エゾシカの若雄は食肉として最良です。遠くから見たのでは年齢が良く分からない雌と違って、裏切られることが殆どありません。

ハラを出して空冷中の状態です。左の肩甲骨、背骨、右の肩甲骨を経て貫通しています。150ヤード以上の距離なら、この撃ち方に限ります。ゲームは瞬時に昇天し、血が良く抜けて肉の損失も最小限。全ての肉が利用できます。
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アドボというのはフィリピンの人気料理です。私たちが梅カツオ味やバター醤油味などの民族的嗜好を持つのと同じく、かの地では「アドボ味のポテトチップス」まで売られているそうです。酢と醤油とスパイスだけのシンプルな味付けなのに味わい深く、肉がトコトン柔らかくなるので、ヒネ鹿の硬い肉だって美味しく食べられます。ウデやスネを骨付きのまま使ってください。骨やスジから良質のダシが出ます。丸ごと煮込むだけなので手間が要らず、誰にでも喜ばれるヘルシーメニューです。ここで紹介するのは最も単純なレシピなので、各自の好みによって材料やスパイスを工夫すると更に風味が増します。骨付き鹿肉が手に入らない人は、鶏の骨付き肉のぶつ切りで代用してください。豚肉でも美味しくできますよ。
冷蔵庫で10日ほど寝かせた骨付きウデ肉を1頭分使います。
雄の片ウデは1本平均3キロです。今回は若牡なので合計5.85キロ。切り分けないと冷蔵庫に入らないので、関節でばらした肉塊は都合6個。1頭分だと結構なボリュームですね。

ビニールに密着していた断面が少し変色していますが、傷んでいる訳ではありません。上手く熟成できて、美味しい匂いがしています。余分な脂肪や汚れは取り除きますが、スジはそのままにしておきます。

スジに切れ目を入れ、細かく念入りにナイフを刺し入れます。
これをやっておかないと、マリネする時間が余分に掛かります。

直径50センチのステンレスもしくはホーロー鍋を使います。
下拵えが済んだ肉塊を隙間なく鍋に入れると、マリネード(漬け汁)のまわりが良くなります。

弾が見事に貫通している肩甲骨。
この鹿はゲームコールで呼んで200ヤード先に出たところを慎重に狙撃したものですが、忍び猟ではむしろ珍しいケースでしょう。鹿笛を使うと、空気銃でも射穫可能な至近距離が殆どなので、私たちはノーズショット(鼻面撃ち)で仕留めます。弾頭が尻振りしている近射では、ネックに命中させてもかなりの損失が出るからです。

処分した部分はゴルフボール大の肉片が2個のみ。
こういう気分の良いハンティングを心掛けたいと常々思っています。

指差しているのは肘の関節です。右に張り出した出っ張りが俗に言う「肘鉄」。人間の女性にも備わった天然の凶器。おっかないですね。でも、鹿はこの部分で攻撃は仕掛けません。雄だって腹ばいになったときの安定板に使っているだけです。

ノコギリが嫌いなので、アックスで「ガキッ!」「ベキッ!」「バキッ!」
天然の凶器を人工の凶器で打ち負かす訳ですね。そのままでは鍋に入らないから叩き切る訳なんですが、ポロリと取れた「肘鉄」を捨ててはいけません。骨や関節から良いダシが出るんです。

漬け汁の材料は、先ず、濃い口醤油を330cc。.

大粒ニンニクを8粒、ニンニク潰し器で醤油に絞り込みます。
勿論、無農薬アヒル堆肥で育てた自家製のニンニクです。

馴染ませるために良く掻き混ぜましょう。
ニンニクのトロミが凄いです。

次に黒胡椒を小匙2.5杯分、スパイスミルでゴリゴリと挽いて、

酢を500cc、黒胡椒のボウルへ注ぎます。

そこへ、先ほどのニンニク醤油をぶちまけるだけの簡単マリネード。

良い照りですねえ。でも、砂糖っ気はゼロ。
糖尿のお父さんも安心です。

月桂樹の葉を7枚用意。ローレル、ローリエ、ベイリーブス。皆、同じです。え? フォーリーブス? あんさん、それ古すぎまっせ。枚数も違います。

千切った月桂樹の葉を鹿肉の上に散らし、調合済みのマリネードを回し入れます。

満遍なくマリネードが行き渡るように鍋を揺するとグッド。

3時間ほど放置してから天地返し。それを何回か繰り返しながら半日〜1昼夜、冷暗所で寝かせます。

漬け込みが終わったら、弱火で煮込んで火を通して一晩放置。

浮いた脂肪を除去してからフライパンで肉を炒めます。

焼き色が付けばOK。素晴らしい香りがしますよ。

コンガリ美味しそう……というか、実際美味しいのですが、まだ完成ではありません。鍋に戻して煎り付けるように煮汁を絡めます。

一晩置いて、再度暖め直すとご覧の通り。身崩れするほど柔らかに仕上がりました。マリネードの主成分である酢の作用です。

どうです? ジューシーで柔らかそうでしょう? これなら、歯の弱くなったお年寄りにもお勧めできます。

案の定、ナイフを入れると切るよりほぐすという感じになりました。

焼いたパンに、初冬のシバレから辛うじて生き残っていたチマ・サンチュ(焼肉レタス)を敷いて、サンドイッチを作ってみましょう。

うりゃあ! 惜しげもなく乗っけてみました。うう、生唾。

鍋の煮汁です。いい色でしょ? 骨のコラーゲンやらカルシュームやら肉のタンパクが酢で分解されたアミノ酸やら、まあ、栄養の濃縮エキスみたいなもんですな。これを切り取った肉に惜しげもなくまぶします。味は? へっへっへ・・・・・知りたいですか?

フレンチでもエスニックでもない、摩訶不思議な味・・・・・まさにメキシコ発スペイン経由フィリピンの味です。こんなに旨いソースをタップリ使えるのは、料理好きの狩猟家だけ。これって、専門用語で≪特権≫と言いませんでしたかね? (笑)

お皿の料理にトーストを被せているようにしか見えませんが、具を沢山盛りすぎたのですね。下のパンが見えません。
好みで黒胡椒を挽くと味が引き立ちます。

一口かじって写真を撮った後は、無言でバクバクバクバク。別の皿に残っていた肉片に鍋からソースをかけて、バクバクバクバク。味は、サワークリームを添えた牛ヒレカツサンドに似ているような……しかし、油っぽくなくて胃にもたれない鹿肉アドボの勝ち。
尚、下のパンの左で光ってるのはソースではなく、私のヨダレです(笑)。

翌日、冷めた鹿肉アドボのスライスをご飯に載っけて、ソースの煮こごりをトッピング。うま酸っぱい味わいが朝の食事にピッタリです。
多量に酢を使うので冷蔵庫に入れなくても日持ちするのが嬉しいですね。




鹿肉のアドボ(ウデ肉1頭分)