サルノコシカケ、マイタケ、アガリクスなどなど、身体に良いといわれるキノコの多くは栽培されて乾燥粉末に製剤したり、エキスを抽出してドリンク剤にしたり、かなりの種類と量が消費されているようですね。ネットで検索すれば物凄い数がヒットして目が点になります。さぞかし儲かるんでしょーね。まあ、それだけ現代人が健康に不安を抱えている証拠なのでしょう。現に私だって、某社のサプリメントのお世話になっているのですから。しかし、飲んでいるのはビタミンとミネラルとが主で、キノコ関係はゼロ。北国では殆どの食用キノコが栽培できる上、春から秋まで天然物が入れ替わり生えてくれますから、補助食品は無用です。ただ、キノコは同じ品種でも生える場所によって毒性が出るものもあり、無闇な冒険はできません。有名な自然紀行作家の某氏は、始めて見たキノコを雰囲気だけで判断して試食に及ぶそうです。それで未だに生きているのですから、恐れ入った強運ですね。私などは若い頃に運を使い果たしておりますので、「お、こいつは食えそうや」なんて危ないことはできません。常食している種類と、類似毒菌が存在しない食菌だけ採取します。
ここで紹介する「ゴムタケ」は、紛らわしい毒菌が皆無として著名な先生方が太鼓判を押してらっしゃるキノコです。しかしですねえ、グロテスクなんですね、これが。本州時代に山で何度もお目に掛かっておりますが、食べようと思ったことはありません。ところが、冬虫夏草研究で有名なキノコの先生の本に「ゴムタケはムコ多糖類の塊のようなもの。ガンに効くので見付けたら必ずゲットしましょう!」と出ているではありませんか! 即座に北海道のキノコを扱った専門書を取り寄せると、道内でも発生することが分かりました。しかし、一度も見たことがないんですねえ。北海道では珍しい部類のキノコかも知れません。まあ、死ぬまでに1回くらいチャンスはあるだろうと消極的決意をした矢先、なんと、いきなりチャンスが巡ってきたのです。
9月を少し過ぎたある日、春に植菌したキクラゲが出ていないか、ホダ木をチェックしに行きました。キクラゲは数ある食菌の中で発生までの期間が最も短く、本州だったら、春植えて夏に「はしりキノコ」が出るほどなのです。ミズナラとヤナギの原木に近寄ると、黒い物が目に留まりました。お、出とる、出とる、今夜は生キクラゲの中華炒め! しかし……なんじゃこりゃ????
ゴムタケやんか!!!!
クリックして拡大写真を見てください。これ、食菌なんですよ。信じられます? まるで、ゴム栓です。
一応、キノコ栽培では害菌扱いのゴムタケ。早速、毎年バンバン発生中のシイタケをチェックしに行きました。被害ゼロ。まあ、キノコの世界では、最初に原木を占領した菌が勝ちますから、菌が蔓延している完熟ホダ木は普通大丈夫なんですがね。ヒラタケ、タモギタケ、ムキタケ、エノキダケ、ナメコなどなど皆無事。ホッとしつつ、残るは……
「ああ! こっちもやられた!」思わず喚いてしまいました。キクラゲと同じ時に植えたブナハリタケ(別名カミハリタケ。雪のように白いキノコ)のホダ木に黒い物体が……森林組合で買ったミズナラ原木に出ておるのですね。ミズナラは何回も買ってますが、これは初めての経験です。伏せ場が悪かったか? 或いは本州から取り寄せた種菌が原因か?
先に出てしまった以上、これはゴムタケのホダ木です。もう、キクラゲやブナハリタケは出てくれません。ガッカリしましたが、そこはそれ、関西系十勝人です。すぐにある計画が頭に浮かびました。秘密計画グフフのフ。
計画遂行の為には、先ず試食して人体への影響を調べねばなりません。幾ら薬効のあるキノコでも、副作用があっては具合が悪い。人間モルモットの候補は……私しかいてへんやんか!
いやあ、採取してはみたものの、なんか、手がズズ黒く汚れるし、変な毛(?)も生えてるし、○○先生、ホンマに大丈夫なんでっか?
因みに、ゴムタケって「マルチポンプ式空気銃のポンプ体」に良く似てるのね。指で摘むと中々弾力があってよさげな感じ。自前のエースハンターにいっぺん入れたろか? あ、鉄砲のカテゴリに興味ない人、スイマセン。稼業が稼業なもので、つい、こういう話になってしまいます。どうぞ、ごひいきに(笑)。
タテ切りにすると断面はこんな塩梅になっとります。極太のゼラチン繊維が密に絡み合ったような複雑な組織。生の状態で、相当プリプリしとります。ムコ多糖類というかコラーゲンというかドモホルンリン○ル……?
ヨコ切りの断面がこれ。
別のを引っくり返して根元を見ると、うーん、海の生き物みたいに見えますね。匂いは殆どありませんが、食欲が湧く代物じゃない。
キノコは生食すると中毒するものも少なくないので、とりあえず茹でました。トロリとした茹で汁にはコクがありそうな色が付いてます。火を通すと、なんだか旨そうですね。断面が中華料理の熊の掌みたいです。
ゼラチン液みたいな印象なので、紙コップ入りの茹で汁をボウルの水で冷やしてます。この後、冷蔵庫へ直行。固まるかな? (これは失敗。全然固まりませんでした。つまり、ゼラチン質ではなくてコラーゲンみたいです)
茹で上がったゴムタケは薄くスライスして、お皿に並べます。透けて見えて凄く綺麗。しかもクニャクニャ柔らかいくせに微妙な弾力があって、超高級キクラゲ(グラム1万円也)というような面構えです。
手に吸い付きます。しっとり、いい感じ。これなら、秘密計画も夢じゃない! 100パーセント天然素材の「ゴムホルンリ○クル」新発売!
この年最後のキヌガサタケと一緒に「さあ、試食だ! 最初に食べる人は誰? って、なんで私を指差すの?」まあ、言いだしっぺですから、観念してポン酢醤油で刺身風に、いざ!
「う、う、う、う、う、う、う・ま・い!」嘘じゃないです、ほんとに旨い。ダシが出るとかそういうのじゃなくて、やはり珍味の部類です。それに、凄く効きそうで、体の細胞にお湿りをくれるというか、リフレッシュするというか、舌を通り越して直接身体に落ちていく感触がありますね。エキスを抽出するより、自給食料と考えたほうが余程役に立ちそうです。という訳で、「ゴムホ○ンリンクル計画」は発案当日にして頓挫いたしました。沢山採れたら乾燥保存して冬場のオカズに使う予定。多分、キクラゲと同じような料理法が向くと思いますよ。キノコって、ほんとに面白いですね。