「女川原発は宮城県沖地震に耐えられるか?」
(1月28日、石巻で講演会)


1月28日、石巻で開催された集会の報告を、郵政合同労組の仲間から寄せてもらいました。


(注)
2005年8月16日、宮城地震(震源:宮城県の牡鹿半島、マグニチュード7.2)によって、女川の3つの原発はずべて「緊急自動停止」した。これは、原発のセンサーが地震に反応して停止した、2度目のケースだ。原発が想定している基準以上の揺れが、各々の原子炉の地下に設定された地震計によって感知され、そのことによって停止に至ったのだ。(1度目は03年5月26日の三陸南地震で、3号機が自動停止した。この時は、1・2号機は定期点検中だった。)

「間違いなくやってくる宮城県沖地震」は、今回の規模を上回ることは確実だとされている。政府の地震調査委員会によれば、宮城県沖では、「30年以内に99%の可能性で、マグニチュード7.5クラスの大地震」が発生する。本報告ではM7.6、連動型の場合は、M8.2とされる。

「抜本的対応」が問われている。しかし、今回、電力と政府がやったことは、ごまかしであり、危機対応の先送りにすぎず、まったくの責任回避である。

「マンション耐震偽装」問題で、政府・国土交通省は「公的支援」を早々と決めた。その理由は、第一に「純然たる民と民の関係とはいえない(「官」の責任がある)」、第二に、倒壊の危険性があり、緊急を要する」というものだった。この二つの基準を、「原発の耐震問題」に適用すれば、いったいどうなるのか。政府と電力会社は、この問いに、はっきり答えなければならない。

今回の原子炉停止は、まさに<天の声>であり、原発政策の転換と具体的な撤収施策に踏み出す契機としなければならない。


*なお、1月18日には、昨秋に続いて、「大地震に耐えられない女川原発を動かすな」「原発耐震設計審査指針の抜本的強化」「女川原発の設置許可の取り消し、耐震設計の安全審査のやり直し」などを求め、各地からかけつけた人々によって対政府交渉が行われました。電通労組の仲間も参加しました。

*この交渉は、2月10日にも、継続して行われました。
『たんぽぽ舎』(http://www.jcan.net/tanpoposya/hyoushi.htm)は2回目の交渉について、「国側に誠実な説明責任の姿勢が全く少ないこと、不勉強が目立ち、市民側の追及にタジタジとなって、次回に持ち越したテーマが多かった」との感想のうえで、「女川原発の耐震性が全く不十分なことが事実として広く知れわたり、国の安全審査のズサンや瑕疵が明らかになったにもかかわらず、女川原発を動かそうとする東北電力と「YESを与えた国」の両者に怒りを覚えます。重大な問題なのでひきつづき追及しよう」と呼びかけています。

*各地の市民団体による「女川原発の耐震設計に関する公開質問状(1月16日付)」を、ぜひ参照してください。
『原子力資料情報室』(http://cnic.jp/)に掲載されています。


「女川原発は宮城県沖地震に耐えられるか!」(石巻で講演会)

報告/郵政合同労組石巻支部

1月28日、石巻公民館で、『女川原発は宮城県沖地震に耐えられるか』というテーマで、長沢啓行・大阪府立大学教授の講演会が開かれました。確実に起きる宮城県沖地震で女川原発は本当に大丈夫なのかと疑問をもち、心配する住民が、石巻のみならず広範囲な地域から参加しました。講演会は翌日、仙台でも開催されました。

はじめに、主催者である「原子力発電を考える石巻市民の会」から、講師の長沢先生(電気情報システム工学分野教授)のプロフィールと、単なる科学者ではなく運動家として活躍されていることが紹介されました。

主催者から、この間の状況報告ならびに活動の報告がなされました。

昨年8月16日の宮城県沖地震で女川原発の三基のすべてが自動停止しました。それ以降、耐震設計の見直し問題に関して、原子力安全委員会などの耐震指針分科会の傍聴や、原子力安全・保安院や東北電力との交渉、石巻市長や女川町長への要請を行なってきました。しかし、原子力安全保安院がわずか1ヶ月で3回という拙速な討議で「安全」というお墨付きを与えるや、石巻市長と女川町長は、住民への説明会の開催という最低限の説明義務さえ果たさず、宮城県に2号機の運転再開の同意を伝えました。さらには、3号機、1号機も運転再開されようとしている中で、「市民の会」は3万枚のチラシを新聞折り込みし、原発の耐震問題を訴えてきました。


「女川原発は宮城県沖地震に耐えられないだろう」

長沢先生は講演に先立ち、自らの原発科学技術への疑問の中で、反原発に至った経過を語りました。講演は、『女川原発は宮城県沖地震に耐えられるか?』というテーマに触れ、「耐えられないだろう」という結論をズバリ言い切る所から始まりました。その内容について、簡単に記しておきます。


