怪魚ホテイウオの鍋料理(ゴッコ汁)

北海道の道南地方には、「ゴッコ汁」という郷土料理があります。ゴッコとは北海道での通り名で、正式には「ホテイウオ」と呼ばれる奇妙奇天烈な容姿をした魚です。昔は漁師町を中心に地場消費されるだけでしたが、真冬の北海道に足を運ばなければ食べられない珍しい鍋物としてしばしばテレビの旅番組で紹介されるうちにニーズが生まれ、最近では内地向けにも少数出荷されているようですね。

ところが、同じ北海道でも私共の広尾町(十勝南端。道東の太平洋岸)周辺では、スーパーや鮮魚店でホテイウオ(ゴッコ)を見掛けることは先ずありません。十勝というところは食料基地の屋台骨ですから、「わしらの地域の食いモンが日本で(世界で)一番旨いんじゃ!」という自負が強く、食べ物や料理について保守的な人が多いのですね。だから、お店が珍しいモノを仕入れてきても絶対と言って良いほど売れない。安くて美味しくて身体に良いモノでも売れない。食品のブームやセールには全く反応しない土地柄なので、お店としても、こういうお客さんを相手にするのは緩くないのだと思います。

だから、うちの近所のお店では、最も漁獲が増える(最も味が良くなる)旬の時期にすら「ゴッコ」が並んでおりません。これは情けない話ですよ。そして、トサカに来る話です。別に「クリオネの掻き揚げ」とか「イトウの刺身」が食いたいとか言うてる訳じゃありません。数時間で陸送可能な地域の大衆魚くらい食わしてくれてもエエやおまへんか。我が家のオカンも同じ意見だったらしく、行きつけのスーパーの鮮魚コーナーをチェックしながら、「いっつも同じ魚しか並んでへんなあ・・・・買うモンあらへんやんか」と言い放ちよりましたよ、お店の人が魚のパックを陳列している真横で(冷汗)

ボタンエビとかケガニを筆頭に本州で買ったらメンタマ飛び出る近海物の新鮮魚介が「ホンマにエエの?」と思うような値札を背負って大量に並んでいても、それが毎度のこととなると、流石に飽きてしまうのでございます。まったく贅沢な話ではありますが・・・・

オカンが店員さんにブータレかましてから5日ほど後、またぞろ例の鮮魚コーナーを歩いておりました。すると、お久しぶりのお姿が・・・・

「ゴッコ、見っけ!」

言うが早いか、パックを全部カートに放り込む私でした(笑) いやあ、関西系のオババに危険を感じた店員さんが店長に直訴なさったのかもしれませんね。ウハハハ、スマン、スマン。

ゴッコは、卵の入っている雌が喜ばれます。この魚の骨は少ない上に軟骨みたいに柔らかく、そこら辺に置くと、中途半端に水を入れた風船かビニール袋といった風情ですから、腹を割ってみないと良し悪し(卵の当たり外れ)は分かりにくいと申します。・・・・で、今回は「鍋セット」にしてみました。味付けは昆布ダシ&醤油です。

先ずは、正肉から

お次は、吸盤

これは胸鰭が進化したものらしいです。
1尾に1個しか付いていないので貴重品。

これは、右っ面・・・・ブ、不細工 (失礼)

ゴッコという魚の見た目は「巨大オタマジャクシ」。触感もオタマジャクシ。だから、味も・・・・???? 外見からは食欲の「しょの字」も湧きません。人類史上最初に食べた人の勇気に惜しみない拍手を!
画像をクリックすると拡大写真がご覧いただけますので、全体像をご想像くださいませ。 え? 嫌や〜ですって? さもありなん(爆)

これは、皮身

箸で摘んだだけで、ゼラチン&コラーゲンがテンコ盛りということが分かります。柔らかすぎるスッポンちゅう感じですね。

キモ(肝臓)もありまっせ

丸のままの鮮魚を避けたもう一つの理由がコイツです。
アンコウなんかは丸のまま売られる場合、キモが見えるように細工されてますけれど、ゴッコは腹を割ると風船が萎むように中身が飛び出すのでそういうことは難しいみたいです。鍋セットなら外れを引かずに済みますから、まあ、無難な選択ということでご勘弁を。

今回の主役ゴッコの卵「タマゴッコ」登場!

