北国の神秘 カバノアナタケ

手元にある北海道新聞社刊「北海道のキノコ(正・続)」第6刷には「樺孔茸・カバアナタケ」として掲載されていますが、薬効についての言及は全くありません。この本が出たのは1994年ですから、当時は一部の人が経験的に健康に良いことを知っていたに過ぎないことが分かります。ガン征圧の切り札として持て囃される「アガリクス茸」の実に30倍のSODやβグルカンを含むこのキノコが、つい近年まで無名だったことに驚きを禁じえません。科学万能の現代にも、自然界には手付かずの領域があるかと思えば嬉しくなってきますね。特に「キノコ好き」の愛好者にとっては、知的好奇心を満たし健康にも良いのですからこたえられません。しかし、残念なことに、この「カバノアナタケ」は希少なことでも有名になりました。一説によれば、北国に自生する「シラカバ」や「ダケカンバ」の2万本に1本、生えているかいないかという稀有なキノコなのだそうです。0.005パーセントという恐ろしく低い確立でしか発生しない幻のキノコゆえに、左前になった石炭に変わって「黒いダイヤ」と呼ばれているのだとか。天井知らずだった一頃の高値も、ロシア産(チャーガ)が入るようになってかなり安くなったとはいえ、気軽に買えるような値段ではありません。だから、北国の人々は、自分で山に分け入り、家族に飲ませるために探して採るのです。ここで紹介している「カバノアナタケ」は私が採取したものではありません。地元ハンターで親しくさせていただいているお二人が鹿撃ちの時に偶然見つけたものを後日回収して分けてくださったものです(ことの経緯はこちら)。ブームになる前にもっとずっと北の地域で巨大なカバノアナタケを見たことがあるのですが、その時は「病気のシラカバかな? 黒いサルノコシカケなんて珍しいな」と一瞥して通り過ぎてしまいました。知らなければ、ダイヤも石ころに見えてしまうのですね。勿体無い話です。いつか記憶を辿って「あの場所」を訪れてみたいものです。

目方を量ると、ちょうど1ポンド(約454グラム)。採取した翌日にもらったので芯の部分はシットリしていて、生の状態でした。

手頃な大きさに割って持ってきてくださったものが都合4個。

何年も掛けて生長するキノコなので、サルノコシカケ同様に木質です。薬効成分が特に多く含まれるといわれる黒化した表面は、まるで岩のように硬く、とてもキノコの仲間とは思えない形状をしています。

シラカバの幹にへばりつくように成長するので、樹皮を巻き込んでいることが少なくないようです。

これが、最も価値が高い「黒いダイヤ」の部分の大写しです。レンズがチョット寄りすぎましたが、細部がハッキリ分かりますので、是非、拡大写真をご覧ください。

塊のままでは保存及び利用に難がありますので、クリーニングしてから小割りにします。必要な道具は、大型ノミ、木槌、ピンセット、当て木、新聞紙、ビニール風呂敷など。

天然ものですから、様々な夾雑物が付着しています。一見しただけでは分かりにくいと思いますので、虫眼鏡は用意したほうが良いかも知れませんね。何に使うかですって? 勿論、「虫」を探すためです。掌の黒いヤツは、左が蛹で越冬中の昆虫、右がカバノアナタケの欠片。人体に害がある虫だったら、嫌ですよね?

上のが塊1個から出たゴミ、下はゴミの中から回収したカバノアナタケの欠片。まるで宝石の選別作業みたいですね。

黒化した表面は恐ろしく硬く、割れるときに欠片が盛大に飛び散るので、ビニールなど囲いが必需品。さもなくば、最も貴重な部分をロストしますよ。ノミに伝わる感触は石炭に酷似しており、まさに「黒いダイヤ」の手ごたえです。

ドンドン割ります。すると、鮮やかな色合いが……

これは、大き目の塊を真っ二つに割ったもの。クリックして断面の拡大写真をご覧ください。

マージャン牌くらいの大きさに小割りできたら、新聞紙の上に広げてストープの前で乾かします。

欠片や粉末は、あっという間に乾燥するので、埃を被らないうちに選り分けて茶筒や海苔の缶に仕舞います。早速、煎じて「カバノアナタケ茶」を作ってみましょう。市販のお茶パックの小袋にスプーン1杯が適量です。

小割りにしたものなら、この大きさのものを1〜2個入れて、毎日煎じて1ヶ月くらい入れっぱなしで飲み続けるのが地元の流儀。茶殻は軽々しく捨てません。その後も時々新しい物を追加して煎じ続け、エキスを全て利用し尽くします。北海道の大自然が恵んでくれた宝のキノコなのですから。

ステンレスのヤカンに水を入れ、「カバノアナタケ」を放り込みます。いきなり火に掛けないで、一晩、水出しすると一層効果があるという人もありますが、まあ、人好き好きでしょう。

強火に掛けて沸騰したら弱火に落として15分。

その状態で注ぐと、紅茶かウーロン茶のような色合いです。高貴な香りが微かにしますが、喫煙者には絶対に分からない微妙な香りなので、無臭と判じる人が多いですね。味は苦くも渋くもありませんが、まったりとした「何か」を感じます。美味しいとか不味いという意味では、無味のお茶ということになりますが。

冬なら、ストーブに載せておきましょう。煎じて家族みんなが飲み、お茶が少なくならないように、飲んだ分だけ横の大きなヤカンからお湯を継ぎ足します。

ストーブの上に載せてから1時間後に注ぐと、ご覧のようにコーヒーみたいな真っ黒けになりました。凄く苦そうですが、舌には何の刺激もありません。しかし、色が出ているということは「何か」が多量に溶け出していることの証拠。それが、効き目のある成分であるのは、多分、間違いないのでしょう。お湯を足すだけで黒いお茶がジャンジャンできる……こんな状態が最初のお茶パックだけで数日から1週間、塊を入れると1ヶ月近く続きます。買うとメンタマ飛び出る値段ですが、考えようによっては安いと言えるかも知れませんね。

カバノアナタケには様々な薬効があるとしてブームになっています。ネット検索で沢山のホームページがヒットするので、興味のある人は調べてみては如何ですか?

因みに、私の血圧は中年オヤジとは思えない120/70です。他にも身体に良さそうなもの(ビタミン、ミネラル、無農薬野菜、天然食材など)を積極的に摂っていますから、カバノアナタケの効果かどうかは分からないんですが……。