1.地震の発生するメカニズム。「地震は地球が生きている証」である。

2.世界で活断層や地震多発地層の上に建っている原発は日本だけである。

3.しかも、女川原発は北米プレートのど真ん中にある。

4.地震波は短・中・長周期の波がある。
(このことを説明するために、棒に4本の長さの違う振り子がついた仕掛けをゆする簡単な実験が行なわれた。固い地盤、軟らかな地盤や建造物の固有周期によって、地震波の与える衝撃・破壊能力が違うことを、過去の地震で建造物が倒壊した例で示した。)

5.女川などの原発の建造物は、固い岩盤とコンクリート仕立のため、短周期(0.03〜0.4秒)の直下地震に弱い。

6.とくに、スラブ内地震(*)や、沈み込んだ位置での境界地震では、地震後の津波が襲う。

7.さらに、プレート境界地震では、地震後の津波が襲う。

8.国や電力会社が、耐震設計において、過去の地震の参照段階で地盤の固さの違う石巻と宮古を使用し、石巻と大船渡の似た例を使用しないことで、数値を歪曲したり、数値を一桁過小に見積もって、都合のよい耐震設計指針を引き出している。

9.最後に、「地震は防げないが、原発震災は防げる」。

「強震動観測を始めてからわずか50年。地震のことはまだほんの一部しか解っていない。活断層による直下地震、沈み込んだプレート境界地震(*)、スラブ内地震に耐えられる原発の耐震設計指針を抜本的に強化し、耐震性のない原発は即刻停止する以外に住民の安全は守れない」と、長沢さんは結論づけます。

具体的には、
@女川原発1〜3号機は耐震設計の安全審査をやり直すこと。
A基準震動(*)S1、S2を策定し直し、S1Dの2倍位の余裕をとること。

最後に、「このまま運転を再開したら、30年以内に大被害は避けられない。原発震災は何としても防がなければならない」という結語で、講演は終わりました。


講演の後、貴重な機会なので、講師と参加者との討論が行なわれました。
「日本の原発が危ない所に建っていることを知ったが、やはり原発はない方が良いのではないか」、「耐震設計でまっとうな評価をしないということをどのように考えるべきか」、「スマトラ沖のような地震後の大津波に女川原発は耐えられるか」、「科学者のモラルの問題もあるのではないか」、「運動と闘いによって政治を壁を破るしかない。住民の理解を得るために何が必要か」など、多くの質問が出され、講師より丁寧な回答や助言がなされました。

「地震は天の声」!

「耐震偽装マンション・ホテル問題」やJR事故と同様に、安全無視の上で成り立つ利潤追求の市場原理主義が問われています。立地自治体は「国や電力会社が安全と言ったから」と逃げ、国は「学者が言ったから」と逃げ、学者は「意見を言ったから」と逃げる。誰も責任をとらず、被害は住民だけが受ける。そのような無責任構造の上に、原発の耐震許可がまかり通っています。また、住民の利益を何より優先すべき市町村自治体が、破綻した財政や過疎化の中で、国からの原発交付金に目がくらみ、カネを求めて次々と原発を誘致し、「原発依存症」に陥っている現実も見逃せません。

「地震は原発の危険性を教える天の声」という発言が参加者からありました。長沢先生は、この天の声を備える側の問題意識として受けとめて、国や電力会社の「これ位で、まあいいか」を許さない事が大事だと応じました。住民の安全を自ら守る意識の向上と闘いがなくてはならないと改めて感じました。

住宅等の補強工事や地震保険に入るなど、宮城県沖の大地震に備えている家庭が多いですが、もしチェルノブイリのような女川原発震災が並行して起こったらと考えるとぞっとします。地震と津波で交通手段も破壊され、水、食料も汚染される放射能の原発災禍はまさに地獄絵です。

スライドや実験もまじえての熱のこもった長沢先生のお話を「天の声、地の声、人の声」と大事に受けとめ、原発震災を起こさせないための提言に住民として真摯に応えなくてはと強く感じた講演会でした。


*参考/「スラブ内地震」

・・プレート境界地震には、プレートが沈み込む「海溝境界地震」と、深く沈み込んだプレートの境界で起こる「プレート境界地震」の2種類がある。05年8月16日の宮城県沖地震は後者で、<短周期の地震動>が強いという特徴がある。

・・プレートの境界部分だけでなく、もぐり込んでいるプレート内部にも歪みがたまる。この歪みがときどき放出されるのが「プレート内地震」。この場合も、沈み込む海洋プレート内の浅い地震と沈み込んだ海洋プレート内の地震が区別される。後者をとくに「スラブ内地震」と呼び、この場合も<短周期地震動>が強い。03年5月26日の三陸南地震がこのスラブ内地震。(以上、講演資料から)

*S1、S2
原発の耐震審査指針の基準となる地震動。「設計用最強地震(将来起こり得る最強の地震動)」がS1、「設計用限界地震(現実的ではない限界的な地震動)」がS2。

(以上)