創作小咄 その1




 あるところに,お爺さんとお婆さんがいました.お爺さんは山へ芝刈りに,お婆さんは川へ洗濯に行きました.芝刈りを終えたお爺さんが山を歩いていると,なにやら光るものが見えました.

  爺さん「ありゃ何じゃろうか?」

好奇心旺盛なお爺さんは,誘われるように光の方へ向かいました.すると,竹が光っていました.若い頃は剣の達人として鳴らしていたお爺さんは,気合一発!鉈を振るって竹をスパッと伐りました.

  爺さん「またつまらぬものを斬ってしまった…」

すると中には,小さな女の子がいました.…が,重傷でした.中のモノを傷つけないように気を付けたつもりでしたが,腕は鈍っていたようです.残念.お爺さんは女の子に応急処置を施し,この珍しい竹と共に家に持ち帰りました.


 いっぽう,お婆さんが洗濯を終えた頃,大きな桃が流れてきました.…大きいなんてモンじゃないです.スイカよりデカイです.そして食べ頃感満載です.これは是非とも喰らわねば!お婆さんは川に飛び込みました.

  婆さん「年寄りの冷や水って言うけど,あたしゃまだまだ若いわねぇ♪」

あっという間に桃に追いつくと,さっきまで自分がいた場所へとわざわざ川をさかのぼります.桃を押しつつ着物を着たまま流れに逆らうも何のその.余裕で帰還です….

  婆さん「あれま?意外と軽いじゃないの!」

それはあんたが怪力だからだ!というツッコミはさて置いて,着物が濡れているのは気持ちが悪いので,洗濯物と桃を持ち,さっさと家に帰りました.


 お爺さんが女の子の治療を終えたので,三人で桃を食べる事にしました.しかしさっきの件もあり,お爺さんはいつになく慎重に剣を振るいました.

  爺さん「またつまらぬものを…」

すると中には,小さな男の子がいました.今回は無傷です.「植物の中に人が!」という驚きの現象の連続に,お爺さんは竹と桃のサンプルをとって研究する事にしました.お婆さんは男の子に「桃太郎」,女の子に「かぐや」と名づけ,自分達夫婦の子供として育てる事にしました.いっぽう,お爺さんのミスで深手を負っていたかぐやは,桃を食べてみるみる回復しました.傷は痕を残さずきれいに消えました.よかったよかった.


 数年が経ったある日,桃太郎は奇妙な犬を見つけました.

  妙な犬「ここ掘れワンワン!ここ掘れワンワン!」
  桃太郎「ちょ〜怪しい!何だこいつ?喋ってやがる!?笑えるwww」

いつまでたっても犬は「掘れ」と言い続けるので,桃太郎は犬の示すところを掘ってみました.するると,土の中から小槌が出てきました.

  桃太郎「マジで何か出たー!この犬すげー!お宝だ〜〜!よっしゃー!」

びっくりしながらも,桃太郎は犬と小槌を家に持ち帰りました.世にも稀な「喋る犬」を見て,お爺さんは研究する事にしました.お婆さんは,

  婆さん「こんな話があったわな」

と小槌で桃太郎をブッ叩きました.すると桃太郎は一気に大人まで成長しました.…が,入院しました.かぐやには手加減をしたので,成長はそこそこでした.小槌も研究対象になりました.


 さらに数年が経ったある日,桃太郎は鬼退治に出かける事にしました.というのも,かぐやに

  かぐや「あんたも男なら,悪い鬼どもをやっつけて幻のお宝をGETよ!」

と言われたからです.言いなりになるのはシャクでしたが,男のプライドが「GETするのだ!」と命令します.そしてかぐやは美人です.好感度アップして損はありません.というわけで,出かけました.


 鬼ヶ島へ向かっていると,三つ子の猿介&雉彦&犬司が歩いていました.ガラが悪く,いいうわさは聞いたことがない奴らですが,腕っ節は確かなもののはずです.

  桃太郎「爺婆特製キビ団子をやるから,鬼退治を手伝ってくれ」
  三兄弟「お前のものは俺らのもの♪俺らのものは俺らのもの♪」

三人はそう言うと,桃太郎から団子を奪い取り,勝手に食ってしまいました.しかし流石は爺婆特製キビ団子です.

  猿介「我らはぁ!キビ団子三兄弟ぃぃ♪」
  雉彦「最高に…ハイッてやつだぁぁ!!」
  犬司「ジェットストリームアタックだ!」

と急にテンションの上がった三人は,なぜか桃太郎を「教祖」と呼び,言うことを聞くようになりました.何かしら怪しい薬品でも入っていたのでしょうか?


 なんだかんだで鬼ヶ島に着くと,のびのびせっせと働く鬼達がいました.平和な空気が漂っていますが,ここまで来ては引き下がれません.桃太郎と三兄弟は,

  鬼1「オラ達が何したってんだよぉ〜」
  鬼2「先祖代々の家宝が〜」
  鬼3「過去の謝罪と補償は済んだはずだ〜」

などと涙ながらに抵抗する鬼達を,次から次へとぶっ飛ばし,数々の財宝を奪い,家に持ち帰りました.


 宝は皆で山分けです.お婆さんが大きな葛籠をあけると,中から魑魅魍魎がうじゃうじゃ出てきました.しかし,流石は怪力自慢のお婆さん.襲い来る物の怪達を,難なく撃退しました.が,巻き添えを食って,三兄弟が犠牲になりました.お婆さんは彼らの取り分をつづらに詰めました.お爺さんが小さな葛籠をあけると,中からもうもうと煙が出てきました.何となく老けたように見えるお爺さんは,

  爺さん「これはトリックじゃ!…多分,水分を奪うガスなのじゃ!」

と言い,煙のサンプルをとって研究する事にしました.さらに,二つの葛籠の構造も研究する事にしました.


 桃太郎はご機嫌なかぐやに言い寄りました.

  桃太郎「なぁ,俺らって血の繋がり無いし,結婚しねぇ?」
  かぐや「う〜ん.嬉しいんだけど,もうすぐ月から迎えがくるらしいの…」
  桃太郎「よっしゃー!宇宙だー!新婚旅行は宇宙だー!しかもタダだー!」
  かぐや「ふふっ.そうね♪飽きたら戻ってこればいいし」

こうして数週間後,迎えに来た従者と共に二人は月へと旅立ちました.鬼から奪った宝と,実は親が大富豪だったかぐやの豊富な財産で,二人は悠々自適の生活を続けました.


 数年がたち,月に飽きた二人は地球に戻ってきました.最初に向かうのはやっぱり,お爺さんとお婆さんの元です.しかし,村に着いてみると,その様子は大きく変わっていました.しかし確かにここは,あの村のはずです.爺婆に会う前に,しばらく村を観光することにしました.ぶらぶらと村を歩いていた桃太郎とかぐやは,この村には不似合いな,大きくて妙チクリンな建物を見つけました.早速見学してみます.するとそこは,マッドな研究で有名な,百年ほど前の科学者の記念館でした.そう.お爺さんの記念館です.桃太郎とかぐやは,記念館に併設されていた爺婆のお墓にお参りを済ませ,その後はテキトーに暮らしましたとさ.


 完

written on 2006.04.22




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