ギョウジャニンニクで春を祝う

ここで紹介する「ギョウジャニンニク = 行者大蒜」は本州なら相当標高が高いところにしか生えませんし、たとえ高山でも近畿以西の自生は稀だと言われています。園芸店でメンタマ飛び出る値札に目を瞑って買ってきた苗を植えても何時の間にか枯れてしまうのは、冷涼な(というより寒冷な)気候を好む北方系の山菜だからです。東北では山に行かないと採れないようですが、緯度が高い北海道では平野部にも生えています。ただ、数や場所は減りましたね。昔はどこにでも群生していたのに販売目的で乱獲され、それでも足りずに栽培品への期待が高まっています。ところが、ギョウジャニンニクは「ユリ科」の植物でニラやネギ、ニンニクの仲間でありながら成長が極めて遅く、播種(種蒔き)から収穫まで最低4〜5年掛かります。噂では1〜2年で出荷できる早生品種が選別されたらしいと聞きますので、いずれは他の野菜同様、周年出荷が可能となるのでしょうが、便利になる反面、私たちは、また一つ「旬」を失うことになります。年中新鮮なギョウジャニンニクが食べたいけれど季節感も大事にしたい……これって、ワガママでしょうか?

因みに、私の住んでいる地域では「ネギ」といえば「ギョウジャニンニク」を指します。他、「アイヌネギ」「キトビロ」などの呼び名もありますね。我が家では単に「ギョウジャ」と呼び習わしておりますが。
「ネギ採り」をしないと春が来ない……そう言っても過言ではない北国の田舎暮らしでございます。

ギョウジャニンニクは里より山のほうが早く出ます。早春、南向きの斜面の雪がずり落ちて十分に陽を浴びる場所では3月初旬に芽吹くと言われています。ただ、その時期は残雪がテンコ盛りで雪崩の危険もあり、技術と装備が必要です。この写真は4月中旬に里で芽吹いたもの。無茶せずノンビリ待ちましょう!

一年ぶりの再会です。ちょっと可哀想な気もしますが、これくらいの大きさが「生食」には最適です。採取にはナイフを使いますが、余り深いところで切らないように注意が必要です。根の部分を十分に残しておけば、2年で元の太さに回復します。引っこ抜いたら絶えてしまいますよ! 種子が零れて鉛筆くらいの太さに育つには、品種によって7〜8年掛かる場合もあるので、細いものは採らず、食べる分だけ採るのが「ネギ採り」の常識!

これは谷地草(ヤチグサ)の芽。その年初めてのネギ採りで「見っけ!」と小走りに駆け寄ってガッカリさせられるのが、この草です。良く似てるでしょう? でもね、イネの仲間の植物なんですよ。食べられません(笑)。

同時期のネギの仲間の芽吹きを比較用に幾つか紹介しておきます。
これは「ラッキョウ」。

九条系の「青ネギ」。

幅広タイプの「ニラ」。

これは、正真正銘の「ニンニク」。
これら全て、マイナス20度の冬でも畑に植えっぱなしで越冬します。ネギの仲間は偉い!

採取したギョウジャを流水で徹底的に洗います。必須作業!

春を祝って、スタミナ食材のオンパレード!
無農薬アヒル堆肥で育てた短種山芋「自然薯×姫神芋F1のトロロ」、広尾の海で獲れた「灯台ツブのボイル」と「揉みダコの刺身」、そして今回の主役「ギョウジャニンニクの生食」
もう、鼻血が出そうですね(笑)。

タレを付けて齧ると強烈な辛さと特有のニンニク臭が口一杯に広がります。ホカホカ御飯と一緒に食べれば、美味しすぎて涙が出ます。

「辛いけどウメエ〜!」

ただし、一度に多量に食べると「のぼせる」ので、このサイズなら一人6〜7本が一応の目安。私はギョウジャを食べると酔っ払ったみたいに顔が赤くなるので、お酒で酔ったのか見分けが付きません(爆)

保存食作りには、もう少し大きくなったものが向くので、10日〜2週間後に採ると具合がいいですね。

でも、辛抱たまらん人(我が家のオカンです)が連れて行けとうるさいので1週間後に出撃しました。

コンビニのビニール袋なんかに入れたりすると蒸れて台無しになりますよ。面倒でも日差しを遮断できる入れ物に入れるべきですね。カゴがなければ段ボール箱がグッド。

ギョウジャニンニクの保存は「生」より「茹でる」ほうが良いようです。我が家ではタップリの熱湯で瞬間的に湯通しして、バケツの水(出しっぱなしの水道水)で急冷します。それから冷凍するなり、好みのタレに漬けるなりします。この写真はキッコーマンの「メンミ」と「丸大豆醤油」を1対1で混ぜたタレにギョウジャニンニクを漬けたものです。冷蔵庫で結構日持ちして、これだけで御飯が食べられるスグレモノ。チャーハン、ギョウザ、ラーメン、野菜炒め、焼肉にも最高! 香りと旨みの染み込んだタレは万能調味料として何にでも使えますよ。

写真はギョウジャニンニクの種子です。クリックして拡大すれば、ネギの仲間に共通の真っ黒い粒々をご覧いただけます。大変貴重なものなので、山の適地に蒔くだけでなく、菜園でも苗を育ててみるつもりです(注意 ネギの仲間の種子は採種後1年以内に播種しないと発芽率が殆どゼロになります。ギョウジャの場合は2ヶ月以内?)。
ギョウジャの種子は、とんでもない「強壮薬」だという説もあるのですが、勿体無くて試したことがありません。一時の欲に流されず、5年10年先を見て大地に夢を蒔くのが正しい道ではなかろうかと(微笑)。

山菜採りは最高に楽しいですが、ただ採るだけでなく、お礼として株の根元に肥料を置いてあげるとか、自生地を回復させる為に種子を運んで周囲に蒔いてあげるとか、できる範囲で手間を掛ければ、更に楽しみは膨らみます。
あちこちにギョウジャの種子を蒔いておけば、ひょっとすると私が死んだ後も「ネギ山」は健在かも知れませんね。
名は遺らないし、虎じゃないから皮も遺せない。
山人らしく「ネギ山」を遺して逝きますか?
隣人と大自然への恩返し。
う〜ん、ロマンですねえ。