卵巣は呆気にとられるほどデカイです。
粒の大きさはニシンのカズノコとハタハタのブリッコの中間くらいかな? それにしても・・・・物凄い量。

発作的に「ゴッコ」を買い占めようとした私ですが、衝動買いでは、以前、土鯨(ツチクジラ)の塩皮(マクタックもどき)で痛い目をみているので、今回は自重しました。調達したのは1パックのみ。でも、それで正解でした。2パックだったら、とても食べ切れないでしょうから。

火が通りかけた卵の色合いのグラデーションが美しいです。

全部鍋にブチ込んでから気が付いたのですが、この卵を醤油漬けにするっちゅう手もありますね。次の機会に挑戦してみましょうかね。

良からぬ想像というのは不意に湧き起こるものでありまして、幼少のみぎりにスコップでオイタしたオタマジャクシの切断面を、ふと思い浮かべてしまったのでございます。いやあ、食欲増進のためにも、ここは一番、コイツはスッポンだと思い込むことに・・・・

・・・・しっかし、今度はもっと余計なことを思い出す始末。
ご存知のように北海道にはスッポンはおりません。私が生まれ育った琵琶湖周辺には少数ですが生息しております。故郷の味?

こんなことなら、大市の丸鍋(スッポン鍋)を食っとけば良かった(涙)

適当にブチ込んでも完成するのが鍋物?

念入りに作る人は、魚体のヌメリを熱湯で剥ぎ取り、卵は搾り出して洗ってから鍋に入れるそうです。しかし、アク引きだけ注意してポンポンポンと拵えても、特に問題は無いようですね。

うほほ、こりゃ上等のスッポンや!

肉は癖無し、臭み無し。ダシがまた素晴らしい。
皮身はプルプル、クニュクニュ、トロトロ〜
卵も硬からず柔らかからず、プチプチ、シットリ、味も良し。

ドタマも凄い!

スッポンの身肉のようでもあり、アキアジの氷頭のようでもあり、オタマジャクシの・・・・おっとヤバイ(笑) 口に含むと僅かに軟骨のようなものが触りますが、噛めばサックリ歯切れ良く・・・・やはりこれは「柔らかすぎるスッポン」としか表現できない味わいですね。と言うか、スッポンみたいなニオイがないので、味は上かも。見た目オタマジャクシ、味スッポン。コイツが魚だということを忘れてしまいそうです(笑)

ヘソ・・・・というか吸盤はイマイチ(?)

吸盤というと筋肉の塊のイメージがありますが、食ってみると、この器官が元々はヒレだという事が良く分かります。ゴッコ汁の本場「道南」では下拵えの段階で捨ててしまう人もいるといいますから、まあ、珍味の部類ですね。身体に良いのは間違いありませんけどね。

ゴッコ汁の仕上げは「おじや」で決まり!

身肉を平らげた後の鍋には卵が大量に浮かんだオツユが残っています。酒宴なんかですと、ゴハンを入れて、酔い覚ましに深夜の「おじやパーティー」へと雪崩れ込むところですが、今回は翌日のお昼に持ち越しました。魚の汁を煮返すと生臭くなるのが普通です。ところが、ゴッコ汁にはそういうことが全然なくて、あっさり上品、かつ、豊かな味わいが楽しめます。他の魚では、こういう芸当は無理でしょう。本物のオタマジャクシなら、もしかして・・・・(爆) 御馳走様でした。合掌

我が家の近所では、函館産ゴッコの鍋セット580円也、鮮魚1尾398円也でした。
海で獲れる「ゴッコ」=「ホテイウオ」の旬は1〜3月。特に2月は卵が肥大して最高の味になると言われています。本場の道南では、もっと安くで手に入るでしょう。
また、ゴッコは若狭以北、関東以北に分布しているそうなので、北海道以外の地域でも地物が手に入るところもあるようですから、気味悪がらずにチャレンジしてみては如何でしょうか。
冒頭でも述べたように、最近は本州の魚屋さんに北海道産が並ぶ事もありますし、クール便での全国発送も少しずつではありますが扱う業者が増えているらしいです。
産地以外にお住まいの方は、「ゴッコ汁」「ホテイウオ」などでネット検索してみてください。通販してくれるお店が、きっと見付かると思いますよ。