない場合、ひどすぎる懲戒解雇も同じだが地位保全の仮処分の申し立てを行うことが多い。整理解雇の成否が経営上の必要性で判定されてしまう傾向に比較して、成績不良がきわめて著しい場合でも、指導・教育訓練を尽くしたか、配転など解雇回避努力を行ったかが判定材料とされるので比較的闘いやすい。裁判は勝訴または勝利和解をかちとってきた。しかしヘッドハンティングで採用された場合などの地位特定社員、専門性を評価されて採用された専門職社員については「企業の期待に反した場合、解雇しても解雇権の濫用に当らない」とする確定判決がかなり出てきて定説化されてきており、これが1般職に拡大しかねないので今後注意を要する。
(3)非正規・有期雇用の解雇、雇い止め
相談は雇い止めに関してのものばかりではなく、契約期間内の解雇も多い。しかし雇用継続を要求する相談はほとんど無く、予告手当の不支給や離職票の離職理由を労働者の意思にされてしまったことに対するものが大多数を占めている。大分前までは非正規・有期雇用といえばパートタイマーのことであり主婦の短時間労働のことであり職種も小売業の販売員などに限定されていた。使用者もパートタイマーを補助戦力として雇用し、パートタイマーは人事考課の対象外であり、よほどのことがない限り契約期間を意識されることもなく反復雇用され続けた。しかし近年の状況はそうではない。企業は主戦力についても年齢性別に関係なく非正規・有期雇用にどんどん切り替え、人事考課を適用して成績が悪いとみれば簡単に解雇・雇い止めを行い、あるいは契約期間中に「来期は延長しないから次の仕事を見つけなさい」と突きつけ、精神的打撃を与えて期限より早めに退職に追い込む。さらに派遣社員となると働き続ける権利はなしに等しい。例を出せば、派遣先企業が派遣元の人材会社に戦力外通告すると人材会社は労働者に対し新たに県外の派遣先を提示して退職に追い込む。こうした事例が今年3件あった。大手・中堅企業の正規労働者の場合、首切り目的で遠隔地への配転命令を下すことがよくあるが、大手の人材会社は時給900円程度、住宅手当の契約無しの派遣労働者の首切りに遠隔地への配転を使っている。
全国のユニオンの闘いでも非正規・有期雇用労働者に対する権利防衛の闘いの困難性をよく聞く。我々も状況は同じで、雇用を守りきれたケースは少ない。
しかし雇い止めの相談をとおして製造業で支部を結成したこともあり、やり方に工夫をこらし、また各地の経験を取り入れ、権利防衛の闘いを繰りひろげていきたい。
解雇に対する行政・司法の動向
労働基準法は18条に第2項を追加し「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」となった。小泉首相は、就任直後から、「解雇しやすくすれば、企業は安心してもっと人を雇う」という小泉的発想で、解雇ルールの生成を打ち出していた。政府案は「解雇することができる」という原則の明記、これに日弁連他の反対意見は労基法の主旨である禁止規定及び最高裁判決の原文遵守。白熱した攻防を経て18条の2が2004年4月施行された。
では労働局、労基署の実務はどうか。相談窓口は相変わらず「不当解雇の争いは民事のレベル」とだけ説明して終わりにしている。むしろ以前よりも言明を避ける態度が目につく。
1方、金銭解決制度の導入は経団連の要請により労基法に組入れる準備が本格的に開始された。裁判所が「復職困難」などの要件を認めれば金銭の支払いで解雇できることになる。今でも解雇無効の仮処分では初回の審尋から金銭和解の打診が行われる。最初から本訴で始めても、書面による弁論が終る時点で和解が入る。蹴ればいいのだが、そうすると「非常識」の心象を与えてしまうので一旦は和解を受け入れることにしている。支店閉鎖による解雇の和解で仙台地裁の裁判官が、原告組合員の要求を聞かないまま被告会社との間で和解金額を決めて強力に指揮した事例もある。また、宮城県地方労働委員会の個別労使紛争処理のあっせんは2004年度に17件を扱い、全て金銭解決で終了したと聞いている。つまり司法と行政の場で金銭解決制度の実績が長年培われてきたと言ってよい。この実績を労基法に明記することにより新設されたばかりの解雇権濫用禁止規定(18条の2)の意義を消滅させようとしている。
年収200万時代と労働相談
中高年リストラの勢いは衰えていない。退職勧奨を受けている中高年労働者にたいしては、頑張り続けられるように時々飲食の場を設けたりして話し込むことにしている。退職金を上乗せして退職しても仕事がない。仙台圏はまだましだが、他の市町村では若年層でも就職口が少ない。再就職先がなく、やっとたどり着いても年収200万程度しかも非正規・雇用ばかりだから、本人も相談員も何とかいじめをはね返して、企業に居残る方策を考える。
これだけ非正規・雇用が職場に増えると企業の側の正規労働者に対する風当たりが強くなる。3年勤務してきて突如労働契約書を作るといわれて署名したら、1年契約と書き込まれていた事例の相談があり、すぐさま錯誤無効を主張した文書と定年60歳を規定した就業規則の優先を主張した文書を提出した。労基署の見解では、これが採用時の労働契約であれば、その他は就業規則が生きるとしても1年契約が生きることもあるとされている。
サービス残業は企業が強引なリストラで人員縮小した結果、増加してきた。正規社員4名、非正規社員2名の事業所で労基法41条(管理監督者)を根拠に正規4名全員を非正規2名の管理監督にあたる立場のものと強弁してサービス残業させサービス休日出勤させるケースがあり相談を受け、労基署と協力し是正させた。残業手当がないと正規でも県内の若年層は年収200万程度であり、非正規の水準と変わらない。
では、年収200万時代を迎えて賃上げ要求の相談、組合結成の相談があったか。賃下げに対する相談はあるが、「何年働いても賃金が変わらないから相談したい」というケースは未だにない。しかし、宮城合同労組各支部の若い組合員からは日常的に低賃金に対する不満が出されており、わずかな賃上げ原資の配分を厚くするなどそれなりに対処してきた。未組織職場の若年層は転職に活路を見出しているのが現状だ。
今後の課題
あれこれの時代的要因や労働者の意識の変化があったとしても、労働運動の後退が職場の団結基盤を崩壊させた結果、個人労働相談の必要性が高まってきたと言える。だとすれば、各地域の労働相談活動をより強化し全国につなげ、資本主義の横暴に対抗する社会的運動に押し上げなければならないと思っている。

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