08年12月26日臨時国会の閉幕を待っていたかのように、日本郵政は「かんぽの宿等の一括譲渡」を発表した。「かんぽの宿」は民営化以前、「保養センター」と呼ばれていた施設である。
年明けの1月6日、鳩山総務大臣が「出来レースと思われる」と見直しを求めたことから「政治問題」化し議論が拡大している。1月7日、国民新党は「承服できない」と声明を発表した。
鳩山が問題視することについて、「進行中の郵政民営化見直し議論で主導権を握り、麻生政権の浮揚につなげる狙い」(毎日)とか、「野党の追及を見越して先手を打った」(産経)などの見方も出ているが、その思惑がどうであれ「国民の共有財産」というべきものが一部の利益になることを許すわけにはいかない。
<鳩山批判一色の全国紙>
当初、全国紙の社説の論調は鳩山批判一色といっていいものだった。
「総務省の「待った」に意義あり」(1月9日・日経新聞社説)。
「かんぽの宿譲渡 「白紙」なら合理的理由を」(16日・産経)。
「かんぽの宿 筋通らぬ総務省の横やり」(18日・朝日)
「かんぽの宿 与党の民営化姿勢問われる」(20日・毎日)
とりわけその主張で突出していたのは朝日の社説だろう。
「宮内氏は規制緩和や民営化を推進してきた。官僚任せでは構造改革が進まないため、当時の政権が要請したものだ。過去の経歴や言動を後になってあげつらうのでは、政府に協力する民間人はいなくなってしまう。」
そこに「竹中平蔵」が「参戦」し、似たような主張を展開した。
「(宮内氏が)郵政民営化にかかわったというのは、ほとんど言いがかりのようなものである」「民間人が政策決定にかかわったからその資産売却などにかかわれない、という論理そのものに大きな問題があることだ」「これは、政策決定における民間人排除の論理に等しい」(1月19日・産経)
宮内擁護といってもいいこのような主張にはさすがに反論も多かったようで、その後の論調は「きちんと説明を」などと変化してきているが、基本的なところは変わりがないと言っていいだろう。
<「かんぽの宿」だけでは無かった>
日本郵政の発表には「かんぽの宿等」と「等」が付いている。その別表の一覧表の欄外に、「かんぽの宿等の各施設に附帯する施設社宅等の施設及び首都圏9施設を含む」と付記してある。
一見、何のことか判らないこの内容を暴露したのが「週刊朝日」(1月30日号)だった。『日本郵政/オリックスとの不透明な関係/かんぽの宿に隠された「マル秘物件」』という「スクープ記事」で、首都圏9施設の一覧表を掲載した。五反田、武蔵境、町田など時価47億ともいわれるこの「物件」は、再開発してマンションなどにできる「オリックスにとっておいしいとみられている」というのである。
そして、かんぽの宿ではない「ラフレさいたま」という豪華施設が含まれていることに火をつけたのが、社民党の保坂展人議員だ。国民新党と共に現地視察した結果をブログで速報した。
「初期費用が、土地61億8000万、建物216億4000万、備品等を含めると、300億近い金額」「これに、他の施設や社宅を含めれば、108億8600万という郵政発表の数字とはかなり違いが出てくるといわれている」。
<「競争入札」や「40億の赤字」も「偽装」の疑い>
ここにきて、ようやく日本郵政は入札方法が「一般競争入札ではない」ことを認めたようである。日本郵政は社民党の質問に対して、「従業員を含む事業全体を譲渡する」ので「単純な競争入札は馴染まないと判断した」と回答している。
そして、「入札の後」に対象から「世田谷レクセンター」が外れており、この後はオリックスとの「密室の商談」に変化しているという指摘がでている(保坂氏のブログ)。
更に、「40億以上の赤字」という点も、公社時代のデスクロージャーでは05年には17億の黒字で、06年から会計方法を変えたことを日本郵政も認めている。「「営業」的には黒字だが、「帳簿」上は赤字」(週刊朝日2月13日号)。
<雇用問題が発生する恐れ>
日本郵政は「雇用を守るため一括売却」と説明しているが、これも怪しくなってきた。
報道では今も「3200名の雇用」と書いているところがあるが、「社員650人らの雇用維持に道筋」(12月26日東京新聞)という数字もあり、対象は正規社員だけという疑いが出ている。
ラフレさいたまでの保坂氏のやりとりでは、「ここで働いている正社員はわずかに5人。ホテル部門、スポーツクラブは業者委託契約。警備や設備保守、清掃などは請負契約で、アルバイトやパートでもなく、間接雇用の人たちで運営されている」。日本郵政とオリックスとの契約では、正社員は「期間の定めのない雇用とする」という条項があるだけで、「該当するのは正社員である5人だけ」というのだ。
この問題はメディアも関心が無いようだが、「間接雇用」の人たちはどうするつもりなのか。
<売却はリストラの一環だ>
すでに「かんぽの宿売却凍結/郵政リストラ後退」(1月30日・日経)という主張が出てきている。
「郵政は全国に3兆円近い不動産を保有。収益性の低い資産を売却して経営効率を高めるのが民営化の課題だ。かんぽの宿売却が滞れば、全国に二千五百ヶ所ある社宅などの資産売却への影響は避けられない」、「都市部では過剰とされる郵便局網の再編や数十億円規模の赤字と見られている逓信病院の経営改善などの「次の課題」も遠のく」、「全国特定局長会と進めている郵便局舎の賃料引き下げ交渉が行き詰るなど、改革揺り戻しの影響は随所に現れている。昨年十一月に公表を予定していた上場に向けた中期経営計画も、株式上場凍結論を受け、公表を延期したままだ」。
ここには国民共有の財産であるという視点はもちろん無いが、危機感の表れであるといってもいいだろう。
<郵政を元に戻せ!>
「かんぽの宿は2012年9月までに譲渡・廃止することが法律で決められている」というのが日本郵政やメディアの主張であるが、われわれはそのような言い分を認めるわけにはいかない。
この「かんぽの宿」問題にしても、「国民の共有財産としてどのような形で運営するか」は、そこで働く人を含めて国民全体で決めることではないか。「郵政民営化の見直し」の議論が始まった今、われわれはもう一度、「郵政を元に戻せ」と主張していくことが必要である。
2月4日/投稿者M(元郵便労働者)

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